札響第606回定期演奏会(首席指揮者ポンマー最後の定期、共演は小菅優)

~北の自然と管弦楽がとけあう・・・「極北の歌」 札響初演~

ポンマーは札響首席指揮者に就任した最初のシーズンにフィンランドの作曲家、ラウタヴァ―ラ(1928-2016)の曲を定期公演で取り上げた。指揮者は30年ほど前に作曲家と知り合い、彼の交響曲をCDにする仕事を引き受けた。レコーディングにあたって彼と親交を深め、彼の作品が好きになって札響で紹介する機会を持った。作曲家も喜んでくれたそうだが、その吉報を得た後に逝去した。ポンマーは札響首席指揮者を退任する最後の定期演奏会で、北国の自然と深く関わり合うラウタヴァーラの作品を再度、演奏することになった。
Pommerはライプツィヒ出身でライプツイヒ音楽院に学び、小澤と共にカラヤンに師事した経歴を持つ。札響在任中にバッハ、メンデルスゾーン、シューマンなどライプツィヒと深く関わる作曲家やモーツァルト、R.シュトラウス、レ―ガ―の作品を数多く演奏した。3年間の首席指揮者在任中に札幌にバッハの伝統を作り上げたいという強い意志とドイツの音楽を伝えたいという伝道師のような働きをした。

小菅優は1983年、東京生まれ。93年にドイツに渡り、9歳でリサイタルを開き、オーケストラと共演したという。その後、音楽の才能を順調に伸ばしてヨーロッパで大活躍。世界各地の著名なオーケストラと共演を続け、05年にカーネギーホール・デビュー、06年にはザルツブルク音楽祭でリサイタル・デビュー。日本では、05年に自主リサイタルを開催し、サカリ・オラモ指揮フィンランド放送響と全国ツアー。07年4月広上指揮札響定期に初登場して、「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番」を演奏。今回の札響共演は2回目。Kitaraには12年、シェレンベルガー指揮カメラータ・ザルツブルグとの日本ツアーのソリストとして、「モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番」を弾いて以来、6年ぶり3回目の登場。スケールの大きな演奏スタイルだが、繊細さも持ち合わせて、室内楽でも一流演奏家と共演を続けている。2010年から開始した日本でのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ全曲演奏会」(全8回)を15年に完結。まだ30代半ばだが、日本を代表するピアニストとして名高い。札幌でリサイタルを聴きたいと願うピアニストである。

2018年1月27日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

 指揮/ マックス・ポンマー(Max Pommer)   ピアノ/ 小菅 優(Yu Kosuge)
〈Program〉
 ラウタヴァーラ:鳥と管弦楽のための協奏曲「極北の歌」(1972)
 モーツァルト:ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
 メンデルスゾーン:交響曲 第3番 イ短調 op.56 「スコットランド」

鳥の声を素材にした作曲家はメシアンが心に浮かぶが、ラウタヴァーラの音楽には北欧の澄んだ大気と大自然を感じさせるものがある。前回の「交響曲第3番」でも鳥の声を思わせる印象的な場面もあった。「極北の歌」は小鳥の鳴き声と生のオーケストラを共存させた作品。作曲家自身が北極に近い場所で渡り鳥の声を録音したという。録音された何種類もの鳥の声が和声のような響きとなり、オーケストラの演奏と混じり合って一つの音楽となる珍しい試みである。
銅鑼、ハープ、チェレスタも効果的に使われ、管弦楽の響きと調和して北欧の澄んだ空気と大自然の様子が不思議な感じで伝わってきた。

モーツァルトは交響曲も短調作品は2曲だけだが、ピアノ協奏曲も27曲中で短調の曲は2曲のみ。前回、小菅が弾いた「第20番ニ短調」と今回の「第24番ハ短調」は対をなす。予約演奏会のために作曲に追われる環境の中で、モーツァルトは充実した作品を書き続けた。この「ハ短調」の作品もピアノ協奏曲の傑作として知られる。当時の調性感覚を超えた技法で書かれ、美しい旋律が全編を覆う。カデンツァはモーツァルトは書いていないのでピアニストが自由に弾ける。モーツァルトはクラリネットという楽器を曲にあまり使わなかったと記憶しているが、ピアノ協奏曲第22、23,24番にはクラリネットを珍しく用いている。彼の後期3大交響曲(*ポンマーが札響600回定期で演奏)に通ずる内容を持った作品と言えるので、ポンマーが選曲にかかわったのかな(?)と余計なことを考えてしまった。
いずれにしても、緩徐楽章での木管とピアノの対話は美しかった。最終楽章のコーダも力強く、久しぶりで聴く小菅の非の打ちどこるの無いピアニズムに満足した。曲全体を通して、多様なリズム感、繊細な感情や深みのある華やかさなど曲を鮮やかに浮き出させていた。堂々たる演奏であった。ポンマーも満足そうであった。
会場から沸き起こる最大な拍手に応えて、アンコール曲は「メンデルスゾーン:ヴェネツィアの舟歌 第3番」。

※「ピアノ協奏曲第24番」の札響初演が1973年でピアノがラドゥ・ルプーと知ってビックリ。札響定期では76年にペライアが弾いている。前回の定期ではルケシーニが弾いたのは聴いていて記憶していた。特に70年代に海外の演奏家の日本ラッシュがあったようで、札響の記録にも、アルゲリッチ、ホリガー、フレイレ、ゴールウェイ、パールマンなど多くの著名音楽家の名が載っている。

1829年3月、バッハの死後初めて「マタイ受難曲」を再演指揮し、バッハ再評価の口火を切ったメンデルスゾーンはロンドンでの演奏会の後にスコットランドを旅した。その時に序曲「フィンガルの洞窟」と「交響曲第3番」の楽想を得た。番号の付いている交響曲は5曲であるが、「スコットランド」は完成までに13年の歳月を要して楽譜の出版が1842年になり、メンデルゾーン最後の交響曲になった。(*メンデルスゾーンは1843年にライプツィヒ音楽学校を設立。シューマンも作曲とピアノの教授として加わった。)

スコットランド特有の自然・文化を背景に5音音階や民謡的素材を生かしてメンデルゾーンがロマンティックな表現で音楽にしている。スコットランド民謡を素材にして造形された主題は魅力的である。バグパイプ風の感じもするスケルツォ。神秘的な雰囲気も描かれる曲はアタッカで切れ目なして演奏されるのが普通だと思っていたが、最終楽章の前にポンマーは休みを入れた。第4楽章はアレグロ・ヴィヴァチッシモでソナタ形式の終曲。凱歌が奏でられた場面はスコットランドの諸部族の争いの歴史を暗示するものであったようである。フィナーレとして聴きごたえがあった。ある程度イギリスの歴史や民族については知っているつもりだが、スコットランドが1707年までは独立した王国であって、現在もイギリスからの独立を目指しいることと曲が直ぐに繋がらないのが口惜しくもある。

来月3日の札響名曲シリーズにもポンマーは出演するが、首席指揮者としての定期は最後ということで、普段よりもオーケストラの首席・副首席奏者を含め楽団員全員に対する感謝の様子が伝わった。日本人らしい礼儀の正しさも身に着けておられる姿は指揮者としてだけでなく人間としての心の豊かさを感じ取れた。

※日本でイギリス、英国と呼ばれる国の正式名は“The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland”。略してU.K.。
England+Wales=Britain。Britain+Scotoland =Great Britain。Great Britain+Northern Ireland =United Kingdom。イングランドは国の一部で、人を表す語はそれぞれ Englishman, Welshman, Scotsman, Irishman と区別される。BritishはBritain、Great Britainに対応する。スコットランド人に対してEnglishmanという語は適切でない。狭い意味では男性語だが、女性はwomanにすると良い。一例を挙げただけであるが、それそれが英語以外に独特の方言、文化を持つ誇り高い民族である。フットボールの発祥地で現在のWorld Cupでも特別ルールが出来上がっているほどである。ゴルフの聖地がスコットランドであることも有名である。
シェイクスピアの時代のスコットランドは現代とは違って独立国だったのである。知っておいた方が良い知識もまだまだたくさん有ることを今回のコンサートを通して実感した。
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新進演奏家育成プロジェクト リサイタル・シリーズ(ソプラノ/佐々木アンリ)

10年前に[演連コンサートSAPPORO 5] を聴いたことがあった。当時、北海道二期会に所属して、札幌の音楽界で活躍していたソプラノ歌手のリサイタルだった。彼女が音楽大学に進学したのを知っていたので、その活躍ぶりを一見しておきたいと思った。札響とも共演し、多くのステージで活躍していることが判った。
新進演奏家育成プロジェクトのオーケストラ・シリーズ開催を2年前に知って聴き始めた。文化庁の支援事業なので名称を変えて継続されているコンサートだと解った。

今回のコンサートは[リサイタル・シリーズSAPPORO14] 《佐々木アンリ ソプラノ・リサイタル》。ソプラノ歌手の名は何となく知っていた感じがしていた。2年前のオーケストラ・シリーズに札響と共演していた演奏家で、オペラのアリアが凄く印象に残る歌手だったのを思い出した。ピアノの新堀聡子は札幌の音楽界で活躍している俊英ピアニスト。

2018年1月26日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール
〈Program〉
 ワーグナー:ヴェーゼンドンク歌曲集 作品91
 プーランク:ルイ・アラゴンの2つの歌、愛の小径
 モーツァルト:オペラ《フィガロの結婚》より「愛の神よ、安らぎを与えてください」
 グノー:オペラ《ファウスト》より 宝石の歌「何と美しいこの姿」
 プッチーニ:オペラ《蝶々夫人》より 「ある晴れた日に」
         オペラ《トスカ》より「歌に生き、恋に生き」
 ヴェルディ:オペラ《運命の力》より 「神よ、平和を与えたまえ」

Anli Sasakiは札幌出身で東京藝術大学卒業。ライプツィヒ音楽大学を最優秀で卒業し、バイロイト音楽祭の奨学生に選抜され、ドイツの歌劇場で主役を演じて喝采を浴びた実績を誇る。帰国後、札響との共演も重ね、北海道二期会のオペラにも主役で出演している実力派の演奏家。
開場時から多くの人々がホールに駆け付け、期待の高さがうかがえた。コンサートの前半が歌曲、後半がオペラのアリア。ワーグナーの歌曲は耳にすることは珍しい。来月の藤村美穂子のリサイタルのプログラムで歌曲のタイトルを初めて知ったくらいである。プーランクの曲は「愛の小径」をピアノ曲で聴いたことがある。日本の歌曲やシューベルトなどの聴き慣れた歌曲は別にして、初めて耳にする歌曲の良さは簡単には解らない。白井光子や藤村美穂子などのドイツ・リートは先入観があって、その素晴らしさが味わえた。佐々木の声量も十分で、非凡さが表現されていたのは間違いないが、オペラのアリアに対する期待度が勝っていることもあって、感激するほどでもなかった。
後半のオペラのアリアは極めて有名で聴き慣れていて期待通りだった。オペラのドラマティックな雰囲気が良く出ている演唱となって素晴らしかった。最後の2曲は前回と同じアリアで、彼女が最も得意にしているようであった。《運命の力》は「序曲」を聴く機会は多くても、アリアは珍しい。コンサートの最後を飾るにふさわしいアリアで、佐々木の歌唱にブラヴォーの声がひときわ高く、何度も声が掛かって聴衆の大拍手を浴びた。新進演奏家のレヴェルを超えた卓越した歌手である。実力に加えて、風格も兼ね備えている音楽家のように思えた。

アンコール曲は[プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」より“私のお父さん”].。





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第20回「札響くらぶサロン」記念ミニコンサート(ヴァイオリン/田島高宏)

年4回開催の「札響くらぶサロン」も20回目を迎えた。ミニコンサートは第9回から始まり、札響奏者の演奏をまじかで鑑賞できるのは格別である。ここ数年は豊平館の広間を会場にして開催している。Kitaraでの午後のコンサートに続いての開催が重なって、必ずしも毎回出席できてはいない。今回も午後2時開演の道響演奏会の後だったが、田島コンサートマスターが出演してくださるミニコンサートだけは聴こうと思った。

ミニコンサートの前に札響ライブラリアンの講演があった。ライブラリアンは本来の意味は「図書館員」だが、クラシック音楽の世界ではオーケストラの演奏で使用する楽譜の手配や購入、回収、製本などを行う専門スタッフのこと。札響には専門の職員が1名であるが、海外のオーケストラでは3名いるところもあるという。ライブラリアンなしでは演奏会が行えないほどの重要なポジションである。
札響ライブラリアン中村大志さんが具体的な仕事内容などを1時間ほど話してくれた。

意外と時間を要して、ミニコンサートが始まったのが7時半前。
コンサートの出演は田島高宏(札響コンサートマスター)と田島ゆみ(ピアノ)。
田島コンマスは桐朋学園大学卒業。2001年より2004年まで札響コンサートマスターを務め、退団して渡独。フライブルク音楽大学でクスマウルに師事し、06年同大学卒業。08年ー14年、北西ドイツ・フィル第1コンサートマスターを務める。14年9月より、再び札響コンサートマスターに復帰。
ピアニストの田島ゆみは08年、フライブルク国立音楽大学大学院修了。ドイツを拠点にピアノ・デュオ、室内楽で活動し、後進の指導にもあたる。11年半のドイツ滞在の後に帰国。現在、札幌在住で札響首席奏者たちと室内楽など幅広い活動に従事している。札響演奏会での客演ピアニストとして出演機会も多い。

〈プログラム〉
 エルガー:朝の歌 op.15-2
 ブラームス:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ト長調 op.78「雨の歌」
 ラヴェル:ツィガーヌ

エルガーのヴァイオリン曲は「愛の挨拶」が最も親しまれているが、「朝の歌」は清々しい旋律で魅力的な曲。ヴァイオリンの音も美しいが、ピアノはただ単なる伴奏と違う技量を示していた。ヴァイオリンとピアノのための楽曲。のちにエルガー自身が管弦楽版も書いた。

ブラームスのヴァイオリン・ソナタ3曲の中で「雨の歌」が特に親しまれていて演奏機会が多い。数年前に樫本大進&コンスタンチン・リフシッツのデュオ・コンサートで全3曲の演奏会があり、昨年は千住真理子の演奏会でも「雨の歌」が演奏された。「第1番」が歌曲“雨の歌”に由来する話を含めて、ヴァイオリニストはブラームスがクララに寄せる想いなどを語った。田島自身、ブラームスが大好きで、ブラームスに関わる地を追っかけのように訪ね周ったようである。特に交響曲第2番、ヴァイオリン協奏曲と「雨の歌」を書いた小村ペルチャッハのことが個人的には印象に残った。

ヴァイオリンとピアノの両方で対等なテクニックが必要な曲を美しく紡いだ。ブラームスへの想いが伝わるような力演で完全に曲に没入して演奏しているのが判った。聴く者にも曲の素晴らしさが伝わる迫力ある演奏は至芸といえるようなものであった。ピアニストの運指が見える正面に座ったので、Kitaraホールとは違う臨場感が味わえて得難いミニコンサートになった。

「ツィガーヌ」とはジプシーを意味するタイトルでハンガリーの女性ヴァイオリニストのために書かれた。曲の演奏前に、彼はハンガリー交響楽団に招かれて、この曲を演奏した話をしてくれた(*小林研一郎が一時、常任指揮者を務めて98年に同団を率いてKitara に来演したハンガリー国立交響楽団のことだと思った)。その時の帰りのバスの中での忘れ物のエピソードは信じられないような話もしてくれた。そんな率直な話をするご主人を優しく見守るピアニストの姿も印象深かった。
難曲として知られ、10分ほどの曲の前半は無伴奏の超絶技巧は見ごたえ、聴きごたえ十分、後半にピアノが入るが簡単な曲ではなさそうだった。ハンガリーのロマの雰囲気が伝わるラヴェルらしい個性的な音楽の演奏が終わると、ブラーヴォの声がひときわ大きく沸き起こった。
体力的には力を尽くしたようであったが、盛大な拍手に応えてアンコール曲に「エルガー:夜の歌 op.15-1」。「朝の歌」と対を成す曲でミニコンサートを締めくくった。

会場には札響常任指揮者ポンマーさんや札響奏者の姿もあった。休憩後にパーティが予定されていたが、時間も遅くなった。最近は午後の活動が続くと疲労感が増幅するのに加えて、翌々日に月に一度の通院の予定もあって、パーティ参加は控えて退席した。
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北海道交響楽団 第85回演奏会(ショスタコーヴィチ:第11番)

北海道交響楽団の演奏を初めて聴いたのが2001年の第41回演奏会。1950年代から北海道大学交響楽団で活動していた卒業生の要望にも応えて、当時から北大響の指揮者を務めていた川越守が1980年にアマチュア・オーケストラ、北海道交響楽団を創設した。07年からは毎年のように聴いているが、前回の第79回から2年ぶりの演奏会。2016年から定期演奏会が年3回に増えたようである。
昨日、会場に着いてプログラムの最初の曲名を見て衝撃を受けた。道響の音楽監督で、指揮の予定であった川越守氏が昨年12月に逝去されていた。昨年から今回の予定の指揮に2人の名があったので、体調を考慮して予め1曲のみの指揮になるのかも知れないという予想はしていた。16年11月の北大響の指揮が見納めになってしまった。川越氏のご冥福を祈りながら、追悼曲を聴いた。

2018年1月21日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/中山 耕一
〈プログラム〉
 【追悼演奏】川越守(西田直道・補佐):市民の歌(札幌市民憲章制定1周年記念制定曲)
 ヨゼフ・シュトラウス:ワルツ「天体の音楽」 作品235
 チャイコフスキー:バレエ組曲「眠りの森の美女」
 ショスタコーヴィチ:交響曲第11番 ト短調 作品103『1905年』

“わたしたちは、時計台の鐘がなる札幌の市民です”で始まる札幌市民憲章(*1963年制定)の知識はあったが、「市民の歌」があるのは知らなかった。一般公募で川越守作曲の応募作が入選。彼はその後に数多くの作品を書いているが、とりあえず思い出の1作。彼は北大交響楽団を再興し、1960年に第20回定期演奏会を開催したが、その時の演奏会を聴いたのが最初の出会い。彼の突然の死に心の動揺を抑えきれなかったが、その後、落ち着いて感慨深い気持ちになった。

ヨゼフ・シュトラウスはヨハン・シュトラウスⅡの弟。工学が専門で、音楽の道に進むのは好まなかったが、家族のピンチを救うために兄の病気中に代役を務めた。結果的には300曲近くの作品を残した。ウィ-ンフィル・ニューイヤーコンサートで演奏される曲も多いが、「天体の音楽」も有名である。夜空の星の動きを見ながらワルツを踊る光景も何となく浮かぶようである。

チャイコフスキーの三大バレエ音楽は人々に最も親しまれている音楽。「眠りの森の美女」は約3時間の大作が抜粋で組曲となった管弦楽曲。「邪悪な妖精から紡ぎ針に刺されて永遠に眠る呪いをかけられたオーロラ姫が、善良なリラの精の導きで、100年後に、ある国の王子のお陰で目覚めることが出来て、2人は結ばれて幸せに暮らしたという話」
①序奏とリラの精 ②アダージョ ③長靴をはいた猫と白い猫 ④パノラマ ⑤ワルツ。
5曲中のいくつかの美しいメロディは聴き馴染みである。この曲のあたりでは、金管楽器群の演奏の素晴らしさが、際立って、さすが北海道が誇るアマチュア・オケストラの力が遺憾なく発揮されていた。

中山耕一は札幌生まれのフルーティストで、スイスに学んでチューリッヒ高等音楽院を卒業。チューリッヒ・トーンハレ管に客演するなど、ヨーロッパで活動。現在は国内外で演奏活動を行い、札幌市民オーケストラなどで後進の指導に当たっている。道響では93年よりトレーナーとして指導を行っている。
25年もの長きにわたって道響を指導しているので、川越音楽監督の意に沿って指導を続けていることに疑念はない。安心して聴いていられた。指揮・トレーナーとして道響の活動を続けると思われる。

後半は期待の「ショスタコーヴィチ:交響曲第11番」。PMF2004で芸術監督を務めたゲルギエフがピクニック・コンサートで5時開始のPMFオーケストラ演奏会で「チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲」(ヴァイオリン独奏/ズナイダー)と「ショスタコーヴィチ:交響曲第11番」を指揮した。終了時間は7時過ぎで夕闇も迫っていた。当時、新装なった札幌芸術の森・野外ステージでコンサートに集まった総人数は6400人(:*PMF組織委員会の記録による)で演奏終了後の聴衆の拍手大喝采はまさに感動的であった。私を含めて初めて聴いた人が多かったであろうショスタコーヴィチの60分の大曲はこの年の天候に恵まれた暑い夏でPMF2004 を締めくくるにふさわしい感動の場面を作り上げた。当時の様子は今でも脳裏に濃く焼き付いている。

ショスタコーヴィチが生まれたのは1906年。1904年に日露戦争が勃発して、帝政ロシアは社会情勢が緊迫度を増していた。首都ペテルブルグの労働者たちは戦争の重圧と経済情勢に不穏な空気に包まれていた。1905年1月9日は軍隊と民衆が衝突する血の日曜日となった。これがロシア第一次革命の発端となり、ロシア各地に反乱が広がっていった。ロシア帝政末期に起きた事件を題材にショスタコーヴィチは1957年に「第11番」を作曲した。
第1楽章「宮殿前広場」、第2楽章「1月9日」、第3楽章「永遠の記憶」、第4楽章「警鐘」。演奏時間60分の大曲で、曲はアタッカで休みなしに最後まで演奏される。標題から曲の内容が予想できる。場面に応じて、打楽器を含め、いろいろな楽器が活躍する。特に、イングリシュホルンとハープの紡ぐ美しいメロディが印象的だった。第2楽章以降で革命歌が中心的に歌われるが、緩急取り交ぜたリズム感のある演奏で、時間の長さを感じさせない演奏は素晴らしかった。アマチュアで金管の響きにほころびが無いのは凄いことで、帰りにホワイエで出会ったKitaraボランテイアの仲間もオーケストラの技量に感服していた。
川越氏が指揮をしているのと変わらない出来であったのが何よりであった。

聴衆の数は多くなかったが、聴きごたえのある演奏に聴衆から大拍手がいつまでも続いた。アンコール曲は「ムソルグスキー(ショスタコーヴィチ編):歌劇《ホヴァンシチナ》前奏曲 “モスクワ川の夜明け”」。



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アバド指揮による1994年ベルリン・フィル東京公演

@BerlinPhilJapanからかなりの頻度でメールが届く。デジタル・コンサートホールを視聴していて、英語版のPROGRAMME2017/2018が手元にあるので、必ずしも求めている情報は多くない。年間約40回配信されるシーズン・プログラムも全て視聴しているわけではない。最新のコンサートに関連した過去のコンサートは気が向けば偶に観る。
今回、クラウデイオ・アバドが日本公演を行った時のコンサートが興味を惹いた。アバド指揮ウィ-ン・フィルの演奏会は45年前に札幌で一度聴いた時のことは3年前のブログに書いた。
アバドは当時は39歳でプログラムでの写真は実に若々しい。1986-91年はウィ-ン国立歌劇場の音楽監督を務め、カラヤンの後任として1990年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督に就任して、2002年に辞任。その後はマーラー・ユーゲント・オーケストラ、ルツェルン祝祭管、モーツァルト管などを設立して若手の演奏家を育て上げた。

アバドは2014年1月に逝去したが、その20年前の東京公演の模様がNHKの収録でデジタル・コンサートホールのアーカイヴに入っていた。

公演日/1994年10月14日  会場/サントリーホール
曲目/ ムソルグスキー:はげ山の一夜、 ストラヴィンスキー:《火の鳥》組曲(1919年版)、チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調

ロシアの管弦楽曲3作品のコンサートはロシアの指揮者では珍しくないが、西欧の指揮者では珍しいかなと思った。アバドの十八番のレパートリーであったようである。映像に写るコンサートマスターのスタブラヴァ、フルートのパユ、オーボエのマイヤー、クラリネットのフックス、ホルンのドールの若々しい姿が何とも微笑ましかった。もちろん、オーケストラ全体の演奏が卓越していて魅了されたのは言うまでもない。
はげ山に集まって明け方まで大騒ぎする不気味な魔女たちの姿を描いた「はげ山の一夜」と美しい旋律で物語が綴られるバレエ音楽「火の鳥」は対照的な音楽で楽しめた。チャイコフスキーの人気の「第5番」では第1楽章でクラリネットが奏でる「運命の動機」が全楽章で使われていて印象深い。
アバドの演奏はヴィデオで観る機会が無かったので、記憶に残るヴィデオ・オンデマンドとなった。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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