トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ-ン 2018 札幌公演

毎年恒例の音楽の都、ウィ-ンからの贈り物となっている室内楽オーケストラの公演。公演開始前に先日のタローのピアノリサイタルの帰路で出会った元Kitaraボランテイアの友人2人と打ち合わせて、本日の公演前にKitaraテラスレストランでランチを一緒にしながら久しぶりの交流を図った。

ウィ-ン・プレミアム・コンサート(WIEN PREMIUM CONCERT)

2018年3月31日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
 〈出演〉フォルクハルト・シュトイデ(Toyota Master Players, Wien芸術監督)、ウィ-ン・フィルメンバー、ウィ-ン国立歌劇場メンバー、ウィ-ン響メンバーを含む管弦楽with安藤赴美子(ソプラノ)。
 〈プログラム〉
  第1部 モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲 K.492、 ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216(ヴァイオリン/Volkhard Steude)、歌劇{フィガロの結婚」より “愛の神よ、安らぎをお与えください”、 “楽しい思い出はどこへ”、 歌劇「ドン・ジョバンニ」より “あの恩知らずは私を裏切り”(ソプラノ/Fumiko Ando)
  第2部 J.シュトラウスⅡ:喜歌劇「くるまば草」序曲 Op.468、 喜歌劇「こうもり」より “侯爵様、あなたのようなお方は”(ソプラノ/Fumiko Ando)、ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ「女心」 Op.166、 J.シュトラウスⅡ:喜歌劇「こうもり」より チャルダッシュ“ふるさとの調べよ”(ソプラノ/Fumiko Ando)、ワルツ「南国のバラ」 Op.388、レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」より “ヴィリアの歌”(ソプラノ/Fumiko Ando)、ヨーゼフ:シュトラウス:ポルカ:シュネル「憂いもなく」 Op.271
 
コンサートの開幕かアンコールの曲として聴く機会が極めて多い馴染みの歌劇の序曲「フィガロの結婚」でスタート。前半はモーツァルト・プログラム。モーツァルトが書いたヴァイオリン協奏曲5曲の中で、「第3番」は明るい第1・3楽章のアレグロと対照的にアダージョの第2楽章は幻想的な調べ。ヴァイオリン独奏はウィ-ン・フィルのコンサートマスター のフォルクハルト・シュトイデ。彼は2000年トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィ-ンの日本公演以来、来日を重ねている。今年の《Kitara のニューイヤー》 には弾き振りで初登場して、「ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲」のほかに、ウィ-ンの音楽をプログラムに組んで華やかな新年の雰囲気を演出した。
今日は久しぶりに「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番」を聴いたが、馴染みの旋律が奏でられて心地よい音楽に浸った。

前半の最後のプログラムはソプラノ独唱。安藤赴美子は札幌出身のソプラノ歌手で、この数年の日本での活躍ぶりが顕著である。2014年、2015年と連続して札響定期に登場。昨年2月の新国立劇場「蝶々夫人」 のタイトルコール役で大絶賛を浴びた。
前半3曲は馴染みのオペラだが、3つのアリアはどれも耳慣れた旋律というわけでもなかった。ただ、安藤の歌声はホールの3階にも響き渡るような堂々たる歌唱で大型ソプラノ歌手の実力を感じさせた。

後半のプログラムはウィ-ン・フィル・ニューイヤーコンサートで演奏されるような曲がずらりと並んだ。ただし、7曲のうちで、馴染みの曲は「侯爵様・・・」、「南国のバラ」、「ヴィリアの歌」の3曲だけ。3曲のアリアでは特に聴衆を感動させるような見事な歌唱で歓声も起こり一段と拍手も大きくて長く続いた。
初めて耳にするような曲も適度に入っていて、結果的には良いプログラムに思えた。チャルダッシュというハンガリーの舞曲が一瞬、意外だと思ったが、オーストリア・ハンガリー帝国の時代を考えれば当たり前と気づいた。何となくウィ-ンの音楽とは違う趣の曲で興味深かった。コンサートはテンポの速い陽気な感じの曲で締められた。

アンコール曲は「ヨハン・シュトラウスⅡ:トリッチ・トラッチ・ポルカ」 。今年のKitaraのニューイヤーでも演奏され“おしゃべりポルカ” で作曲家の妻が飼っていたプードルの名前に由来するとも言われる曲名。楽しい曲で幕となった。
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札幌北高等学校吹奏楽部第29回定期演奏会

札幌北高合唱部の定期演奏会は何度か聴いているが、札幌北高等学校吹奏楽部の定期演奏会を聴くのは今回が初めてであった。音楽は全般的に好きであるがコンサートに出かけるのは専らクラシック音楽である。10年ほど前にシェナ・ウインド・オーケストラの演奏は聴いたことがあり、クラシック音楽とは違う魅力もある。近年では中高生を中心に若い人々の吹奏楽人気は年々高まっているようである。2・3月のKitara Newsで札幌北高吹奏楽部定期演奏会の演奏曲目「パガニーニの主題による狂詩曲」と「三角帽子」に鑑賞意欲をそそられていた。
札幌北高創立110周年記念演奏会で合唱部や吹奏楽部の演奏は耳にしているが、生徒自身が手作りした定期演奏会は別物である。今回の定期演奏会は音楽が大好きな生徒が心を一つにして演奏に取り組み、彼ら自身も楽しみ、聴衆もその楽しさを共有できる素晴らしいコンサートになった。

2018年3月27日(火) 18:30開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈出演〉 指揮/ 笠原 禎(顧問) 、篠原 彪我(生徒)
      吹奏楽/札幌北高吹奏楽部1年、2年生(約50名) 3年卒業生(約20名)
      司会/ 玉谷 朋佳(OG)
〈PROGRAM〉
 【第1部】 
  真島俊夫:ナヴァル・ブルー、  田村文生:アルプスの少女
  ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」より
 【第2部】
  ストレイホーン:A列車で行こう、  ガレスピ&パパレリ:チュニジアの夜
  メリーロ:ゴッドスピード!
  ディーズニー映画名曲メドレー(ヒギンズ編):DISNEY AT THE MOVIES
  サルトーリ(笠原禎編):Time To Say Goodbye
  ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

「ナヴァル・ブルー」はフランス語で“ネイビー・ブルー”の意味。陸上自衛隊音楽隊のための音楽でテンポの速い軽快なマーチ。金管のファンファーレが入って華やかに展開される開幕に相応しい曲。
「アルプスの少女」の作曲家の作品は変拍子、不協和音の連続で楽器の特殊奏法も続く、コンクール向きの曲と思われた。猛練習が必要な高度な演奏で音楽の専門家でないと鑑賞が難しそうであった。演奏者は曲の中でいろいろな表情を表現できる楽しさも味わっているのだろうと推量した。
スペインの作曲家ファリャの「三角帽子」は小澤指揮ボストン響のCDを所有していて、コンサートでも一部は聴いたことがあり、親しまれているメロディもある。ロシア・バレエ団を率いるディアギレフの依頼で作曲され、1919年にロンドンで初演。指揮がアンセルメ、舞台装置と衣装がピカソだったという。スペインのアンダルシア地方の代官(*代官がかぶる三角帽子が権力の象徴)と美しい粉屋の女房をめぐる騒動を喜劇的に描いた2幕のバレエ。演奏曲目は第2幕から3曲、「粉屋の隣人たちの踊り」、「粉屋の踊り」、「終幕の踊り」。他愛もないストーリーだが、スペインの民俗舞踊に乗って、楽しい音楽が繰り広げられた。

前半3曲はそれぞれ趣の違う曲で、吹奏楽部顧問の札幌北高教諭の優れた芸術性が生徒の演奏に伝わっているのが実感できた。

司会担当の卒業生が、極めて巧みな司会ぶりで進行を担当。後半のプログラムは完全に生徒が主体性を持って運営している様子がうかがえた。定期演奏会実行委員長が2年生で、3年生や卒業生の協力も得ながら、実質的に吹奏楽部部員の手で演奏会に臨んでいるようであった。

後半プログラムはジャズ研究会部員20数名による演奏で始まった。主に金管楽器を使用しての演奏で、サクソフォン、トランペット、トロンボーンなど楽器の数も多くて、ソロも交代で入る本格的なジャズ。先日、弦楽四重奏で聴いたばかりの「A列車で行こう」だが、やはり、ジャズはニューヨークの場面を描いたジャズ・サウンドが圧倒的に素晴らしい。一気にジャズの楽しい雰囲気に浸った。「チュニジアの夜」は初めて耳にしたが、アフロと4ビートのリズム感あふれる曲で何となくエギゾチックな感じがした。
演奏者が楽しんでいる様子が伝わって、聴衆も引き込まれて楽しむ状況は何と素晴らしいことか!
私が同校を定年退職した後に生まれた子たちが、高価な楽器を手にして、短い期間で楽器を鮮やかに扱って演奏している様子は信じがたいものがある。学業との両立を図りながら、こんなに音楽を楽しんで演奏している様子に彼らの才能の素晴らしさと将来性に明るさを感じ取った。(*2曲の演奏では指揮者ナシ)。

司会者はジャズ研究会の代表や吹奏楽部部長にもインタヴューをして、音楽に取り組む姿勢を訊き、彼らは音楽だけでなく仲間の協力を通して人間性を養っている様子も語っていた。それぞれの賢い応答にも知性も表れていて嬉しく思った。話は飛ぶが、最近、文化やスポーツ面で注目された若者がインタビューで答える話の内容は適切で充実している(一方、それに反して大人の社会、特に政治家の発言の稚拙さが目立つのは極めて残念である)。

後半の吹奏楽4曲の指揮者は生徒が担当。“God speed!”は成功を祈る曲で管楽器のファンファーレと疾走感の溢れるメロディが第2部最初の勇ましい吹奏楽曲だった。
続いてライオンキング、美女と野獣など映画で馴染みのメロディが入った14曲がメドレーで演奏された。何となく雰囲気は分かっても、私自身は知らない曲が多かったが、ディズニー映画音楽の雰囲気は出ていた。グループで振付をしながら起立して演奏したり、体を動かしながらリズムをとって演奏したり、いろいろな工夫を伴った演奏で楽しめた人々が多かったようである。

“Time To Say Goodbye”はヨーロッパで大ヒットした曲で、タイトルもメロディも耳慣れたもの。ただ、タイトルから別れの曲を連想しがちだが、オリジナルのイタリア語は“君と共に旅立つ”の意で、結婚式でも歌われる曲だそうである。

最後の曲の原曲は「パガニーニ:24のカプリース」。ヴァイオリン曲の第24番のメロディを主題に大作曲家ラフマニノフがピアノ協奏曲にした。そのラフマニノフの名曲を吹奏楽曲にした曲が今回の最後の演奏曲。主題、序奏と24回の変奏とコーダ。ラフマニノフのピアノの技法とオーケストレーションを生かした協奏曲を吹奏楽曲として、極めて色彩感豊かに壮大に描いた。聖歌「怒りの日」の旋律も独特な形で取り入れ、原曲の良さを生かしながら吹奏楽曲として輝かしい壮大な管楽器の音が際立つダイナミックな曲としてクラシック曲とは違う魅力が味わえた。

指揮を務めた生徒の篠原はサクソフォン奏者として活動しているというが、個性的な指揮ぶりも堂に入ったものであった。演奏終了後に1300名ほどの聴衆から大拍手と歓声を浴び、“音楽をこれからも続けていく”という力強い言葉を述べ、アンコール曲に恒例の曲のようだったが、「Crazy For You」(あなたに夢中)を演奏した。感動した聴衆の拍手が結構長く続いていた。

演奏終了後、演奏者全員がホワイエに出てきて、友人や知人と和気あいあいに交流していた。出演者の友人、知人、家族などの姿も多く目にしたのは当然と思うが、演奏者が楽しんで演奏し、聴衆も彼らの演奏を楽しんでいる様子が双方に伝わる素晴らしい感動的な演奏会であったと言えよう。帰路に就く人たちから、“こんな楽しい音楽祭もいいね!”という声も聞こえてきた。札響の演奏会の後で感動して余韻を楽しみながら歩いている人はよく見るが、楽しかった喜びを素直に表現している場合はそんなに多くない。とにかく、今後の吹奏楽部の伝統が守られて自主的活動が円滑に進むことを祈りたい。

※チラシや情報の一部から推測すると、吹奏楽部の活動で他の高校との合同発表会や合同練習の機会があって交流があるのは良いことだと思った。

チェコ・フィル ストリング・カルテット2018

2016年から札幌公演を聴いていて今回が3回目。プログラムはほぼ毎回アンコールのベストヒット20。前回と同じ曲が3分の一、前々回とは半分が同じで、ある程度の重複は止むを得ないところだろう。弦楽四重奏団の演奏曲目のオリジナル曲はすべて人々に親しまれている珠玉の小品。全員がチェコ・フィルのメンバーで、顔触れは前回と全く同じ。

2018年3月22日(木) 18:30開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈出演〉マグダレーナ・マシュラニョヴァー(Vn)、 ミラン・ヴァヴジーネク(Vn)、 ヤン・シモン(Va)、 ヨゼフ・シュパチェク (Vc)
〈Program〉
 モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハト・ムジ―ク 第1楽章  
 バッハ:G線上のアリア、  ポッケリーニ:メヌエット、 モーツァルト:トルコ行進曲
 シューベルト:アヴェ・マリア、  シューマン:トロイメライ、 ブラームス:ハンガリー舞曲第5番
 サン=サーンス:白鳥、  ドヴォルザーク:ユモレスク、  ロッシーニ:剣の舞
 ハチャトゥリアン:ウイリアム・テル序曲より、  レハール:メリー・ウィドウ・ワルツ
 クライスラー:愛の喜び、  バダジェフスカ:乙女の祈り、 イヴァノヴィッチ:ドナウ川のさざ波
 ネッケ:クシコス・ポスト、  ピアソラ:リべルタンゴ、  ビートルズ:ミッシェル
 ロドリゲス:ラ・クンパルシータ、  エリントン:A列車で行こう  

今迄に聴いた3回の公演の最初の2曲は同じで、前半10曲、後半10曲とプログラムの骨子が固定している感じ。意外性は少ないが、緊張せずにリラックスした雰囲気で名曲に浸れる利点があるといえる。
初めて耳にする曲は無く、後半のプピュラー音楽4曲は2年前のコンサートでも聴いた記憶がある。クラシック曲は何度も聴いているメロディが多いが、メロディを聴いて、曲のタイトルが判るのは半数ぐらいであった。(*今回は予めプログラムで曲名を見ていたので全曲のタイトルは直ぐに分った。)

前半の曲で、ポッケリーニの曲は聴いている途中で馴染みのメロディが出てきたので聴いたことが曲だと分った。久しぶりに耳にしたメロディであった。
後半の曲でイヴァノヴィッチとネッケという作曲家の名は2年前に知った。曲のメロディには、かなり以前から馴染んでいた。“クシコス”がハンガリー語で“馬”の意味とは改めて認識することになった。郵便馬車が走る様子が曲で上手く表現されていた。
「リベルタンゴ」はここ数年の演奏会で何度か聴く機会があって親しめる曲になっている。「ラ・クンパルシータ」はアルゼンチン・タンゴの名曲として子供の頃からラジオで耳にしていた。「ミッシェル」はタイトルさえ分らなかったが、学生時代とは違ってニ三十年前からビートルズの音楽は味わい深い曲として聴けるようになっている。

カルテットのメンバー全員はオーケストラのほかに様々な室内楽アンサンブルで活動していると思われるが、幅広い層に音楽を広げるために、今回のようなコンサートを続けているのは貴重な活動だと思う。弦楽四重奏団の演奏曲目は必ずしもポピュラーとは言えないのが実情である。
今回は前2回よりも聴衆が少なめに感じたが、帰りのホワイエにはCDを購入してサイン会に並ぶ人が想像以上に多かった。この種の演奏会を期待している人が結構たくさんいるようである。
女性のリーダーも日本語を出来るだけ使うようにしてコンサートを進めた。アンコール曲は3曲。①グリンカ:ルスランとリュドミラ「序曲」 ②岡野貞一:故郷  ③ヨハン・シュトラウスⅠ:ラデツキー行進曲。
(*東日本大震災以来、来日演奏家が演奏する邦人作品は「故郷」が多くなっているようである。)

チェコ・フィルの来札公演も期待したい時期である。
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アレクサンドル・タロー ピアノリサイタル

札幌コンサートホール開館20周年 〈Kitara ワールドソリストシリーズ〉
Alexandore Tharaud Piano Recital

第12代Kitara専属オルガニストの名がジローだったので、タローの名も日本人には親しみやすくて覚えやすい名前である。
アレクサンドル・タローは1968年パリ生まれ。父はバリトン歌手、母はバレリーナ。幼少の頃からバレエを習って芸術的環境の中で育ち、パリ国立高等音楽院に入学。1989年ミュンヘン国際コンクールで第2位入賞。2001年、オルガンのために書かれた作品をモダンピアノで斬新な音楽にした「ラモー作品集」でブレイク。ダンサーとのコラボレーションでピアノ音楽の新境地を広げた。モダンピアノならではの古楽の魅力を伝えるピアニスト。

2018年3月18日(日) 14:00開演
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988

「ゴルトベルク変奏曲」は2000年にグールドのCDを購入して、数回聴いている程度。コンサートで初めて聴いたのは、10年前のKitaraでのセルゲイ・シェプキン、2回目は3年前の小山実稚恵。親しみやすい曲とは違うので、コンサートの前に聴いたりしていても、アリア以外のメロディには馴染んでいない。
この作品は2段鍵盤を持つクラヴィチェンバロのために書かれ、アリアと30の変奏曲と再びアリア、計32曲から成る大曲。グールドの1955年の録音盤の演奏時間は40分程度、2度目の1981年のCDはテンポを遅くした演奏で50分程度。同じピアニストでも、こんなに違うが、今まで聴いたピアニストは60分程度だったと思う。タローの「ゴールトベルク変奏曲」は新しいアイデアが入った新鮮な演奏で世界の話題を集めているらしい。どのように曲が展開されるか興味津々であった。

サラバンド風の装飾豊かな美しい主題と、この主題に基づく低音の変奏が続く。30の変奏曲は2部構成で前半が15曲、後半が15曲。3曲ごとに“舞曲”、“トッカータ風”、“カノン”とキリスト教の三位一体論に基づくアイデアで、数学的にも工夫が凝らされた作品になっている。各ユニットの2曲目が2段鍵盤を駆使した両手の交差が使われる(*1段しかないピアノでの工夫に右手と左手の交差が必要なようであった)。前2回のホールでの演奏の座席はステージに向かって右側だったので、ピアニストの手の動きが見えなかったが、今回はホール中央左側の座席からピアニストの手の交差が良く見えたので、何番目の変奏をしているか分かって非常に良かった。譜めくりストがいたことで変奏の切れ目が解りやすかった。第26変奏の演奏が難易度が凄く高そうなことが観ていて分かった。第29変奏もフィナーレと言えそうな素晴らしい演奏で心に響いた。
音楽の専門的なことが解ると、鑑賞が一層、楽だったのだろうが、とにかく良かった。タローの演奏も舞踏の場面を連想させ、非常に洗練された音色で情感がこもっていた。ことし中に50歳を迎えるとは思えない若さとスタイルの良さも兼ね備えた格好いいピアニストの品格のある新鮮なピアニズムを味わえた。

70分の演奏時間を集中力を保って良い音楽が聴けた。“眠りのための音楽”というより“心の癒しとなる音楽”であった。満席の聴衆が70分間も静聴を続け、ピアニストが鍵盤から手を放して心を開放する瞬間まで見守る姿も大変よかった。
アンコール曲は「スカルラッティ:ピアノ・ソナタ K.141」だったが、左手の弾き方に特徴があって面白いタッチが見れた。

※アレクサンドル・タローは音楽の領域を超えた多彩な活動で注目されている。12年にはスイスでコンサートと並行して写真展を開催。12年のフランス・オーストリア合作映画「AMOUR](愛)ではピアニスト役で出演した。この作品はカンヌ国際映画祭パルム・ドールを獲得し、ゴールデングローヴ賞やアカデミー賞外国語映画賞も受賞している。
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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック(ピアノ/ユジャ・ワン)

アメリカのオーケストラはヨーロッパと違って公的援助が無いので運営資金は寄付で賄われている。特別なオーケストラを除いて海外公演はヨーロッパのオーケストラに比して少ない。日本公演が開催されても、東京が中心である。Big Five や Elite Eleven の日本公演が札幌に来ることは最近は稀である。ボストン響、フィラデルフィア管、クリーヴランド管の札幌公演は聴いてるが、シカゴ響とニューヨーク・フィルは聴く機会がない。一度は聴いてみたいと思っていたので、今回は東京で聴くことにした。

NEW YORK PHILHARMONICは創立が1842年でアメリカ最古のオーケストラ。ウィ-ン・フィルと同年創立の歴史を持つが、停滞の時期があって、ワルターが輝きを取り戻してバーンスタインが一気に盛り上げた。音楽監督がメータ、マズア、マゼール、ギルバートに引き継がれ、18年9月からズヴェーデンが音楽監督に就任する。

Jaap Van Zwedenは1960年、オランダ生まれ。ジュリアード音楽院に学び、19歳でロイヤル・コンセルトヘボウ管のコンサートマスターに史上最年少で就任。95年に指揮者に転向し、2005年からオランダ放送響首席指揮者を務め、07年ダラス響音楽監督などを務めているが、世界的名声は今後に期待される指揮者。

2018年3月13日(火) 19:00開演  サントリーホール

開演30分前にカラヤン広場に集まった人々の数は凄くて今までにない盛況ぶりで、開演前から期待が高まっていた。開場は予定通り18:30でチャイムの心地よい響きが鳴り終わって、入場できたのはロビーまでだった。リハーサルが長引いていたのかもしれない。チラシが渡されたがプログラムが入っていなかった。2曲だけの演奏で、曲目は判っていたので不安は無かった。2階のロビーの椅子に座ってエントランスの方を見ていると、いつの間にかホール内に人々がもうすでに入場していた。特別にアナウンスもなかった。

ホールに入って、2階12列22番のホール中央の席から見渡すステージは以前より広くなったように思えたが、これは勘違いのようであった。今迄は2階Cブロック席やRA席で鑑賞していて、ホールがグレード・アップした感を抱いた。より洗練された空間に見えたが、数年ぶりの入場で印象がやや異なった。いずれにしてもサントリーホールは素晴らしいホールである。

〈PROGRAM〉
 ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 作品15
 ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」 

ユジャ・ワン(Yuja Wan)は1987年北京生まれ。99年にカナダに移住し、フィラデルフィアのカーティス音楽院に学ぶ。07年、アルゲリッチの代役でデュトワ指揮ボストン響とチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を共演して知名度を上げた。2年後にドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、世界の第一線で活躍を続けている。批評家による最高の称賛を受け、カリスマ的才能と魅惑的な容姿で世界を魅了しているピアニスト。

ユジャ・ワンは評判通りの派手な金色の衣装で登場して50分にもわたる大曲jを弾き始める姿も最初から堂に入っていた。
「ピアノ協奏曲第1番」の第1楽章は交響曲の色彩を持った楽章。悲劇的な情熱を秘めた楽章に続いて、第2楽章は祈りの宗教的な情感を湛えている緩徐楽章。第3楽章はエネルギッシュで躍動感に溢れ、壮麗なフィナーレ。
ピアノの技巧が他の有名なピアノ協奏曲と比べてオーケストラとの対話の面で難しさがある曲に思えた。指揮者とピアニストがそれぞれのペースで進んでいるように思えたが素人には細かな面は解らなかった。
1階前方の席からとは違って指揮者の力強い腕の動きも良く見れた。ユジャ・ワンの演奏は人の心を掴む弾き方であった。
演奏終了後の大歓声に応えてアンコール曲が2曲も披露され、コンチェルトとは違う魅力を放った。①シューベルト(リスト編):糸を紡ぐグレイトヒェン ②メンデルスゾーン:無言歌集より“失われた幻影”。

前半終了後にプログラム販売のアナウンスが入った。入場時の販売は混雑を避けて遠慮したと思われた。20分休憩中の男子トイレ前の行列はKitaraでは見たことも無いような長蛇の列だったが、客は整然と並んでいた。
後半のスタートが20時半だったが、「春の祭典」は意外と短くて21時には曲が終了した。
【第1部】 《大地礼賛》 ①序奏 ②春のきざし・乙女たちの踊り ③誘拐 ④春の踊り ⑤敵の都の人々の戯れ ⑥賢者の行列 ⑦大地への口づけ ⑧大地の踊り
【第2部】 《いけにえ》 ①序奏 ②乙女たちの神秘な集い ③いけにえの讃美 ④祖先の呼び出し ⑤祖先の儀式 ⑥いけにえの踊り。

舞台は先史時代のロシア。春の神を鎮める異教の儀式が執り行われている。今年は北海道命名150年に当たるが、先住民アイヌの人たちの儀式にも何か共通したものがあるかもしれないと想像しながら聴いた。この曲を前回Kitaraで聴いたのは5年前の2013年2月サロネン指揮フィルハーモニア管の演奏で強烈な印象を与えられたことを思い出す。その時は管楽器の圧倒的な演奏が印象的であった。
今回は2台のティンパニ、弦楽器群の充実と相まって金管、木管の演奏は一大スペクタクルの様相を呈して圧倒的な迫力があった。ステージいっぱいを埋めた演奏者が繰り出す音楽は壮観であった。
100年前の演奏では観客が大騒ぎになったというが、ある程度の知識を得て聴く《春の祭典》は聴く者の心に圧倒的なスペクタクルとして鑑賞できる。私自身にとっては前回とは違った観点からも味わえた曲となった。
スケールの大きな演奏が得意なズヴェーデンの姿が見れた。ブラヴォーの声が飛ぶ聴衆の盛大な拍手に応えたアンコール曲は[ワーグナー:楽劇《ワルキューレ》より “ワルキューレの騎行”] 。豪快なサウンドでコンサートのフィナーレに相応しい曲で幕となった。

※ニューヨーク・フィルの本拠地は以前はカーネギーホールであったが、1962年からリンカーン・センターに変わった。67年7月にRockfeller Centerと同じく美しい一角のLincoln Centerを訪れた。50年前の日記を読んで当時の様子を再び思い描いた。guided tourでPhilharmonic Hall、New York State Theater、Vivian Beaumont Theaterを見学。収容人数2858のフィルハーモニー・ホールの絵葉書もあった。リンカーン・センターにはいろいろな施設があるが、1966年9月オープンのMetropolitan Opera Houseは上演中で残念ながら見れなかった。ボーモント劇場は5億ドル(1800億円)を寄付した夫人の名が付いていることは記録があるので覚えていることである。6名単位でグループ分けして案内された様子も分かった。Guided Tourの料金$1.50(540円)が少し高いと書いてあった。翌年68年にジュリアード音楽院もリンカーン・センターに移ったようである。懐かしい思い出となって当時が蘇った。

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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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