札響第607回定期演奏会(尾高・札響のオール武満プログラム)

2018年2月24日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/尾高 忠明(札響名誉音楽監督)   クラリネット/三瓶 佳紀(札響首席奏者)   
ヴァイオリン/アレックス・シオザキ      語り/中井 貴惠(女優・エッセイスト)

〈オール・武満 徹プログラム〉
  「乱・組曲
  ファンタズマ/カントス(クラリネット:Yoshinori Mikame) 
  遠い呼び声の彼方へ !(ヴァイオリン:Alex Shiozaki)  
  弦楽のためのレクイエム
  「系図」-若い人たちのための音楽詩(詩:谷川俊太郎)(語り/Kie Nakai) 

武満 徹(1939-96)は現在、世界で最も演奏される機会の多い日本人作曲家。オーケストラ作品、室内楽作品以外でも幅広いジャンルで作曲活動を行った。日本のオーケストラが海外公演を行う場合に武満や細川作品を入れるのが恒例のようである。今回は尾高指揮の定期演奏会では1976年、2006年に続く3回目の「オール武満」プログラムとなった。

黒沢朗監督の「乱」の映画音楽演奏を武満が札響に依頼した当時の札響音楽監督は岩城宏之(*正指揮者が尾高)で、武満は札響サウンドが最も適切と主張して実現したエピソードが語り継がれている。「乱」の映画音楽が再構成された組曲版。4楽章構成。3管編成で多種多様な打楽器を用いたオーケストラによって「落城の様子や戦いの場面」が力強い、迫力ある演奏で展開された。

「ファンタズマ/カントス」(幻想/歌)はタイトル通り、二つの語はこの曲では同義語。武満は音楽の庭を想定して曲作りをしたようである。世界的なクラリネット奏者のリチャード・ストルツマンとBBCウェールズ響のためにBBCから委嘱されて作曲された。1991年に尾高忠明が同楽団首席指揮者として初演。札響初演は2007年。三瓶は近年ソリストとして札響と共演を重ねているが、この曲でも力演。

「遠い呼び声の彼方へ!」のタイトルの曲には馴染んでいなかった。武満の曲で“水”に因んだピアノ曲などは抒情的な感じで偶々耳にして聴きやすいと思っていたが、オーケストラ曲の良さは概して理解しにくい。この曲の抒情性は何となく感じ取れた。シオザキは現代音楽を中心にニューヨークで幅広い活躍が注目されている若手のヴァイオリニスト。華やかさは無かったのは地味な曲目なのでやむを得ない。

1957年に東京響からの委嘱で作曲した「弦楽のためのレクイエム」は59年に来日したストラヴィンスキーから絶賛されて、武満の出世作となった。海外で演奏される機会が最も多い武満作品と言われ、3年前の内田光子指揮マーラー・チェンバー・オケストラの札幌公演でも演奏された。西欧のレクイエムと特徴が異なる瞑想的な音楽で、作曲家・早坂文雄の死を悼み書かれた鎮魂歌。弦楽合奏曲。

谷川俊太郎の数多くの詩は合唱曲に使われているが、オーケストラに使われているのは初めて知った。谷川の詩集『はだか』より
“Family Tree”。詩は子どもが過去の自分、祖父母、父母、将来の自分を見つめて全て平仮名で書かれた6つの詩を6曲に綴った。
ナレーションの後に演奏が続くと思っていたら、演奏が続く中で語りがあった。札響初演。
ナレーターの中井は《大人と子供のための読みきかせの会》を主宰し、絵本と生の音楽を付けた読み聞かせで人気を博しているという。高音が聞き取りにくい難聴の所為で8割ほどしか聴き取れなかったが、音楽の流れには支障はなかった。落ち着いた朗読で家族の優しい繋がりと子供の観点から綴られた曲に独特の味わいが滲み出ていた。

クラシック音楽の演奏会で日本人作曲家の作品がもっと取り上げられてしかるべきという声もあるが、曲の内容が人々に知られて親しまれている作品が少ないのも事実である。聴衆の盛り上がりを考慮に入れたりすると、その頻度数も限られるのだろう。
今回は弦楽器、管楽器、打楽器奏者も含め客演奏者が25名にも達する大々的な演奏者数になっていたのにも注目した。

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ヴィットーリオ・グリゴーロ主演のMET《トスカ》

プッチーニは「ヴェズリモ・オペラ」として代表的なイタリアの作曲家。「ボエーム」、「トスカ」、「蝶々夫人」などの悲劇的オペラで聴く者の心を打つドラマで後世に残る作品を遺した。作品の中の名アリアも親しまれている。
海外歌劇場の札幌公演を都合のつく折に旭川から聴きに来ていたのが1970年代だった。当時はモーツァルトやビゼーの作品が多かったと思う。札幌に転勤してからは北海道二期会の珍しい演目のオペラ公演で度々会場に足を運んだ方である。北海道芸協の配慮で海外のオペラ・バレエを2000年代まで低料金で楽しめたのは忘れられない。

2011年に札幌オペラ映画愛好会のお陰でドミンゴとパヴァロッティが主演した映画会が年4回上映されたことがあった。《トスカ》はドミンゴ主演で本格的に味わえるオペラ映画(1976年)であった。その後、Kitara の大ホールを会場にして2012年10月ウィ-ン・バーデン市劇場のオペラが上演された。《トスカ》を1階7列で生のオペラの迫力を十分に楽してめ、特別にKitaraから「カラス主演サバータ指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団のCD」をもらった。
この時のライヴは舞台装置も簡素で限られた条件の下で開催されたが、結構満足できるものであった。

7年ほど前からMETビューングでタイトルにも馴染んでいなかったオペラを鑑賞するようになった。5年前にMETで「トスカ」の上演があったが、その際は鑑賞しなかった。今回は主演のカヴァラドッシ役がグリゴーロなので鑑賞予定に入れていた。Kitaraや時計台のボランテイア活動が続いていて日程の調整が大変だったが無理をした。

ヴィットーリオ・グリゴーロは3年前の《ホフマン物語》で彼の甘い魅力的なテノールの歌唱と演唱に惹きつけられていた。カウフマンに継ぐお気に入りのテノール歌手になっていた。

METビューイング第4作 プッチーニ《トスカ》  新演出
指揮/エマニュエル・ヴィヨーム  演出/デイヴィッド・マクヴィカー
出演/ソニア・ヨンチェヴァ、 ヴィット-リオ・グリゴーロ、 ジェリコ・ルチッチ

全3幕。イタリア語上演。上映時間3時間(休憩2回)

時代と場所/1800年、ナポレオン時代のローマ
主役となる登場人物 3名(歌姫:トスカ、画家/カヴァラドッシ、警視総監/スカルピア)
【簡単なストーリー】
『第1幕、教会』 トスカと画家は恋人同士。画家が教会で絵を描いていると、脱獄した政治犯が同志の画家のもとにやって来る。画家は彼を別荘にかくまうことにする。スカルピアが教会に来て、画家の恋人トスカの嫉妬心を利用して隠れ家を突き止める。
『第2幕、警視総監の執務室』 カヴァラドッシが逮捕されて政治犯が拷問される様子をトスカに見せて、スカルピアは老獪な悪だくみを意図してトスカを誘惑する。トスカは窮地に追い込まれてスカルピアをナイフで刺殺する。
『第3幕、城の屋上』 星が輝く夜明け頃に屋上に連れ出されたカヴァラドッシはトスカに別れの手紙を書く。第2幕でトスカは恋人と自分の通行許可証を発行してもらうことを条件にしてスカルピアに身を任せる決意をしていた。屋上で恋人に会ったトスカは見せかけの銃殺の予定だと話すが、銃を何発も打たれたカヴァラドッシは息絶えていた。トスカは城壁から身を投げ自ら命を絶った。

予定の指揮者や出演者の変更が相次いだためか、全体的にはもうひとつ物足りない感じがした。オーケストラの盛り上げが不足した感じ。第1幕での少年少女を交えた合唱は素晴らしくて、全幕での舞台装置を含めて海外と日本での違いを痛切に感じた。

主役3人は好演。テノールのグリゴーロには最初から最後まで甘いマスクと歌声で魅了されたが、何といっても第3幕の「星は光りぬ」は申し分のない感動的なアリアであった。この名アリアは何度か耳にしているが、オペラの場面で最高の音響で聴けたこともあって今までにない感動を覚えた。ニューヨークの聴衆も従来とは違う反応を示して拍手歓声が長く続いた。グリゴーロはステージでの演技も若い情熱的な芸術家・社会改革派の味を出していた。

ソニア・ヨンチェヴァは彗星の如く現れたように思えたMETの花形。今シーズン「第6作 ラ・ボエーム」、「第9作 ルイザ・ミラー」にも主役で出演が予定されている。マリア・カラスなど歴代の歌姫が演じた情熱の女性を美しい美声で好演した。第2幕で歌った「歌に生き、恋に生き」も見事な歌唱となった。第6・9作は制作発表時から決まっていたようである。今回の第4作は当初、カウフマンとオポライスの主演の予定だったらしい。トスカ役もカヴァラドッシ役もヨンチェバ、グリゴーロにとって初めてだったようである。2人は今回が初めての共演ではなくて、インタビューでグリゴーロはヨーロッパのコンサートで既に共演していて顔見知りだったという。二重唱の場面もあって良かったが、前述の2曲のアリアが大喝采を浴びていた。

第1・2幕でこれ以上ないという悪役を演じたジェリコ・ルチッチは代役としての出演。ヴェテランでスカルピア役を何度か経験しているらしく見事な演唱。

グリゴーロは「ホフマン物語」の後に日本公演のリサイタルがあって日本でも大人気のテノール歌手というのが納得できた。

※「歌に生き、恋に生き」の対訳(対訳者:永竹由幸)
歌に生き、恋に生き、決して他の人に悪いことなんかしてませんでした! 多くの可哀そうな人たちに会いました。そのたびにそっと内緒で助けてあげてきました。いつも心から神を信じて、祭壇にお祈りを捧げました。それなのに神様、この苦しみの時に、どうして、どうして、どうして私にこんな仕打ちをなさるのです? 聖母様のマントに宝石を寄進し、私の歌を、星に、天に捧げ、天はその歌に優しく微笑んで下さったではないですか。それなのに、この苦しみの時に どうして、どうして、神よ、ああ! どうして私にこんな仕打ちをなさるのですか?
※「星は光りぬ」or「星は輝き」の対訳(対訳者:戸口幸策)
星は輝き・・・大地は香り…菜園の戸が軋んで…足が軽やかに砂地に触れた。いい匂いをさせた彼女が入って来て、私の胸に倒れかかった。ああ、甘い口づけ、悩ましい愛撫、そのあいだに私は、震えながら、美しい姿をその覆いから引き出していた!
私の愛の夢は永久に消え・・・時は去り、私は絶望して死ぬ! 今ほど人生をいとおしんだことはない!
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ミクローシュ・ペレーニ チェロリサイタル

〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉
【第21回リスト音楽院セミナー講師による特別コンサート】

2018年2月20日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール
 チェロ/ ミクローシュ・ペレーニ(Miiklos Perenyi)
 ピアノ/ イシュトヴァーン・ラントシュ(Istvan Lantos)

〈PROGRAM〉
 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV1011
 シューマン:民謡風の5つの小品集 作品102
  おとぎ話の挿絵 作品113
 マルティヌー:チェロ・ソナタ 第3番 H.340

ペレーニはリスト音楽院教授として札幌コンサートホールが開館しで始まったリスト音楽院セミナーのチェロ講師として来札を重ねて日本での知名度を高め、2011年には札響2月定期で「ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番」を弾いた。セミナー講師の特別コンサートでは何度もリサイタルを開催して「バッハ:無伴奏チェロ組曲」の連続演奏も続いている。東京でのリサイタルも増えて、今日では世界チェロ界の巨匠と称せられるようになった。彼は真摯なスタイルの演奏が特徴で、過去の演奏会では2009年の「ブリテン:無伴奏チェロ組曲第3番」が珍しい演奏曲として忘れ難い。
ラントシュは1994-97年にリスト音楽院学長を務め、20年前からセミナー講師としてKitaraと深く関わり、リサイタルも行っている。

バッハの「第5番」は組曲中で最も深みのある作品とされる。前奏曲、アルマンド、クーラント、サラバンド、ガヴォット、ジーグから成る。フランス風序曲の前奏曲、リズミカルなアルマンド、フランス風のクーラント、沈んだ感じのサラバンド、珍しい配置のガヴォット、急進的なジーグ。バッハの無伴奏曲は何度聴いても深みのある重厚な曲に惹かれる。

シューマンの小品集のタイトルは聴き慣れていなかったが、作品番号でCDを所有していることが判った。直ぐ見つからずに、探してみると室内楽全集の輸入盤(5枚)に曲が入っていた。少なくても購入してから一度は聴いている。昼過ぎに一応聴いておいた。
作品113はヴィオラとピアノのための曲。20年以上前に録音されたマルタ・アルゲリッチと今井信子のCDだった。初めて聴いた時には2人の大家の演奏だとは気づいていなかった。
今回の室内楽2曲はシューマン晩年の作品。「作品102」は数少ないチェロのための曲。5つの小品の内容に繋がりは無さそうで、東欧風の民謡に基づくシューマンらしい幻想的で抒情的な曲に思えた。
「作品113」の原曲はヴィオラとピアノのための作品。4曲から成り、チェロとピアノの対話が際立って面白かった。ピアノ曲「子供の情景」と同じく子供向きの作品ではなく、大人のための作品。第2曲はチェロのピッチカート奏法が入ったりして躍動感に溢れていた。第3曲でピアノの歯切れのよい音も楽しかった。

マルティヌー(1895-1959)はスメタナ、ドヴォルジャーク、ヤナーチェク以後にチェコが生んだ最大の作曲家。2011年に「すみだトリフォニーホール」でC・アルミンク指揮の新日本フィル定期演奏会を聴いた時の「マルティヌー:交響曲第3番」。この時に初めてマルティヌーの名を知った。2018-19シーズンからチェコ・フィル首席客演指揮者を務めるヤクブ・フルシャ(*エリシュカの教え子)は都響首席客演者在任中にマルティヌーの作品を集中的に取り上げていたことでも知られる。
マルティヌーはフランス滞在中にドイツ・ナチスによって祖国が占拠されてアメリカ亡命を余儀なくされた。彼は民族意識が高まる環境に置かれ、ヒューマニズムを追求する作品にその影響が表れているとされる。大戦後にヨーロッパには移住できたが、故国の土を再び踏むことはなかった。
「チェロ・ソナタ第3番」は現代音楽と古典的な音楽が融合した作品として聴けた。明るい雰囲気も味わえた曲を重厚な演奏で楽しめた。
札響の定期演奏会で是非マルチヌーの交響曲(*「第6番」を所有しているので、たぶん6曲はある)も取り上げてほしいと思った。

聴衆の拍手大喝采に応えてアンコールに2曲も演奏された。①シューマン:「3つのロマンス」 作品94-2  ②コダーイ:「エピグラム」より 第2・3・5・7番。
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川井郁子コンサートツアー2018 LUNA~千年の恋がたり~

川井郁子の名は10年以上前に耳にしていたが、彼女のコンサートは普通のヴァイオリンコンサートとは少々違うもので今迄に聴く機会を持たなかった。川井はクラシックからジャズ、クロスオーヴァーまで幅広いジャンルで活躍する一流のヴァイオリニスト。国内外の主要オーケストラとの共演のほかに、自ら作曲した曲を含むデビュー・アルバムをリリースして話題を集め、カーネギーホールやパリ・オペラ座公演も行っている。クラシック音楽ではファジル・サイ、ホセ・カレーラスとも共演、仲道郁代、遠藤真理、森麻季などと室内楽を展開している。
一度は聴いてみようと思って今回の公演を聴くことにした。

2018年2月18日(日) 1:30PM 開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

出演はヴァイオリニスト、ピアノ・キ-ボード奏者、尺八・琵琶奏者、和太鼓奏者の4名。
プログラムは2部構成。
 〔第一部〕
  ロドリーゴ(川井郁子編):恋のアランフェス~レッド・ヴァイオリン~
  川井郁子:流浪の女、 赤い月
  モンティ:チャールダーシュ
  作者不詳:さくら
 〔第二部〕「源氏がたり」 (林 真理子著作より) *演出:川井郁子・吉井盛悟
  川井郁子:時の彼方に、 宵待の月、 風のあとに
  川井郁子:夕顔 ~「源氏物語」より~
  チャイコフスキー(川井郁子編):ホワイト・レジェンド『復活』~白鳥の湖より~

エントランスで渡されたプログラムは広告が多くて、演奏曲目が載っていないのに戸惑った。主催者が作成した紙に曲目が書かれていてホッと一安心。
ギターのヴィルトオーゾの有名な曲の聴き慣れた旋律で始まった。最初の曲はヴァイオリン、ピアノ、和楽器、和太鼓を使用した編曲もの。川井が目指した和楽器と洋楽器のコラボレーションとなる曲作りの方向性が伝わった。
2曲目以降はピアノの代わりにキーボード、日本の楽器は尺八・琵琶・笛・和太鼓などが用いられた。シルクロードを通ってジプシーの音楽やオリエンタルな雰囲気も広がる曲が続いた。ヴァイオリン曲として演奏される機会の多い「チャールダーシュ」はいつもと違う楽器構成で興味深かった。予定の演奏家が来札できなくて曲目変更があり、日本古謡「さくら」が演奏された。現代的な洋風の音楽に編曲されて粋な感じがした。
ヴァイオリニストが前半最後の曲「赤い月」の演奏前にマイクを持った。携帯電話について触れ、後半の曲の説明をした。聴き取れいないことが多くて、携帯の音源に注意の連絡かと思っていた。ところが、隣席の女性が携帯をいじり始め、前方の十数名が携帯やスマホで写真を一斉に撮り始める姿が目に入った。フラッシュも光った。主催者のプログラムにはもちろん写真撮影厳禁と書かれている。撮影許可の話があったのかと判断せざるを得ない状況だった。前代未聞の状況に驚いて、いささか動揺した。

後半は川井が平安時代を思わせる着物姿で語りも交えて、ヴァイオリンを演奏した。琵琶が入って独特の幻想的な源氏物語の世界が描かれた。川井の才能の豊かさを感じさせるステージであった。
アンコール曲は「ソーラン節」で北海道公演を盛り上げた。自分にとって必ずしも好みのコンサートではなかったが、いろいろなコンサートがあってよいと思った。
ジャンルを超えた活躍でファンの心を掴んでいる様子は帰りのホワイエに彼女のサインを待つ人々の長い列にも表れていた。




 
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藤村実穂子メゾソプラノリサイタル

[札幌コンサートホール開館20周年]
〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉

世界的なメゾソプラノ歌手として名高い藤村実穂子が4年ぶりにKitaraのステージに登場。前回はR.シュトラウスとマーラーの歌曲で対照的な味わいの妙が素人にも分かる圧倒的な歌唱だった。

2018年2月15日(木) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール
〈出演〉メゾソプラノ/ 藤村 実穂子(Mihoko Fujimura)
ピアノ/ ヴォルフラム・リーガー(Wolfram Rieger)
〈Program〉
 シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェン D118
 ワーグナー:ヴェーゼンドンクの詩による歌曲
 ブラームス:セレナーデ 作品106-1
 マーラー:リュッケルトの詩による歌曲

シューベルトの歌曲5つ。有名な曲でピアノ曲などでも知られている「糸を紡ぐグレートヒェン」。他は「ガニュメ-ト」、「ギリシャの神々」、「湖上にて」、「憩いなき愛」。シラーの詩「ギリシャの神々」のほかは、4曲共にゲーテの詩に曲を付けた。シューベルトが書き始めたドイツ・リートは胸を打つものが多い。
藤村が歌いだし始めた途端に心が高鳴った。やはり世界的な歌手の歌声は艶があるだけでなく、心の奥深くに届いてくる。

ワーグナーの歌曲集から5曲。「天使」、「止まれ!」、「温室で」、「痛み」、「夢」。先月の〈佐々木アンリ ソプラノ・リサイタル〉で歌われた歌曲。予め歌詞対訳を読んでいて、曲の内容が分かっていたので、歌に込められたヴェーゼンドンク夫人のワーグナーに寄せる想いも読み取れたように思った。オペラに書かれたメロディも入っている感じがして、さすがワーグナーらしい曲作り。第4曲に愛の喜びが力強く歌われていた。

ブラームスの歌曲5つ。「セレナーデ」、「日曜日」、「五月の夜」、「永遠の愛」、「私の愛は緑」。コンサートでブラームスの歌曲を聴くのは珍しい。第4曲は非常に情熱的な愛の歌。第5曲はクララに頼まれて、彼女の息子が書いた詩にブラームスが付曲したという。

マーラーの《リュッケルトの詩による歌曲》から5曲。「あなたが美しさゆえに愛するなら」、「私の歌を見ないで」、「私は優しい香りを吸い込んだ」、「真夜中に」、「私はこの世から姿を消した」。マーラーの交響曲のCDに第3曲「私は優しい香りを吸い込んだ」がオーケストラ伴奏で入っていたので、以前からこの歌曲集の名は知っていた。マーラーの《亡き児を偲ぶ歌》は同様な内容を持つ歌を用いた歌曲集で、何度かコンサートで聴いたことがある。一方、《リッケルトの詩による歌曲》は曲の雰囲気は互いに似ていても、内容に関連は無いようである。第3曲は菩提樹が歌詞に入っているので以前から、印象に残っていた。
「第4曲」はドラマティックな感じの歌。

シューベルトから時代を追って4人の作曲家の歌曲が選曲されてドイツ・リートの歴史の一端が分かった気がした。言葉がはっきりと解らなくても曲の良さは伝わってくるが、歌詞が理解できていると尚一層、心にしみるのだろうと思った。
世界の舞台で活躍を続ける藤村j実穂子の歌声をライヴで2回も聴くことが出来て満足であった。前半10曲、後半10曲と休憩をはさんで全20曲が一気に歌い上げられた。前回と同じ外国人ピアニストも情感豊かなピアノ伴奏で光を放った。彼は間のとり方が巧みで、特にアンコール曲歌唱後の余韻が印象的だった。盛大な拍手大喝采に応えたアンコール曲は「マーラー:原初の光」と「R.シュトラウス:明日!」。



 
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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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