樫本大進&コンスタンチン・リフシッツ

樫本とリフシッツのデュオを聴くのは2002年、2014年に続いて3回目。
今日の午前は心臓病の最終チェックの日。脚の痛みが心臓病と関係がないか、症状を看護師に予め伝えて主治医の診察の前に胸部X線、心電図や両脚全体のエコー検査などの結果、内科の観点からは異常なしと診断された。一安心ではあったが、脚の痛みは間断なく続いている。整形外科に通うことになるだろう。
今日は2月に入って初めてのコンサート鑑賞となったが無理をしてタクシー・地下鉄・タクシーを乗り継いで会場にたどり着いた。9月にチケットを購入していたので聴き逃したくなかった。

2016年2月16日(火) 開演19:00  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 Op.30-2
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100
 プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ヘ短調 Op.80

樫本とリフシッツの《ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集》は2年前に買い求めていた。前回は第4番、第10番を聴いた。今回の「第7番」は数回聴いただけだったが、とても親しめる曲。コンサートでは初めて聴いたと思うが、二人の丁々発止で奏でられる4楽章構成の曲を1階正面の席から存分に楽しんだ。「春」や「クロイツェル」ほど有名ではないが、タイトルがついていると人気曲になる感じがした。

前回はブラームスの第1番。今晩は「第2番」。ブラームスのヴァイオリン・ソナタに親しむようになってから日が浅い。3年前のムターのコンサートで買った彼女のサイン入りのCDで聴くブラームスはこの上なく美しい。ロンドンで生まれ少年時代をドイツで過ごした樫本とウクライナ生まれのリフシッツは互いにドイツ語で会話を交わす間柄のようである。ドイツの作曲家の曲目が中心になるのは当然だろうと思った。ブラームスの叙情味あふれる作品がヴァイオリンとピアノの対話を通して実に美しくホールに響き渡った。

プロコフィエフ(1891-1953)のヴァイオリン曲が演奏される機会は極めて少ない。手元にシゲティ演奏の「ヴァイオリン・ソナタ第1番」のCDがあって、コンサート前に2度ほど聴いてみた。集中力が足りないのか、1・2度耳にしたくらいではよく分らない。プロコフィエフは1917年のロシア革命の年にソヴィエトを脱出してアメリカに亡命した。旅の途中で日本に立ち寄った話は良く知られている。十年ほどして祖国に帰国してから書いた曲で「ピーターと狼」は彼の最も有名な作品として親しまれている。(*小澤征爾の指揮とナレーションでボストン響のCDを度々聴いたのを思い出す。)
演奏曲として珍しい曲を聴くのもコンサートの楽しみである。聴きなれない曲を生演奏で聴くとCDとはとても違った印象を受ける。現代音楽作曲家として新しい音楽を作り出したプロコフィエフ独特の雰囲気を持つ曲。1938年に書き始めた曲が完成したのが1946年というから、共産主義社会でソヴィエト政府と自分の目指す音楽の狭間で生まれた作品と言えよう。
厳粛な第1楽章、力強い第2楽章、瞑想的でリリシズムを湛えた第3楽章、拍子が目まぐるしく変化して民族舞曲風のフィナーレへ。

それぞれの音楽性や性格が融合して生まれる音楽の何と美しいことか。それぞれのリサイタルとは違う雰囲気を楽しめるデュオを心行くまで堪能できたコンサートであった。

アンコール曲は《バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ BWV1019遺稿より 「カンタービレ・マ・ウン・ポコ・アダージョ」》。

今回の日本公演は福岡で始まり、宮崎、大津、東京、所沢、札幌、大阪と続いて最終公演が19日の横浜。
 
今夜は往復ともに地下鉄とタクシーを利用して無理をしたが、明日のペレーニのチェロ・リサイタルは無理はできない。多分、コンサートは断念することになるだろう。








 

ヴァイオリンXチェロ=“クラシックはおもしろい?!”

〈KitaraランチタイムコンサートⅠ〉

三上亮(元札響コンサートマスター)と市寛也(N響チェロ奏者)のお話付きコンサート

2015年10月6日(火)13:00開演 札幌コンサートホールKitara小ホール

〈プログラム〉
 エルガー:愛の挨拶 作品12
 ドヴォルジャーク(クライスラー編曲):8つのユモレスク 作品101 B.187
                             第7番 変ト長調
 ヘンデル(ハルヴォルセン編曲):パッサカリア
 J.S.バッハ:「2声のインヴェンション」より
           第1番、第4番、第8番、第13番
 リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
 サン=サーンス:「動物の謝肉祭」より “白鳥”
 マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 間奏曲
 ピアソラ:リベルタンゴ

上記の作品の演奏時間は35分程度でトークを入れながら1時間のコンサート。今から約半年前の4月27日にザ・ルーテルホールを会場にして「三上亮&金子鈴太郎デュオ・リサイタル」が行なわれた。ヴァイオリンとチェロの組み合わせなので、プログラムは似たようなものになる。ただ、そのコンサートにはピアニストが加わって「チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲」の演奏があった。その時は、その曲が目当てで聴きに行っていた。

そのコンサートではチェリストの金子がトークが得意ということで進行役を務めた。今回は三上が進行役。
最初の「愛の挨拶」は前回はトリオでの演奏。原曲はピアノ曲だがエルガーはオーケストラ用にも編曲した。ヴァイオリンやチェロのためにも編曲されて親しまれている。エルガーの妻アリスは9歳年上で作家でもあったが、結婚後は献身的に夫に尽くし、彼を支えた。妻の亡き後に彼女との婚約記念に書いたのがこの作品。爽やかな美しさをたたえた優しさに溢れた曲。

「ユモレスク」はアンコール・ピースとして耳にする機会が多い。「パッサカリア」は前回のアンコール曲だった。原曲のヴィオラをチェロに換えての演奏。N響のチェロ奏者の市寛也(8月31日のN響札幌公演に出演)はチェロでの演奏は難しいと答えていた。しばしば耳にするメロディでバロック音楽の雰囲気が出ていた。
バッハの「インヴェンション」はピアノ学習者には馴染みの曲で、全部で15曲あるが、そのうち時間の関係で4曲のみ演奏と話があったが、自分にとってそれほど親しのある曲ではなかった。ピアノの右手をヴァイオリン、左手をチェロが担当と説明があったが、ピアノは習ったことは無く余りピンとこなかった。

「熊蜂の飛行」では演奏のテンポに工夫が凝らされて、解りやすい説明があった。最初チェロにテンポを遅くして演奏させて、ヴァイオリンが見本を示し、再度チェロが速いテンポで一部を演奏し直して、テンポの大切さを伝えた。
「白鳥」はチェロの演奏で親しまれているが、ヴァイオリンが旋律を奏でチェロが伴奏。ヴァイオリンとチェロの融合を試みたと言う。
オーケストラ曲の「マスカーニ:間奏曲」では美しい調べがホールに流れた。

最後のピアソラ「リベルタンゴ」はヨーヨー・マの名演奏が話題となって広まったらしい。

約4年前にN響チェロ奏者になった市(Ichi)に若返ったオーケストラメンバーの状況を聞き出していたが、何となくぎこちない進行役。三上のヴァイオリン演奏には惹かれるがトークは慣れつつあるとはいえ得意ではなさそうである。ホール事務局から依頼されたランチの勧めと次回以降のコンサートの聴衆へのコマーシャルにも少々違和感があった。(これは全く個人的な感想である。)

アンコールに応えて「モンテイ:チャールダーシュ」と言って演奏を始めたが、途中から客席から笑いが、、、。共演者は違うが、メロディがいつの間にか日本で流行った演歌「津軽海峡冬景色」に変わった。半年前と同じ、演奏自体は素晴らしいが、各地で笑いを取る工夫をしているらしい。反応は人それぞれだろうが、今回のコンサートの流れは自分の好みには合わないと思ったのが正直な感想。今回は普通のコンサートと違ってホールの支援があっての低料金でのコンサートだったので、欲は言えない気もした。

低料金で40分程度のミニ・コンサートは歓迎。ランチタイム・コンサートは12時前後が望ましい。ランチの時間が2時過ぎになるのは一般的ではない気がする。個人の好みによるが、コンサートは余計なトークは無い方が良い。(最低限の曲の解説だけで良い。)

三上亮は2007年から11年まで4年間、札響コンマスを務めた後、室内楽を中心として全国各地で幅広い活動を展開していて人気のヴァイオリニストである。単音しか出せないヴァイオリンやチェロで演奏会を開くのは曲も限られているので難しいと思う。三上は新しいことに挑戦しているのではないかという気がする。今後の一層の活躍を期待したい。

日下紗矢子&ペーター・ブルンス デュオ・リサイタル

《六花亭 ふきのとうホール》 オープニングフェスティバル
 
数あるオープニングコンサートのうちでこのコンサートを選んだ理由はベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団のコンサート・マスターを務めて大活躍している日下紗矢子の演奏を聴く機会を狙っていたからである。

今日から4日連続で続くコンサート鑑賞に備えて整形外科病院で腰にブロック注射をしてもらい、腰部脊柱管狭窄症に伴う痛み、しびれを改善する薬を4週間分処方してもらって体調に万全を期することにした。薬が切れたこともあって先週はコンサートの行き帰りにかなりつらい思いをした。今月は時計台のボランティア活動も休み、コンサート鑑賞に万全の態勢を取っている。
 
ヴァイオリンとチェロの絶妙なる二重奏

2015年7月23日(木) 開演時間 19:00  ふきのとうホール

日下紗矢子(Sayako Kusaka)は1979年、兵庫県生まれ。東京藝術大学を首席で卒業。浦川宜他、清水高師らに師事。アメリカの南メソディスト大学、同大学院卒業。06年からフライブルク音楽大学でクスマウルに師事。2000年パガニーニ国際コンクール第2位、日本音楽コンクール第1位、シベリウス国際コンクール第3位など輝かしい活躍。08年、ベルリン・コンツェルトハウス管(*旧東ドイツのベルリン交響楽団)のコンサートマスターに就任。09年、ベルリン・コンツェルトハウス室内管を設立し、リーダーとして活動。10年以降は毎年来日して、国内主要オーケストラと共演し、室内楽、ソロと活発な活動を展開している。2013年より読売日響のコンマスに就任。日独二つのオーケストラのコンサートマスターを兼任。ベルリン在住。

ペーター・ブルンス(Peter Bruns)はベルリン生まれ。ドレスデン国立管やバイロイト祝祭管で首席奏者を歴任。ライプツィヒ放送響、ベルリン響などと共演。現在はベルリン、ウィ-ン、ロンドン、ニューヨーク、東京などの主要コンサートホールで演奏し、ドイツを代表するチェリストとして活躍。ドレスデン音楽学校、ライプツイヒ音楽学校などの教授を務めるなど後進の指導にもあたり、指揮活動も行っている。

〈Program〉
 ラヴェル(1875-1937):ヴァイオリンとチェロのためのソナタ 
 シュールホフ(1894-1942):ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲
 コダーイ(1882-1967):二重奏曲 作品7

現代作曲家の作品として位置づけられる曲がプログラムに並んだ。全て初めて耳にする曲。

ラヴェルはピアノ曲や管弦楽曲を多く作曲しているが、室内楽は珍しい。この作品は1922年完成の曲。ラヴェル独特の絵画的描写が見られたが、当時の現代作曲家のストラヴィンスキー(1882-1971)などに通ずる音楽を感じ取った。何だかピカソの作品を思わせるものを曲に感じた。ラヴェルの作品でこんな現代曲もあるのかと思った。
4楽章構成。第1楽章がアレグロ。第3楽章がレントでイタリア語と同じ指示だが、第2楽章が「非常に元気よく」、第4楽章が「元気一杯に生き生きと」とフランス語の指示に興味を持った。
全体的にチェロの活躍が目立って曲が引き立てられた感じがした。特に第2楽章でのチェロの力強いピッツィカート奏法が印象に残った。この曲でラヴェルは新し音楽を試みたように思った。

シュールホフはチェコの作曲家。ピアニスト、指揮者としても活躍したと言われる。4楽章構成で結構聴きごたえがあった。

コダーイは先日のイシザカ・ダンジュウロウのコンサートでも「チェロ・ソナタ」が演奏された。曲は3楽章構成。コダーイはバルトークと共にマジャールの民謡の採集を行ない、多くの研究論文も残して民謡集も出版。ハンガリーの偉大な作曲家であったが、ブタペスト音楽院教授(1907-41)を務めた音楽学者でもあった。

3曲とも各々20-25分程度の曲で、それぞれ興味深い曲。演奏も現代曲ならではの創意工夫がなされて聴きごたえがあった。二人の演奏家の呼吸もピッタリでホールを埋めた満員の聴衆からもブラヴォーの歓声も上がり拍手大喝采。期待の日下の演奏も素晴らしかった。日下紗矢子はリーダーとしての活躍がうかがえる堂々たる演奏ぶりであった。

ポピュラーな曲と同様に、いや、むしろ初めて親しく聴く20世紀の音楽が面白くもあった。

アンコール曲は「グリエール:カンツォネッタ」。

日下は7月中旬にコンマスを務めるベルリン・コンツェルトハウス室内管のコンサートを東京・神奈川などで開催したが、この後、九州や東京でソロ・リサイタルも予定されている。旧西ベルリンと旧東ベルリンのトップ・オーケストラを同年齢の日本人、樫本大進と日下紗矢子がコンサートマスターとして活躍していることは素晴らしいことである。今後の彼らの活躍を祈るとともに、引き続き才能ある若い日本人演奏家がどんどん海外に出ていくことを期待したい。

郷古 廉&津田裕也 デュオ・リサイタル

《若い二人の感性が織りなすソナタの世界》

六花亭札幌本店「ふきのとうホール」のオープンを祝うフェスティバル(2015.7.5~7.31)で日本の若手演奏家二人がデュオを組んでの登場!

郷古廉は2006年メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクール・ジュニア部門で史上最年少優勝を飾り、津田裕也は2007年仙台国際音楽コンクールピアノ部門で優勝して話題を集めた。二人は将来を嘱望される日本の若手演奏家である。

郷古廉(Sunao Goko)は1993年、宮城県多賀城市生まれ。99年桐朋学園子どものための音楽教室仙台分室に入室。04年全日本学生音楽コンクール全国大会・小学校の部第1位。06年メニューイン・コンクール・ジュニア部門優勝以来、フランス国立リール管と共演し、同年初リサイタルを開催。これまで新日本フィル、読響、仙台フィル、アンサンブル金沢と共演を重ね、12年9月には札響定期で「ブラームス:ヴァイオリン協奏曲」を弾いてKitara初登場。国内外の音楽祭でジャン・ジャック・カントロフ、アナ・チュマチェンコらのマスタークラスを受け、サイトウ・キネン・フェスティバル松本にも11年より出演。13年8月、ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリン・コンクール優勝。(*この情報を得て直ぐツィッターでつぶやいた)。12年よりウィ-ン私立音楽大学に留学中。
使用楽器は1682年製アントニオ・ストラディヴァリウス(Banat)(*個人の所有者の厚意による貸与)。

津田裕也(Yuya Tsuda)は1982年、仙台市生まれ。01年、第70回日本音楽コンクール・ピアノ部門第3位。05年、東京藝術大学を首席で卒業。同大学院修士課程を首席で修了。07年仙台国際コンクール優勝後、東京・仙台・新潟でソロ・リサイタルを開催。09年からデュオ、トリオを結成しての室内音楽活動にも積極的に取り組む。11年、ベルリン芸術大学を最優秀の成績で卒業し、ドイツ国家演奏家資格を取得。11年ミュンヘン国際コンクール特別賞受賞。ソリストとしてベルリン響、ドイツ室内響などの海外オーケストラのほか、国内主要オーケストラと共演。ベルリン在住。

2015年7月14日(火) 開演時間 19:00  ふきのとうホール

〈プログラム〉
 ヴェーベルン:4つの小品 作品7
 シューベルト:ヴァイオリンソナタ イ長調 D.574
 J.S.バッハ:ヴァイオリンとハープシコードのためのソナタ 第1番
 プロコフィエフ:ヴァイオリンソナタ 第1番 ヘ短調 作品80

ヴァイオリン協奏曲はCDをかなり所持しているが、ヴァイオリン・ソナタはモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスを除いては余り持っていない。コンサート鑑賞も続き、病院通いも重なって、聴き慣れない曲をコンサートの前にCDで聴いて親しむ時間的余裕もなかった。演奏曲目のCDは手元に無いと思っていたらバッハとプロコフィエフは所有しているのが後で判った。

ヴェーベルン(1883-1945)はシェ―ンベルクやベルクと並ぶ新ウィ-ン音楽派の作曲家。前衛的な作風で知られているが、東京クヮルテットの演奏会でアンコール曲にヴェーベルンの弦楽四重奏曲の一部を聴いてその抒情的旋律を意外だと思ったことがある。
本日、曲のイントロダクションで最初の音が奏でられた時には20世紀前半の前衛的な作風が感じ取れた。同時に美しい旋律も味わえて、とにかく特徴のある作曲家として位置づけられるのが判った気がした。

シューベルト(1797-1828)のヴァイオリン曲は全く聴いたことが無いと思う。1816年に3つのヴァイオリン・ソナタを作曲。イ長調の作品は1817年作曲で4楽章構成。少年期の作品ではあるが創作力が旺盛であった時期を彷彿とさせる。

前半2曲は休まずに続けて演奏された。ヴェーベルンの作品の演奏終了後に、やや間があったのだが、拍手のタイミングを逸した感じ。曲調が明らかに変わったのだが、演奏者は予め用意された楽譜もあり、集中力を途切らせたくなかったように思われた。シューベルトの曲は第4番に相当するようだが、アレグロ・モデラート、プレスト、アンダンティノから終楽章アレグロ・ヴィヴァ―チェへ向かうフィナーレは新鮮であった。

若い二人の演奏に引き込まれた聴衆は、15分休憩の案内があって一瞬ビックリした様子。それなりに切れ目のある小品が8曲も演奏されたわけではなかった。2作品が連続して演奏されたことに直ぐ気付いた。

バッハ(1685-1750)のヴァイオリン・ソナタはBWV.1014~BWV.1019をフランク・ペーター・ツィンマーマンが弾くCDを所有しているが、無伴奏ヴァイオリン・ソナタほど聴き慣れていない。バッハの時代はチェンバロだったから、ピアノとは雰囲気がかなり違った印象を持っている。しばらく聴いていないので、第1番ロ短調BWV.1014と同じ作品だったのか確かめないと判らない。

プロコフィエフ(1891-1953)のヴァイオリン協奏曲が手元にあるのは知っていたが、ソナタも2曲同じCDに入っていることは忘れていた。2・3度聴いたことがあるのだろうが、実演で聴いたことが無いと耳だけの印象では余り覚えていないものである。郷古廉の超絶技巧の連続と言っても良い力強い演奏には驚かされた。身体全体を揺り動かしてエネルギーを使う迫力ある演奏に引き込まれた。
プロコフィエフはロシア革命の折に祖国を離れ、35年にソ連に帰国した。ヴァイオリン・ソナタ2曲は復帰後に社会主義リアリズムを意識して書かれた作品。第1番は作曲(1938-46)後の初演はオイストラフとオボーリン。ヴァイオリンの持つ特性が発揮された曲で、初演を行なったオイストラフに献呈された。現在では、親しみ易い第2番の演奏機会が多いと言われる(*第2番の原曲はフルート・ソナタ。第1番が超難曲というのも一因かもしれない)。

郷古廉の演奏は札響と共演した時と状況は違うが、集客力を意識しなくても済むコンサート(六花亭札幌本店「ふきのとうホール」オープニング・フェスティバル期間中の25回のコンサートすべてのチケットは完売)で思い通りのプログラムによるリサイタルになったのではないだろうか。津田裕也のピアノも高度の技術を駆使してコンサートの魅力を増した。

若手の演奏家のコンサートで比較的に若い聴衆、特に女性が目立ったが、帰り支度を急ぐ人もいて結果的にアンコールは1曲のみ。「クライスラー:愛の悲しみ」。(*もう1曲「パラディス:シチリアーノ」を用意していたらしい。)

ホールの運営で要望したいこともあるが、今月の実施状況を参考にしてより良いホールつくりを目指してほしい。

※ふきのとうホールのコンサートに来週は3回通う。明日からPMFも本格的にスタートする。15日、17日、18日とPMFベルリン演奏会、PMFウィ-ン演奏会、PMFオーケストラ演奏会が続く。ひと月前から持病の脊柱管狭窄症の症状が出て、この1週間は歩行に支障が出てきた。時々襲われる痛みを抑えながら何とかコンサート会場に通っている。今月は時計台のボランティア活動を休んで、体調を整えて予定のコンサート鑑賞を楽しんでいる。コンサート会場では音楽に浸り心身ともにリフレッシュできるのが薬である。


三上亮(Vn)&金子鈴太郎(Vc) デュオリサイタル

三上 亮(ヴァイオリン)&金子鈴太郎(チェロ)デュオリサイタル ゲスト 高 実希子(ピアノ)

2015年4月27日(月) 開演 7:00p.m. 会場:ザ・ルーテルホール

Kitaraが休館する前に今日のコンサートのチラシが配られていた。札幌交響楽団のコンサートマスターを2007年~11年まで務め、昨年10月にヴィルタス・クヮルテットの演奏会にも来札した三上亮が出演するコンサートだったので2月初旬にチケットを買い求めていた。

三上亮(Ryo Mikami)は1976年、水戸市生まれ。東京藝術大学在学中に日本音コン第2位。東京芸大首席卒業。99年、米国アスペン音楽祭に参加してドロシー・ディレイに師事。04年、ローザンヌ高等音楽院でピエール・アモイヤルに師事。スイス国内を拠点にヨーロッパ各地で演奏活動。07年に帰国後、札響コンマスを4年間務め、11年に退団。その後、東京芸術大学非常勤講師、日本音コン審査員などを歴任しながら、東京モーツァルトプレイヤーズ・コンマスの他に室内楽活動やオーケストラ客演コンマスなど多方面で活躍中。

金子鈴太郎(Rintaro Kaneko)は桐朋学園ソリスト・ディプロマコースを経てリスト音楽院で学ぶ。 国内外の数々のコンクールで優秀な成績を収め、1999、2000年イタリア・シェナのキジアーナ音楽祭で名誉ディプロマを受賞。03~07年大阪交響楽団首席チェロ奏者、07~08年、同楽団特別首席チェロ奏者。現在は東京モーツァルトプレイヤーズ・チェロ首席、Super Trio 3℃などで活躍中。

高実希子(Mikiko Ko)は函館出身のピアニスト。桐朋学園大学ピアノ専攻首席卒業。2008年、パリ国立高等音楽院卒業。2008年イル・ド・フランス国際ピアノコンクールでドビュッシー特別賞を受賞。現在、ソロ・室内楽においてフランス・日本各地で積極的に演奏活動を行なっている。

〈PROGRAM〉
 1部 エルガー:愛の挨拶 (トリオ)
     ラヴェル:ヴァイオリンとチェロの為のソナタ (デュオ)
     ギス:God Save the Kingによる変奏曲 (デュオ)
 2部  チャイコフスキー:偉大な芸術家の思い出 (トリオ)

エルガーの作品で「威風堂々 第1番」と並んで有名な曲。 イギリスの作曲家であるが出版の際に経緯があって、曲のタイトルはフランス語“Salut d'amour”となった。「愛の挨拶」の英語タイトルは“Love's Greeting”である。
優美な調べで親しまれ、エルガーはピアノ曲、ヴァイオリン曲、小編成の管弦楽曲などいくつもの版を残した。

三上ファンが多く詰めかけたのか、入場時に道路にまで並ぶ人の列。会場は満席状態で、札幌公演に先立って函館で2種類のコンサートを行ってきて車で札幌入りしたとのこと。ほぼ満員の会場で聴衆の期待に応える意気込みも語られた。
トークが苦手という三上に代わって、以後、金子が進行役を務めた。(彼は話が得意そうで自制しながら進めた。)

ラヴェルが1920年から1922年にかけて作曲した珍しい楽器編成の作品。ドビュッシーの追悼曲として発表済みの作品を第1楽章として、4楽章構成にしてソナタとした。ストラヴィンスキーやヒンデミットなどの現代作曲家の音楽にも繋がる第一次世界大戦後の音楽を感じ取れた。今まで聴き慣れたラヴェルの音楽とは違った傾向の曲が聴けて興味深かった。
ヴァイオリンの極めて高度の技量が必要で、演奏が難しい曲に思えた。チェロがヴァイオリンに寄り添って支えている様子が感じられたが、金子の個性かも知れない。20分程の曲。
演奏前に三上は昨年10月に初めて金子と共演してから彼とは20数回共演を重ねていると話したが、音楽的にも相性が合うのだろうと思った。(* 先月ピアニストの近藤嘉宏が三上亮との室内楽共演の様子をtwitterに載せていた。室内楽を気軽に楽しむアーティストが増えているのを実感する。)

ギス(Ghys)(1801-48)は聞いたこともない名前。「God Save the Kingの旋律による華麗にして協奏的な変奏曲」という長い曲名。原題の“God Save the King”は英国国歌。(*現在の英国国歌は“God Save the Queen”) 。オリンピックの表彰式などで度々耳にする機会のある聴き慣れたメロディが繰り返されるので初めて耳にする曲でも親しみが湧く。10分程の曲。

休憩後はチャイコフスキーの大曲。昨年12月、レーピン(Vn)、クニャーゼフ(Vc),コロべイニコフ(Pf)のトリオでの生き生きとした名演奏が脳裏にある。今年は演奏会の曲目にも度々選ばれているのを目にする。室内楽では私の最も気に入りの曲になっている。いつ、何度聴いても飽きない。

金子のトークで初耳だったことがあった。ロシアでは有名人が亡くなった時に作曲家が「ピアノ三重奏曲」を書く習わしがあったという。チャイコフスキーが亡くなった1893年にラフマニノフが「ピアノ三重奏曲」を作曲していることに気付いていなかった。調べてみたら曲のタイトルに「偉大な芸術家の思い出」と書かれていた。

「偉大な芸術家の思い出」は当時ロシアの偉大なピアニストであったニコライ・ルビンシュテインの死を悼んで作曲された。今日では高い人気を誇るチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」がルビンシュテインから酷評を浴びたエピソードは余りにも有名である。
この曲は悲劇的雰囲気の曲であるが,憂愁をたたえながらも堂々としたスケールの大きい作品である。親しみのあるメロディが聴く者の心に深く染み込むように響く。この曲で全体的にピアノが活躍する場面が多い。日本の音楽界で活躍する二人に交じってパリ音楽院で研鑚を積んだ高が堂々と渡り合った。
50分近い長大な曲は深い悲しみに沈みながら葬送行進曲のリズムで静かに閉じられる。時間の長さを感じないうちに曲が終ってブラボーの声が会場を包んだ。熱演で時計の針は9時を過ぎていた。

進行役は最後まで金子が担当した。トリオのアンコール曲はチャイコフスキーの「悲愴」に因んだ「タンゴ」。
デュオのアンコール曲は「ヘンデル:パッサカリア」。
このアンコール曲は素晴らしく、聴衆の大喝采を受けた。ブラボーの掛け声に応えて、金子のピアノと三上のヴァイオリンで曲が奏でられると、いつの間にか「津軽海峡冬景色」の調べ、途中からピアニストの高が金子を押しのけて「モンティ:チャールダ―シュ」、チェロに戻ったはずの金子から生み出される音は口笛に変わっていて、会場から笑いが出て拍手喝采! 最後は会場も楽しい雰囲気に包まれて9時20分過ぎに終了。


石川祐支&大平由美子 デュオ・リサイタル ~ドイツ音楽の夕べ~

5月末に行われた「札響くらぶ交流会」に大平由美子さんと石川祐支さんが参加されていて、その折に今日の演奏会の案内があって割引料金でチケットを購入していた。彼らと言葉を交わす機会もあって親近感も沸いた。

2014年9月22日(月) 7:00PM開演 札幌コンサートホール Kitara小ホール

石川祐支(Yuji Ishikawa)は1977年、名古屋生まれ。東京音楽大学に特待生として入学して首席で卒業。99年、第68回日本音楽コンクールチェロ部門第1位。その後、マリオ・ブルネロに学び、03年、東京響首席奏者を経て、05年4月より札幌交響楽団首席チェロ奏者に就任。ソリストとして東京シティ・フィル、セントラル愛知響、東京響、神奈川フィル、札響とコンチェルトを共演。New Kitaraホールカルテットを始め、室内楽でも幅広い活躍をしている。
彼のチェロから奏でられる音は繊細で響きが豊かで色々な感情が伝わってくる。チェロという楽器の持つ音の特徴をどのようなコンサートでも紡ぐ彼の魅力に惹かれている。

大平由美子(Yumiko Ohira)は札幌生まれ。東京藝術大学卒業後、ドイツに渡りベルリン芸術大学ピアノ科に入学。同大学卒業後、89年より08年までベルリン芸術大学・舞台演奏科の講師を務めた。その間、ドイツの放送番組、音楽祭に出演。ベルリンをはじめドイツ各地でソロ、コンチェルト、室内楽、リート伴奏など多岐にわたる演奏活動を行った。日本では日本フィルや札響との共演の他、リサイタル、室内楽などでも活躍。
08年に帰国。以後、札幌を拠点に積極的な音楽活動を展開している。私は10年8月のリサイタルを初めて聴いた。彼女は「シューマン:森の情景、ショパン:幻想即興曲、バラード第3番、シューベルト:ソナタ19番」などを弾いた。繊細で、深みのある演奏で、経験の豊富さを感じたことが印象に残っている。

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:ピアノとチェロのためのソナタ第4番 ハ長調 Op.102-1
 シューベルト:アルぺジョーネとピアノのためのソナタ イ短調 D821
 シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70
 ブラームス:ピアノとチェロのためのソナタ第2番 ヘ長調 Op.99

ベートーヴェンはチェロ・ソナタを5曲作ったが、第3番が一番親しまれている。(このデュオは2年前のコンサートで演奏したそうである。)他の4曲が2曲ずつまとめられて作品番号が各々付いている。「第4番」は後期の作品で、第3番ほどの華やかさはない。ソナタの枠組みを離れた自由な曲つくりになっていると言われる。2楽章構成。チェロとピアノが穏やかに交わす対話が美しい序奏に続いて、ダイナミックなアレグロで緊迫感のある第1楽章。瞑想的な気分のアダージョで始まり、第1楽章のアンダンテが再現され、ユーモラスな掛け合いで軽快さが混ざりあったアレグロでのフィナーレ。
ロストロポーヴィチとリヒテルのCDで数回聴いてコンサートに臨んだのでそれなりの鑑賞ができた。

「アルペジョーネ・ソナタ」は昨年ピリス&メネセスのデュオで初めて聴いた。1823年に発明された楽器のために作られたが、シューベルトの死後40年以上たって曲が出版された1871年にはこの楽器は姿を消していたようである。アルぺジョーネはギターのように指板のフレットがついた6本の弦を弓で弾く楽器だったが、チェリストの名手がこの曲に挑戦している。4弦でフレットを持たないチェロで演奏するのはチェリストには至難の技のようである。
3楽章構成。ピアノとの掛け合いで美しい第1楽章。第2楽章は歌曲のように始まり、静寂で落ち着いた雰囲気の中に不安感がよぎる。終楽章は哀愁を帯びながらも幸福感が溢れてくる。いろいろな感情が織り交ざった表現でフィナーレ。
この曲を意識して傾聴したのが2回目で前回よりは曲の良さを理解するように努めた。チェロの哀愁を帯びた特徴ある音色を期待する者にとっては感激度が薄まる印象は拭えなかった。

石川の熱演は手に取るように伝わってきた。前半の2曲の演奏の準備も大変であったように思えた。大平は4年前のリサイタルの時より若々しく生き生きとした演奏であったが、デュオとして相手に合わせて演奏するのにはもう少し時間が必要であったのかもしれない。

シューマンの曲は題名だけでは使用楽器が判らなく、多分、今回初めて耳にする曲。原曲はホルンとピアノのために書かれ、後に彼自身がチェロ版を書いたそうである。ロマンティックなアダージョ部分と躍動感溢れるアレグロ部分から成る。10分程度の演奏時間の小品。

ブラームスのチェロソナタは第1番と第2番のCD(デュプレとバレンボイム)が手元にあって偶に聴いている。彼は生涯にピアノとチェロのためのソナタは2曲しか書いていない。「第2番」は既に大作曲家としての名声を得ての円熟期の作品。力強く、若々しい第1楽章。ピアノとチェロが交互に現れ、躍動感がある。第2楽章ではチェロがピッツィカート奏法も入って個性的。ピアノとチェロの対話が美しいアダージョの第2楽章。第3楽章ではチェロが高音域で甘美なメロディを奏でてピアノが歌曲の伴奏のように寄り添う。終楽章は幸福感と優しさが感じられ、曲は力強く閉じられた。演奏時間30分の大曲。

演奏終了後、演奏者も疲れ切った様子。私自身も普段より力が入って、集中力が高まって少々疲れを感じた。会場は満席状態。地元の音楽家への期待も高かった。聴衆はそれなりの満足感を得たと思うが、演奏家の感想は満員の聴衆に対して“反省の言葉”が出た。演奏者にとっては満足のいく思い通りの演奏が実現できなかったようだ。ドイツ音楽の“重量級”の曲ばかりだったので、特に最後の曲の演奏は精神的にも体力的にも大変であったようだ。
聴く側にとっては、聴きごたえのある演奏会ではあった。

アンコール曲には札響事務局長としても活躍して札幌の音楽界に多大な功績を残した故竹津宜男氏と故谷口静司氏への感謝と哀悼の意味で「バッハ:G線上のアリア」が演奏された。

*コンサートの帰りに2週間前に初めて行った“名曲バーOLD CLASSIC”に立寄った。「第九」の第4楽章が聞こえてきた。若い先客がいた。今夜のコンサートの話をマスターにしていると、若い人が話しかけてきた。石川さんのファンらしい。彼のドヴォルジャークを聴いたか尋ねられたので、もちろん聴いた旨を伝えると、是非聴きたかったのに聴けなくて残念だったと繰り返していた。石川さんのチェロの魅力を話すと全く同意見だと言って話に花が咲いた。
Kitaraにコンサート用ピアノが8台あると話すと驚いていた。ブルーノ・ワルター指揮コロンビア響による「ブラームスの交響曲第4番」の曲がかかりだすと、前回この店でお会いした常連客が2人姿を見せた。お互いに顔を見合わせてビックリ! 4人でワルターの演奏を素晴らしい音響で聴き入りながら、クラシックの話題が多方面に及んだ。生演奏を思わせる音の迫力を楽しんた。感動的なブルーノ・ワルターだった。今度はワルターの「運命」と「未完成」をLPで聴くことになった。私もCDで所有している。ところが、同じ音源でもYAMAHAのスピーカーで聴くと迫力が違う。かなり遅い時間になったので曲の途中で店を出た。帰りの挨拶も旧知の間柄のようになっていた。楽しい時間を過ごせた。

今井信子&伊藤恵 デュオ・リサイタル ~魂のひびき~

世界的なヴィオラ奏者、今井信子の生演奏は聴いたことが無かった。小樽や江別で公演を開催していても、Kitaraでのコンサートの企画が無かった。今回は思い切って隣りの江別市に出かけて行くことにした。

2014年9月18日(木) 19:00開演  えぽあホール(江別市民文化ホール)

〈プログラム〉
 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第28番 ホ短調 K.304(1779)
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 「雨の歌」 op.78(1789)
 ブリテン(今井信子編):無伴奏チェロ組曲 第3番 op.78(1971/arr.2013)
 クラーク:ヴィオラ・ソナタ(1919)

今井信子(Nobuko Imai)は1943年、東京生まれ。6歳でヴァイオリンを始め、桐朋学園大学で齋藤秀雄に師事、その後ヴィオラに転向。イェール大学大学院、ジュリアード音楽院に学ぶ。67年ミュンヘン、68年ジュネーヴともに国際コンクールで最高位獲得。ベルリン・フィル、ロンドン響、パリ管などと共演。室内楽ではクレーメル、マイスキー、ヨーヨー・マなどと共演。ソリストとして武満作品などを数多く初演。03年ミケランジェロ弦楽四重奏団結成。日本では92年から〔ヴィオラスペース〕を開催して企画・演奏に携わり、ヴィオラ界を牽引する国際的活動を行っている。音楽賞を含め数々の賞を受賞。アムステルダム音楽院,上野学園大学などで後進の指導にも当っている。(71年札響と共演)

伊藤恵(Kei Itoh)は1959年、名古屋生まれ。桐朋学園女子高校を卒業後、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学、ハノーファー音楽大学に学ぶ。79年のエピナール国際コンクール第1位、80年のバッハ国際コンクール第2位、81年のロン=ティボー国際コンクール第3位と目覚ましい活躍の後、83年のミュンヘン国際コンクールピアノ部門で日本人としては初めての優勝の快挙を成し遂げた。83年サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管と共演してミュンヘン・デビュー。84年はN響と共演して日本デビュー。(札響と84・85年共演)
日本を代表するピアニストの一人。Kitaraで彼女の演奏を5回聴いているが、前回は昨年7月、New Kitaraホールカルテットとの共演でシューマンとブラームスのピアノ五重奏曲を演奏。2013年、香港でアントニオ・メネセスと共演、今年はN響とも共演している。東京藝術大学教授、桐朋学園大学特任教授としても活躍中。

モーツァルトやベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタはピアノとヴァイオリンがほとんど同等な役割を担っていると言われる。2楽章構成。彼のヴァイオリンソナタの曲は多分全曲持っていると思うが美しい旋律の曲が大部分である。30曲以上のヴァイオリンソナタのうちで短調の曲はK.304だけと言ってもいいくらい珍しい調性の曲。ピアノ協奏曲も含めて、明るくて軽やかな長調の曲が殆どである。この曲は短調であっても、明るくて楽しい曲で、特徴があるせいか聴く機会が多い。
第1楽章が終ったところで拍手を続けた人が1人いたのが少々残念であった。

ブラームスは40歳を過ぎて初めてヴァイオリン・ソナタを作曲した。作品は3曲しか残されていない。ムロ―ヴァとアンデルシェフスキーによるCD(第1番~第3番)を2000年に購入して聴き続けていた。(5年ほど前にアンデルシェフスキーの名が大きくなってサントリーホールに彼のピアノ・リサイタルを聴きに出かけたのが3年前の事である。) 昨年5月、ムターの演奏をKitaraで聴いて、その折にブラームスのソナタ3曲入りのCDを購入してサインしてもらったのを昨日の出来事のように懐かしく思い出す。
この曲は今年の4月に樫本大進とコンスタンチン・リフシッツのデュオで聴いたばかり。今ではヴァイオリン・ソナタの名曲として親しんでいる。「第1番」は優雅でロマン性に富む。明るくて美しいメロディで魅力的な第1楽章。哀愁を帯びた抒情的な第2楽章。心も高揚して充実感溢れる第3楽章。《雨の歌》と呼ばれるのは、第3楽章に1873年に作曲された歌曲の《雨の歌》の旋律が主題として用いられ、それが第1、第2楽章の主題のモチーフにもなっているからと言われている。
何度聴いても美しい曲で、ヴァイオリン協奏曲に次いで気に入っている彼のヴァイオリン曲である。

ヴィオラ曲の前にヴァイオリン曲で今井信子の素晴らしい演奏に満足した。ただ、楽器の大きさが普通のヴァイオリンより大きめであった。ヴァイオリン曲として極めて自然に聴けたのだが、ヴィオラの楽器を使用して演奏したのかどうか疑問が残った。(今になっても判らない)

プログラムに載っていた今井によると、彼女は数年前にロンドンの出版社から「ブリテンの無伴奏チェロ組曲」のヴィオラ版への編曲の依頼があり、ブリテンの生誕100年を迎えた2013年に出版にこぎ着けた。
曲は9楽章構成。第1楽章からショスタコーヴィチの現代曲を思わせる音楽。プログラム・ノートを読んでも素人には鑑賞が極めて難しい。ただ、有名な作曲家の作品の編曲を依頼されるヴィオラ奏者(編曲者)としての今井の偉大さは理解できた。
(*世界で名高いヴィオラ奏者、ユーリ・バシュメットがモスクワ・ソロイツ合奏団を率いて1997年にKitaraに登場し、3年前にも東京で彼と合奏団の演奏を聴いているが、ヴィオラ・ソナタを耳にするのは極めて珍しい。バシュメットのCDは手元にあっても聴くことは滅多にない。)

レベッカ・クラーク(1886-1947)の名は初めて聞いた。彼女がヴィオラ奏者、特に作曲家として、その功績が再評価されるようになったのは1970年代で、楽譜が出版されるようになったのは90年代に入ってからだそうである。
この曲は彼女が作曲家としての地位を確立した出世作と言われる。曲は3楽章構成。現代曲とは対照的に、どちらかと言えばロマン派的で親しみ易いメロデイ。憂愁と抒情性のある魅力的な作品になっていた。

伊藤惠は2010年5月、えぽあホールで開催された「今井信子ヴィオラリサイタル」でも共演していて、お互いに気もあっていて満足のいく演奏だった様子がうかがえた。

帰りの電車の時間表を詳しく調べていなかったので、アンコール曲はクライスラーの曲を聴いただけで、途中で退席した。
470席ほどの客席が8割ほどの聴衆で埋まっていたが、音響もそれなりのホールであった。地下鉄とJRの乗り換えで少々時間はかかっても札幌・大麻間の乗車時間は15分程度。駅からホールまで徒歩で5分もかからずに行けて片道1時間程度で通えることが判った。今後、機会があれば気軽に出かけられそうである。

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尺八とマリンバ 藤原道三 X SINSKE 「オペラ」

~尺八とマリンバによる世界最小のオーケストラ~

2年前の7月31日にKitara小ホールで〈尺八の藤原道三とマリンバのSINSKEによる「ボレロ」2012〉というタイトルのコンサートを聴いてとても楽しかった。 邦楽と洋楽の珍しい楽器のコラボレーションの発想がユニークで音楽の広がりを感じた。
ラヴェルの「ボレロ」が“世界最小編成のオーケストラ”で演奏されたのは圧巻であった。マリンバによる山田耕筰「この道」、滝廉太郎「荒城の月」などの演奏、尺八によるヴィヴァルディの「春」、ムソルグスキーの「展覧会の絵」より等の演奏はとても興味深かった。聴き慣れた曲が独特な響きを持つ楽器で演奏された様子を懐かしく思い出す。

札幌では7月にパシフィック・ミュージック・フェスティヴァルがありコンサート鑑賞のスケジュールがぎっしりであるが、2年ぶりにこのデュオのコンサートを聴いてみた。

2014年7月4日(金) 19:00開演  札幌コンサートホール Kitara小ホール

〈プログラム〉
 ラヴェル:ボレロ
 モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
         歌劇「魔笛」よりパパゲーノのアリア『私は鳥刺し』
         歌劇「魔笛」より『夜の女王のアリア』
 マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 間奏曲 
 ビゼー:歌劇「カルメン」より 『ハバネラ』など5曲
 グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」より 序曲
 プッチーニ:歌劇「トゥランドット」より『誰も寝てはならぬ』
 ガ―シュイン:歌劇「ポーギーとべス」より『サマータイム』
 中田喜直:夏の思い出
 藤原道三:「幻舞 Danza fantastica」 Live version
 SINSKE:Baciami Ancoraー最後のキスをー、  月夜浮遊
 バーンスタイン:「ウエストサイドストーリー」より 『マリア』など3曲
 藤原道三 X SINSKE: 組曲「風神X雷神」 2014 Live version

藤原道三(Dozan Fujiwara)は1972年、東京生まれの尺八演奏家・作曲家。東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業後、97年、同大学院音楽研究科修了。大学時代にはオーケストラと共演を行うなど様々な音楽活動を行い、様々な邦楽器で研鑚を積んだ。07年、古川展生(チェロ)、妹尾武(ピアノ)と組んでユニット古武道を結成。尺八の新境地を開く音楽活動として注目を浴びた。12年からマリンバ奏者SINSKEと全国ツアーを開始。13年、東京藝術大学非常勤講師。

SINSKE(シンスケ)は?年、東京生まれのマリンバ奏者・作曲家。桐朋学園大学音楽楽部打楽器科を首席で卒業。ベルギー政府特別奨学金を得て渡欧。ブリュッセル、アントワープ両王立音楽院打楽器科を首席で卒業。ベルギーのコンクールで優勝後、多数の国際的コンクールに上位入賞。その後、欧米でソロ活動を続けた。ヤマハは世界に一台のMIDIマリンバ「EMP」(Electric Mallet Percussion )をSINSKEのために開発。03年に帰国してソロデビュー。ポップスからクラシックまで幅広い音楽作りで活躍している。

今日は1997年7月4日にKitara がオープンしてから17年目に入る“Kitaraのバースディ”とあって、大ホールではオルガンのコンサート。小ホールのコンサートと時間が重なってエントランスホールは大賑わい。広いエントランスホールも行列を作るほどの混雑ぶり。尺八とマリンバのデュオは今年も大人気で小ホールはほぼ満員の入り。
 
一昨年のテーマ「ボレロ」からスタート。今年のテーマは《オペラ》。
ワインレッドの豪華な衣装に身を包んで登場。オーケストラには無い楽器で管弦楽用の曲の演奏が始まった。

モーツァルト、ビゼー、プッチーニのオペラは海外の歌劇場による札幌公演でも聴いたことのある馴染みのメロディがふんだんに出てくる。尺八とマリンバだけで演奏可能とは予想もできない音楽づくり。どんな演奏になるのか興味津々でリラックスして聴けた。二つの楽器から生み出される鮮やかなメロディと演奏技法に改めて感服した。

藤原道三はテレビ出演などでも活躍して話術も経験を積んでいるようで、曲の紹介をしながらSINSKEtと対話して巧みにコンサートを進めた。後半のプログラムは前半と違ってジャズ風、歌曲もの、現代のポップス的な雰囲気の作品。

後半の曲「サマータイム」を聴いた時に、ガ―シュイン生誕100年記念祭世界ツアーで97年4月に旧北海道厚生年金会館で上演された「ポーギーとべス」の情景がふと浮かび上がった。このオペラと聴き慣れた名曲「サマータイム」が繋がっているのにやっと気づいた。アメリカの名曲「ウエストサイドストーリー」も今日は違った雰囲気で楽しめた。

今回のテーマ《オペラ》に沿って、二人の作曲家がそれぞれ作曲したのが偶然オペラの発祥国イタリアをイメージした曲になったようである。曲名にもイタリア語がついた作品が現代風な曲となって演奏された。コンサートの最後を飾る曲は昨年のツアーのテーマ曲だそう。初めて聴いたがなかなかの大曲。

アンコール曲/ マスネ:歌劇「タイス」より『タイスの瞑想曲』

5月から全国ツアーを開始して、毎年札幌が最後の演奏会場になっている様子。帰りのホアイエは彼らのアルバムを買ってサインを求める人々が列をなして並んでいた。個性的な音楽性と格好良い容姿も固定したファンが増えてきている要素なのだろうと思った。

樫本大進 & コンスタンチン・リフシッツ

樫本大進(Daishin Kashimoto)は1979年、ロンドン生まれ。7歳でジュリアード音楽院のプレカレッジに入り、その後リューベックでザハール・ブロンに師事。93年メニューイン国際コンクール(ジュニア部門)第1位。94年ケルン国際コンクール第1位、96年クライスラー国際コンクールとロン=ティボー国際コンクールで第1位(史上最年少)と輝かしいコンクール歴を誇る。20歳からフライブルク音楽院で元ベルリン・フィル・コンサートマスターのクスマウルに師事。以後、ソリストとして国際的に活躍。(日本では、96年紀尾井ホールでのリサイタルでデビュー。)10年にベルリン・フィル第1コンサートマスターに就任して音楽ファンを驚かせた。

Kitaraに初登場したのが98年10月。セミョン・ビシュコフ指揮ケルン放送交響楽団と「メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲」を共演した時のワクワクした高揚感は今でも印象に残っている。
2度目は02年2月。ウラディミール・フェドセーエフ指揮ウィ―ン交響楽団と「ブラームスのヴァイオリン協奏曲」を共演。フェドセーエフとは96年に大阪フィルと97年にはモスクワ放送交響楽団と日本で共演を重ねていた。
3度目はリフシッツとのデュオ・リサイタルで02年11月。当時のプログラムによると、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第32番、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番などを弾いた。

コンスタンチン・リフシッツ(Konstantin Lifschitz)は1976年、ウクライナ生まれ。5歳でグネーシン特別音楽学校に入学。13歳でモスクワ音楽院でデビューリサイタル。90年から国内外での演奏活動が本格化して、指揮者のスピヴァコフとの日本ツアーのソリストとして初来日。モスクワ・フィルやサンクトペテルブルグ・フィルとヨーロッパ・ツアーでも活躍。リサイタルのライブCDが96年に米国で話題となり世界的にも注目された。96年アルゲリッチの代役としてクレーメル、マイスキーと共演して世界的評価が高まった。

桁違いの才能で世界の注目と期待を担っていた若き俊英が渡り合う初共演も聴衆の期待度が高かった。2回続いたオーケストラとの共演の後だけに新鮮な印象のデュオ・リサイタルとなった。

次に樫本の演奏を聴いたのは07年9月。小泉和裕指揮東京都交響楽団 札幌特別公演で「ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲」。3回のオーケストラ演奏で3大ヴァイオリン協奏曲を一人の演奏家で聴いたのは偶然ではあるが結果的に珍しい。この頃、樫本がチョン・ミョンフン指揮シュタ―カペレ・ドレスデンと録音した「ブラームスの協奏曲」を購入して、時々耳にする。

樫本は07年から国際音楽祭を毎年開催して来日していることもあって、Kitaraでの演奏会の機会も増えてきた。
直近で聴いたのは10年3月の無伴奏ヴァイオリン・リサイタル。
DAISHIN plays BACH のタイトルで、札幌では「パルティ―タ第2番・第3番、ソナタ第2番」。CDでクレーメールの演奏を聴いたりしているが、世界最高レヴェルのヴァイオリニストによる生のオール・バッハ無伴奏ヴァイオリン曲。このバッハの名曲を集中力を欠かさずに聴けて充実感を味わったことを今でも思い起こすことができる。

それから4年。12年ぶりの樫本とリフシッツの共演。
2014年4月25日(金)19:00開演 札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4番 イ短調 Op.23
 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78「雨の歌」
 ベートーベン:ヴァイオリン・ソナタ第10番 ト長調 Op.96

ベートーヴェンはヴァイオリン・ソナタを10曲作っている。1798年に完成した「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番~第3番」は作品番号が12で一まとめになっている。第4番と第5番は1800年の作曲で作品番号が23と24である。1802年完成の第6番~第8番は作品番号は30でやはり一まとめ。有名な「第9番クロイツェル」が1803年の作品。それから約10年後の1812年の42歳の時に第10番を完成してヴァイオリン・ソナタの作曲には終止符を打った。

全10曲の中で「第5番」と「第9番」には、それぞれ「スプリング」、「クロイツェル」のニックネイムが付いていて最も親しまれており、リサイタルでは演奏機会が断然多い。今回のように定番が入っていないリサイタルは極めて珍しい。私自身余り記憶にない。それだけに今回のコンサートには却って期待していた。
日本で通常「ヴァイオリン・ソナタ」と呼んでいる曲で、私所有のベートーヴェンの「第5番・第9番」のCDでも、演奏者は「オイストラフとオポーリン」、「グリューミオとアラウ」、「シェリングとルービンシュタイン」、「クレーメルとアルゲリッチ」などの組み合わせである。ピアノとヴァイオリンの各部門で世界トップの演奏者がペアを組んでいる場合が多い。

ベートーヴェンは作曲者の曲名からも判るように「ヴァイオリン」と「ピアノ」を対等にして作曲している。ピアノが陰の楽器ではない。モーツァルトの曲についても同じことが言えよう。パガニーニやクライスラーのヴァイオリンの技巧をより生かしたヴァイオリン曲とは根本的に違うと思っている。
本日の演奏でも樫本とリフシッツの対等の演奏が繰り広げられた。これが最も印象に残ったことである。ソリストとして活躍していた時と多分、オーケストラのコンマスになってからのコンサートでは彼自身もこのことを意識しているのではないだろうかと考えてみたりした。それぐらい、自分が目立って演奏するより、あくまで調和を心がけて音楽つくりをしている姿に接した。

14年2月に発売された彼らの「ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集」を購入して聴き始めたが、なかなか良い曲ばかりである。今迄「第6番・第7番・第10番」が入ったCDは持っていなかった。
「第10番」はベートーヴェンが最後のヴァイオリン・ソナタとして集大成の作品にしようとした意気込みが感じられて重厚な作品に仕上がっている印象を受けた。

ブラームスの「雨の夜」はより親しまれている曲で、ヴァイオリンがリードする場面が少しは多いかなと思った。

アンコール曲は「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第3番 Op12-3 第3楽章」。アンコール曲も含めて地味な曲のプログラムの割には客の入りは多かったのではないだろうか。3階席と2階P席は発売されなかったが、9割程度の客席が埋まり1300名弱の聴衆がベルリン・コンサートマスターの樫本大進のコンサートに聴き入った。コンスタンチン・リフシッツの見事な演奏に鮮烈な印象を受けた人も多かったに違いない。全体的に派手さはないが重厚感のある演奏会であった。







ウラディ―ミル&ヴォフカ アシュケナージ ピアノ・デュオ リサイタル

アシュケナージについて2012年のブログに書いたことがある(teruoblog687.blog.fc2.com/blog-entry-43.html)。ブログを書き初めて2ヶ月余り経った時に過去のコンサートに関する思い出として書き記した。そのころ日本語のブログが英語に翻訳されているようだったが、まともな英語に翻訳されているか不安だったので、試しに簡単な英語で書いてみた。後半部分は日本語で少し書き加えた。
その後、英語で書くと日本語の検索でブログの欄に出てきづらいこともあって、英語では書かないことにした。英語、ドイツ語などの外国語の翻訳を通してアクセスしてくる人も結構いるのだが、翻訳の有様は今では気にしない。

札幌で初めてアシュケナージの演奏を聴いたのが1992年4月11日のことであった。その時のリサイタルで弾いた曲目は「ベートーヴェン:ソナタ第31・32番」と「ムソルグスキー:展覧会の絵」。04年6月、Kitara初登場。イタリアのパドヴァ管弦楽団を引き連れて「モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番」と「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番」を弾き振りした。その時に書いてもらったサインと感激の様子を12年のブログに書き綴った。

前回のコンサートからもう10年も経ったが、記憶に新しい。2・3年前のことのように当時のことが蘇ってくる。それほど大きい感激を受けた。もう、単独でピアノを弾くことはないのかと思っていた。11年に息子と日本でのデュオ・リサイタルを開いて、今回の札幌公演が実現したが、心待ちにしていた。

≪テレビ北海道開局25周年記念≫ 
ウラディ―ミル&ヴォフカ アシュケナージ ピアノ・デュオ リサイタル

2014年3月5日(水) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈プログラム〉
 シューベルト:ハンガリー風ディヴェルティメント ホ短調
 ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 作品56b
 ストラヴィンスキー:春の祭典
 ボロディン(ヴォフカ・アシュケナージ編):だったん人の踊り

シューべルト(1797-1828)はピアノの4手連弾作品を書いた代表的な作曲家だったようだ。1824年、ハンガリーの貴族エステルハージ家の音楽教師を務めていた時に作曲したとされる。アンドラ―シュ・シフのCDで「ハンガリー風メロディ」は聴いているが、この「2台のピアノのための二重奏曲」は初めて聴く。3楽章から成る。ハンガリー民謡が使われているが、ブラームスのハンガリー舞曲とは違った曲のイメージ。親しみ易い、魅力的な旋律が繰り返し奏でられるが、約30分もの長い曲で、いささか単調な感じがしないでもなかった。シューベルトの作品集を見ると、ピアノ二重奏曲の作品が沢山あるのに気付いた。演奏で聴く機会がないので全く知らなかった。

ブラームス(1833-97)の時代には、連弾曲や2台ピアノ作品が盛んに書かれていて、この変奏曲は当初から2台ピアノのために書かれた作品。その後、オーケストラ版も作られた。この曲はポリーニとウィ―ン・フィルによるピアノ協奏曲で親しんでいた。
主題、第1変奏~第8変奏、終曲の10曲の構成。美しい素朴な旋律の主題が、伸びやかでゆったりとしたメロディ、哀愁漂うメロディ、メランコリックな調べなどの変化に富んだ変奏で奏でられ心地よく聴けた。

ストラヴィンスキー(1882-1971)のバレエ音楽「春の祭典」は管弦楽曲で親しむ前に、2000年に発売された、トルコの鬼才ファジル・サイの4手ピアノ版を一人で演奏したCDを手に入れて聴き始めた。ストラヴィンスキーはオーケストラ版完成後に連弾版、2台のピアノ版を書き上げたそうである。
2013年は「春の祭典」初演100年を記念してコンサートで聴く機会が数回あり、迫力あるオーケストラの圧倒的な演奏で感銘を受けた。今回は2台ピアノ版で初めて耳にした。管弦楽版ほどの迫力はないが、ピアノで管楽器・打楽器の音を出す様子が興味津々であった。ヴォフカがiPadを使用して演奏したが、譜めくりすとが大変だったのではないか。演奏も興味深かったが、思わず譜めくりの様子に目がいってしまった。
この曲も含めて全体の主旋律はウラディ―ミルが担った。写真の印象より、実物の方が親子が似ている印象が強かった。2台のピアノ版では他の様々な曲より演奏が難しいのではないかと思ったが、父子の呼吸もピッタリ合っていて、この曲の面白さを十分に味わえた。

ボロディン(1833-87)は有機化学の研究者の仕事の傍ら、作曲活動を行った。ロシア5人組の一人として知られる。「だったん人の踊り」はオペラ≪イーゴリ公≫の第2幕の曲。彼の最も有名な曲のひとつ。
この原曲でも多用されている管楽器・打楽器の音を2台のピアノが如何に表現するかに興味が持たれた。原曲でのいくつかの旋律がとても聴き慣れているので、ある意味、親しみ易かったかもしれない。

アシュケナージの演奏会を待っていた人が大勢いたことは客の入りでも窺がえた。3階の客席は売り出されなかったが、2階席がほぼ埋まり、最近のリサイタルでは珍しくP席にも客が入った。P席より、RA、LAに客が多かったのはピアニストの手元を見たかったせいかなと思った。約1500名の聴衆が父子の共演に聴き入り、後半の曲にはそれぞれブラボーの声も上がって、聴衆が皆、感激した様子が見て取れた。

アンコール2曲もデュオ。エルガー(ウラディーミル・アシュケナージ編):朝の歌。シューマン:カノンの形式による練習曲 作品56-4。

07年に、世界的なピアニストのイエルク・デムスとパウル・バドゥラ=スコダのスーパーピアノデュオのコンサートがKitaraで開かれた。その時の二重奏曲はモーツァルトの曲が1曲だけであった。
今回のように4曲すべてピアノ・デュオで客を集める演奏家は少ないかも知れない。やはりアシュケナージは偉大である。ステージで見せる人柄、親子の愛、譜めくりすとへの気遣い、聴衆への接し方。多くの人の心の中に入り込んだのはホアイエで長蛇の列をなしてサインを貰う人々の姿からも見て取れた。
 
私も2台ピアノ作品集を買い求めようかと思ったが、CD売り場は物凄く混雑していて諦めた。10年前にサインを貰っていなかったら、無理をしていただろう。
余談になるが、22年前のアシュケナージのチケット代金と今回の代金は両方ともS席1万円で同じであった。

札幌コンサートホールは1997年7月にオープンする前にアシュケナージにKitaraホール用のコンサートピアノの選定を依頼していた。彼はハンブルクで4台を選んで今日に至っている。今回はアシュケナージ自身が選定したピアノを使用したのかどうか関心がある。多分、2台とも古いものではないかと思うが、アシュケナージの感想を聞きたいものである。最近は新しいピアノを運んでリサイタルを行なっているピアニストもいると聞く。

アシュケナージ親子の全国ツアーが東京、栃木、愛知、秋田、宮城、大阪 茨城と続く。各地のアシュケナージ・ファンを満足させることは間違いない。ピアノ・デュオを通して新しい音楽の世界を切り開いてくれることを願う。




プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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