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川畠成道ヴァイオリン・リサイタル2017

川畠成道が毎年この時期にKitaraでリサイタルを開催するのが恒例になった。3月は聴きたいコンサートが少なくて毎年4回ほどである。川畠のリサイタルを初めて聴いたのが2001年、14年からは4年連続で今回が7度目であった。小ホールで5000円のチケット料金は少し高めだが、公演の利益の一部分を社会福祉法人に寄付するチャリティ・コンサートとなっているので、ここ数年は毎年聴きに来ている。

2017年3月2日(木) 18:30開演  札幌コンサートホール小ホール

〈Program〉
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 Op.100
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004
 メンデルスゾーン:歌の翼に 作品34-2
 ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番
 ファリャ:スペイン舞曲 第1番 オペラ“はかなき人生”より
 バルトーク(セイケイ編):ルーマニア民族舞曲
 グノー:アヴェ・マリア
 モンティ:チャルダッシュ
 
ブラームスは中学校の音楽の教科書に出てきた厳めしい顔の写真の影響もあってか、クラシック音楽に夢中になってからも彼の作品に親しんだのはヴァイオリン協奏曲だけであった。今では4曲の交響曲や2曲のピアノ協奏曲を含め、彼の重厚な曲が気に入っている。3曲しか書いていないヴァイオリン・ソナタも全て聴きごたえがある。
「第2番」も全体的に抒情的で美しい旋律に溢れている。とてもメロディアスな曲で聴いていて心地が良かった。

バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータはギドン・クレーメルとヒラリー・ハーンの演奏で親しんでいる。演奏者によって曲の長さが違うが「シャコンヌ」は5分の差があるのに改めて気づいた。ドイツ、フランス、スペイン、イギリスの様々な舞曲で構成された4楽章のあとの終楽章として長大な舞曲「シャコンヌ」が続いた。少し短めで全体が25分の演奏。冗長に陥らないで、聴き手に踊り子の姿を想像させる弾き方の工夫を凝らしたようである。他のヴァイオリニストとは違う川畠の特徴が出た演奏だったように思う。
第5楽章の“Chaconne”はピアノ曲に編曲され、ピアノ・リサイタルで特にブゾーニ編を弾くピアニストが最近は多い。

川畠は前半のプログラムに毎年ヴァイオリン・ソナタを入れて、後半はヴァイオリンの小品を組んでいる。
後半1曲目は彼のデビューの折に取り上げた作曲家メンデルスゾーンの作品の中から選ばれた曲。「歌の翼に」はハイネの詩に基づく歌曲が原曲で、彼の歌曲の中で最も有名な作品。格調のある整ったメロディで様々な楽器に編曲されて親しまれている。ピアノ曲として聴く機会が多い。この曲は川畠自身にとってデビュー間もない頃に抱いた将来の期待と不安の心情を思い出すものになっているようである。

続く3曲は舞曲。マイクを使って3つの舞曲の説明があった。舞曲と言っても、曲に合わせて踊るのは難しく、バッハの曲と同じように器楽曲として作曲された。

「ハンガリー舞曲第1番」はピアノ連弾用として書かれ、のちにピアノ独奏、管弦楽用に編曲された。ヴァイオリン曲はヨアヒムが編曲し、ピアノとのやり取りが面白い。ハンガリーのジプシー(ロマ)の香り高いダンスで哀愁に満ちたメロディが心に響く。
「スペイン舞曲」はスペイン風のリズムやメロディ、生き生きとした色彩感豊かな明るい曲。
「ルーマニア民族舞曲」は民俗音楽収集家として名高いバルトークが若い時に書いた傑作。「棒踊り」、「腰帯踊り」、「足踏み踊り」、「角笛踊り」、「ルーマニア風ポルカ」、「速い踊り」の短い6つの舞曲が演奏された。今までに数回聴いた程度で、タイトル以外は親しんでいないが面白かった。

グノーの「アヴェ・マリア」は川畠にとって思い入れの強い曲となっていて、以前の演奏会で聴いてブログに書いた。彼が8歳の時にロスアンゼルスで命に係わるスティーヴン・ジョンソン症候群で皮膚障害と視覚障害に陥った時に、マリアンという名の人が献身的に彼の面倒をみた。その後、20年ぶりに訪れたLAでのコンサートで演奏した曲が「アヴェ・マリア」。この曲は彼を支えてくれた多くの人々への感謝の気持ちを込めて演奏する定番になっている。

モンティの曲はこの1曲しか聴いたことがない。しかし、今日では誰もが知っているメロディ。ハンガリーのロマの人々の哀しみを歌った第1部と器楽的な技巧を織り込んだ第2部から成る。ジプシー音楽の代表的な形式チャルダッシュ(Csardas)(*チャールダーシュと表記されることが多いと思うが、外国語を日本語に表記するのは難しい。)が曲のタイトルになっている。演奏者によって様々な即興演奏が可能ということで、川畠成道らしい曲として聴けたのも興味深かった。

2001年から毎年のように北海道で演奏会を開いているが、今回のピアニスト、佐藤勝重は札幌では初共演だと思う。パリ国立高等音楽院、パリ・エコール・ノルマル音楽院の高等演奏家課程を卒業。ソフィア国際ピアノコンクール優勝など、国内外のコンクールで入賞して数多くのコンサートに出演。ソロCD2枚、7枚の室内楽CDをリリースしている新進気鋭の若手ピアニスト。5月には東京で川畠とピアノ三重奏曲、8月には旭川で川畠とのジョイントコンサートが予定されている。

アンコール曲は3曲。①ショパン:ノクターン 第20番 嬰ハ短調  ②ディーニク:ひばり(*昨年のアンコール曲としても披露したが、鳥の鳴き声を変化させて聴かせる技巧の要る速い曲)  ③映画音楽「スマイル」(チャップリンの映画「モダン・タイムズ」より)
(*3年前の映画音楽特集で寺島睦也編で演奏された。)
1曲目のノクターンは毎年定番のアンコール曲と述べて演奏したが、私自身の記録では少なくとも14年以降は初めてでありピアノ作品と同様に心に染み入る演奏で映画「戦場のピアニスト」を思い出した。

川畠成道の視力もすっかり回復して、演奏にもトークにも渋みが出ているのは何より喜ばしい。来年もまた足を運ぼうと思う演奏会となった。

宮崎陽江 ヴァイオリン協奏曲の夕べ 2016 (大友&札響)

ヴァイオリニストがコンサートのソリストとしてオーケストラと共演してヴァイオリン協奏曲を弾く機会は数多くある。ソリストの名を中心にして『宮崎陽江ヴァイオリン協奏曲の夕べ』というタイトルで開催されるコンサートは極めて稀である。
昨年12月のコンサートの時から今回のプログラムが決まっていて大友直人の出演があるので予定に入れていた。

指揮/ 大友 直人(Naoto Otomo)
ヴァイオリン/ 宮崎 陽江(Yoe Miyazaki)
管弦楽/ 札幌交響楽団(Sapporo Symphony Orchestra)

大友直人は1958年東京生まれ。桐朋学園大学卒業。22歳でN響デビュー。在京オーケストラに次々と客演。86年大阪フィルと欧州ツアー、92年東京響と東南アジアツアー、96年再び東京響と欧州ツアーと海外公演もこなし破竹の勢いで日本の俊英指揮者として活躍。コロラド響、インディアナポリス響、ロイヤル・ストックホルム・フィルなどの海外のオーケストラにも客演。88年、「魔弾の射手」でオペラデビューも行って、「リゴレット」、「魔笛」などの他に「忠臣蔵」、「ジュニア・バタフライ」の独特な演目を披露して意欲的な指揮活動を展開。イタリアのプッチーニ音楽祭でも注目を浴びた。
現在、群馬交響楽団音楽監督、東京交響楽団名誉客演指揮者、京都市交響楽団桂冠指揮者、琉球交響楽団ミュージックアドバイザー。
彼の指揮活動を初めて見たのが86年日本フィル正指揮者としての旭川公演。続いて、92年に日本フィル札幌公演。時を置いて06年、京都市響常任指揮者として京都市響創立50周年記念でKitaraに登場。近年は現ニューヨーク・フィル音楽監督のアラン・ギルバートと国際音楽セミナーを毎年開催して教育的活動にも従事している。10年ぶりの札幌公演。

2016年12月7日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈オール・ベートーヴェン・プログラム〉
  プロメテウスの創造物 Op.43 より 序曲
  ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
  交響曲第7番 イ長調 Op.92

バレエ音楽として書かれた「プロメテウスの創造物」は現在は上演される機会は殆どない。「序曲」は度々コンサートで取り上げられる。昨年11月、アシュケナージ指揮札響定期でも演奏された。12年11月にもエリシュカ指揮札響演奏の記録もある。5分程度の序曲なのでコンサートのイントロに使われやすいのだろう。曲の詳細は解らなくてもタイトルから様々な想像力を生かして鑑賞できる。

4大ヴァイオリン協奏曲は演奏会が多いが何時聴いても素晴らしい楽曲。ベートーヴェンが書いた唯一のヴァイオリン協奏曲は定期的に耳にして50年にもなるが全然飽きない。べズロードニーのヴァイオリン独奏でロジェストヴェンスキー指揮モスクワ・フィルによるLPレコードは擦り切れるほど聴いた。今はCDが7枚あって、ハイフェッツ、シゲティ、グリュミオー、パールマン、クレーメル、キョン=ファなどの演奏を聴く。ソロとオーケストラが統合して響き合う交響的色彩が強い曲。美しく伸びやかに歌うソロとともに奏でられるオーケストラも抒情的で気品と壮大さを感じさせる。
ベートーヴェンはピアノ協奏曲と違ってカデンツァを書いていないことに今回注目した。カデンツァはクライスラーのものが有名のようである。ハイフェッツ、クライスラーは自らのカデンツァを使っている。宮崎陽江はかなり意欲的な活動を展開しているので、彼女自身のカデンツァを使ったのかもしれない。曲の細かいところまでは解らないが、宮崎は風格も身について堂々たる演奏を展開した。

「第7番」は13年2月のサロネン指揮フィルハーモニア管の演奏に感動した記憶が鮮明である。ベートーヴェンは最も好きな作曲家で交響曲は「第5番」、「第6番」、「第9番」により親しみを持っていた。演奏会に臨むモチヴェーションや集中度によって鑑賞の印象は異なることも間間ある。
「第7番」は2管編成で「英雄」、「運命」や「田園」に比べて少し軽めの交響曲に見られていた感じがする。この曲の特徴は何よりもリズムという要素に重点が置かれている。ヒロイズムや闘争心も描かれで生命感、躍動感に溢れた作品。10年ほど前から「第8番」とともにその曲の良さを味わい出したが、現在の日本における「第7番」の人気度は極めて高い。

本日は大友直人指揮のもと札響弦楽器陣の安定した演奏とともに木管・金管・打楽器奏者の健闘もあってリズム感のある「第7番」を大いに楽しめた。メロディに富み、聴衆の理解しやすい音楽が終わると一段と大きなブラヴォーの叫び声があちこちから沸き上がった。いつもの札響定期とは違って若い学生の姿もかなり多かった。各楽章におけるリズム・パターンが躍動感を生み、若者の心を揺さぶっていたような気がした。
演奏終了後の盛大な拍手大喝采と歓声は指揮者・大友直人と「第7番」の曲の相乗効果のように思った。アンコールを期待する雰囲気もあったが今回はその場ではなかった。どんな曲でも品の良い音楽を作り上げるマエストロに感服!

前橋汀子アフタヌーン・コンサート2016

2005年に東京のサントリーホールで始まった「前橋汀子アフタヌーン・コンサート」。前橋の演奏活動50周年を記念して2012年から毎年アフタヌーン・コンサートが全国各地で開催されるようになった。札幌では公園の木の葉も色付き始める9月最後の日曜の午後に開かれている。
小品を中心にした親しみやすいプログラムのリサイタルを聴き始めて5年目。毎回聴きに出かけるほどではないと思いつつ毎年Kitaraに通っている。2年前には聴きごたえのあるバッハの無伴奏ヴァイオリン組曲全曲演奏会もあった。

〈Program〉
 J.S.バッハ(ヴィルへルミ編):G線上のアリア
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78 「雨の歌」
 J.S.バッハ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004より)
  ドビュッシー(ハルトマン編):亜麻色の髪の乙女
 クライスラー:中国の太鼓
 シャミナード(クライスラー編):スペインのセレナーデ
 サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28
 マスネ:タイスの瞑想曲
 《懐かしの名曲集》 丸山貴幸編
    枯葉~“ウエストサイド・ストーリー”より「マリア」~イエスタディ
    ~“オペラ座の怪人”より「序曲」~愛の讃歌 
 ブラームス:ハンガリー舞曲第1番、第5番
                             (ピアノ/ 松本 和将)

例年のコンサートの前半のプログラムはソナタが2曲。今回の最初のプログラムは追悼の曲にも演奏される「G線上のアリア」。熊本震災をはじめ災害で亡くなられた方々に対しての追悼の意も込められているのかもと思った。

ブラームスはこの30年の間で親しむようになり彼の交響曲を始めピアノ曲・ヴァイオリン曲を好んで聴くようになった。ヴァイオリン・ソナタ3曲は2000年にムローヴァのCDで聴き始めた。その後、10年近く経ってピアノがアンデルシェフスキが弾いているのを知った。(*2011年に彼のリサイタルを聴きにサントリーホールに出かけた。)2013年にはムターの来札の折にブラームスのソナタ入りのCDを購入してサインを貰った思い出もある。「第1番」は特に気に入って親しんでいる曲である。明るくて幸福感に満ちておりシューマンの妻クララを慰めたようとした作品と言われている。憂愁を帯びたメロディも印象深い。

「シャコンヌ」はバロック時代におけるヴァイオリンの最高傑作として知られ、《無伴奏パルティータ第2番》の第5楽章。威厳のある主題と30の変奏から成る壮大な音楽。前橋は12年と14年にヴィタ―リの「シャコンヌ」を弾いた。バッハの「シャコンヌ」はブゾーニなどの編曲でピアノ曲として演奏されることも最近は多いと思う。しかし、バッハの曲と感激度が違う。いつ耳にしても素晴らしい音楽。前橋の演奏は真摯で情感が豊かである。

後半のプログラムは小品集。「シャミナード:スペインのセレナーデ」と《懐かしの名曲集》は前回までのアンコール曲として演奏された。演奏プログラムに入れたのは初めてだろう。誰もが耳にしたことがある名曲をメドレーで聴けて懐かしかった。5曲をつなげて1曲に編集した試みを興味深く感じた。

年配の客が多かったが、「序奏とロンド・カプリチオーソ」の演奏後の歓声と拍手が一段と大きかった。華麗な曲と高度なテクニックに魅了されてブラボーの声が上がってホールも盛り上がった。最後の「ハンガリー舞曲」で1000名弱の客も大満足の様子。ブラームスの情熱に溢れた第1楽章が終わった時に2階CB席あたりから曲終了と勘違いした人が多数いたが、前橋の軽く礼をする態度は好感が持てた。(以前の演奏会でも同様な反応をしたことがあった。)初めてコンサートに来る人もいるだろうが、周囲の状況を見て反応しても遅くはないと思う。

アンコール曲は①エルガー:愛の挨拶、②ショパン:ノクターン第2番、③クライスラー:愛の喜び。アンコール曲の紹介以外には余計な言葉は一切なく、若々しいエネルギッシュな演奏をするのが彼女の持ち味。あと1曲と指で合図して3曲目を弾いた。鳴りやまぬ拍手に最後はピアニストとともにステージ下手、上手の客席に近寄って挨拶する姿は好印象を与えた。






伊藤光湖ヴァイオリン・リサイタル

伊藤光湖ヴァイオリン・リサイタルは2007年7月に北海道立三岸好太郎美術館で開催された折にKitaraボランティアの仲間と一緒に聴きに行ったことがあった。彼女は北海道出身のPMFアカデミー修了生として音楽祭の折に札幌でコンサートを開いていた。美術館での絵画鑑賞と合わせて音楽鑑賞をするのも面白いと思った。30分のミニ・コンサートの後で地元新聞のインタヴューを受けて感想を述べたが、私の言葉は記者自身が勝手に書いた内容に変えられていた。伝聞での記事は正しくないことが多いことを経験しているのであまり気にもしなかった。10年前のコンサートを思い出して余計なことを書いてしまった。

数年前から彼女のコンサートが9月の初旬に開かれ、ヴァイオリン曲としては珍しい小品がプログラムに入っていてスケジュールの調整が出来れば聴きたいと思っていた。ヴァイオリニストの母の書家から紹介されて妻がコンサートに2年続けて出かけていた。今年は6月から彼女の本格的なリサイタルを聴く予定を立てた。

2016年9月3日(土) 14:00開演  札幌市生涯学習センターちえりあホール

〈プログラム〉
 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第42番 イ長調 KV526
 グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ト長調 作品13
 バッハ:オルガンのためのトリオ・ソナタ BWV525より 「アレグロ」
 ボザ:アルトサックスのためのアリア
 ファリャ(伊藤光湖編):組曲「三角帽子」より “終幕の踊り(ホタ)”
 伊藤光湖:アネクドット(小さなお話)第9番
 ヴィエニアフスキー:コンサートポロネーズ第1番 ニ長調 作品4

モーツァルト(1756-1791)のヴァイオリン・ソナタは30曲ほど収録されているアッカルドのCD集を持っている。番号を見て曲の多さに改めて驚いて手元にないと一瞬思ったがKV526は何度か耳にしている。1787年に書かれ、モーツァルトが書いた最後から2番目のヴァイオリン・ソナタ。ベートーヴェンのクロイツェル・ソナタの前兆となるような曲で同じイ長調。ピアノとヴァイオリンが対等に渡り合い深みのある重厚な曲。伝統的な3楽章構成で静かで瞑想的な第2楽章の後の生き生きとした妙技の第3楽章が印象的である。モーツァルトのソナタのなかで聴きごたえのある傑作だと思った。(*伊藤の話によると最後のソナタは初心者向けのソナタ。)

グリーグ(1843-1907)が3曲書いたヴァイオリン・ソナタは先月の木野雅之のコンサートで第3番を聴いた。演奏会で聴く機会が一番多いのは3番で伊藤自身も今回が初めての演奏曲となると話した「第2番」。演奏してみて素晴らしい曲と実感したと言う。数日前にデュメイ&ピリスの曲を聴いて聴きやすい特徴のある音楽であると改めて認識した。1867年の結婚して間もない時期に作曲された。伝統的なノルウェー民俗音楽の香りを持つ曲作り。情熱的な旋律で始まって明るいダンスとなる第1楽章、民謡風の哀愁漂うメロディとともに北欧の自然の美しさを印象づける第2楽章、ドラマティックなフィナーレとなる第3楽章。エネルギーに満ち、若さが横溢する曲として聴けた。

前半2曲の本格的なソナタに次いで、このコンサートの特徴と解ったのが後半のプログラム。伊藤光湖(Mitsuko Ito)は数年前からヴァイオリン以外の楽器で演奏される曲をヴァイオリンで演奏することに挑戦してリサイタルを開催しているようである。
彼女は京都市立芸術大学卒業後、英国ギルドホール音楽院、フランス・エコールノルマル音楽院に学ぶ。PMF音楽祭に3回参加。スイスの音楽祭に10年連続参加して毎年自作自演、2010年元旦フランスのオーケストラと共演するなど個性的な活動で多彩な音楽活動を展開している。アメリカのインターネットラジオで自作曲が4度クラシック部門人気第1位となり注目を浴びた。

ほかのヴァイオリニストには出来そうにもない伊藤光湖の才能が発揮された独特な“ちえりあホールのコンサート”。

バッハとボザの曲はオリジナルのままヴァイオリンで演奏。暗譜で演奏したのには驚いた。

ファリャ(1876-1946)はスペインの作曲家。ロシア・バレエ団を率いるディアギレフの依頼に応じて作曲されたバレエ音楽。1919年ロンドンで初演、指揮はアンセルメ、舞台装置と衣装がピカソ。管弦楽曲では組曲《三角帽子》として知られ、小澤指揮ボストン響のCDが手元にある。全8曲の中で「粉屋の踊り」と「終幕の踊り」が有名である。「三角帽子をかぶる代官が粉屋の美しい女房に手を出すが最後には権力者がやっつけられるハッピーエンドのストーリー」。全曲40分のオーケストラ曲の格好良さに魅せられた伊藤が5年かけてヴァイオリン曲に編曲したそうである。コンサートでは粉屋の夫婦をはじめ全員が悪代官を懲らしめた喜びに満ちて楽しくホタを踊る6分ほどの場面が情熱的な音楽で描かれた。

伊藤は現在はパリと札幌を拠点にして活動して、1年の半分はパリに戻って生活する中で“ヒョロヒョロ”と作って出来た即興曲。昨年12月に5日間で完成したという作品。今回が初演と言って笑いを誘った。何気ない話しぶりにユーモアが滲み出て彼女のこのコンサートが魅力あるものになっているように感じた。

最後の演奏曲は同じ作品番号で3つのバージョンがあると説明した。初耳である。ヴィエニヤフスキー(1835-80)はポーランドの大ヴァイオリニスト&作曲家。18歳の時に書かれた初期の小品でポーランドの3拍子の舞曲ポロネーズのリズムに高度な技巧を散りばめた民族的な色彩の濃い作品として親しまれている。ショパン国際ピアノ・コンクールが行われるポーランドはヴィエニヤフスキー国際ヴァイオリン・コンクールの地としても名高い。
伊藤はヴィエニヤフフスキー協会に原曲はどれかと尋ねる問い合わせをしたという話も織り交ぜてトークを展開した。協会から楽譜を購入するように求められたが、“お金を使わずに頭を使って”、彼女自身がオリジナルと思われる楽譜に基づいて今回の演奏(“初演”)を行った。タイトルが“華麗なるポロネーズ”でなくて“コンサートポロネーズ”となっている理由である。実際に聴いてみて違いは全然判らなかった。レーピンとヴェンゲーロフのCDでも同じ曲とはいえ曲のニュアンスが違って聞こえたので、演奏者の違いと思っていた。楽譜の違いが分るほど音楽に精通していない。

今回のコンサートは全て暗譜で弾かれたが驚愕するばかりであった。これも彼女の凄い才能なのだろう。

アンコール曲は①《ビゼー:組曲「こどもの遊び」より “運動会”》(*オーケストラ曲をピアノ曲に編曲してヴァイオリン演奏)、②賛美歌のメドレ―。

ピアノの浅井智子(Tomoko Asai)は東京藝術大学卒業後、北海道各地でリサイタル、オーケストラとの共演、室内楽、伴奏などの演奏のほかに幅広い活動を行っている経験豊富な演奏家。今演奏会での彼女のピアノ演奏での貢献度も見事であった。


木野雅之 ヴァイオリンの魅力 Vol.7

連日リオ・オリンピックを楽しんでいる。毎日、日本選手の健闘が続いている。今朝素晴らしいニュースが飛び込んできた。レスリング女子3階級で3人の選手全員が金メダルの快挙! 昨夜は順調な滑り出しを確認して、一人か二人は金メダルは獲得できそうとは思ったが、まさか3人とも優勝するとは夢にも思っていなかった。午後の再放送で彼女らの活躍を目にした。伊調馨が全競技を通して個人種目の女子選手初のオリンピック4連覇を達成した偉業は凄い。3選手ともに慎重な試合運びで焦ることなく決勝は大熱戦で逆転で勝利を収めた試合が興奮度を増した。最後まで試合を諦めない彼らの勝負強さと精神面の充実も見て取れて感動的なドラマとなった。明日のレスリング女子でも吉田沙保里のオリンピック4連覇をはじめ他の選手のメダルが期待できる。

昨夜から台風の北海道上陸で広範囲にわたって被害が広がっているようである。今日は何とか天候も回復して予定通りにコンサート鑑賞に出かけた。

木野雅之のヴァイオリン・リサイタルを3年連続して聴くことになった。前2回は面白い小品が入っていたが、今年のプログラムは少々新鮮味に欠ける印象を持ったが、8月はコンサートが少ないので聴いてみることにした。

2016年8月18日(木) 7:00PM 開演 札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 ヴィタ―リ:シャコンヌ ト短調
 グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ短調 Op.45
 ブラームス:スケルツォ 《F.A.E.ソナタ》より
 ショーソン:詩曲 Op.25
 サラサーテ:序奏とタランテラ Op.43
 ヴュータン:夢
 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン 

本日のプログラムの中で「ヴュータン:夢」だけは聴き慣れていない曲名。ブラームスの「スケルツォ」も余り知られた作品ではないが、偶々シューマンのヴァイオリン・ソナタのCDに収録されていた。カントロフが40年前に録音して7年前にデジタル化されたCD。1853年に3人の作曲家が合作で書いた珍しい曲。シューマンが第2楽章と第4楽章、彼の友人ディートリッヒが第1楽章、ブラームス(*当時20歳)が第3楽章の「スケルツォ」を書いた。3人の共通の友人である大ヴァイオリニスト、ヨアヒムに献呈された。
現在ではブラームスの曲のみ演奏されることが多いという。5分程度のリズミカルな曲。

ヴィターリ(1663-1745)はイタリアのヴァイオリニスト・作曲家。「ヴァイオリンと通奏低音のためのシャコンヌ」が最も良く知られた作品。冒頭にピアノで奏でられる主題がヴァイオリンの技巧を凝らした華やかな変奏で展開される。10分程度の曲。
ピアノ伴奏は毎回,藤本史子が務めているが結構、力強い演奏を展開していたように思った。
バッハの「シャコンヌ」は無伴奏のヴァイオリン曲で演奏会が多く親しまれている名曲。この数年はブゾーニ編曲のピアノ独奏曲としてピアニストが弾くことも増えてきた感じがする。

グリーグ(1843-1907)はノルウエー・ベルゲン生まれ。彼が書いた3曲のヴァイオリン・ソナタはデュメイ(現在、関西フィル音楽監督)とピリスのCDでコンサートの曲目になる度に聴く。北欧の民族的色彩の濃い作品で親しまれているグリーグの音楽。いずれのヴァイオリン・ソナタも美しい旋律が印象的であるが、「第3番」が最も有名で演奏機会も多い。前2曲のソナタから20年ほど後の作品で情熱も汲み取れるドラマティックな要素もある。3楽章を通して叙情味溢れる約25分の曲は聴きごたえがあった。

ショーソン(1855-99)はフランスの作曲家でドビュッシーやラベルのの印象主義音楽の先駆者と言われたが、若くして事故で亡くなった。よく演奏される作品は「詩曲」。オリジナルはオーケストラとヴァイオリンのための曲でハイフェッツの演奏で専ら親しんでいる。1896年イザイが初演。現在はピアノ伴奏で演奏されることが多いようである。
ピアノの陰鬱な序奏のあと途中からヴァイオリンが情熱的な主題を奏で、独特な詩情を醸し出す。15分弱の曲。

サラサーテ(1844-1908)はスペインの作曲家でヴァイオリンのヴィルトオーゾとして名高い。「ブルッフ:スコットランド幻想曲」、「ラロ:スペイン交響曲」などは彼のために書かれた作品。自らの才能を示す超絶技巧を凝らしたヴァイオリンの名曲が多い。
「序奏とタランテラ」は高度な演奏技巧が要求される曲でアンコール・ピースとして偶々演奏される馴染みのメロディ。“タランテラ”はイタリアの急速で激しい舞曲。難曲とされているようである。

ヴュータン(1820-81)の名は知っていても彼の作品を演奏会で聴いた記憶はあまりハッキリしない。ベルギーのヴィルトオーゾとしてヨーロッパ各地で活躍したそうである。イザイを育て上げたというから、グリュミオー、デュメイなどフランコ=ベルギー派の流れにあるヴァイオリストに属するのだろう。木野雅之もその流派に属して選曲しているのかもしれないと勝手に想像してみた。
オリジナルはヴァイオリンとハープの二重奏曲という。ハープ独特のロマンティックな旋律がピアノで奏されてヴァイオリンの華麗な技巧が楽しめる曲であった。
初めて耳にする曲かと思っていたら、昨年、このコンビのアンコール曲として演奏されていた。

コンサートの最後を飾った曲は最もポピュラーな「ツィゴイネルワイゼン」。哀愁と華麗さを備えたドラマティックな曲。フィナーレに相応しい曲で会場から歓声が沸き起こった。

アンコール曲は「ジョン・オードウエイ:旅愁」。熊本県人吉市出身の作詞家が付けた日本語の歌詞があって人々に広く親しまれているメロディ。アメリカ民謡とは知らなかった。聴いていて意外に思うと同時に歌詞も覚えていた。ピアニストの藤本も熊本出身で被災者。
木野のリサイタルが熊本地震本震の当日に熊本で開催予定であったが中止になったという。熊本支援の募金活動の一環としての“熊本に関わるアンコール曲”であった。(帰りに募金箱に寸志を入れてきた。)
最後のアンコール曲は「ラフマニノフ:ハンガリー舞曲」。

天満敦子ソロ・ヴァイオリン・コンサート

《望郷のバラード》でブレークして話題となり、親しみのある飾り気のない雰囲気の演奏会で人気のヴァイオリニスト、天満敦子。彼女のコンサートを初めて聴いたのはKitaraがオープンした年の1997年11月。大ホールでの演奏曲目を当時のプログラムで確認すると「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番」、「ポルムべスク:望郷のバラード」、「バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」、「バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番」という本格的なもの。2回目は2003年スワロフスキ―指揮スロヴァキア・フィルとの共演で「ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲」、「望郷のバラード」、「ツィゴイネルワイゼン」と今ではビックリするほどのプログラム。2010年は「フランク:ヴァイオリン・ソナタ」以外は名曲の小品集。
しばらく彼女のコンサートは聴いていなかったので、昨年12月〈ふきのとうホール〉での公演を聴くつもりだった。その時は入院中のため妻にチケットを譲っていた。今回はその埋め合わせのコンサート。Kitaraでは3年半ぶりのリサイタルになるそうである。

2016年5月29日(日) 1:30pm 札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
 J.S.バッハ:無伴奏パルティータ第2番より 「アルマンド」
 カタロニア民謡/カザルス編曲:「鳥の歌」
 シューマン:「トロイメライ」、フォーレ:「シチリア―ノ」、マスネ:「タイスの瞑想曲」
 イギリス民謡/和田薫編曲:「グリーンスリーヴズ」、 フォスター:「スワニー河」
 黒人霊歌:「アメイジング・グレイス」、 ポルムべスク:「望郷のバラード」
 山田耕作・梁田貢/竹内邦光編曲:「この道・城ヶ島の雨」
 熊本県民謡:「五木の子守唄」
 岡山県民謡ー山田耕作/和田薫編曲:「中国地方の子守唄」 
 中田喜直:「雪の降る街を」、 小林秀雄:「落葉松」
 ホルスト:「ジュピター」

今回は小品集のプログラムによる全15曲。前半は外国の作品9曲。後半は日本の曲5曲とホルストの作品。全ての曲が無伴奏で演奏された。叙情味あふれる曲ばかり。
前半の曲は馴染みの名曲小品集だが、選曲に天満の特徴も出ている。アメリカ的性格を持つ歌曲や、黒人霊歌も入れた。
シチリアーナとはイタリアのシチリア島が発祥の舞曲。一昨日の三浦文彰のコンサートでもアンコール曲として演奏され、曲名は同じだが作曲家名が違った。

天満敦子の代名詞とも称される「望郷のバラード」はルーマニアの作曲家の作品。ポルムべスクはブルックナーに師事し、将来を嘱望されていたが29歳の若さでなくなった。この曲は祖国の独立運動に参加して投獄されていた収容所で故郷を偲びつつ書かれたと言う。1992年に天満は文化使節としてルーマニアを訪問した。それが縁で翌年に「望郷のバラード」の日本初演を行い、CDの発表に繋がり大ブレイク。これ以降、彼女はクラシックという従来の枠にとらわれない幅広い音楽活動を展開するようになった。

前半終了後、主催者に促されてのトークだったが、彼女の話を待ち望んでいた客が大部分であったようである。“ピアノなしの無伴奏によるコンサートは節約の為か?”という雑音も聞こえてくるが、“ヴァイオリンだけが奏でる音が堪らなくて”敢えて〈ソロ・ヴァイオリン・コンサート〉も企画していると語った。
ストラディヴァリウスの楽器に出会って29年目を迎えると言う。楽器の29回目の誕生日、6月6日にはウィーン楽友協会のブラームス・ザールでコンサートを開くそうである。“人間とは未婚であるが、ヴァイオリンという旦那さんと結婚して29年目”という彼女の率直な語りに愛器ストラディヴァリウスに寄せる想いが感じとれた。
天満はKitaraホールを埋めた約千名への感謝の気持ちを何度も表し感激している様子であった。何度も来札公演を行っているが還暦を迎えてのKitaraでのコンサートに感慨も一入だったと想像される。
私自身、大ホールではリサイタルでも7・8列目中央に座席をとるのが普通であるが、今日は特別に3列目のほぼ中央に座ってヴァイオリンの弱音を聴きとれるようにした。ステージに近いところで演奏家に密着できた気がした。

後半は日本の童謡・民謡などが中心のプログラム。
「この道」の歌詞には“あかしやの花”や“白い時計台”が出てくる。北原白秋が札幌の思い出を綴った詩とされている。昨日は時計台でボランテイア活動をして観光客に時計台の案内をしたばかりだった。歌曲“城ヶ島の雨”とともに1曲の無伴奏ヴァイオリン曲として味わい深く聴けた。
日本の童謡・唱歌・民謡などはオペラ歌手のプログラムで聴くこともあるが、無伴奏のヴァイオリン曲として聴いたのは初めてかも知れない。叙情味あふれる曲なので、歌詞から情景を思い浮かべながら独特の音を奏でる曲に浸った。特に、「雪の降る街を」は素晴らしくて堪能できた。

天満はコンサートの最終曲はいつも「望郷のバラード」にしていた。2011年東日本大震後の東北のコンサートで最後に「ジュピター」を演奏した。その時以来、「ジュピター」を最後の演奏曲にしているという。札幌では数年来PMF賛歌として親しまれている曲で、客の反応も良くブラボーの声も一段と高かった。ヴァイオリニスト自身もKitaraで思い通りの演奏が出来たようでガッツポーズをしていた。

アンコール曲は「山田耕作:からたちの花」、「佐々木すぐる:月の砂漠」。

昼間に開催されるコンサートではKitaraの行き帰りに通る中島公園の緑の木々の間で、午後の陽射しを浴びて輝くつつじやライラックなどの花が見られる。藤棚の下を通るとウィステリアの独特な香りが漂ってくる。コンサートで演奏されたアンコール曲の余韻に浸りながら歩く楽しさは至福のひと時でもある。(*天気に恵まれないときなどは別にして、地下鉄と直結していないKitaraホールの環境の素晴らしさを改めて痛感!)



三浦文彰ヴァイオリン・リサイタル(ピアノ:田村 響)

セキスイハイム特別協賛による三浦と辻井のコンサートが5月と6月にKitaraで続く。辻井伸行ピアノ・リサイタルの全国ツアーが1・3月に行なわれて、2月は彼の休みの月かなと思っていた。あとで、2月にはオーケストラとの共演やヴァイオリニスト三浦文彰とのデュオによるコンサートの予定がそれぞれ幾つか入っているのが判ってエネルギッシュな辻井の活動に驚いたことがあった。同時に三浦との交流を知る機会にもなった。

三浦文彰(Fumiaki Miura)は2009年ハノーファー国際コンクールに史上最年少の16歳で優勝。早速、2011年トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーンに登場する予定だったが、東日本大震災のため公演中止となり、翌年の同公演で札幌でのコンサートも実現して「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第2番」を弾いた。地味な選曲を意外に思ったものである。三浦は2016年1月からはNHK大河ドラマのテーマ曲による斬新なメロディの演奏で一躍脚光を浴びている。

2016年5月27日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 ドヴォルザーク:4つロマンティックな小品 作品75
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 作品24 《春》
 服部隆之:大河ドラマ「真田丸」メインテーマ
 タルティ-ニ: ヴァイオリン・ソナタ ト短調 《悪魔のトリル》
 ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ第1番 作品4
 グルック:メロディ~歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」より
 ブロッホ:ニーグン
 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン 作品20

国内外のオーケストラとの共演や国際的な音楽祭出演などで大活躍の三浦の初のヴァイオリン・リサイタルを聴けるのは大きな楽しみだった。ピアニストの田村響は2007年ロン・ティボー国際コンクール優勝(*当時20歳)で大変な話題を集めた。いつかリサイタルを聴きたいと願っていたピアニストで、今回のデュオのプログラムは大歓迎だった。

ドヴォルジャークのこの曲は聴いたことは無いかなと思ったら、5年前の吉田恭子・白石光隆のデュオリサイタルの折に購入した彼らのCDに曲が入っているのに気づいたのが数日前の事。少なくとも1・2度は耳にしている。「カヴァティーナ」、「カプリツィオ」、「ロマンス」、「エレジー」の4曲として構想されたが、無題のまま出版されたという。タイトルがあると曲のイメージも浮かんできて親しめるのにと思った。コンサート当日までに数回聴いておいた。チェコの舞曲や民話をもとにした作品かも知れない。美しい旋律に満ちた15分程度の曲。

ベートーヴェンの10曲のヴァイオリン・ソナタの中で、やはりタイトルのある「春」と「クロィツェル」は馴染みの曲で言及するまでもない。4楽章から成る曲が全編を通して明るい。

前半2曲はピアノとヴァイオリンが対等に渡り合う曲で、三浦も楽譜を前に置いての演奏だったのは意外だった。ピアニストとの呼吸のとり方で慎重を期したのだろう。

後半はテレビを通して毎週日曜日に流れる曲。本人の生演奏で聴くのは堪らない。戦国時代に城を守る武士たちの様子が眼前に浮かぶ。ヴァイオリンのスピード感ある音色が続く演奏に高揚した聴衆の反応は一段と大きくなり会場が盛り上がった。

「悪魔のトリル」は川畠成道が度々演奏していた曲でタイトルを覚えた。イダ・ヘンデル演奏のCDで約15分のソナタを改めて聴いてみた。イタリアの作曲家タルティーニ(1692-1770)が1740年代に“夢の中で、魂を売り渡すのと引き換えに悪魔が聴かせてくれたトリルのパッセージに霊感を受けて”書いたという作品。曲の終盤で絶え間ない“悪魔のトリル”が繰り返される。無伴奏でヴァイオリンが奏でるパートがかなり長く続いたが、目の前で繰り広げられる高度なテクニックに釘付けになった。

ポーランドの大ヴァイオリニスト&作曲家であったヴィニャエフスキ(1835-80)は11歳でパリ音楽院を卒業した天才。ポーランドの舞曲ポロネーズのリズムに合わせて華麗なテーマと陰りのあるトリオが美しいコントラストをなして展開される。レーピンやヴェンゲーロフが得意としているようだが、ロシアでの人気曲なのだろう。勿論、日本でも親しまれている華やかな馴染みのメロディ。

グルック(1714-87)はウィ‐ンを本拠地としてヨーロッパ各地で活躍したオペラ作曲家。歌劇の改革者といわれるグルックの最も革新的な作品から「精霊の踊り」(メロディ)。昨年、五嶋龍がリサイタルのアンコール曲にこの曲を弾いた。クライスラーが編曲したこの曲が吉田恭子のCDに入っていた。花が咲き乱れ、小川が流れる天国の野原で精霊たちが踊る様子が描かれる美しい曲。簡単に弾いているように見えるが、多分この曲も難曲なのかもしれない。

ブロッホ(1880-1959)は作曲家名は曖昧な記憶だけで、作品名は初めて聞く。プログラムの解説によると、スイスの作曲家でヴァイオリンの名手イザイに師事し、アメリカで演奏と教育に携わった。この作品はユダヤ敬虔主義の信者を描いた3枚の絵を表す3曲から成る組曲《バール・シェム》の第2曲。「ニーグン」は即興的な祈りの歌で思ったより親しみやすい曲であった。

サラサーテ(1844-1908)は有名なスペインの作曲家で“パガニーニの再来”と称されたヴァイオリンのヴィルトオーソ。ドイツ語のタイトルは「ジプシーの歌」の意味。チャルダ-シュを用いたヴァイオリン曲として演奏機会の多い名曲。
コンサートのフィナーレに相応しい曲で、超絶技巧を駆使した三浦の演奏は聴衆の心を鷲掴みにした。

後半はヴァイオリストが技巧を発揮する場面の多い曲がほとんどで、三浦は全て暗譜で演奏した。ヴァイオリ二ストが自分の技量を見せるには格好の曲で、ピアニストはどちらかといえば支え役だが田村はしっかりサポートした印象を受けた。

国際的なコンクール優勝の実績を持つ20代の若者によるコンサートはいつもと違う雰囲気を作り上げていた。コンサート終了後は満席に近いホールを埋めて観衆は女性客が比較的に多くテレビを通しての人気の高さを窺がわせた。
アンコール曲は「パラディス:シチリアーノ」。最後に、共演者の田村に促されて、三浦が《「真田丸」のメインテーマ》を無伴奏で演奏した。

※伊勢志摩サミットが終了したが、2008年洞爺湖サミットでボランティァ活動に参加したことを思い出した。札幌国際プラザ外国語ボランティアとして海外から来る報道陣や観光客を主な対象として札幌駅インフォメーションデスクで2日間対応を行なった。いろんな案内があったが駅のロッカーが封鎖されて使えない理由を問われた状況は今回のサミット開催に伴う状況と変わらない。この時ほど全国から派遣された多くの警察官の姿を市の中心部で目にした事はなかった。とにかく無事にサミット終って何よりだった。

※サミット終了と同時にメディアの関心事は米国オバマ大統領の広島訪問に移った。歴史的な米国大統領の広島訪問。核廃絶につながる小さな一歩であることは確かである。夜遅く聞いたオバマ大統領の演説は心に響く素晴らしいスピーチだった。ハーバード大学では20年以上にもわたって「トルーマンと原爆投下の是非」を論じる授業が行われているという。(*1月に出版されたPHP新書「ハーバードでいちばん人気の国・日本」の著書による。)どこの国にも言えるのだろうが日本のメディアが必ずしも客観的な情報網を持っているとは限らない。知らない情報が沢山あるようである。50年前に訪れたスミソニアン博物館で見た「エノラ・ゲイ」は今も目に焼き付いている。(*1995年の展示騒動以後、エノラ・ゲイはWashington D.C.の国立博物館には展示されていない。)

川畠成道ヴァイオリン・リサイタル2016

視覚障害を持つ人々を支援するチャリティコンサートを展開する川畠成道のリサイタルを2014、2015年に続いて今年も聴くことにした。2001年に彼のコンサートを聴き始めてから今回が6回目となる。

2016年3月18日(金) 開演18:30  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第3番 変ホ長調 Op.12-3
 ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
 ミルシテイン:パガニーニアーナ(ヴァイオリン独奏のための変奏曲)
 パガニーニ:『うつろな心(ネル・コル・ピウ)』の主題による序奏と変奏曲 ト長調  
 グノー:アヴェ・マリア
 サラサーテ:序奏とタランテラ Op.43

前半のヴァイオリン・ソナタ2曲は聴きごたえがあった。ベートーヴェンのソナタは「春」と「クロイツェル」が定番で大ホールでは聴衆の入りを考慮してだろうが演目に入る場合が多い。2012年11月、庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオ―リのコンサートでもそうだった。ただ、その折に彼らの「第1・3・4番」が収録されたCDを会場で購入した。今まで「第5・9番」しか所有していなかったCDも、これを機会にして、2年前に樫本大進&コンスタンチン・リフシッツによるソナタ全集を手に入れた。Daishin&Lifschitzは大ホールのコンサートで「第4・10番」を弾いた。聴きなれない曲が演奏曲目に入ると楽しみが増える。
そんな意味で今日の「第3番」は興味津々でCDも予め数回聴いておいた。演奏者の姿を目にしながら聴く味わいも加わって新鮮な受け取り方もできた。第5番以前のソナタの中では演奏機会が多いようである。全体にゆったりとしたテンポの曲でピアノとヴァイオリンが縦横にやり取りを繰り広げ、快活な印象を受けた。

ドビュッシー(1862-1918)は印象主義音楽の祖と呼ばれラヴェルと共に独特なフランス音楽を生み出した作曲家として知られる。このソナタは1916年から17年にかけ作曲されたが、結果的に遺作となった。軽やかで生き生きとした第1楽章、幻想的で軽快な第2楽章、極めて活発な第3楽章。ドビュッシーの特徴が表されている作品。この曲は演奏会で数回は耳にしている。
前半の2曲が終了して休憩後の後半のスタートでのトークによると、川畠がドビュッシーに取り組むのは初めてで、今後取り組んでいきたい作曲家と言う。プロだから当然だろうが、今年度初めて披露した曲とは思えない聴衆の心に響く演奏だった。

後半のプログラム開始に先立ってトークが入った。Kitaraのステージに初登場したのが2001年(*私は01,06,08年と大ホールでの公演を3回聴いているが、当時はロンドンを本拠地として活動していてピアニストも同世代の外国人であった。)と懐かしんでいた。多分、その後は英国と日本を本拠地として活動の幅を広げ、毎年数多くのリサイタルを行なっている。“Kitaraは大好きなホールで来年も再来年も新しい演目を増やしてリサイタルを続けたい”と語った。

後半は川畠の得意とするプログラム。最初の2曲は無伴奏でヴァイオリンの名手・作曲家による超絶技巧の曲。
ミルシテイン(1903-92)はウクライナ生まれの大ヴィルトゥオーゾ。名盤として有名なドヴォルジャーク、グラズノフのヴァイオリン協奏曲のCD(*1957年録音)を所有している。彼が作曲した作品があるのは知らなかった。パガニーニの「24のカプリース」の中の「第24番」の最も有名な旋律をもとに書かれた変奏曲。帰宅してから気づいたのだが庄司紗矢香の初のCDにこの小品が収録されていた。
※ミルシテインはホロヴィッツと共にロシアで大人気を博し、その後はヨーロッパ、アメリカで大活躍して世界各地で演奏旅行を行った。1972年アメリカの演奏会でミルシテインの代役を藤原浜雄が務めたエピソードは先日のコンサートで知った。

パガニーニ(1782-1840)のこの作品は初めて聴いた。今回のコンサートのプログラムには前2回にはなかった曲の解説が付いていた。川畠自身が自らの言葉で書いた解説でとても興味深いものだった。原曲はイタリアの作曲家パイジェッロのオペラ「美しい水車小屋の娘」のアリア。パガニーニが編み出したと言われる超高度な技巧の演奏に目を奪われた。指で弦をはじくピッチカート奏法を使いながら同時に弓で弦を弾く技がいとも簡単に繰り返された。序奏と主題、7つの変奏曲と終結部からなる曲で最初から最後まで今まで見たこともない特殊な奏法を駆使しての演奏は迫力充分であった。視覚的にも大いに楽しめた。

無伴奏のヴァイオリン曲に続き、プログラム最後の2曲はピアノとヴァイオリン。

グノー(1818-93)の「アヴェ・マリア」は誰もが耳にしたことがある名曲。川畠には思い入れのある曲であることがプログラムに書かれていた。彼が8歳の時、1980年ロサンゼルスで命の危険にさらされた時に彼を献身的に世話してくれた、今は亡き“はる子”さんのアメリカンネームが“マリアン”だったと言う。2000年に20年ぶりに訪れたロサンゼルスでのコンサートの最後にこの曲を演奏したとのこと。今までの人生で彼を支えてくれた人たちへの感謝の気持ちがこの曲を演奏するたびに湧き上がるそうである。

サラサーテ(1884-1909)はパガニーニとともにヴァイオリンの名手として知られる。サン=サーンスなどから献呈された曲もあって有名なヴィルトゥオーゾ。「序奏とタランテラ」を演奏会で聴くのは多分初めてのような気がした。プログラムの解説によるとタランテラとは高速の3連音符を用いた舞曲。この曲の冒頭の抒情的な旋律を耳にして聴いたことがあると思った。シンプルで快活な曲であるが、演奏者にとっては細かな運指が長く続くので負担が大きいようである。驚異的なテクニックでヴァイオリニストとして当時の人々を魅了したサラサーテならではの曲を堪能した。(*帰宅して、ふとCDの棚を見ると五嶋みどり“アンコール!ヴァイオリン愛奏曲集”が目に入った。全20曲の中に「序奏とタランテラ」が入っていた。)

前2回よりも今回は鑑賞の充実度が高かった。演目が自分の好みに合っていた。聴覚的にも視覚的にも小ホールで満足できるコンサートとなった。ピアニストの大伏啓太(Keita Oobushi)はベートーヴェンのソナタでピアノ・パートが難しいといわれる第1楽章を含めて、いろいろな曲で安定した伴奏でヴァイオリンを引き立てた。また、来年も来てみようかと思えるようなコンサートであった。

アンコール曲は①アルファンブラの思い出  ②ディ-ニク:ひばり  ③映画「ディア・ハンター」より “カバティーナ”。
 



 

宮崎陽江 ヴァイオリン協奏曲の夕べ 2015

宮崎陽江のヴァイオリンは4年前に「宮崎陽江ヴァイオリンの夕べ」でリサイタルを聴いたのが初めてである。2年前のKitara小ホールでは矢崎彦太郎指揮札響と共演した折に、「フォーレ:ヴァイオリン協奏曲」など札幌で聴く機会の少ないコンサートを聴いてみた。翌年に大ホールで開かれた秋山和慶指揮札響とのコンサートは聴かなかった。今回が3度目のコンサート。

スイスを拠点にヨーロッパで活躍している宮崎陽江が10年ほど前から札幌と東京で毎年開催しているコンサート。数年前からはオーケストラとの共演も行なっている。今年の《音楽の友 6月号 “People”》に彼女の取材の文と写真が載っていた。この記事を見た時には既に今回のコンサートのチケットは購入していて確認済みの内容だったが、彼女がヴァイオリニストとして日本での活躍が評価されていることを知って嬉しくもあった。

7月にサントリーホールで行なわれたスワロフスキー指揮スロヴァキア・フィルと宮崎の共演による東京公演と今回12月のスワロフスキー指揮札響の札幌公演のプログラムは全く同じである。

レオシュ・スワロフスキーは1961年、チェコ生まれの指揮者。ヴァ―ツラフ・ノイマンに師事。プラハ国立歌劇場芸術監督・首席指揮者、ブルノ国立フィル管首席指揮者などを歴任。現在はスロヴァキア・フィル常任客演指揮者。14年4月よりセントラル愛知交響楽団音楽監督に就任。

2003年7月、スロヴァキア・フィルを率いてKitara初登場。(この時は天満敦子が共演。先月14日、5年ぶりの札幌公演となった「六花亭ふきのとうホール」での彼女のリサイタルは入院中のため妻が代わりに出かけた。) 09年1月は都響北海道公演で指揮。(この時のソリストが世界的に有名なイタリアのヴァイオリニストであるウート・ウーギであったのは忘れもしないコンサート。)
海外のオーケストラの日本公演でも活躍して、チェコ・フィルにも定期的に客演。日本国内オーケストラへの客演も多い。札幌で3度目という馴染みの指揮者。

最近の「宮崎陽江のヴァイオリン協奏曲の夕べ」は大々的にスポンサーがついて、今回も“Panasonic Concerts”として開催された。少なくとも東京と札幌はPanasonicが支援しているようである。来年のヨーロッパコンサートもパナソニックがスポンサーとなる。北海道では北海道放送などいくつかの会社も支援に加わって、エントランスやホワイエにも多くの祝いの花束が飾られていた。地下鉄中島公園駅を降りた直後からKitaraへ向かう人の群れが、続いていた。会場は高校生を含む幅広い世代の聴衆でいつものシニア層が多く占める札響定期の演奏会とは少々様子を異にしていた。

2015年12月4日(金) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 オール・チャイコフスキー・プログラム
   歌劇「エフゲニー・オネーギン」Op.24 より ポロネーズ
   ヴァイオリン協奏曲 二長調 Op.35
   交響曲第5番 ホ短調 Op.64

コンサートの最初はチャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」の第3幕冒頭の舞踏会で演奏されるオーケストラ曲。ポーランド民族舞曲ポロネーズのリズムを用いての壮麗な音楽。2年前のMETビューイングで観たオペラの場面を思い浮かべて楽しめた。若き日の恋の想いが通じなくて、今は伯爵夫人となって舞踏会で脚光を浴びる彼女に言い寄る男を毅然として撥ね退ける役を演じた当代随一のソプラノ歌手、アンナ・ネトレプコの演唱を思い出した。絢爛豪華な舞踏会の様子が美しい音楽となってホール全体に響き渡ると気分も高揚してコンサートの景気付けに相応しい曲であった。トロンボーン3人が入って音楽が一層引き立った感じがした。

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はベートーヴェン、メンデルスゾーンと共に最も親しんだヴァイオリン協奏曲。十年ほど前までこれらが「三大ヴァイオリン協奏曲」と呼ばれていると思っていた。宮崎陽江自身もプログラムにそのように書いているが、実際はベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスの3曲が「三大ヴァイオリン協奏曲」で、甲乙つけがたいチャイコフスキーの曲を含めて「四大ヴァイオリン協奏曲」と呼ぶのが伝統的らしい。人の好みもあるので、決定的な根拠もないようである。しかし、音楽の盛んなドイツ出身の作曲家とロシア出身の作曲家の曲は現代ではともかく、19世紀当時では位置付けが違っていたようである。(*「世界の三大オーケストラ」や「アメリカの五大オーケストラ」など、時代の流れで変化があって当然なのに、現在でもこんな言葉が使われている。)

宮崎陽江はフランスで幼少期を過ごし、スイス在住でヨーロッパでの活躍も多くて、フランス音楽を得意にしているようである。リサイタルではそのような音楽を聴く機会があるが、大ホールで聴衆を多く集めるとなると人々に愛されているヴァイオリン協奏曲をプログラムに組むことになる。それなりに堂々としたコンチェルトではあったし、カデンツァに彼女らしい特徴も出ていた。
オーケストラとの共演でもヨーロッパも含めて経験を積んでいるので、彼女なりの華やかな音楽は楽しめるが、大ホールに拘らずに彼女独特の音楽のリサイタルを聴きたい気がした。そういう意味で、アンコール曲に弾いた自作「幻想の炎 “Fantaisie flamboyante”は魅力的であった。

チャイコフスキーの交響曲はレコード時代は「悲愴」しか聴く機会を持たなかった。今でこそ、「第4番」や「第5番」も聴く機会が多くなった。2001年2月、ロストロポーヴィチ指揮ロンドン交響楽団の演奏で「第5番」の魅力を知った。その後の演奏会では何十回となく聴いている気がする。CDで小澤征爾指揮ベルリン・フィルの録音で聴く機会が多いのだが、最近はゲルギエフ指揮マリインスキー響のDVDで試聴することも多くなった。つい先日は偶々手元にあったエッティンガー指揮東京フィルのCDを聴いてみた。何気なく耳にしてもこの曲は壮大である。

スワロフスキーは今までソリスト目当てであまり注目していなかった。外見からして60代のヴェテランかと思っていたら、まだ50代前半。身体の動きも若々しくて、躍動感あふれる指揮ぶり。オーケストラを手中に納めて、オーケストラの音を存分に引き出している感じがした。(*来年10月札響定期でエリシュカの「第5番」が聴けるが、今から楽しみである。)

弦楽器を含め木管、金管や打楽器の総奏は極めて迫力のある演奏。詰めかけた多くの学生はこの「第5番」が目当てだったのかと納得できるような木管楽器・金管楽器奏者の活躍が印象に残った。P席は売り出されなかったが1600の座席が埋まっていて大盛況であった。ソリストが中心のコンサートでオーケストラは脇役に回った思いか、オーケストラのアンコール曲はなかった。

音楽家のホールでのスケジュールは通常1・2年前から決まっていると言われるが、「宮崎陽江コンサート 2016」 東京・札幌公演の日程も決まっていて、先行案内のチラシが入っていた。 指揮者が大友直人なので、来年の計画に入りそうである。

前橋汀子アフタヌーン・コンサート2015

前橋汀子は日本を代表するヴァイオリン界の第一人者である。今日では海外の音楽院で学ぶ学生は雨後の竹の子のごとく無数にいるが、彼女の時代はごく限られた人にしか与えられない環境の下での海外留学であった。17歳で旧ソ連国立レニングラード音楽院(現サンクトペテルブルグ音楽院)の日本人初の留学生に選ばれ、3年間学んだ。その後、ジュリアード音楽院でロバート・マン、ドロシー・ディレイの指導を受け、さらにスイスでシゲティ、ミルシティンの薫陶を受けた。こんな経歴のヴァイオリストは他にいないだろう。
その後の国内外での活動は言を待たない。現在では彼女の後を継ぐ日本の若い有能なヴァイオリニストが続々と輩出している。

以前暮らしていた旭川でも彼女の演奏会は聴いたことがあると思うが、記録がない。92年から05年までは6回だけだったが、10年のリサイタルを切っ掛けに毎年のリサイタルを聴くようになった。12年秋から始まったアフタヌーン・コンサートは毎年聴くほどではないと思っていたが、その時期になるとKitaraに足が向く。
古稀を越えて前橋の演奏活動は疲れることを知らない。14年4月の《バッハ無伴奏ヴァイオリン全曲演奏会》の迫力あるリサイタルは今も脳裏に残る。

2015年10月4日(日) 1:30PM 開演  札幌コンサートホールKitara 大ホール

〈プログラム〉
 エルガー:愛の挨拶
 ベートーヴェン:ロマンス第2番 op.50
 べートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 op.47 「クロイツェル」
 クライスラー:ウィ-ン奇想曲
 クライスラー:プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ
 パガニーニ(クライスラー編):ラ・カンパネラ
 サン=サーンス:動物の謝肉祭より 「白鳥」
 ショパン(サラサーテ編):ノクターン第2番 op.9-2
 ファリャ(クライスラー編):スペイン舞曲第1番
 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

定刻に間に合わずに遅れて入場する人を待つことを指示したように推察されるが、コンサートは定刻より5分以上遅れて始まった。毎回、前半は予定のプログラムがすべて終了してからステージを下がる。着慣れないロングドレスを引きずって何度も出入りするのは好まない様子である。演奏も一気に自分のペースで弾き切り、集中力を切らさないようにしているように思われる。
今回は特に前半のプログラムの中断を嫌って開始時間を遅らせたように思った。

昨年は楽章間の拍手が無くて良かったが、今年は第1楽章終了後に拍手をする人がかなりいた。第1楽章の終わりが劇的だったので、曲が終ったと思ったようだ。プログラムには第1楽章、第2楽章、第3楽章と3行で示され、楽章間の拍手は遠慮するように書かれていたのだが少々残念であった。演奏家の集中力を妨げてしまったが、前橋は軽く一礼して対応した。(*拍手を無視して、自分の集中力を保つ演奏家が多いように思う。)
「クロイツエル」の演奏自体は前橋の迫真の演奏によって聴衆の満足度は非常に高かった。このヴァイオリン・ソナタの中の最高傑作は何度聴いても感動する。

後半のプログラムはヴァイオリンの小品名曲集。
クライスラーの「プニャーニ様式による前奏曲とアレグロ」は聞いたことのない曲名だと思っていたが、Midoriのアンコール曲集に「前奏曲とアレグロ」の曲があるのに気付いた。クライスラーは自作のオリジナルでも他の作曲家の名を使って編曲のように思わせることを本で読んだことがあった。プログラム・ノートにもオリジナル作品と書かれていた。
後半の7曲は一気に演奏された。1曲終わるごとの聴衆の拍手喝采は絶えることがなかった。超絶技巧を駆使して全力で弾き切った後に、曲調がすっかり変わる曲の演奏も見事で聴衆も心を奪われるほどであった。
昨年と同じ曲はプログラム変更で結果的に新たに加わったファリャの曲だけ。馴染みのある名曲集に客席を埋めた聴衆を感動の渦に巻き込んだコンサートは大いに盛り上がった。

予定のプログラムを息つく暇もなく演奏し続ける彼女の体力と集中力に改めて驚きさえ感ずる。 前半は真っ白のドレス、後半は真紅のドレス。演奏終了後に一度ステージを離れて、再登場してアンコール曲に臨んだ。
アンコール曲は①ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女、②ブラームス:ハンガリー舞曲第1番、③ブラームス:ハンガリー舞曲第2番。

ピアノの松本和将を促してのアンコール曲の披露に聴衆は大喜び。全席指定席の同一料金で1階は満席。3階とP席などは売り出されなかったが、2階もかなりの入りで、1200名ほどの聴衆。コンサート終了後、“今日のコンサートはお得だった”と言っている人もいた。今回はサイン会もあって多分ホワイエも賑わっていたのではないか。
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fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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