福間洸太朗のマイアミ国際音楽祭での演奏

数日前に「Twitter のハイライト」ということで私のメールに福間洸太朗(KOTARO FUKUMA)が2017年2月19日に米国フロリダ州マイアミ音楽祭に参加した時の様子がyoutubeで流され、福間のtwitterが届けられた。3月1日に電波にのり拡散し始めているようだ。「ショパン:バラード第1番」を早速聴いてみた。

福間は1982年、東京生まれ。都立武蔵高校卒業後、01年パリ国立高等音楽院に学んでディプロマ取得後、ベルリン大学・同大学院でも学んだ。14歳でジーナ・バッカウアー国際コンクールに入賞するなど、1998年にはPTNAを含む4つの国内コンクールで優勝。2003年クリーヴランド国際ピアノコンクールで日本人初優勝の快挙が注目を集めた。ベルリン在住で国際的に活躍している将来を嘱望される中堅ピアニスト。
今から5・6年前にシューマンのピアノ曲や室内楽曲を中心にCDをかなり買い求めた。その内の一枚が2004年カナダで録音された〈期待の新進演奏家シリーズ/福間洸太朗(ピアノ)〉。NAXOSのシューマン。収録曲が「アベック変奏曲」、「8つのノヴェレッテ」、「3つの幻想的小曲」。力任せに弾かない演奏でシューマンの魅力的なロマンティシズムに溢れた調べを時たま耳にする。

札幌で一度は聴きたいピアニストが何人かいるが、福間はその一人である。丁度よい機会だと思って聴いて観た「バラード1番」の後に「スメタナ(福間編):モルダウ」、「ショパン:英雄ポロネーズ」、「グリーグ:5つの抒情小品」。40分程度の演奏に対するマイアミの聴衆の熱狂的な反応もあって盛り上がった満足のいくコンサート。好感度の良いピアニストだと思っていたが、堂々たる演奏に日本を代表する若手の一人としてアメリカでの知名度も高いようであった。予定せずに急に耳にしたが、ホールの迫力が伝わって来る聴き方ができて予想外の収穫を得て嬉しい気持ちになった。

毎年、札幌で聴いているピアニストは小山実稚恵、外山啓介、及川浩治、近藤嘉宏である。札響との共演などで聴いてはいるが、小菅優、田村響、北村朋幹などの若手のリサイタルは是非聴きたい。金子三勇士、萩原麻未などはなかなか聴く機会が無くて残念である。今一番楽しみにしているのが反田恭介のリサイタル。8月3日の札幌公演が待ち遠しい。

川畠成道ヴァイオリン・リサイタル2017

川畠成道が毎年この時期にKitaraでリサイタルを開催するのが恒例になった。3月は聴きたいコンサートが少なくて毎年4回ほどである。川畠のリサイタルを初めて聴いたのが2001年、14年からは4年連続で今回が7度目であった。小ホールで5000円のチケット料金は少し高めだが、公演の利益の一部分を社会福祉法人に寄付するチャリティ・コンサートとなっているので、ここ数年は毎年聴きに来ている。

2017年3月2日(木) 18:30開演  札幌コンサートホール小ホール

〈Program〉
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 Op.100
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004
 メンデルスゾーン:歌の翼に 作品34-2
 ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番
 ファリャ:スペイン舞曲 第1番 オペラ“はかなき人生”より
 バルトーク(セイケイ編):ルーマニア民族舞曲
 グノー:アヴェ・マリア
 モンティ:チャルダッシュ
 
ブラームスは中学校の音楽の教科書に出てきた厳めしい顔の写真の影響もあってか、クラシック音楽に夢中になってからも彼の作品に親しんだのはヴァイオリン協奏曲だけであった。今では4曲の交響曲や2曲のピアノ協奏曲を含め、彼の重厚な曲が気に入っている。3曲しか書いていないヴァイオリン・ソナタも全て聴きごたえがある。
「第2番」も全体的に抒情的で美しい旋律に溢れている。とてもメロディアスな曲で聴いていて心地が良かった。

バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータはギドン・クレーメルとヒラリー・ハーンの演奏で親しんでいる。演奏者によって曲の長さが違うが「シャコンヌ」は5分の差があるのに改めて気づいた。ドイツ、フランス、スペイン、イギリスの様々な舞曲で構成された4楽章のあとの終楽章として長大な舞曲「シャコンヌ」が続いた。少し短めで全体が25分の演奏。冗長に陥らないで、聴き手に踊り子の姿を想像させる弾き方の工夫を凝らしたようである。他のヴァイオリニストとは違う川畠の特徴が出た演奏だったように思う。
第5楽章の“Chaconne”はピアノ曲に編曲され、ピアノ・リサイタルで特にブゾーニ編を弾くピアニストが最近は多い。

川畠は前半のプログラムに毎年ヴァイオリン・ソナタを入れて、後半はヴァイオリンの小品を組んでいる。
後半1曲目は彼のデビューの折に取り上げた作曲家メンデルスゾーンの作品の中から選ばれた曲。「歌の翼に」はハイネの詩に基づく歌曲が原曲で、彼の歌曲の中で最も有名な作品。格調のある整ったメロディで様々な楽器に編曲されて親しまれている。ピアノ曲として聴く機会が多い。この曲は川畠自身にとってデビュー間もない頃に抱いた将来の期待と不安の心情を思い出すものになっているようである。

続く3曲は舞曲。マイクを使って3つの舞曲の説明があった。舞曲と言っても、曲に合わせて踊るのは難しく、バッハの曲と同じように器楽曲として作曲された。

「ハンガリー舞曲第1番」はピアノ連弾用として書かれ、のちにピアノ独奏、管弦楽用に編曲された。ヴァイオリン曲はヨアヒムが編曲し、ピアノとのやり取りが面白い。ハンガリーのジプシー(ロマ)の香り高いダンスで哀愁に満ちたメロディが心に響く。
「スペイン舞曲」はスペイン風のリズムやメロディ、生き生きとした色彩感豊かな明るい曲。
「ルーマニア民族舞曲」は民俗音楽収集家として名高いバルトークが若い時に書いた傑作。「棒踊り」、「腰帯踊り」、「足踏み踊り」、「角笛踊り」、「ルーマニア風ポルカ」、「速い踊り」の短い6つの舞曲が演奏された。今までに数回聴いた程度で、タイトル以外は親しんでいないが面白かった。

グノーの「アヴェ・マリア」は川畠にとって思い入れの強い曲となっていて、以前の演奏会で聴いてブログに書いた。彼が8歳の時にロスアンゼルスで命に係わるスティーヴン・ジョンソン症候群で皮膚障害と視覚障害に陥った時に、マリアンという名の人が献身的に彼の面倒をみた。その後、20年ぶりに訪れたLAでのコンサートで演奏した曲が「アヴェ・マリア」。この曲は彼を支えてくれた多くの人々への感謝の気持ちを込めて演奏する定番になっている。

モンティの曲はこの1曲しか聴いたことがない。しかし、今日では誰もが知っているメロディ。ハンガリーのロマの人々の哀しみを歌った第1部と器楽的な技巧を織り込んだ第2部から成る。ジプシー音楽の代表的な形式チャルダッシュ(Csardas)(*チャールダーシュと表記されることが多いと思うが、外国語を日本語に表記するのは難しい。)が曲のタイトルになっている。演奏者によって様々な即興演奏が可能ということで、川畠成道らしい曲として聴けたのも興味深かった。

2001年から毎年のように北海道で演奏会を開いているが、今回のピアニスト、佐藤勝重は札幌では初共演だと思う。パリ国立高等音楽院、パリ・エコール・ノルマル音楽院の高等演奏家課程を卒業。ソフィア国際ピアノコンクール優勝など、国内外のコンクールで入賞して数多くのコンサートに出演。ソロCD2枚、7枚の室内楽CDをリリースしている新進気鋭の若手ピアニスト。5月には東京で川畠とピアノ三重奏曲、8月には旭川で川畠とのジョイントコンサートが予定されている。

アンコール曲は3曲。①ショパン:ノクターン 第20番 嬰ハ短調  ②ディーニク:ひばり(*昨年のアンコール曲としても披露したが、鳥の鳴き声を変化させて聴かせる技巧の要る速い曲)  ③映画音楽「スマイル」(チャップリンの映画「モダン・タイムズ」より)
(*3年前の映画音楽特集で寺島睦也編で演奏された。)
1曲目のノクターンは毎年定番のアンコール曲と述べて演奏したが、私自身の記録では少なくとも14年以降は初めてでありピアノ作品と同様に心に染み入る演奏で映画「戦場のピアニスト」を思い出した。

川畠成道の視力もすっかり回復して、演奏にもトークにも渋みが出ているのは何より喜ばしい。来年もまた足を運ぼうと思う演奏会となった。

METライブビューイング2016-17 第5作 グノー《ロメオとジュリエット》

MET2011-12シーズンで上演された《ファウスト》(カウフマン主演)に次ぐグノー作品。前回は文豪ゲーテの作品のオペラ化。シェクスピア没後400年のシーズン中の本作のMET上演はタイムリーな企画だろう。原作は文学作品としてだけでなく演劇、映画などを通してストーリーを知らない人がいないくらい有名である。“Romeo and Juliet”はコンサートではチャイコフスキーの「幻想序曲」、プロコフィエフの「バレエ音楽」で聴くこともある。オペラ作品として観るのは初めてでないかと思う。メトロポリタン歌劇場(MET)では11年ぶりの新制作上演という。
最高の人気と実力を兼ね備えたディアナ・ダムラウとヴィットリオ・グリゴーロという二人の花形歌手の主演とあって観ることにした。グリゴーロは2年前の《ホフマン物語》で魅力的な演唱を披露した。ダムラウの演唱を聴くのは今回が初めてであった。

バートレット・シャーの新演出による初演は2008年にザルツブルク音楽祭で行われ、スカラ座でも上演済み。日本の劇場と違ってヨーロッパの歌劇場やMETは舞台の奥行きがある。バルコニーを含む三層構造の建物を囲む中庭を中心にした舞台装置で小道具を効果的に使用していた。舞台転換を大々的に行わずに全5幕の出し物を休憩1回を挟んで前後半の2幕ものにした。結果的に歌手たちを中心にしたドラマが展開された印象が強く浮き出た。
18世紀、イタリア・ヴェローナの舞台設定。フランス語上演。

大物二人の共演が何といっても素晴らしかった。最初から最後まで情熱的な演唱。ティーンエイジャーとしての役柄に不自然さを感じさせない堂々たる舞台。若さ溢れるロマンティックな場面から、意志を強く持ち愛を貫く若者の姿を二人ともに見事に演じきった。アリアをはじめ愛の二重唱などでの息のあった歌唱は圧倒的でドラマに迫真性があった。3時間近い上演で声量も衰えない熱演、熱唱の舞台に感動した。

グリゴーロは前回も良かったが今回の方が気に入った。ダムラウはインタヴューで「“椿姫のヴィオレッタ”より“ジュリエット”が好き」と答えて今回の初演を楽しんでいる様子だった。

指揮を行ったノセダは1964年生のイタリアの指揮者。97年マリインスキー劇場管首席客演指揮者、02年英国マンチェスターのBBCフィル首席指揮者、07年トリノ王立劇場音楽監督にも就任。MET、スカラ座、ロイヤル・オペラなど欧米の大劇場でも活躍し、世界のメジャー・オーケストラへの客演も多い世界的な指揮者。N響への出演もあり、テレビ中継でも見たことのある馴染みの顔を久しぶりに見た。

プロローグが管弦楽による激しい嵐を思わせる序奏で始まり、キャプレット家とモンターギュー家の憎しみを連想させた。合唱が悲劇のあらましを説明したのも興味深かった。オーケストラは毎回そうだが、ノセダが歌手たちを引き立てる役目に徹していた。オペラのフィナーレが原作と違っていた。最後に二人で会話をしながら、“神様、私たちをお許しください”と言って一緒に息絶えたシーンはとても印象的な場面となった。



新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第36回札幌

文化庁・日本演奏家連盟・札幌交響楽団が主催するプロジェクトとして昨年になって初めて知ったオーケストラ・シリーズ。平成28年度オーディションで選ばれた5名の新人演奏家が札響と協演するコンサート。時間があれば瑞々しい若者の演奏を耳にするのも楽しい。
円光寺雅彦は45歳ごろの98ー02年に札響正指揮者を務めて若手の指揮者として活躍してKitaraで聴く機会も比較的多かった。国内オーケストラへの客演も多く、現在は名古屋フィル正指揮者、桐朋学園大学院大学特別招聘教授。彼の指揮ぶりを見るのは今回が8回目。

2017年2月16日(木) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 円光寺 雅彦    管弦楽/ 札幌交響楽団

【1部】
 田中 望末(ピアノ)
   メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番 ト短調 作品25
 吉田 真樹子(ソプラノ)
   ビゼー:歌劇「カルメン」より “ミカエラのアリア”、“不安にさせるものなどない”
 三輪 主恭(バリトン)
   ベッリーニ:歌劇「清教徒」より “あぁ! 永遠に私はあなたを失ってしまった”
   ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」より “私の最後の日”
【2部】
 佐藤 友美(フルート)
   ライネッケ:フルート協奏曲 ニ長調 作品283
 島方 瞭(ヴァイオリン)
   ドヴォルジャーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53

昨年に続いて2回目の『新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ』を聴いたが、さすが厳しいオーディションに合格して選ばれた演奏家だけあって満足度の高いコンサート。プロを目指す若者のレヴェルの高さと音楽の広がりを感じた。今までのシリーズで2人の札響楽団員が出演していることからもレヴェルの高さが推し量れる。
公演冊子によると、札幌のオーディション参加者は30名(ピアノ10名、声楽6名、弦楽器4名、管打楽器10名)。

声楽の2名は学業を終えて、プロとして音楽活動を展開しているようである。歌手活動を続けるには声を磨くだけでなく、演唱に耐えれる体力も必要らしい。海外のオペラ歌手の容姿を見慣れるとスタイルにこだわっていられない気がする。
三輪はステージ・マナーを含めて堂々たる歌声で聴衆を魅了した。将来を嘱望されるバリトン歌手への成長が大いに期待される。吉田の歌も良かったが、オペラの主役のアリアを歌ってくれた方が聴衆の心に響くのかなと感じた。

「ライネッケ:フルート協奏曲」は昨年のコンサートで一度耳にしたこともあって、聴きやすかった。プロと同レヴェルの熱演で相当な実力の持ち主。フルートという楽器の魅力が伝わった。

メンデルスゾーンとドヴォルジャークの協奏曲は久しぶりで耳にする。最近の演奏会でも耳にすることもなく、自宅でCDを聴くことも暫くなかった。それだけに新鮮な気持ちで聴けた。
コンサートの最初に登場した田中は溌溂とした演奏で切れ目なく続く楽章を力強く引き切った。メンデルスゾーンは多方面にわたって才能を発揮したが、ピアノ曲では他の作曲家のような特徴が読み取れない。単純で爽やかで、整然としたスタイルで書かれているように思った。ピアノ協奏曲としてもっと変化に富んだ曲の方が味わいがある。技量は示せる曲ではあるが、聴く者の心に響く曲として少々物足りないものを感じた。

コンサートの取りを務めた島方はドヴォルジャークが残した唯一のヴァイオリン協奏曲を熱演した。正に満を持して披露した演奏は圧巻であった。メロディメーカーとして秀でたドヴォルジャークの美しい旋律、ボヘミアの民俗音楽に満ちたスラヴの音楽的魅力が満喫できる曲。演奏終了後にはブラヴォーの声も上がった。ホルンの響きとともに演奏する場面が何度かあって特別な感慨もあった。(*父と子の共演かなと類推したが確かではない。)
桐朋学園大学1年在学中で今後の活躍が楽しみである。

5人の演奏家にはオーケストラをバックに演奏した喜びを大切にして今後の一層の精進を期待したい。

※メンデルスゾーンのピアノ協奏曲には思い出がある。2002年5月にぺライアがアカデミー室内管を率いて来札した折に、演奏会終了後のサイン会が小ホールのエントランスの廊下で行われた。(*大ホールのホワイエが10時には閉められるのでサイン会の会場が移された。) その時に「バッハ:ピアノ協奏曲第1・2・4番」と「メンデルゾーン:ピアノ協奏曲第1・2番」の2枚のCDを購入し、丁寧に書かれたフルネームのサインをもらって嬉しい対応があったのが今でも忘れられない。その感激を5年前のブログに書いた。

※ドヴォルジャークのヴァイオリン協奏曲のCDはブダペスト祝祭管弦楽団が諏訪内晶子とKitaraで演奏会を開いた2000年5月に買い求めた。イヴァン・フィッシャーとゾルタン・コチシュが設立したオーケストラ。コンサートで諏訪内のCDを買ったが、サインはフィッシャーのものだった。(:*最近のブログではコチシュとハンガリーに関しての記述が偶々続いている。)

記憶をたどって昔のプログラムを読み返すのも楽しみになっている。暇な時間があるからできることなのだろう。

リスト音楽院教授陣(M・ペレーニ他)による第20回記念ガラコンサート

〈第20回リスト音楽院セミナー〉
札幌コンサートホールが1997年の開館以来、毎年開催しているリスト音楽院セミナーが20周年を迎えた。セミナーの折に、これまでピアノやチェロの教授のデュオやリサイタルが開かれてきた。セミナーのボランティアとして7・8年前に教授陣や受講生のための受付として2回ほど活動したこともあり、彼らのリサイタルも何回か聴いたことがある。
昨年はミクローシュ・ペレーニのチェロ・リサイタルを久しぶりに聴く予定が体調不良で断念せざるを得ず残念至極であった。昨年2月は7回予定のコンサート鑑賞が2回だけに終わった。今年は慎重を期して15日と16日の2回のコンサートのチケットは数日前に購入した。

2017年2月15日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

ピアノ/ シャーンドル・ファルヴァイ、 イシュトヴァーン・ラントシュ
チェロ/ ミクローシュ・ペレーニ、   ハープ/ アンドレア・ヴィーグ

二人のピアニストは各々リスト音楽院に学び、ラントシュは94-97年、ファルヴァイは97-2004年にわたってリスト音楽院学長を務めた。彼らは演奏活動と教育活動の両面で活躍し、コンクールの審査員も務めている。ヴィーグは13年11月よりリスト音楽院学長に就任している。
ペレーニは今や世界のトップ・チェリストとして知られ、近年は毎年のように東京でリサイタルを開催している。80年よりリスト音楽院教授。07、09、11年に続いて6年ぶりに彼の演奏を聴いた。

〈Program〉
 J.S.バッハ(コダーイ編曲):前奏曲とフーガ ニ短調 BWV539 (チェロ、ピアノ)
 シューベルト:即興曲 変ロ長調 作品142-3
         即興曲 変ホ長調 作品90-2 (ピアノ・ソロ)
 ワルター=キューネ:チャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」
                       の主題による幻想曲(ハープ・ソロ)
 コダーイ:ハンガリーのロンド(チェロ、ピアノ)
 ドビュッシー:前奏曲集 第2集より 5曲(ピアノ・ソロ)
 ブルッフ:コル・ニドライ 作品47(チェロ、ハープ)
 パガニーニ:ロッシーニの歌劇「エジプトのモーゼ」の主題による変奏曲(チェロ、ハープ)
 ドビュッシー:小組曲 (ピアノ連弾)

バルトークとともにハンガリーの大作曲家コダーイはチェロの名手でもあり、バッハのオルガン曲をチェロとピアノのためにいくつか編曲している。ペレーニ&コチシュ(*昨年11月逝去)が編曲版をCD録音しているそうである。オルガン曲もチェロが入ると趣が変わって違った聴き方ができる。

シューベルトの「4つの即興曲 作品90と作品142」は親しみやすい曲。ハンガリーのピアノの巨匠シフのCDで聴き続けて、シューベルトのピアノ曲の中では“気に入りの曲”になっている。近年は演奏会で聴く機会も多くなった。ピアノの鍵盤を動き回る運指にも見入った。

「エフゲニー・オネーギン」はオペラ以外にオーケストラで一部分を聴くことがあったが、ハープによる演奏は珍しかった。ハープの持つ美しさや華やかさが際立った音楽を楽しめた。

ハンガリー民謡を収集してハンガリーの国民音楽をバルトークとともに作り上げたコダーイは今年は没後50年となる。「ハンガリーのロンド」は原曲の管弦楽のための作品をペレーニがチェロとピアノのために編曲して2017年に出版されるそうである。世界に先駆けて日本での初演だったのかも知れない。

ドビュッシーの前奏曲集は1・2集各12曲で全24曲構成。誰もが耳にして親しまれている「亜麻色の髪の乙女」は特別で、他の曲は何度聴いてもタイトルは全く浮かんでこない。タイトルなしで先入観を持たずに聴いたほうが良い聴き方かもしれないと思うようになった。ドビュッシー独特の色彩感に富んだ豊かな音色を想像力を働かせて聴いてみた。自然の風景の中に人間の孤独が描かれていたり、スペインや東洋の異国情緒が漂う調べとともに人の味わう感情が表現されているように思った。

「コル・ニドライ」は一度コンサートでチェロ曲として聴いたことがあるような気がする。ヘブライ語で「神の日」を意味するタイトルだそうだが、曲は重々しくなく明るい美しい旋律を持った作品で、チェロの人気作品のようである。チェロとハープの二重奏で演奏された。

日本語のタイトルがいろいろあって同一曲で何度か耳にしているのだが、違う曲かと勘違いすることがある。コンサートでは1・2度聴いたくらいである。手元にあるCDはシュタルケルとフルニエの両巨匠のチェロ小品集で「パガニーニ:モーゼ幻想曲」、「パガニーニ:ロッシーニの《モーゼ》の主題による変奏曲」となっている。タイトル名は違うが同一の曲で魅力的な作品。
ロッシーニの歌劇《エジプトのモーゼ》の中の旋律を主題として用いた変奏曲をヴァイオリン曲としてパガニーニが書いた。原曲はヴァイオリンのG線のみで演奏される作品。ピエール・フルニエがチェロ曲に編曲してチェロのレパートリーとなっている。
チェロとハープの二重奏で演奏され名演となった。客席を埋めた聴衆の感動を呼び起こした。

最後のプログラムはピアノ連弾。ピアノ2台が並列して、譜めくりストも2人。2階ほぼ中央から見る興味深い連弾だった。連弾曲は鑑賞しやすい単純明解な曲。〈小組曲〉は全4曲で各曲3部形式で、ドビュッシーの若いころの作品。「小舟にて」、「行列」、「メヌエット」、「バレエ」。前奏曲集など他のピアノ曲とは明らかに違う作品だが、若さが横溢して美しい曲が綴られた。今まであまり聴いたことの無い曲を味わった。

第一線で活躍する音楽家4人がステージに登場したガラコ・ンサートは素晴らしかった。補助席まで用意された大盛況に教授陣にも聴衆の満足度が伝わったのか、アンコール曲が2曲も披露された。
小型オルガンも用意され、ピアノ、チェロ、ハープの4つの楽器による演奏は極めて印象深いものとなった。
アンコール曲は①J.S.バッハ(コダーイ編):前奏曲とフーガ ニ短調 BWX853 ②リスト:悲歌 第1番。

11日のウィンター・オルガンコンサートが“ハンガーリの贈りもの”となったが、第20回記念ガラ・コンサートと合わせてリスト音楽院教授が5人も登場する画期的なイヴェントになった。ハンガリー・オーストリア帝国として一時代を築いた歴史のある国の文化が今日も息づいているのは感慨深い。19日まで続くリスト音楽院セミナーの成功を期待する。

※2000年8月のイタリア・ギリシャ観光を思い出した。当時はイタリアからギリシャに何故か直行できずにローマのレオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港からハンガリーのブダペスト国際空港に立ち寄ったことがいまだに記憶として残っている。ブタペスト空港内の土産店で買い求めたハンガリーの小物の民芸品が今も飾り戸棚に入っている。空港でフロリダのNaples(ナポリ)から来た高校生と空港内で待ち時間に話し合った思い出も今思えば懐かしい。(*アメリカにはヨーロッパの都市名と同じ地名が数多くある。フロリダにはヴェニスという地名もある。) 過去を思い出して懐かしさにふける日々が多くなった。



 
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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