オクタヴィアン・ソニエ フェアウェル オルガンリサイタル

Kitara第16代専属オルガニスト、オクタヴィアン・ソニエの1年間の任期の締めくくりとなるサヨナラ公演。

2014年8月24日(日) 14:00開演 札幌コンサートホール Kitara大ホール

〈プログラム〉
 メシアン:永遠の教会の出現、 天上の宴
 J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
 ヴィヴァルディ(J.S.バッハ編曲):協奏曲 ニ短調 BWV596
 J.S.バッハ:トリオ・ソナタ 第6番 ト長調 BWV530より 第1楽章
 ヘンデル(ギュー編曲):オルガン協奏曲 ニ短調 作品7-4 HWV309より 第2楽章
 メシアン:キリストの昇天
 デュリュフレ:オルガン組曲 作品5
 ヴィエルヌ:幻想的小品集より 「ウェストミンスターの鐘」 作品54-6

オクタヴィアンは昨年9月の専属オルガニスト就任以来、東京・京都でのコンサート・ホールや道内の教会での演奏会を含めてこの1年間で30以上ものコンサートに出演してエネルギッシュな活動を続けてきた。本日が文字通りのサヨナラ公演。

13年10月のデビューリサイタルではメシアンの曲で締めたが、今日はメシアンの曲から始まった。
メシアン(1908-92)は2008年の生誕100年記念で「トゥ-ランガリラ交響曲」など彼の曲を聴く機会が増えた。鑑賞が難しい作曲家と思っていたが、この2つのオルガン曲は意外と心に沁みた。
パリ音楽院でメシアンの教えを受けた加古隆が数年前にパリを訪れ、メシアンが弾いていたノートルダム大寺院のオルガンに耳を傾けるテレビ番組を見た。その時の教会のイメージを目を閉じながらオクタヴィアンの演奏に聴き入った。普段のKitaraのオルガンと違った聴き方が出来た。現代のオルガンの持つ音量や演奏者の高度な演奏技法とはあまり関係のない宗教音楽が美しく流れた。 純粋で清楚な温かい響きがした。

打って変って、最も馴染みのあるオルガン曲である「バッハ:トッカータとフーガBWV565」は今まで何十回と聴いてきた演奏で一番印象に残った。前2曲と対照的な演奏となったので、なおさらこの曲がダイナミックで新鮮に感じられたのだと思う。

ヴィヴァルディ(1684-1741)からイタリア音楽の影響を受けたバッハ(1685-1750)のこの編曲は明るい雰囲気でヴィヴァルディらしさがあると感じた。何となく聴いたことがあると思ったら、この曲は第15代の専属オルガニストのマグダレナ・カチョルが録音したCDに入っていた。

休憩直後の2曲はオルガン曲としては大曲になると思う。

メシアンの「キリストの昇天」はその一部を聴いたことがあるが全曲は初めてである。オクタヴィアンの解説によると、この曲集は元々オーケストラのために書かれたものがオルガン用に編曲されたと言う。この曲は何度か聴かないと良さが伝わってこないと感じた。

デュリュフレ(1902-86)の名はオルガン曲は好みではなくても判るほどになった。何度か彼の小品は演奏会で耳にしている。《オルガン組曲 作品5》は彼の最も有名な作品のひとつだそうである。「前奏曲」、「シチリアーナ」、「トッカータ」の3つの楽章から成る。ドラマティックで緊張感に満ちた「前奏曲」に続いて、清らかな旋律で詩情豊かな「シチリアーナ」。最後の「トッカータ」は技巧的で非常に力強い主題が足鍵盤で演奏された。
第11代の専属オルガニストのシンディ・カスティーヨが「シチリアーナ」の楽章をCDに録音していた。オルガン曲は詳しくないので手元のCDで演奏会前後に聴いて親しむようにしている。

ヴィエルヌ(1870-1937)の名もKitaraでオルガン曲を聴いて知った。彼は小品を多く作曲しているためか、オルガンリサイタルで演奏されたり歴代の専属オルガニストがCDに好んで録音している。
「幻想的小品集」は4つの組曲がある。作品51~54。オクタヴィアンによると、彼の小品集の作曲によって「コンサートのためのオルガン音楽」が普及したそうである。
「ウェストミンスターの鐘」は作品54の終曲である。ヴィエルヌはチャイムのメロディをモチーフとして作曲した。荘厳で力強い作品になっている。
日本で学校などで放送されている「キーンコーンカーンコーン」のチャイムのメロディとして知られている。(ウエストミンスターの鐘は日本では学校のチャイムとして始業、終業のチャイムとして親しまれ、今日でも使っている学校があるのではないか。)
 
演奏終了後に日本語で丁寧な挨拶があり、彼のオルガン伴奏に合わせて聴衆が「金子詔一:今日の日はさようなら」を歌った。日本のメロディと歌詞が気に入って日本の聴衆と一緒に音楽を楽しみたいと思ったようである。「今日の日はさようなら またあう日まで」の最後の歌詞に想いを込めたのではないだろうか。

アンコールとして上記の曲を最後にした方が良かったと思ったが、最後のアンコール曲として「モーツァルト:アンダンテ ヘ長調 K.616」を演奏した。この曲は〈自動オルガンのための〉曲として作られた。誰でも耳にした曲としてそのメロディが親しまれている。自動オルガンのため長々と続いた感があったのが少々気にかかった。本人にとっては時間がまだまだ欲しい演奏会だったのだろう。終演時間が16時半近くになっていた。彼のCDを購入しようかと思ったが、時間的余裕がなかったので別の機会にすることにした。多分、サイン会に多くの人が並んだのではないかと思った。5、6年前にKitaraボランティアとして演奏会当日にサイン会を開いたらどうかと提案したことがあった。

異文化に接し、日本語、日本の数々の文化を積極的に吸収した意欲的な日本でのこの1年間はオクタヴィアンにとって掛け替えのない経験になったことに祝意を表したい。 きっとKitaraに帰ってこれるだろうし、帰ってきてほしいと願う。

***ロンドンにあるウェストミンスター宮殿(英国国会議事堂)に付属する時計塔(ビッグ・ベン)が奏でるメロディが「ウェストミンスターの鐘」。時計塔は1859年に創設され、正式名は“Clock Tower”。通称“Big Ben”として親しまれている。ビッグ・ベンは中にある鐘の名前であるが、現在では時計塔全体、時計本体の名称として知られている。2012年6月にエリザベス2世の在位60周年を記念して、同年9月に時計塔の正式名が“Elizabeth Tower”に改称された。ただ「エリザベス・タワー」が正式名になったとは言え、長年に亘ってロンドン市民に親しまれてきている「ビッグ・ベン」の愛称が変わらないかも知れない。
「札幌市時計台」(旧札幌農学校演武場)でボランティア活動に携わって6年目になる。札幌市時計台の時計は米国ボストン市ハワード社製で1881年に設置された。133年を経た現在も、重り巻き上げ方式で正確に時を刻んでいる。明治時代に創設された唯一の日本最古の塔時計である。
上記の「クロック・タワー」の正式名を知らなかったイギリス人も、現在では「エリザベス・タワー」と呼ぶ人が増えていると思う。今後、定着するかどうかはわからない。今月、ボランティア活動でたまたま話題が時計塔に及んだ時に初耳だという人が多かったのでここで言及してみた。






オルガンサマーナイトコンサート

2014年6月6日(金) 19:00開演  札幌コンサートホール Kitara大ホール

出演:オクタヴィアン・ソニエ(オルガン)、  中江早希(ソプラノ)

《プログラム》
  〈オルガン・ソロ〉
   高野智恵美(北海道作曲家協会会員): 響の試み(委嘱作品/初演)
   モーツァルト:アンダンテ ヘ長調 K.616
   ヴィエルヌ:「幻想的小品集」より 月の光 作品53-5、太陽への賛歌 作品53-3 
   ワーグナー(ルメア編曲):楽劇「ワルキューレ」より ワルキューレの騎行
 
  〈オルガンとソプラノ〉
   ヘンデル:歌劇「リナルド」HWV 7aより “私を泣かせてください”
   モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」 K.165(158a)より“アレルヤ”
   フォーレ:「レクイエム」作品48より “ピエ・イエズ”  
   ヴィエルヌ:「アンジェラスの鐘」作品57      
   モーツァルト:歌劇「魔笛」K.620より “復讐の心は地獄のようにわが胸に燃え”

第16代札幌コンサートホール専属オルガニスト、オクタヴィアン・ソニエ(Octavian Saunier)は昨年10月のデビュー・リサイタル以後も積極的にコンサートの他に多方面で活動している。先月は東京、京都でもコンサートを開催している。

中江早希(Saki Nakae)は北海道教育大学岩見沢校卒業。東京藝術大学大学院修士課程修了後、現在は同大学院博士課程に在籍。藝大各種コンサートで、高関健、湯浅卓雄らと共演。オペラでも活躍。第14回日本モーツァルト音楽コンクール声楽部門第2位。第12回中田喜直記念コンクール大賞受賞。第25回ハイメス音楽コンクール声楽部門第1位。第11回東京音楽コンクール声楽部門第3位など輝かしい経歴を持つ北海道期待のソプラノ歌手。

オクタヴィアンのオルガンコンサートは久しぶりである。中江の評判も耳にして大ホールでオルガンとソプラノの協演に臨んだ。演奏曲で初めて聴くのは数曲のみ。
最初はオルガンの大音響にかき消されて大ホールのオルガン演奏台の傍で歌う声が明瞭に届かない感があった。
オルガン・ソロで印象に残ったのはヴィエルヌの「太陽への賛歌」。ヴィエルヌの「幻想的小品集」はフランス出身の歴代Kitara専属オルガニスト数人のCDにも収録されているので親しんでいると言える。「月の光」は優しく心地よい作品だが、同時に対照的な「太陽への賛歌」の明るい曲が聴けて良かった。オルガン曲で一番面白かったのが「ワルキューレの騎行」。この曲はオーケストラ曲として聴く機会があるが、ワルキューレたちが天空を駆ける様子が巧みに描かれている。壮大でドラマティックな情景を心に描きながら楽しく聴いた。

中江のソプラノで堪能した曲が最後の「夜の女王」のアリア。素晴らしい歌声で、高度な歌唱テクニックにも感動した。北海道の地元でも将来を嘱望される音楽家が育っているのは頼もしい限りである。

最後のオルガン曲と共に「終わりよければすべて良し」の印象のコンサートであった。
最後の二人の挨拶もとても良かった。特にオルガニストの日本語の挨拶が素晴らしかった。日本語の上達度は耳にしていたが、見事な日本語に感服。
アンコール曲は「ベルク:ナイティンゲール」。オルガン伴奏の音量が控えめで、結果的にソプラノの声が生かされていた。
帰りのホアイエで出会う人は若い世代の人がいつもより断然多くて、若い出演者の友人や知人が聴きに来ていたようだ。ワンコインで聴ける気軽さもあったのかも知れない。

新専属オルガニスト オクタヴィアン・ソニエ デビューリサイタル

第16代札幌コンサートホール専属オルガニスト
オクタヴィアン・ソニエ デビューリサイタル

オクタヴィアン・ソニエ(Octavian Saunier)は1985年、ルーマニア生まれ。フランスで育ち、5歳でピアノを始め、10歳の時にオルガンに出会ってからオルガン一筋の生活だったそうである。リヨン国立高等音楽院に学ぶ。ソロコンサートの他、合唱や室内楽、オーケストラと共演。12年と13年にはリヨン国立管弦楽団とヤナーチェク「タラス・ブーリバ」、バルトーク「中国の不思議な役人」などで共演。Kitara専属オルガニストだった友人2人から勧められて招聘プログラムに応募。13年9月、第16代札幌コンサートホール専属オルガニストに就任。

Program
J.S.バッハ(1685-1750):[クラヴィーア練習曲集 第3部より] 《前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552/1》 、《われらすべて唯一の神を信ず BWV680》、《深き苦しみの淵より、われ汝を呼ぶ BWV686》、《われらの主キリスト、ヨルダン川に来たれり BWV684》、《フーガ 変ホ長調 BWV552/2》。
           [シューブラ―・コラール集より] 《目覚めよ、と呼ぶ声あり BWV645》、《わが魂は主をたたう BWV648》、《ああ、われらとともにとどまりたまえ、主イエス・キリスト BWV649》。
           [トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564]  
                  
ヴィエルヌ(1870-1937):オルガン交響曲第2番 ホ短調 作品20より
フランク(1822-90):3つの小品より カンタービレ ロ長調
ヴィドール(1844-1937):オルガン交響曲第8番 ロ短調 作品42-4 フィナーレ
アラン(1911-40):間奏曲 JA66 bis
メシアン(1908-92):主の降誕より 御言葉
       聖霊降臨祭のミサより 閉祭唱ー聖霊の風

前半はバッハの作品、後半は19、20世紀のフランスの作品をそれぞれ約1時間も要した、やや盛り沢山の内容。意気込みは解ったが挨拶、休憩を含めて2時間半の演奏時間は少し長過ぎた感あり。

第15代が女性で柔らかい音を出していた印象が強かったせいかも知れないが、今回の男性オルガニストの演奏は力強かった。特に鍵盤を弾く力が強い所為か、バッハの演奏は何となく単調に聴こえた。聴き慣れた曲が「目覚めよ、と呼ぶ声あり」や「トッカータ、アダージョとフーガ」ぐらいで、自分自身が多分バッハの曲に固定観念があるためだろう。

ヴィエルヌの「オルガン交響曲第2番」は聴きごたえがあった。ヴィドールの「オルガン交響曲第8番のフィナーレ」も良かった。今度のオルガニストはオルガン交響曲が得意なのかも知れないと思った。
アンコールに弾いた「即興演奏」は今迄に聴いたことがない演奏ぶりでとても面白かった。ストップを頻繁に使用して鳥の鳴き声を連想させる美しい曲で、メシアンの鳥のテーマと関係があるのかと一瞬思ったが即興演奏と解ってビックリ。今日一番の印象に残った演奏。
オルガンは良く解らないので的外れの感想かも知れない。

第16代オルガニストは先月のKitaraボランティアのダイレクト・メールの作業の折に挨拶に来たが、愛想が良く、コミュニケーションの取り方も抜群で、人柄も良く、日本に溶け込む態度はボランティアに好印象を与えた。今後の活動が期待大である。











マリア・マグダレナ・カチョル フェアウェルオルガンリサイタル

  マグダレナ・カチョルは1年間の任期を終えて来週には帰国するが、第15代札幌コンサートホール専属オルガニストとしての最後のコンサートが開かれた。在任中、彼女はKitaraで40公演を行い、サントリーホールや東京芸術劇場などにも招かれてコンサートを開催した。札幌市内の小・中学校を訪問してアウトリーチ活動にも積極的に参加した。その他、札幌交響楽団と共演する機会も何度かあった。

PROGRAM
レゾン:第5旋法のオッフェルトリウム「パリ人の王に栄えあれ」
ヴィヴァルディ/J.S.バッハ編曲:協奏曲 ニ短調BWV596
ヴィドール:オルガン交響曲第8番 ロ短調 作品42-4より 第3楽章 アレグロ
リスト/カチョル編曲:「詩的で宗教的な調べ」より葬送、1849年10月
エスケシュ:「復活のいけにえに」による5つのヴェルセット
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リスト:バッハの名による前奏曲とフーガ
ショパン:ノクターン第2番 作品9-2
アラン:組曲より スケルツォ JA70
コシュロー:シャルル・ラケの主題によるボレロ(パーカッション/藤原貴子、谷野健太郎)
ベートーヴェン:笛時計のための5曲より アダージョWoO 33
ベートーヴェン/カチョル編曲:交響曲第5番 ハ短調「運命」作品67より
                           第4楽章 アレグロ
 
レゾン(1650~1719)」やエスケシュ(1965~)の名は初めて聞く。
マグダレナは感受性が豊かであるが、8月に入って帰国が近づくにつれ感情が揺れ動くことが多いようだ。心なしか集中力に欠け、不安定な感じが素人目にも見て取れた。自ら編曲してCDにも収録したリストの曲はタイトルの通り、死者を弔うに相応しく、全体に重々しく暗い感じの曲。オルガンの響きが一層葬送の雰囲気を醸し出した。教会のオルガニストを務めているエスケシュの曲は彼が20年ほど前に作曲したと言われ、現在もローマ・カトリック教会の典礼で歌われているらしい。

後半のリストの後に予定していたヴィエルヌの幻想的小品集を変更して、ショパンの名曲を弾いた。ポーランドゆかりの作曲家の曲が入っていないことに急遽気付いて曲目を変更した。通訳を通して、この1年の演奏活動を振り返って語った。
コシュロー(1924~84)は去る2月のコンサートでも取り上げた作曲家であるが、彼はパリのノートルダム大聖堂のオルガニストを務め、世界的に評価が高い演奏家だったそうである。74年にノートルダム大聖堂で録音された即興演奏を息子のジャン=マルクが書き起こしたものをオルガンとパーカッションで演奏。10分余りの魅力的で変化に富んだ曲であった。この曲目は聴衆への“サプライズ”として彼女が用意したプログラムで盛り上がったのではないか。

ベートーヴェンのオルガン曲は自動演奏のオルガン用に作曲され、2月に開かれたオルガン・ウインターコンサートで4手編曲版でモニカ・メルツォーヴァと共演した曲。懐かしかったが4手版の方が迫力があった。
本日の圧巻は何と言っても、最後のベートーヴェンの有名な作品のオルガン編曲版。彼女はこの作品を演奏しようと思った切っ掛けは、Kitaraのオルガンが生み出す大きくて、美しい音色だったと言っている。オーケストラのような楽器の持つ迫力が彼女にベートーヴェンの「運命」を編曲して実際に演奏してみようと思わせたのである。忙しい演奏活動の合間を縫っての編曲の作業は大変だったと容易に想像がつく。素晴らしい演奏であった。勿論、プロの編曲家ではないので、スムーズな流れではない箇所もあったが充分に楽しめた。

今日の演奏会で気になったのは、私の真後ろの座席に座った年輩と思われる男性(顔は見なかったが、、、)が、後半のショパンの曲以降、1曲終わるごとに“ブラボ”と叫んでいたことであった。引っ込みがつかなくて何度も“ブラボ”と声を発したようだったが、叫んだ後の呼吸が苦しそうであった。こんな歓声を上げた人は、初めてであった。感動したのは判るが、最後は義務的に叫んでいるように思えた。人それぞれの感情の表現があっても良いが、不自然な感じがした。

マグダレナ・カチョルは最後に通訳を通して別れの挨拶をした。Kitaraの何人かの職員の名前を上げて長々と感謝の言葉を述べていたが、演奏会ではチョット場違いではないかと思ったのが正直な感想。間もなく札幌を離れることで、いろいろな感情がこみあげてきて万感胸に迫るものがあった様子。日本を去り難い様子が見てとれ聴衆の中には感動した人も多かったと思う。彼女の心境を推し量ることはできたが、日本語で“アリガトウ”や“サヨナラ”の言葉を発しなかったのは極めて残念ではあった。
アンコールに応えて30秒ほどの短いポーランドの曲を弾いて、Kitaraのオルガンに“Thank you so much.”と話しかけ、1年間親しんだオルガンに最後の別れを告げた。

彼女は帰国して直ぐヨーロッパ数カ国での演奏会の日程も入っているように聞いているが、今後一層の演奏活動の活躍を期待している。






  

オルガン ウインター コンサート

Kitara ORGAN WINTER CONCERT 

 毎年、札幌の雪まつりの期間中にオルガンウインターコンサートが開かれている。有名な札幌の雪まつりとあって本州や外国からの聴衆も見かける。ワンコインコンサートとして札幌市民には馴染みのコンサートである。今シーズンの第15代札幌コンサートホール専属オルガニストと約10年前の第5代専属オルガニストとの共演のコンサート。
 
プログラム。
 
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552
マッテル:“若い娘”による幻想曲
   (以上、演奏 モニカ・メルツォ―ヴァ(Monica Melcova) 

J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
M.スジンスキ:カプリッチョ Op.36c
ペータース:アリア Op.51
P.コシュロー:交響的スケルツォ
   (以上、演奏 マリア・マグダレナ・カチョル(Maria Magdalena Kaczor) )

ベートーヴェン:「笛時計のための5曲」よりアダージョWoO.331(4手編曲版)
    (連弾)

 パイプオルガンの音色を初めて耳にしたのが中学3年(1953年)の修学旅行で訪れた仙台の東北学院大学でした。中学の英語の先生の母校だったので松島に行く途中で旅行日程に入ったのだと思う。詳しいことは覚えていないが、オルガンの音色と設置されていた場所の様子は鮮明に記憶している。
 Kitaraがオープンした1997年7月4日から毎年定期的にオルガンを聴く機会がある。当初はエドガー・クラップ、ジリアン・ウイーア、トン・コープマンなどのオルガン・リサイタルが物珍しかった。今ではデビュー・リサイタル、クリスマス・オルガンコンサート、オルガンウインターコンサート等はすっかり定着したコンサートになりました。今迄でとても良かった企画は2007~2008シーズンの「世界オルガン名曲シリーズ 10人のオルガニスト」でした。1シーズンで歴代オルガニスト10人全員のコンサートを堪能しました。
 
 歴代のオルガニストの共演は魅力的です。今日のコンサートも素敵でした。馴染みのあるオルガン作曲家はバッハだけでしたが、それが却ってとても新鮮でした。
 モニカのバッハの曲は彼女が2002年にデビュー・リサイタルで弾いた思い出の曲であると日本語の挨拶で話していましたが、12~15分の長さの曲は2曲とも聴きごたえがありました。彼女の演奏は04,07,11年に続いて聴いたことになりました。譜面をめくる人がオルガニストの横に立ち続けている状態だったので演奏者の鍵盤を弾く様子が見れなかったのが少々残念でした。
 マグダレナは黒の服でなくて雪を連想させる白いジャケットと赤いスカートで登場しましたが素敵でした。勿論、演奏曲目もバッハの「トッカータとフーガ BWV565」で一段と盛り上がりました。今日はオルガニストの手や足の動きが見える席で鑑賞しましたので初めて聴く作曲家の変化に富んだ曲を十分に楽しみました。4段の手鍵盤や足鍵盤の使い方が見えて一層興味深い鑑賞となりました。
 ベートーヴェンの機械仕掛けオルガンのための作品は美しい旋律にあふれ、ピアノと管楽器の合奏を思わせる連弾は意外性のあるオルガン曲で素晴らしかった。

 モニカのアンコール曲はスカルラッティの「ソナタK159」、マグダレナのアンコール曲はバッハの「最愛のイエス我らここにあり」。2曲ともに心の奥深くに優しく広がる曲。
 
 今までウインターコンサートは正午開始だったが、昨年から「中島公園のゆきあかり」の行事との関連も考えてか午後3時開始となった。日曜日で札幌雪まつりの期間中ということもあってか観光客の姿もあり、客席もかなり埋まってコンサートが盛り上がった感じを受けた。
 
IMG_0805 (300x225) キャンドルが灯る雪あかりの中島公園。
Kitaraで演奏した音楽家が宿泊するホテルが奥に見える。

IMG_0808 (300x225)
 スノーランタンやペットボトルランタン1.000個が輝く中島公園の「彩の広場」。
2枚の写真は前日のコンサート(2/9)の夕方5時半ごろ撮影。

マリア・マグダレナ・カチョル デビューリサイタル

 第15代 札幌コンサートホール専属オルガニストの札幌でのデビューとなるリサイタルが今日の2時からKitaraで開かれた。
 1998~99シーズンからKitara専属オルガニスト制度がスタートして、毎年ヨーロッパの若いオルガニストが1年間の任期でコンサートや講習会などの活動を行っている。この制度は日本では極めて高い評価を受けており、今迄に東京・京都・新潟などのコンサートホールからも依頼がきて客演している。
 この制度が始まって2012~13シーズンで15年目を迎える。フランス・ハンガリー・スペイン・ベルギー・ドイツ・スロヴァキア出身のオルガニストが今迄に来札している。

 マリア・マグダレナ・カチョルはポーランド出身でヨーロッパの各地の音楽祭にも定期的に出演していて、この9月にKitaraの専属オルガニストに就任して初めてのリサイタルを開いた。

 全部で9人の作曲家の曲を演奏したが、そのうち6人の作曲家の名前を知らなかったのには自分自身でもビックリするほどであった。知っていたのはJ.S.バッハ、フランク、リストだけであった。この3人の作曲家は50年も前から知っていた。オルガン曲に関しては知識が不足しているのは自覚していたが,Kitaraでオルガンのコンサートを聴き始めて以来、ブクステフーデ、ヴィドール、ヴィエルヌ、デュプレ、デュリュフレなどオルガン曲の作曲家の名前に親しんできたが、数知れないほどの作曲家がまだまだ沢山いることを前提にしたほうが良いと思った。

 バッハの「トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564」はCDを持っていて何度も聴いているが、バッハの曲は即興演奏が多く入るのでオルガニストによって凄く違いがあって、途中までidentifyできないほどであった。3楽章からなる協奏曲のような感じが良く表現されて印象深かった。

 リストの数少ないオルガン曲「コラール{アド・ノス、アド・サルタレム・ウンダム}による幻想曲とフーガ」はまるで管弦楽のようで、Kitaraの良く鳴るオルガン(パイプの本数4976)の特徴が存分に生かされる見事な演奏で、30分もかかる難曲を集中力を切らさずに最後まで大胆に弾き切って聴衆の拍手喝采を浴びた。

 マグダレナも自身の演奏に対しての満足感とKitaraのオルガンの素晴らしさに感動し、演奏が終わって思わず「泣いてしまった」と告白した。何度もオルガンと聴衆に感謝して、アンコールに「ミサ曲」を演奏。「12月のコンサートは皆さんのために演奏する」と言って、最後に"See you in December."と英語であいさつ。

 オルガン演奏だけでなく、彼女の人柄も強い印象を残した演奏会となった。
プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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