プラジャーク弦楽四重奏団2016

〈Kitara弦楽四重奏シリーズ〉

弦の国、チェコが誇る伝統のアンサンブル、プラジャーク弦楽四重奏団が2年ぶりのKitara登場。前回はシューベルト、ヤナーチェク、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲を演奏した。今回は第1ヴァイオリンが若き女性に交代した。2003年の来札時も2夜にわたっての連続演奏会だったが、今回も別プログラムで2夜の演奏会で第1夜を聴いた。

2016年11月30日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈出演〉 第1ヴァイオリン/ ヤナ・ヴォナシュコーヴァ、第2ヴァイオリン/ ヴラスティミル・ホレク
      ヴィオラ/ ヨセフ・クルソニュ、 チェロ/ ミハル・カニュカ
〈プログラム〉
 モーツァルト:弦楽四重奏曲 第20番 ニ長調 「ホフマイスター」 K.499
 ブルックナー:弦楽四重奏曲 ハ短調 WAB.111
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 「ハープ」 作品74

モーツァルトが書いた23曲の弦楽四重奏曲のうち所有しているCDは第17番「狩り」のみ。ストリング・カルテットの演奏会では聴く機会の多い作曲家だが記憶に残る曲が殆ど無い。モーツァルトのフルート、オーボエ、ピアノの四重奏曲や弦楽五重奏曲、クラリネット五重奏曲のCDは手元にある。彼の協奏曲のCDはピアノ、ヴァイオリンは当然ながらフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペットと揃っている。自分でも振り返ってみて不思議に思うが、多分ハイドンやモーツァルトの弦楽四重奏曲は曲数が多くてタイトルのない曲に親しめなかったのだろう。
「第20番」が楽譜出版社のホフマイスターの依頼による作品であることから名称が付いたらしい。モーツァルトらしい美しい旋律も余りないので余韻が残らない。生で聴くカルテットはCDとは比べものにならないほど心地よい。一過性の曲になってしまうのは残念ではある。

ブルックナーの弦楽四重奏曲を意識して聴いたのは多分初めてである。彼の38歳の作品というが従来のカルテット曲と違う味が出ていて面白かった。新鮮な気分で曲が鑑賞できた。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は初期の6曲を除いて、度々コンサートの前後に繰り返し聴いて今では結構親しんでいる。ベートーヴェンの手による曲はサロン的な気分ではなくて厳しい深い音楽になっているので一層心に響くものがある。彼が残した16曲の弦楽四重奏曲のうち「第7-11番」は中期、50代に書かれた「第12-16番」が後期作品とされコンサートで取り上げられる機会が多い。
「ラズモフスキー3曲」の後に作曲された《運命》、《田園》の波に乗って、「第10番」は1809年38歳の時に〈ピアノ協奏曲・皇帝〉、〈ピアノソナタ・告別〉と同時期に書かれた。3曲の調性が同じ「変ホ長調」というのも面白い。
「第10番」を作曲した時期は戦乱の外的要因もありベートーヴェンの心も動揺していたとされる。しかし個人的な恋愛感情に包まれる状況も曲に反映しているようにも感じた。激しい感情の揺れがなく透明で安らかな表情が感じ取れる曲になっていた。
「ハープ」の呼称が付いているがピッツイカートによる演奏法がハープの音に似ていることから付いているように思えた。

客席後方は埋まっていないようだったが、カルテットが大好きな聴衆の集まりで曲への集中度が高くて、演奏終了後のマナーも控えめながらも拍手に心が籠っていて良い演奏会となった。カーテンコールが続いて、アンコール曲も2つの楽章。「ハイドン:弦楽四重奏曲 第66番 ト長調 作品77-1 第3楽章」と「同曲 第2楽章」。

※Kitaraは1997年開館で来年20周年を迎える。開館当初より自主運営事業で〈古楽演奏〉や〈弦楽四重奏シリーズ〉を主催して独自のプログラムを展開してきている。
今回のブラジャーク四重奏団の招聘も画期的な事業で、第2夜はロータス・カルテットの山碕智子を加えての弦楽五重奏曲を含む演奏会。「音楽の友コンサート・ガイド」によれば12月2日~9日まで神奈川、東京、京都、大阪でもこのカルテットのコンサートが組まれている。Kitaraが発信して他に広がっているのだとすると嬉しいことだと思う。

クァルテット・エクセルシオ 第9回札幌定期演奏会

Quartet Excelsiorは2008年以来、札幌で定期的に演奏会を開催するようになった。前回は第1ヴァイオリンの西野の休演のため弦楽三重奏団としての演奏会となった。ただし、近藤嘉宏をゲストに迎えてピアノ四重奏曲が聴けて良かった。
今年は西野も復帰して、結成23目の活動でサントリーホールではベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏を完遂し、ドイツ公演も大成功だったという。ドイツの音楽祭には20名ものファンが同行したというから凄い。

2016年11月22日(火) 19時開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈出演〉 ヴァイオリン/ 西野ゆか、 山田百子
      ヴィオラ/ 吉田有紀子、  チェロ/ 大友 肇
〈Program〉
 ハイドン:弦楽四重奏曲 第81番 ト長調 作品77-1
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第11番 「セリオーソ」 作品95
 メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第5番 変ホ長調 作品44-3

ハイドンは生涯で全68曲の弦楽四重奏曲を残した。「皇帝」が有名でCDでも所有している。ハイドンの作品はPMFでウィ―ン・フィル弦楽四重奏団が演奏会に取り上げることが多い。今年のPMFでも「ハイドン:弦楽四重奏曲 作品77-2 “雲がゆくまで待とう”」が演奏された。
ハイドンの曲は明るい曲が多い。この曲も明るい行進曲で幕を開け、ハンガリーの流行歌やクロアチア民謡も用いられていると解説には書かれていた。第1ヴァイオリンの活躍が目立った。

ベート―ヴェンの弦楽四重奏曲は演奏会で聴く機会が断然多い。全17曲の中でアルバン・ベルク四重奏団、スメタナ四重奏団のCDを多く所有している。タイトルのある曲は聴きやすく、特に「セリオーソ」は第4楽章のメロディが親しみやすい。20分程度の曲で気軽に聴くには長さも適当である。ハイドンとは曲の重みが全然違う。ベートーヴェンの内なる声が聞こえる。

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲を聴くことはめったにない。そういう意味ではいろいろな作曲家の曲を耳にする良い機会となった。彼の2つの交響曲やヴァイオリン協奏曲は充分に親しんでいる。室内楽曲でチェロソナタ第2番はマイスキー演奏のCDがあって心地よく聴ける。ロマン派の大作曲家としては特定の曲以外はあまり演奏会で取り上げられていないかなとふと思った。

クァルテットの定期演奏会を毎回多くの聴衆に聴いてもらうのはやはり難しいのだなと感じた。もう少し客が入ってくれればもっと盛り上がる気がした。
北星学園大学、同短期大学の学生たちの姿が多くみられた。クァルテット・エクセルシオはNPO法人を目指してアウトリーチ活動も行って室内楽文化の普及振興にも努めているそうである。

アンコール曲は「シューマン:トロイメライ」(弦楽四重奏版)

室内楽の夕べ(内田&MCOのメンバー)

内田光子が2001年12月、Kitaraのステージに初登場した時のコンサートのタイトルが『室内楽の夕べ』であった。その時はリサイタルなら良かったのにと思ったものだ。この時は自分が苦手とする現代作曲家のシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」が曲目の一つだったのは今でも忘れない。他の演奏曲は覚えていなかったが、当時のプログラムによると「モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番(弦楽四重奏版)」、ハイドン:弦楽四重奏曲第35番」。

内田光子withマーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)による『室内楽の夕べ』が今回の日本ツアー札幌公演の最後を飾った。

2016年10月31日(月) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈Program〉
 モーツァルト:フルート四重奏曲 第1番 ニ長調 K285
 武満 徹:アントゥル=タン~オーボエと弦楽四重奏のための
 シューベルト:華麗なるロンド ロ短調 D895
 メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20

『室内楽夕べ』 出演者 (Musicians of the Chamber Music Concert)
 Piano:内田光子(Mitsuko Uchida)
 Flute:キアラ・トネッリ(Chiara Tonelli)、Oboe:吉井瑞穂(Mizuho Yoshii-Smith)
 Volin:イタマール・ゾルマン(Itamar Zorman)、シンディ・アルプラハト(Cindy Albracht)、エンヤ・ゼムラー(Henja Semmler)、ソーニャ・シュタルケ(Sonja Starke)
 Viola:ジョエル・ハンター(Joel Hunter)、フロラン・ブルモン(Florent Bremond)
 Violoncello:クリストフ・モリン(Christophe Morin)、
         フィリップ・フォン・シュタイネッカー(Philipp von Steinaecker)

今夜のプログラムで比較的に親しんでいる曲は「フルート四重奏曲」だけである。ジェームズ・ゴールウェイ&東京クヮルテットのCDで良く聴いたものである。最近は耳にしていなくて今朝しばらくぶりで聴いて懐かしい思いだった。
編成はフルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。第1楽章はアレグロで主題はいずれもフルートが提示により、ソナタ形式。第2楽章はアダージョで3部形式。弦楽器がピッチカートで伴奏。悲壮感が漂う緩徐楽章。第3楽章はロンドー。ロンド形式で華麗なフィナーレ。

今年はモーツァルトの生誕260年だったが、日本の作曲家として西欧でも演奏機会の多い武満は2016年は没20年の記念年である。ブログラムの解説によると、作品はイーストマン音楽院の委嘱で1986年に作曲された。この曲は詩集からインスピレーションを得て、「鳥の主題」の緩やかな旋律を奏でて聴く者の空想を広げる感じがした。吉井は世界で活躍するオーボエ奏者として知られるが、聴衆の期待にたがわぬ素晴らしい演奏であった。武満の作品は何曲か聴いているが、こんなに魅力あふれる曲と出会ったのは初めてと思うような強烈な印象を受けた。聴く者の心に響くオーボエ演奏に感動した聴衆の反応はひと際目立った。

内田は“シューベルト弾き”と呼ばれる時代もあった。今夜はピアノとヴァイオリンのための小品が取り上げられた。彼の亡くなる2年前の作品。単一楽章で書かれた長大な曲。ロ短調の悲劇的な幕開けから華麗なロ長調のロンドへ。更にテンポが速くなって壮大なコーダ。ヴァイオリンの技巧的な演奏が華やかで協奏曲の様相を呈してピアノとの対話が印象的であった。シューベルトのヴァイオリン曲は今まで聴いたことが無かった。シューベルトの作品とは思えないような激しいリズムと華麗な曲を楽しく聴けた。
イスラエル出身のゾルマンは魅力的な演奏で聴衆の心を掴んだ。内田が譜めくりスト用の椅子に座って彼にアンコール曲の演奏を促した。イタマール・ゾルマンはMCOのコンサートマスターに抜擢された新進気鋭のヴァイオリニストかなと思った。30代前後の若くて初々しい印象を受けた。アンコール曲は「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第3番より“ラルゴ”」。

最後を飾ったメンデルスゾーンの曲は彼が16歳の時に書いた作品。楽器編成はヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2。4楽章構成の大曲。室内楽と言っても交響的なスケールを持ち、流麗で豊かな色彩感と幻想的なロマン溢れる曲となっている。7年後の1832年に補筆、改定が施されているというが、若さが横溢する曲として満足感を味わえた。
メンデルスゾーンは恵まれた家庭環境で子供時代を過ごし、8歳でピアノと作曲を習い、9歳で演奏会を開いて天才ぶりを示したという。17歳の時に、かの有名な「真夏の世の夢 序曲」を作曲したことは知っていたが、この「弦楽八重奏曲」の演奏を聴いて改めて彼が天才肌の音楽家であったことを再認識した。
曲の素晴らしさを伝えるMCOのメンバーの質の高さにも魅せられた。何度ものカーテンコールに応えてアンコールに第3楽章を再び演奏した。

今夜の小ホールはほぼ満席で札幌公演の最後を飾るにふさわしい盛況となった。
尚、昨日の内田光子のアンコール曲は「モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番より 第2楽章 “アンダンテ・カンタービレ”」。


   

札幌文化芸術劇場 プレコンサート~オペラ・バレエ名曲集

本格的なオペラやバレエ、ミュージカルなどの公演に適する北海道初の多面舞台を備えた劇場(2300席)が2018年10月にオープンの予定である。開館が未だ2年先の事であり、プレコンサートと銘打つのは少々大袈裟な感じがしないわけでもない。札幌市民にいち早く情報公開をして市民のための劇場運営を目指して運営に備える試みなのだろうと思う。当日は映像による「札幌市民交流プラザ」の施設紹介もあることで興味を抱き、妻と一緒に参加することにした。

~札響メンバーによる珠玉のオペラ・バレエ名曲集~

2016年8月14日(日) 開演13:30  札幌コンサートホールKitara小ホール

出演/ 大平まゆみ、織田美貴子(ヴァイオリン)、青木晃一(ヴィオラ)、坪田亮(チェロ)

〈プログラム〉
 ビゼー:歌劇「カルメン」より
        アラゴネーズ、セギディーリャ、闘牛士の歌 ほか メロディ
 マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 間奏曲
 ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」より 序曲
 ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より 結婚行進曲
 チャイコフスキー:バレエ「くるみ割り人形」より 小さな序曲、トレパック、花のワルツ
 チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」より 情景、4羽の白鳥の踊り
 ヴェルディ:歌劇「アイーダ」より 凱旋行進曲

コンサートに先立って映像による《札幌市民交流プラザ》(Sapporo Community Plaza)の紹介が行われた。札幌市民交流プラザは札幌の都心に誕生する新しい文化施設。札幌文化芸術劇場(3階~9階)、札幌文化芸術交流センター(1階・2階)、札幌市図書・情報館(1階・2階)の3つの施設から成る。隣接する高層棟には放送局やオフィスが入居するほか、地下には駐車場や公共駐輪場などが整備される。

札幌文化芸術劇場はオペラ、バレエ、ミュージカルなどのほかにポップス、歌謡コンサートなど様々なジャンルの公演に利用される。他都市の劇場や地元文化芸術団体との共同制作などを通して、札幌の舞台芸術の振興を図る。講演会、入学式、卒業式など大規模な集会にも利用される。
こけら落とし公演はオペラ「アイーダ」。神奈川県民ホール、兵庫県立芸術文化センター、iichiko総合文化センター、東京二期会との共同制作。札幌からスタートして北から南まで日本縦断のオペラ公演。指揮はイタリアの若手指揮者アンドレア・バッティスト―ニが務める。(*今、日本で注目のバッティスト―ニの名を聞いてワクワクした。札幌公演のオーケストラは札響。)

10分ほどの映像の後、1時間のコンサート。札響コンサートマスター大平の巧みな話術でフランス、イタリア、オーストリア、ドイツのオペラの名曲が演奏された。大平まゆみがコンサートマスターを務める札響の定期演奏会は何十回も聴いていて、コンマスの仕事ぶりには好感を持っているが、彼女が何度も定期的に開いているリサイタルは聴く機会がない。彼女は人気のある演奏家でリサイタルでも巧みなトークを繰り広げていることが想像された。妻の話では講演会で彼女の話を聴いたことがあるという。演奏だけでなく、トークも得意なようである。適度な説明をしながら演奏会を進めた。他の3人にも話をする機会を与えてコンサートを進行した事にも感心した。マイクの使い方も上手で後方の席でも明瞭に彼女の話は聞こえた。
チャイコフスキーのバレエ音楽から名曲を演奏した後、終曲は《アイーダ》より凱旋行進曲。カルテットの演奏曲としては無理だったと思うが、2年後の〈こけら落とし公演〉を意識して選曲したのだろう。
アンコール曲に《ヴェルデイ:椿姫より 「乾杯の歌」》を演奏してコンサートを締めくくった。予想していたよりは良いコンサートとなった。新劇場のイメージを心に描きながら聴けただけでも良かった。










ふきのとうホール 夏のフェスティバル2016 シューベルト弦楽三重奏曲・ピアノ五重奏曲

昨年7月にオープンした《ふきのとうホール》が夏のフェスティヴァルを3日間にわたって開催する。今月の札幌では好みのコンサートが少なくて何となく物足りない感じがしていた。外国の奏者の名は耳にしたことはなかったが、国内の室内楽の分野での活躍が目立つ演奏家の名と演奏曲目を見て急に思い立ってチケットを2日前に購入した。

2016年8月12日(金) 午後7時開演  ふきのとうホール(六花亭札幌本店6階)
 
ふきのとうホール 夏のフェスティバル 第2日 シューベルトの内なる声

〈出演〉 ゴットリープ・ヴァリシュ(ピアノ)、マオロ・カローリ(フルート)、白井圭(ヴァイオリン)、佐々木亮(ヴィオラ)、花崎薫(チェロ)、吉田秀(コントラバス)
 
〈曲目〉 シューベルト:弦楽三重奏曲 変ロ長調 D471、  フルートとピアノのための「しぼめる花」による序奏と変奏曲 op.160, D802、  ピアノ五重奏曲 イ長調 「ます」 op.114, D667 

開演に先立って〈ふきのとうホール音楽監督、岡山潔〉から本日のプログラムについて10分程度のプレトークがあった。
シューベルトの二重奏曲、三重奏曲、五重奏曲が取り上げられた演奏会。特にフルートとピアノによる二重奏曲にはシューベルトの過去の作品の旋律が数多く使われ演奏も難曲で知られるという。

シューベルト(1797-1828)は弦楽四重奏曲の作品を数多く残している。PMF2016でも「第9番」、「第12番」を聴いたばかりである。八重奏曲も聴いた。彼の「弦楽三重奏曲」(Vn,Va,Vc)は1曲のみで19歳の時に書かれた。作品は未完で第1楽章のみである。実際は第2楽章の一部が書き残されているので、その部分も演奏された。結構、聴くに値する曲だと思うが何らかの理由で完成せなかったり、破り捨てたりした作品がシューベルトには少なからずあるようである。

Gottlieb Wallischは12歳でウィーン楽友協会大ホールでデビューして以降、欧米を中心に世界各地でリサイタルを行い、ウィーン・フィル、ウィ-ン響などと共演。現在はジュネーヴ高等音楽院教授。
Mario Caroliはイタリア生まれ。フィルハーモニア管、東京フィル、フランス国立放送管などと共演。録音では40枚のCDをリリース。ポリーニやパユからの評価も高く、“フルートのパガニーニ”の評もある。
 
“歌曲王”シューベルトは自作のドイツ歌曲を室内楽の素材として用いている。早世したシューベルトが晩年ともいえる27歳の時に書いた作品。“美しき水車小屋の娘”、“ロザムンデ”、“死と乙女”の旋律も入れている。これまでの彼の短い人生で起きた様々なことを振り返っての想いが込められてるような気がした。(*冒頭の解説ではベートーヴェンの第7交響曲の第2楽章のメロディも使われているという話もあった。)

背の高い細身のカロ―リは踊るような仕種で楽器を吹きながらリズムを取ってフルートから美しい音を自由自在に引き出していた。音の魔術師のような世界に浸れた。ピアノのヴァリッシュもヴェテランで様々な色合いの音を生み出せる達人に思えた。

後半の「ます」は何十年も前から聴き親しんだメロディがふんだんに出てくる。このピアノ五重奏曲は1819年、シューベルト22歳の時の作品。この作品の楽器編成は特徴的である。ヴァイオリンがひとつでコントラバスが使われている。ピアノと弦楽器が対照的な音となってバランス良く聴こえた。コントラバスの低音が素晴らしい調和を生み出したように思えた。5楽章編成。全曲が明るい雰囲気に満ち溢れた魅力的な作品。第4楽章で弦楽のみの合奏で《歌曲「ます」》の主題が奏されたのが特に印象に残った。

弦楽器奏者は4人ともに東京藝術大学卒。白井 圭(Kei Shirai)は1983年、トリニダートトバゴ生まれ。2001年日本音楽コンクール第2位、2009年ミュンヘン国際音楽コンクール第2位、ハイドン国際室内楽コンクール・ピアノトリオ部門第2位。ソリストとしてはウィ-ン楽友協会でのリサイタルやチェコ・フィルなどと共演。2011年ウィ-ン・フィル日本ツァーに現地から参加。現在、いくつかの室内楽のメンバーとしてヨーロッパで活躍して、神戸室内管のコンマスも務める。

佐々木 亮(Ryou Sasaki)は1969年生まれ。ジュリアード音楽院卒業。91年日本現代音楽協会室内楽コンクール第1位、92年東京国際音楽コンクール室内楽部門第2位、アスペン音楽祭、マールボロ音楽祭に参加。2つの大学卒業後はソロ、室内楽、オーケストラ奏者として全米各地で演奏活動を行う。ニューヨーク・リンカーンセンターでのリサイタル、内田光子やヒラーリー・ハーンなどとの共演は特筆される。2004年N響入団、08年首席奏者、同時にソリスト、室内楽奏者として幅広く活動している。

花崎 薫(Kaoru Hanazaki)は1981年第50回日本音楽コンクールチェロ部門第3位。東京芸大在学中にベルリン芸術大学に2年間留学。86年にもドイツ留学。89年エルデーディ弦楽四重奏団結成。11年、長年にわたって首席チェロ奏者を務めた新日本フィルを退団。現在、愛知県立芸術大学教授。

吉田 秀(Shu Yshida)は1963年生まれ。東京藝術大学管弦楽研究部首席奏者を経て、91年N響に入団。現在、首席奏者を務める。デュメイ、ズーカーマン、キュッヒル、クレーメル、ピリス、アルゲリッチ、カルミナ弦楽四重奏団などと共演。霧島国際音楽祭、宮崎国際音楽祭に参加。東京藝術大学準教授、東京音楽大学客員教授。

弦楽四重奏団の演奏会は増えているが、珍しいデュエット、トリオ、クインテットの演奏機会は多くない、今回のプログラミングは大変良かった。音楽監督が力を入れて取り組んだ成果と言えよう。今年のPMFでコントラバスとハープの二重奏が楽しめたが、コントラバスを生かしたプログラムがあると面白い。素晴らしい室内楽ホールの良さが生きる意欲的なプログラミングを今後とも期待したい。



プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR