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ルノー・カプソン(vn)&児玉 桃(p)

アルゲリッチ&カプソン兄弟の室内楽公演が確か15年ほど前に札幌であった気がしている。Kitaraでなくて他のホールが会場で二の足を踏んだようであった。その時からカプソン兄弟の名は覚えていた。ベルリン・フィルのデジタルコンサートでルノーの弟ゴーティエのチェロの演奏を視聴したが、ルノーのヴァイオリンを聴いたのは初めてであった。

ルノー・カプソン(Renaud Capuson)は1976年フランス生まれ。世界各地の聴衆を魅了するヴァイオリニスト。97-2000年までアバド指名のマーラー・ユーゲント・オーケストラのコンサートマスターを務め、02年ハイティンク指揮ベルリン・フィルでデビュー。ウィーン・フィル、ボストン響、ロンドン響、パリ管などとも共演。ザルツブルク音楽祭やルツェルン音楽祭などでも活躍。日本ではN響、東京フィルなどに客演。

児玉 桃(Momo Kodama)は1972年、大阪生まれだが、1歳で家族と共にドイツ移住。16歳でパリ国立高等音楽院を卒業して、国際的コンクールで優勝を重ね、91年ミュンヘン国際音楽コンクールで第2位(1位なし)。世界のトップ・オーケストラと共演。1997年Kitaraオープニング・シーリズでフォスター指揮N響で初登場以来、16年の《Kitaraのクリスマス》で井上道義指揮札響と共演してグリ―クのピアノ協奏曲を弾いた。今迄、Kitaraに5回出演でショパン、ベートーヴェンのピアノ・コンチェルトを弾いたが、12年2月札響定期で「メシアン:トゥーランガリラ交響曲」を聴いたのが強く印象に残っている。ドイツ、フランスの伝統を生かした演奏で独自の境地を開いているといわれ、メシアンに力を注いでいるが、武満や細川作品などレパートリーの広いピアニスト。

2018年3月12日(月) 19:00開演  トッパン・ホール
〈program〉
 ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ(遺作)
 フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 Op.13
 メシアン:主題と変奏
 サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ短調 Op.75
 ラヴェル:ツィガーヌ

トッパン・ホールには電車を利用する面倒を避けて、ホテルのフロントで地図を書いてもらって徒歩で出かけた。21階建ての「トッパン小石川ビル」の1・2階を使った408席の小ホール。リサイタルで使用頻度の高い評判のホール。

プログラムは全てフランス音楽。ヴァイオリン曲で、全曲の作品がフランスものとは二人ならではのプログラミングだと思った。

ラヴェル(1875-1937)の曲は遺作となっているが、作品の自筆譜の発見が1975年で、ラヴェルが22歳の頃の作品らしい。単一楽章で書かれた色彩感豊かな曲で、色がどんどん変化していく様子が目まぐるしい。

フォーレ(1845-1924)はラヴェルの師匠。1876年作の4楽章構成。第1楽章・第4楽章はエネルギーに満ちた明るい感じで、第2楽章のアンダンテは優しさあふれる美しい旋律、第3楽章のアレグロも心が高揚する感じがした。教え子に伝える基本的な曲の骨組みをラヴェルが独自に発展させて行ったのかと想像してみた。
前半2曲はそれぞれ25分程度。演奏終了後に満席の聴衆からブラヴォーの声が上がった。無駄な空間が無いようなホールで、ステージの演奏家と客席の距離感が絶妙のようであった。

デュオ・リサイタルでは珍しいメシアン(1908-92)の曲。彼が24歳の頃の作品で晩年の現代音楽の特徴はそれほど強烈ではない。22歳ころから教会のオルガニストとして活動を始めていたそうである。主題と5つの変奏が途切れずに続いた。

サンーサーンス(1835-1921)は「フランス国民音楽協会」を創設した作曲家・オルガニスト。才能に恵まれ、あらゆる分野で存在感を発揮したが、ローマ大賞は取れなかった。
曲は2楽章構成だが、2つの楽章がそれぞれ2つの部分に分かれている。交響曲第3番「オルガン付」と同じ構成。新しい形式を模索していた曲作りの時期だったのだろうと思った。

演奏会は馴染みの「ツィガーヌ」で締めくくられた。ロマの音楽をヴァイオリンの派手な技巧で表現した極めて印象的なメロディを持つ曲で最後を飾った。もちろん、万雷の拍手が会場を包んだ。
小柄ではあるが端正な容貌を持ち、ヴァイオリンの艶やかな音色と完璧なテクニックを共有するカプソンの魅力が溢れていた。ピアノの児玉は度々カプソンとも共演して息の合ったコンビで存在感の大きさを示した。

アンコール曲は2曲。①ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ より “第3楽章” ②マスネ:タイスの瞑想曲。
作曲家の流れも解るプログラムに続いて、アンコール曲も全てフランスの作曲家の作品で感服した。
ホテルまでの道順が完全に分ったので、夜道は不安が無く、足取りも軽くて往路より10分ほど早く30分弱でホテルに着いた。


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東京へのクラシック音楽鑑賞の旅(ニュヨーク・フィル、他)

ニューヨーク・フィルハーモニックの来日公演が発表になった半年前から東京公演を聴きに行く予定を立てた。3月中旬で当日の飛行機が札幌から順調に飛ばないことも考慮して、前日にも違うコンサートを入れておいた。
自分一人だけの旅行では2泊3日の旅程を組み、今までは1回の旅で、11年5月は4つ、12年11月は2つの演奏会に出かけた。今回は公演期日と演奏家のプログラムを勘案してトッパン・ホールでのルノー・カプソンの室内楽を選んだ。カプソンは人気の高い世界的ヴァイオリニストで10月時点で残りのチケットが3枚しかない状況であった。
飛行機のチケットは旅割で3ヶ月前には購入していた。東京在住の娘が旅行の際に泊まらせてくれる話はあったが、ウィークディのコンサートは終了時間が21時を過ぎ、夜中の住宅街の移動は大変なので遠慮した。いつも、東京での滞在はホテルに決めている。1月に入ってホテルはトッパン・ホールに比較的近い文京区のホテルに決めた。今迄は新宿、品川、浅草を拠点にして空いてる時間を観光に使っていたが、今回は歩き回るのは東京ドーム周辺だけにしてホテルで休む時間を多くとる予定にした。

3月12日の出発の前に、書道に励んでいる妻が昨年と同様に全国規模の「創玄展」に入賞して、急遽、7日に東京に出かけた。応募を重ねて目出度く卒業となり、創玄展会員の資格を得て一人前の書家になった。ハッピーなことなので止むを得ないが、妻に頼った生活をしていると、一人で一週間も過ごすのは何かと不便である。普段の有難さを感じる時でもある。

この年齢になって一人で東京都内を動き回るのは大変なことを自覚した。サントリーホールにも数回は出入りしているが、ホール周辺の通りの様子も変わった。主要な地下鉄駅には何本もの線があって、乗り換えが大変である。同じことを繰り返して慣れると良いが、大江戸線は地下深くを通っていているのは知っていたが、南北線の後楽園駅で降りた電車は地上に出るまで歩道も長く、6つか7つのエスカレーターを上るのにはびっくりした。東京は地下鉄網もどんどん増えて、街の風景も変わっていく様子に驚く。

文京シビックセンターの25階展望台ラウンジから見下ろす東京都内の街並みも観れた。東京ドーム内の「野球殿堂博物館」に入ってラジオ放送時代に活躍したプロ野球の選手名を多く見て懐かしい想いをした。正岡子規が学生時代にベースボールに夢中になり、一時、名乗った“ノボル”から“野球”という語が生まれたという説(?)も思い出して懐かしかった。大谷翔平の写真も入って、館内には新しいものも加えられているようである。館内では【“ミスタープロ野球”プロ入り60周年記念 昭和、平成と長嶋茂雄】企画展もあった。これまでに殿堂入りした人物は平成30年度の松井秀喜、金本知憲、原辰徳、瀧正男を含めて201人になったという。

昨日は創玄展の審査会員や入賞者の作品が展示されている国立新美術館に立ち寄って、中野北溟先生や妻の作品など一部の作品を鑑賞してカメラに収めた。東京都美術館は古くからあるが、国立新美術館は文字通り新しくて立派である。

この旅で何十人もの人に電車の乗り場や地下通路を尋ねて、親切に対応していただいた。通勤に利用していると思われる人を中心に訊いたのだが、快く応じて下った皆さんに感謝したい。

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ラトルとバレンボイム(p)がバルトークのピアノ協奏曲第1番で共演

1・2月ベルリン・フィル定期公演の出演が予定されていた小澤征爾の海外公演にドクターストップが掛かったり、ズービン・メータの体調不良もあってキャンセルが続いて代役がステージに上がっている。近年は高齢の指揮者の活躍が目立ち、彼らが活躍を続けていることは喜ばしい限りだが、事務局も健康第一にして若手の登用を真剣に考えるべき時期ではないか。若手の優秀な指揮者がどんどん育っていると思う。メータのキャンセルが2回あったが、そのうちの1回にダニエル・バレンボイムの息子ミヒャエルがヴァイオリニストとして出演し、「シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲」を弾いた。ハイフェッツが1940年に依頼された曲を断った経緯があり、前衛的で難曲なようだが、父親設立のウエスト=イースタン・ディヴァン管のコンマスを務めるミヒャエル・バレンボイムが力演した。

私が注目したのは翌週のラトル指揮ダニエル・バレンボイムが共演するプログラムだった。バレンボイムがピアニストとして出演するとは想像もしていなかった。バレンボイムやアシュケナージは大好きなピアニストで彼らのピアノのCDはかなり所有している。バレンボイムがベルリン・シュターカペレを率いてKitaraに登場したのが2005年。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を弾き振りしてくれた。とにかく嬉しかった忘れられない思い出がある。
70年に彼の妻でチェリストのデュプレと共演したバレンボイム指揮シカゴ響の「ドヴォルザークのチェロ協奏曲」は気に入りのCDだが、数年前に当時の映像付き録音をクラシック・バーで観た時の感激も一入であった。

前置きがかなり長くなったがCDでしか殆ど聴いたことがなかったバレンボイムを映像付きで、顔の表情、鍵盤上の指の動きなどを高画質で観れる期待感は心が踊るほどであった。3月に入ってバレンボイムの出演場面を2度視聴した。 

Berlin Philharmoniker , Sir Simon Rattle (connductor), Daniel Barenboim (piano)
〈Program〉
Antonin Dovorak: Slavonic Dances, op.72
Bela Bartok: Piano Concerto No.1 Sz83
Leos Janacek: Sinfonietta op.60

今回のプログラムはチェコ、モラヴィア、ハンガリーの作品を集めた。Kitaraにはチェコ、ハンガリーのオーケストラの来演が多いのでスラヴ舞曲第1集、第2集各8曲で全16曲のうち数曲が演奏されることは多い。一番多いのは単独でアンコール曲に使われる。
ラトルは第2集、作品72を昨年のジルヴェスターコンサートでも一部取り上げたが、第2集8曲全曲を一気に演奏するのは珍しいと思った。第2集はチェコ以外のスラヴ地域の舞曲を集め、内面的でメランコリックな雰囲気も表現されているようであった。

バルトークのピアノ曲はよく知らなかったが、一年前のデジタル・コンサートで聴いたブロムシュテット&アンドラーシュ・シフによるピアノ協奏曲第3番を思い出した。ピアノが打楽器のような役割を果している印象を受けていた。バルトークは管弦楽作品でも従来にない新しい試みをしたり、打楽器に焦点を当てた作品も書いている。
バレンボイムはブーレーズ指揮べルリン・フィルと1964年にこのピアノ曲で共演してるというが、今回が54年ぶりとのこと。ピアノ演奏は十数年前とは外見もそれほど変わらず堂々とした迫力のある演奏であった。耳を通してだけでなく、演奏者を観ながら聴くデジタル音楽の素晴らしさを堪能した。気に入ると数回視聴できる良さもある。

スメタナやドヴォルザークの作品にはボヘミアの情感と自然が溢れるが、モラヴィア地方に生まれたヤナーチェクには違う風土が感じれられる。ラトルは最後のシーズンにヤナーチェクの「利口な女狐の物語」を取り上げ、今回は「シンフォニエッタ」。シンフォニエッタは“小交響曲”の意味だが、4管編成の大規模なオーケストラ編成。9本のトランペットに加えて、バス・トランペットとチューバが各2本。村上春樹の小説に出てきて、曲が一気に有名なった。管楽器の編成が大変なので、コンサートで聴く機会は少ない。
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札響名曲シリーズ2017-18 ~輝きと躍動のボレロ~(渡邊一正&中川英二郎)

シーズン5回開催の〈森の響フレンドコンサート〉も今回が2017-2018シーズン最終回。定期演奏会は月2回、年10回開催であるが、この札響名曲シリーズは各1回なので満席状態になるのが普通である。今回はトロンボーンの名手が登場して管楽器の活躍が多いプログラムでいつもより学生の姿が多く目についた。

2018年3月10日(土) 14:00開演  札幌コンサートホール大ホール
指揮/渡邊 一正   トロンボーン/中川 英二郎   管弦楽/札幌交響楽団

渡邊は1966年生まれ、96年から東京フィル指揮者に就任し、15年から東京フィル・レジデント・コンダクター。広島響の正指揮者(1995-2002)を務め、N響、東京フィル、日本フィル、九州響各定期などに出演。サンクトぺテルブルク響へも客演。札響とは1992年に初共演して以来、ほぼ毎年のように札幌や道内各地での演奏会を指揮しているという。私自身が彼の指揮ぶりを観たのは14年に続いて2回目。
中川は日本を代表する世界的トロンボーン奏者。15年札響特別演奏会〈シンフォニック・ブラス2015〉で金聖響と共演。

〈Program〉
 バーンスタイン:「キャンディード」序曲
 シルクレット:トロンボーン協奏曲
 ビゼー:「アルルの女」組曲より5曲
 ラヴェル:ボレロ

2018年はバーンスタイン生誕100年に当たり、PMF2018ではオール・バーンスタイン・プログラムが五嶋みどりも出演して開催予定。札幌ではPMFでバーンスタインの曲目が演奏される機会も多くて人々に親しまれている。
ティンパニーの強打、金管のファンファーレで始まる躍動感に溢れた調べが聴衆の高揚感を掻き立てた。

吹奏楽関係の人にとっては有名な音楽家なのだろうが、初めて耳にする名。プログラム・ノートによれば、ガーシュインの「パリのアメリカ人」を初録音したのがシルクレット(1889-1982)だそうである。彼はクラシックとジャズの垣根を越えて活躍した音楽家で、数々の映画音楽やミュージカルの制作・録音などで活躍したという。
曲は3楽章構成。中川はトロンボーンを自由自在に扱って、聴衆をスペクタクルの音の世界に誘った。当然ながら、ジャズの雰囲気も醸し出された。
演奏終了後に歓声が起こって、聴衆の盛大な拍手に応えてのソリスト・アンコール曲は「チャーチル:いつか王子様が」。

ビゼーは劇音楽《アルルの女》を27曲にして書いたが、のちに「第1組曲」に編曲した。この組曲が大評判になったが、「第2組曲」は
彼の死後に友人のギローによって完成された。2つの組曲はそれぞれ4曲編成。
今回演奏されたのは5曲。「第1組曲」第4曲“カリヨン”+「第2組曲」。鐘の音を模倣した陽気な音楽に続いて、「第2組曲」が“パストラル”(牧歌)、“間奏曲”、“メヌエット”、“ファランドール”。平和な農村に住む男がアルルの女に失恋して、祭りの日に村人がファランドール舞曲を踊って楽しんでいる最中に、高窓から身を投げて命を絶つ悲劇のストーリー。
木管が奏でる情熱的な旋律とタンブリン&太鼓のリズムがクライマックスへと向かう。悲劇が起こっていると想像して聴いている人がどれほどいるであろうか。これは実際に起こった出来事に基づいて書かれた劇と言われている。

ラヴェルの5曲のバレエ音楽の中で最後に書かれて最大の傑作となった「ボレロ」。1990年に観たジョルジュ・ドン&東京バレエ団の舞台が忘れられない。結果的に、このバレエ音楽の実演とフィギュアスケート(*ペアor アイスダンス)のスポーツ大会で曲の魅力にはまって、後にコンサートで音楽を度々聴くようになったように思う。
小太鼓と弦のピッチカートで始まる演奏が延々と続き、フルート・ソロに始まって、普通はクラシックでは使われない楽器も加わって小気味良い美しい旋律がホールに響き渡る。楽器の組み合わせも変わって、音楽が厚みを増して総合奏に至ってフィナーレ。管弦楽の魔術師ならではのオーケストレーションの曲はラヴェルからしか生まれないような作品である。

渡邊一正の名は以前から知っていた。新国立劇場で指揮を重ねて、オペラ、バレエ音楽が得意な様子がうかがえた
万雷の拍手の応えてのアンコール曲も「ハチャトゥリアン:バレエ音楽《ガイーヌ》より第3曲“レズギンカ”」。
今後は札響定期演奏会での出演も期待される。
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中木健ニ(チェロ)X松本望(ピアノ)デュオ・リサイタル

中木健ニ(Kenji Nakagi)の名は六花亭札幌本店に「ふきのとうホール」が落成してオープニング・フェスティバルが2015年7月に約1ヶ月間にわたって開催された時のプログラム一覧で知った。25回のコンサートのうち7回聴いたが、彼が出演するコンサートには行っていなかった。中木は東京藝術大学を経て、パリ国立高等音楽院、ベルン音楽大学の両校を首席で卒業。05年ルトスワフスキ国際チェロ・コンクール第1位など受賞歴も多く、10-14年フランス国立ボルドー・アキテーヌ管首席奏者を務める。帰国後、ソロ、室内楽活動やオーケストラへの客演などで活躍を続け、現在は紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー、東京藝術大学准教授。

松本望(Nozomi Matsumoto)は私が勤務した高校の卒業生。彼女のクラスを担当したことは3年間なかったが、同じ担当学年の優秀な生徒で顔は覚えていないが名は知っていた。彼女は東京藝術大学の作曲科に進学し、高校合唱部演奏会ではピアノを弾いていた。卒業後も何度か卒業生として合唱部演奏会には出演していた。彼女が作曲した合唱曲が最優秀作品に選ばれたり、彼女の作品が全国合唱音楽コンクールの課題曲になったことは承知していた。「音楽の友」誌で一部の音楽評論家から高い評価を受けて、ピアニストとして活躍している様子も分かっていた。大学院修士課程修了後、パリ国立高等音楽院で学んでいたことは後で知った。パリ音楽院ピアノ伴奏科を首席で卒業し、デュオ、トリオの国際コンクール優勝を重ねた実績は喜ばしい限りである。現在は作曲家・ピアニストとして活動し、国立音大や洗足学園音大で後進の指導にも当たっている。
今回のコンサート開催を知ってチケットは早くから購入していた。

2018年3月7日(水) 7:00PM 開演  ふきのとうホール
〈Program〉
 ベートーヴェン:魔笛の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46
 メンデルスゾーン:歌曲《歌の翼に》op.34-4(チェロとピアノのための編曲版)
 メンデルゾーン(ピアッティ編):ピアノのための無言歌より《狩人の歌》 op.19-3
 メンデルスゾーン:チェロとピアノのための無言歌 ニ長調 op.109
 R.シュトラウス:チェロとピアノのためのソナタ へ長調 op.6
 ドビュッシー:チェロとピアノのためのソナタ
 フォーレ:チェロとピアノのためのソナタ第2番 ト短調 op.117
 メシアン:世の終わりのための四重奏曲より《イエスの永遠性への賛歌》

ベートーヴェンのチェロ・ソナタのCDはアルゲリッチ&マイスキーの演奏で持っているが、その中に「魔笛の主題による2つの変奏曲」が収録されていた記憶があった。「変奏曲」は購入時に1度聴いたきりだったと思うが、この機会に聴いておいた。歌劇《魔笛》のアリアの主題と変奏曲で生で聴くと素朴さと優しい愛らしさが強く感じられた。

メンデルスゾーンのピアノ曲で知られる有名な「歌の翼に」と「狩人の歌」にチェロが加わっても何の違和感もなく聴けた。「チェロとピアノための無言歌」は初めて耳にした。

前日に聴いたR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタの魅力は素晴らしかった。十数年前までは交響詩や特定のオペラに親しめずに苦手な作曲家に入っていたシュトラウスだったが、近年は彼の才能の豊かさに驚いている方である。チェロ・ソナタもヴァイオリン・ソナタと同様に伝統的な急・緩・急の3楽章構成の曲で、2つの楽器が対等に渡り合う演奏は歌心に溢れて躍動感もあり非常に楽しく聴けた。コンサートのハイライトになった。

ドビュッシーは晩年に6曲のソナタ集を計画したが、完成せず3曲で終わった。第3曲のヴァイオリン・ソナタが彼の最後の作品で何度かコンサートでも聴いているが、第1曲のチェロ・ソナタは今回初めて聴いた。この曲を聴くと、ドビュッシーが現代作曲家であったことがよく判る。今年はドビュッシー没後100年に当たる。人気の作曲家であるが、今まで余り聴く機会のない作品も今後は聴けると良いと思っている。

フォーレはラヴェルを陰から支援し、ラヴェル事件の後にパリ音楽院長を務めたことでも知られるが、彼の生涯は詳しく知らない。彼の小品「夢のあとに」、「エレジー」、「シチリアーノ」などはチェロ名曲集に入っている。彼の美しい旋律が特徴のピアノ曲集は持っているのだが、馴染みのある特定のメロディの曲は残念ながら知らない。今回の曲のメロディも一貫して美しい曲の特徴が出ていた。フォーレはベートーヴェンと同じように難聴に苦しんでいて、この作品も殆ど耳が聞こえない状況で書かれたそうである。彼の生命力の強さと音楽への深い想いを知らされた。

20世紀最大の作曲家のひとりオリヴィエ・メシアンの代表作は昨年12月末のベルリン・フィルの“Late Night”のコンサートで演奏されて、私の記憶に新しい。第二次世界大戦で捕虜となったメシアンはドイツの収容所で音楽を演奏する自由を与えられた。収容所内で知り合った3人の音楽家と知り合い、彼らが演奏できる楽器ヴァイオリン、チェロ、クラリネットとピアノで演奏会を開いた。
曲は8楽章構成。全員合奏のほかにクラリネット独奏、チェロ独奏、ヴァイオリン独奏も入る。「イエスの永遠性への賛歌」は第5楽章で旋律はチェロが担当して、ピアノは一定のリズムで和音を刻む。ピアノが打楽器のような技法で演奏したので12月末のラトルの演奏が印象に残っていた。こういう難しい曲は目で見ながら耳から聴くと、その良さが解る気がした。優しさと神々しさに彩られた音楽が紡がれた。

パリ国立高等音楽院でメシアン夫妻に教えを受けた日本人は多いと思うが、2人が室内楽曲の最後にメシアンを演奏した選曲も十分に理解できた。9日には東京のHakujuホールでも演奏会があるが聴衆の喝采を浴びることは間違いないだろう。特に玄人受けするプログラミングである。

中木は室蘭出身と知って親近感が増した。演奏中は目を閉じて一心に音に集中して楽器を弾き続ける姿は極めて印象的であった。演奏後に、ニコっとする姿も素敵だった。松本も総じて柔らかなタッチで表現力豊かな安定した演奏が印象的だった。R.シュトラウスの演奏では作曲家の力強い将来への憧れと想いがダイナミックに表現されて秀逸であった。いろいろな作曲家に対応できる幅の広い演奏技術を身に着けているのが素人にも分かった。若々しい端正な容姿も魅力的だった。

聴衆の盛大な拍手を受けて、中木が挨拶すると思ったが、地元出身の松本が初めての札幌のコンサートで挨拶して、アンコール曲の演奏があった。ブルッフの曲と聞こえたが、確かでない。

※さっぽろ雪まつり期間中に時計台に来館したフランス人の女性と音楽の話をした時に、演奏会で聴くフランスの作曲家の名を訊かれ、ラヴェルやドビュッシーなどのほかにメシアンの名を挙げたら知らないと言われた。彼の有名な曲「トゥランガリラ交響曲」のことを話しても通じなかった。意外に思ったと同時に、日本で音楽が好きな人でも黛敏郎、武満徹、細川俊夫の名を知らない人がいても不思議ではないと思った。
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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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