バーンスタイン・レガシー・コンサート

Bernstein Legacy Concert(バーンスタイン・レガシー・コンサート)には今まで行ったことが無かった。今回は2007年、パリで開催されたロン・テイボー国際コンクール優勝の田村響がピアニストとして出演するので聴くことにした。是非一度リサイサイタルを聴きたいピアニストであるが、オーケストラとの共演も待ち望んでいた。昨年Kitara小ホールで三浦文彰ヴァイオリンリサイタルのピアノ伴奏を務めていて、大ホールには初めての登場だと思う。

2017年7月11日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈出演者〉指揮/大山平一郎、 ピアノ/田村 響  管弦楽/PMFオーケストラ
      お話/田中 泰
〈演奏曲目〉
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 作品15(ピアノ:田村 響)
 コープランド:市民のためのファンファーレ
 ミヨー:屋根の上の牛 作品58
 バーンスタイン:「ウエストサイド・ストーリー」から “シンフォニック・ダンス”

大山平一郎(Heiichiro Ohyama)は8日のPMFオープニング・コンサートでPMFに初参加して、バーンスタインの曲の演奏で経験豊かな指揮ぶりを見せた。大山はPMF芸術監督を務めたマイケル・テイルソン・トーマスとは一時期ロスアンゼルス・フィルで一緒だった。彼を通してPMFの情報を得ていた。また、バーンスタイン指揮による「シンフォニック・ダンス」のLPレコード収録にヴィオラ奏者として参加していた。
大山は九州響常任指揮者時代に園田高弘とベートーヴェン・ピアノ協奏曲全曲録音を残している。現在、米国サンタ・バーバラ室内管音楽監督・常任指揮者。

田村 響(Hibiki Tamura)は1986年、愛知県出身。愛知県立明和高等学校音楽科に学んでザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学に留学。2002年ピティナピアノ・コンペティション特級グランプリ、園田高弘ピアノ・コンクール第1位など目覚ましい活躍で03年のアリオン賞、06年出光音楽賞受賞と続き、ヨーロッパ、南米などでのリサイタルやオーケストラ共演で頭角を現す。07年のロン・ティボーコンクール優勝で一気に日本での知名度が高まった。09年ビシュコフ指揮ケルン放響のソリストとして日本ツアー。室内楽でもヴェンゲーロフ、堀米ゆず子、宮田大らと共演。2015年大阪音楽大学大学院修了。現在、京都市立芸術大学専任講師。

PMFは20世紀のクラシック音楽界を代表する指揮者・作曲家のレナード・バーンスタインが、1990年に札幌に創設した国際教育音楽祭。これまでPMFで学んだ若手音楽家は76ヵ国・地域から約3,300人、現在、修了生は200を超えるオーケストラで現役奏者として活躍しているという。
バーンスタイン・レガシー・コンサートは何年か前にPMFの恒例のコンサートなって開催されている。バーンスタインの楽曲と彼が愛した作品、まさにレガシー(遺産)を取り上げる特別企画である。

「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番」はバーンスタインがベートーヴェンの全5曲のピアノ協奏曲の中で最もお気に入りで何度も弾き振りしていた曲という。コンサートでは「第3・4・5番」が演奏される機会が多い。「第2番」は2005年にKitaraでバレンボイムが手兵のベルリン・シュターツカペレを弾き振りした時のことは覚えているが、「第1番」は今までコンサートで聴いた記憶は無かった。CDはギレリス、バレンボイム、ブロンフマンのCDがあって、昨日の午前中に聴いてみた。5・6年は聴いていないと思ったが、聴きなれたメロディが多くて、こんな名曲だったかと一層ベートーヴェンの偉大さが解った。ただ、内容がシンプルで深みがないので、演奏会で取り上げられることが殆どないのかなと思った。

田村も初めて演奏する曲だということで念入りに練習して臨んだようである。第1楽章の長いカデンツァも印象的だったし、オーケストラと溶け合って素晴らしい演奏を繰り広げた。若手の登竜門と言われる世界的なコンクールを20歳で制して、10年が過ぎた。順調に実績を積み重ねているようで何よりである。札幌は3度目と後で話したが、1回聴き逃したことになる。俊英ピアニストの今後の活躍が大いに期待される。
オーケストラではクラリネット奏者の美しいメロディが光った。

コープランド(1900-90)はバーンスタインが敬愛するアメリカが生んだ有名な作曲家。この曲は初めて聴くが、金管楽器と打楽器だけで演奏された音楽は勇壮であった。オリンピック・ファンファーレの先駆けになったそうである。

ミヨー(1892-1974)はフランスの作曲家で、小品は聴いたことがある。バーンスタインはミヨーと共にタングル音楽祭の教授を務めた。この作品は彼がブラジルで過ごした2年間を曲に綴ったもので、異国情緒が漂いつつ、フランスの洒落た音楽も入っている感じがした。

最後に取り上げたバーンスタインの傑作「ウエストサイド・ストーリー」はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を1950年代のニューーヨークに置き換えて作曲された作品。そのダンスナンバーを中心にオーケストラ用に編曲された「シンフォニック・ダンス」。
この曲はバーンスタインの代表作で様々なコンサートの演目になって親しまれている。
芸術の森で行われたオープニング・コンサートの盛り上がりとは違う雰囲気で聴くことになり、正直言って野外コンサートでの方が楽しめた。室内楽とオーケストラと対照的なプログラムであったし、コンサートの締めくくりとしてPMFオーケストラの登場は新鮮であった。
昨夜は9時近くに演奏が始まり、帰りの時間を気にする人の集中力も薄れていたかもしれない。演奏そのものは音響効果抜群のホールで、聴衆が堪能する曲だったことは間違いない。最後の曲をメインに聴きに来た人も多かっただろう。私自身は田村響の「ベートーヴェン第1番」を聴いて充分に満足していた。
指揮者も渾身の力を込めて指導に当たり全曲を振り終えて満足の様子であった。最後の演奏曲にベルリン・フィルのゼーガスもパーカッションのメンバーに加わって参加していたのは好感が持てた。PMFピアニストの佐久間晃子もピアノを担当していた。

※今朝パソコンを開いてブログランキングを見て驚いた。「ロシアの巨匠フェドセーエフ」と「PMF2017オープニング・コンサート」の記事が第1位と第2位を占めていた。先週の6日も「Kitaraのバースディ」と「時計台ボランティア活動2017」の記事が「第1位」と「第2位」だった。6月の記事は余り注目を浴びていなかったのだが自分のブログが評価されるのは嬉しい。





札響第601回定期演奏会~祝Kitara20周年こけら落とし指揮者とともに

1997年7月4日に札幌コンサートホールKitaraがオープンして20年になる。《こけら落としのコンサート》と《オープン記念コンサート》を指揮した当時の札響常任指揮者、秋山和慶を迎えての2017年7月定期演奏会。
土曜日公演の定期会員であるが、7日の土曜日はPMFオープニング・コンサートが札幌芸術の森で同時刻に開催されるために札響定期は金曜日に振り替えて鑑賞した。

2017年7月7日(金) 19:00開演  札幌コンサートKitara大ホール

指揮/ 秋山 和慶      ヴァイオリン/ 神尾 真由子

88年から札響定期会員だったこともあってマエストロ秋山の指揮は今回で22回目(*尾高は先日の指揮で51回、高関が30回)。
秋山和慶(Kazuyoshi Akiyama)はオープン記念コンサートでレスピーギのローマ三部作を指揮し、札響300回定期演奏会でも「ローマの松」を演奏した。札響を離れてからも客演の機会の多い指揮者で端正で品格のある指揮ぶりは定評がある。

神尾の演奏は2年ぶり4回目。神尾真由子(Mayuko Kamio)は2007年チャイコフスキー国際コンクール優勝以来、札幌での凱旋公演が09年3月の札響定期。ドイツ人指揮者、ハンス=マルティン・シュナイトとの協演で「ブラームス:ヴァイオリン協奏曲」。12年1月の札響定期はウィーン生まれのサーシャ・ゲッツェル指揮のもとで「ハチャトゥリアン::ヴァイオリン協奏曲」、15年はフィンランド人のオッコ・カム指揮ラハテイ響と「シベリウス:ヴァイオリン協奏曲」。過去3回の演奏の指揮者が外国人ばかりで、演奏曲も指揮者と関係のある国との選曲が目立った特徴。
彼女はロシア人ピアニストのクルティシェフと結婚してサンクトペテルブルクが本拠地なはずで、ヨーロッパをはじめ海外での活躍が多いようである。今度はリサイタルを聴きたいと思っている。プログラムによると札響とは2000年に初共演を果たしているから、札響との繋がりは深いようである。神尾は札響定期で集客力ナンバーワンのソリストだそうである。

〈Program〉
 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
 ショスタコーヴィチ/交響曲第5番 ニ短調 作品47

クラシック音楽をLPレコードで聴き初めて最も親しんでいたヴァイオリン協奏曲と言えるチャイコフスキーの曲。ロシアの民族性にあふれたロマン派の名作。土曜日の昼公演より少なめの聴衆がヴァイオリンの逸材の演奏を聴こうと押しかけてホールの座席がかなり埋まった。
ステージに登場してから最初から最後まで神尾の圧倒的な演奏に聴衆の集中力の高まりも凄かった。
憂愁を帯びた第1主題を独奏ヴァイオリンが呈示して、楽想が展開され、物憂げで美しい第2主題が続く。第1主題が管弦楽の強奏で力強く歌われ、幻想的雰囲気を作って、長い華やかなカデンツァに入る。フルートが優美な旋律を奏でる。パッションとメランコリーの繰り返しのうちに力強い第1楽章が結ばれる。
第2楽章はカンツォネッタ、アンダンテ。管楽器だけの静かな序奏に伴って、弱音器を付けた独奏ヴァイオリンが切ない旋律を奏でる。“軽い気分の小歌曲”と言える緩徐楽章。
第3楽章はチャイコフスキーの民族主義的傾向が示されたフィナーレ。独奏ヴァイオリンがカプリッチョ風に歌いだし、ロシアの民俗舞曲トレパークの明るい第1主題。第2主題も民族舞曲風の旋律。ロシア風の魅力ある音楽つくりが見られる。イタリアの影響を受けた明るい曲調がうかがえる楽章。コーダが入って管弦楽の躍動的なフィナーレ。りかいしやすくて

神尾真由子のオーラを放ちながら演奏する姿は世界的なトップ・ヴァイオリニストとしての存在感を見せた。外国でのメジャー・オーケストラの共演やリサイタルを通して、確固たる地位を築いているのが実感できる演奏であった。演奏終了後の聴衆の反応は予想以上に凄いもので、感嘆を超えて余りに強烈な演奏に度肝を抜かれた感じであった。今、神尾はヴァイオリニストとして絶頂期を迎えているといっても過言ではないだろう。
アンコール曲は《パガニーニ:「24の奇想曲」より 「第24番」》。超絶技巧に満ちた素晴らしい演奏で、カーテンコールが続く普段に例を見ないくらいの聴衆の熱狂と感動ぶり。

ショスタコーヴィチの交響曲を札響定期で取り上げるのは4シーズン連続である。近年は「第15番」、「第10番」、「第8番」に続く演奏曲。「第5番」はショスタコーヴィチの全15曲の交響曲の中で最も人気のある交響曲である。
ショスタコーヴィチの音楽は鑑賞が難しいとされているが、この「第5番」は理解しやすくて人々に親しまれている。1937年の作曲で、曲の構成も変化があり、力強くて重厚な作品で面白さもある。

第1楽章は低音弦楽器と高音弦楽器の印象的な対話で始まる。前半は深刻な悲劇的な気分が漂う。ヴァイオリン、オーボエ、フルートによる応答主題は美しい。途中から勇壮な行進曲となり、最後はフルートのメロディも入って静かに終わる。
第2楽章は伝統的なスケルツォ。ブラック・ユーモアが入って、おどけた楽章。
第3楽章は金管は無く、弦楽器と木管、ハープ、チェレスタ、鐘だけでの演奏。深い悲しみを讃え、情緒に溢れた楽章。
第4楽章は「暗」から「明」への歓喜の楽章ともされる。それまでの暗い雰囲気を一掃するような金管とティンパニの力強い行進曲で始まる。力強いフィナーレ。

曲の発表時にはソヴィエトでは大成功をおさめたが、当時の社会情勢でいろいろな解釈が行われている。ショスタコーヴィチの社会体制への批判とも受け取られる解釈もされているが、いろんな解釈が可能な作品ではある。
個人的には悲劇的な要素を中心に鑑賞することが多いが、今回は白紙に戻って先入観の無い聴き方をした。

秋山はこれまでに札響共演が119回にもなるが、ショスタコーヴィチの第5番は初めての指揮だったようである。曲に変化もあるせいか、いつもより大きな指揮ぶりのように思えた。
演奏終了後にブラヴォーの声があちこちから飛び、感動した聴衆の様子がホール中に広がって大声援が巻き起こった。端正な指揮ぶりで、終了後も礼儀正しい拍手喝采で終わる印象が今回は違った。

興奮が冷めない帰りのホワイエには神尾のサインを貰おうと並ぶ人々の列が続いていた。




Kitaraのバースディ~札幌コンサートホール開館20周年記念

Kitaraのバースディは札幌コンサートホールのシンボルであるオルガンにスポットを当てて開催されてきた。今年はKitara開館20周年を記念して1997年7月4日に行われた落成記念式典&記念演奏を核にしたプログラムで開催された。パイプオルガンとオーケストラ、ソプラノ、そして札幌市内の中学生たちによる吹奏楽の演奏。

〈出演〉指揮/尾高 忠明   オルガン/ダヴィデ・マリアーノ   ソプラノ/針生 美智子
     管弦楽/札幌交響楽団   吹奏楽/Kitara20周年記念バンド(指揮/鹿討 譲二)
〈PROGRAM 〉
 【オルガン・ソロ】
  三善 晃(マリアーノ編):札幌コンサートホール開館記念ファンファーレ~23の金管のための
 【ソプラノとオルガン】
  フランク:天使の糧
  モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」より “アレルヤ”
  ヘンデル:「メサイア」より “シオンの娘たちよ、大いに喜べ”
 【吹奏楽】
  ショスタコーヴィチ(ハンスバーガー編):祝典序曲 作品96
  内藤淳一:式典のための行進曲「栄光をたたえて」
  ワーグナー(カイリェ編):歌劇「ローエングリン」より “エルザの大聖堂への行列”
 【管弦楽】
  プーランク:オルガン、管弦楽とティンパニのための協奏曲
  ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
 
Kitaraホール落成記念式典の冒頭では原曲が札響の23名の金管奏者によってステージ上と客席両側に分かれて三方向から演奏された。オルガンでは残念ながら20年前の迫力は伝わらなかった。

ソプラノの針生(Hariu)は小樽出身でKitara開館の記念演奏の「第九」にも出演し、以来、何度もKitaraのステージに登場している。二期会会員で活躍を続けているが、北海道を代表するソプラノ歌手。札響との共演では「カルミナ・ブラーナ」(2008年)の熱唱が特に印象に残っていた。
オルガン伴奏での歌唱もオーケストラやピアノとは違った味が出ていた。フランクはヴァイオリン・ソナタで親しんでいるが、オルガン曲も偶に耳にする。彼の歌曲は初めて聴くような気がした。「神を褒め称えよ」という意味の「アレルヤ」を繰り返す歌は馴染みであり、明るく華やかな雰囲気が技巧的な歌唱に良く出ていた。ヘンデルの曲もイエスの生誕を喜ぶ人々の様子が歌われているそうで快活なアリアとして楽しく聴けた。3曲とも祝典にふさわしい曲とされる。

20年前の記念演奏ではファンファーレに続いて小林英之によるオルガン演奏があったのはハッキリ記憶しているが、中学生による吹奏楽演奏があったことは忘れていた。その日に演奏されたショスタコーヴィチとワーグナーを当時と同じ指揮者を迎えて、市内4つの中学校から選抜されたメンバー(72名)に当時の中学生4名も参加したWind Ensembleによる演奏が、今回も行われた。
ソ連の革命記念日のために書かれたオーケストラ曲が原曲だが、作品完成の1954年当初から吹奏楽にアレンジされて盛んに演奏されていたといわれる。演奏終了後にブラヴォーの声が上がって会場は盛大な拍手に包まれた。
内藤の作品は2001年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲だったという。式典にふさわしい堂々とした曲。トランペットとトロンボーンのファンファーレでは20年前のメンバーが活躍した様子がうかがえた。
1965年に結成された札幌市中学校吹奏楽部協議会も50年もの歴史を持ち、中学生の実力も年を追うごとに向上しているようである。今回の演奏ではメンバーの大部分が女生徒でチョット驚いたが演奏技術は高くて、心地よく聴けた。
ワーグナーの曲はフィラデルフィア管のクラリネット奏者だったカイリェが吹奏楽用にアレンジしたそうだが、前2曲に比して壮大さとハーモニーの点で今一歩という感じがした。
総合的な印象では中学生の演奏がここまで向上しているのかと感心した。

フランスのエスプリを表現した魅力的なピアノ曲を通して知っている程度のプーランク。管弦楽の作品は余り知らない。楽器編成が弦5部とティンパニとオルガンという「オルガン協奏曲」と言える曲を聴いて凄く感動した。オルガンが管楽器の役割を果たしていた。フルート管やトランペット管などの音を出せることは知っていても、木管や金管のソロ・パートが単独で見事に演奏される様は正に圧巻であった。弦楽器と対する演奏も絶妙であった。協奏曲としてオルガンの魅力がふんだんに発揮される様に魅了された。初演がデュリュフレというのは理解できたが、プーランクはオルガンの名手でもあったのだろうか。
第18代Kitara専属オルガニストDavide Marianoのコンサートは昨年10月以来、何度か聴いているが、いつも素晴らしい。

尾高のベートーヴェン・ツィクルスは2011年に聴いているが、「第7番」は13年のサロネン指揮フィルハーモニア管の演奏が強烈な印象を残した。日本でも超人気の交響曲となった第7番は4楽章のすべてが魅力的。類例を見ないほどリズミカルで躍動感に溢れる作品。第1楽章ヴィヴァーチェ、第2楽章アレグレット、第3楽章プレスト、第4楽章アレグロという速さ。
オルガン協奏曲に集中しすぎて、余りにも定番の曲で良い曲、良い演奏でも、何となく聞き流した感じになってしまった。

演奏終了後にアンコールという声が沸き起こって、マエストロ尾高からKitaraホールの素晴らしさに感謝の言葉。Kitaraホールの音響担当者Toyotaは世界中の音楽ホールの音響設計を委嘱されて自動車会社と同じくらいに有名になっている。尾高札響名誉音楽監督は“Kitaraは一番上手くいった”と彼が語っていたと話した。いつの発言かは分からないが、現在でも世界の名だたるホールの地位にあることは間違いない。
アンコール曲に「エルガー:威風堂々 第1番」。祝典の最後を飾るに相応しい曲であった。

目の前の座席に若い外国人の男女が座っていたので、帰り際に話しかけてみた。ドイツから休暇を利用して札幌コンサートホールに駆け付けたという。Kitaraの音響の評判を聞いてコンサートを聴きに来た様子だった。詳しい話はできなかったが、音響の素晴らしさに感動して満足していた。また、PMFコンサート5枚のチケットを買ってあげて一緒に鑑賞する友人にホワイエで偶然に会えたのも良かった。










 

札幌シンフォニエッタ第60回演奏会

2年前のKitara休館中に札幌シンフォニエッタ第55回演奏会を聴いたことがあった。1983年結成のこのアマチュア・オーケストラの存在は知っていたが、前回は当時の札響オーボエ首席奏者金子亜末の客演が魅力で出かけていた。
今回は今月上旬にKitaraのコンサート会場で出会った教え子(かかりつけの歯科医)に招待されて偶々スケジュールが空いていたので好意に応えることができた。彼女が高校時代に吹奏楽部員だったのは知っていたが、フルート奏者としても活躍している姿を目にするのも嬉しいことであった。

2017年6月25日(日) 13:30開演  札幌サンプラザホール

指揮/御法川 雄也(Minorikawa Yuya)
ピアノ/富永 峻(Tominaga Shun)

御法川は現在、N響ヴィオラ奏者。2003年、桐朋学園大学卒業。在学中からバレエ音楽「くるみ割り人形」(全幕)で関西フィルを指揮し、卒業後には同じ演目で大阪響、関西フィルにも登場。09年N響入団。10年には静岡響の定期に堤俊作の代役で出演し、12年にはバレエ公演で札響とも共演。16年、ロイヤル・チェンバー・オーケストラのバレエ公演を指揮。N響のほかに幾つかのオーケストラのメンバーでもあり、幅広い音楽活動を行っている。

富永はポルトガル、スペイン、ドイツで育った日本人ピアニスト。スペインで数々の国際コンクールに入賞して、マドリード王立音楽院在学中はスペイン各地でソロリサイタル・室内楽コンサートを開催。その後、ドイツ・フライブルグ音楽大学に学び、同大学でソリストクラス(修士課程)を卒業。2010年に帰国。14年、15年と東京オペラシテイで連続してリサイタルを開催。16年よりsonorium(東京都杉並区)でシリーズコンサートを実施。

〈Program〉
 ベートーヴェン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲 作品43
           ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58
 シューマン:交響曲第4番 ニ短調 作品120

バレエ音楽というと「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」のようなロマンティック・バレエを思い浮かべがちである。ベートーヴェンは物語と音楽を一体化させたオペラやミュージカルのような総合芸術作品を目指したという。彼が書き上げた11曲の序曲のうちの一番最初の序曲となった。前年に作曲された交響曲第1番(1800年)と同じ調性のハ長調の曲。この機会に後で「交響曲第1番」を聴いてみようと思った。

この2年ほどは演奏会で「第5番 皇帝」を聴く機会が多くて「第4番」は久しぶりである。私が「第4番」が好きだと何年か前に言ったのを耳にしていた教え子が今回の演奏会を紹介してくれた一因でもあったようだ。
「ピアノ協奏曲第4番」は華麗な演奏効果という点では「第5番」に及ばないが、豊かな情感や緻密な曲の構築の面では優れた作品となっていると思う。創意工夫の特徴のひとつはオーケストラの演奏の前に独奏ピアノが第1主題を提示して曲が始まることである。
ピアノが奏でる音が澄み切っていて新鮮な音色で輝いていた。ピアニストの繊細なタッチで紡がれる旋律に心が奪われた。柔らかな手が自由自在に鍵盤を這う姿も魅力だった。長大な第1楽章の後の短い緩徐楽章では管楽器とティンパニの演奏は無く、静かで抒情的な弦の響きだけで幻想的な雰囲気が漂う。これも生演奏で観ていて直ぐ気づくことである。第3楽章はリズミカルな主題を中心に曲が展開され、明るくて美しいクライマックスへと向かう。ベートーヴェン自身が初演を行ったというピアノの名手ならではの曲作り。初めて名を聞く演奏家のピアニズムに魅せられた。チャンスがあればもう一度聴いて観たいと思えるピアニストだった。
2管編成の曲であるが、フルートが1名で教え子の演奏に思わず目が行った。
500席余りのホールはほぼ満席状態だったが、演奏終了後の聴衆の反応にも感動の様子があらわれていた。ブラヴォーの声が飛び交い、カーテンコールでアンコール曲に「シューマン=リスト:献呈」が演奏された。この小品の演奏も心に響いた。

シューマンが1841年から51年の間に書き上げた4曲の交響曲。「第4番」は実質的にシューマンの2番目の交響曲。“管弦楽の年”の1841年に続いて着手してクララの誕生日の贈り物として一応完成されたが、出版されずに第3番の翌年の51年に改作されて出版の運びとなった。初演はシューマン自身の指揮で行われた。
曲は全楽章切れ目なく演奏された。ここ10年は聴いていないと思うが、憂愁と幻想的な雰囲気が漂い、シューマンが最初に「交響的幻想曲」と名付けた意味が分かる曲であった。ホルンとトロンボーンの演奏も目を引いた。
 
指揮者のプロフィールにも書いたが、若いが経験豊富で非常に力強くて若さに溢れたエネルギーが伝わる指揮ぶりが全3曲を通して印象付けられた。素晴らしい演奏に満足した聴衆の反応は演奏終了後に再び起こった拍手大喝采とブラヴォーの叫びに出ていた。50名弱のアマチュアオーケストラが作り上げる音楽に感動さえ覚えた。

アンコール曲に演奏された「シャブリエ:ハバネラ」の心地よいリズムに心も躍った。雨模様の午後だったが、外に出てからの小雨にも気分は沈まなかった。2年ぶりのホールには歩いても30分程度で来れる距離である。次回の演奏会の予定がプログラムに記載されていたが、都合がつけば次回も聴きに来ようと思わせるコンサートであった。



 

札響名曲シリーズ2017-18 Vol.1大地のショパン(円光寺雅彦&遠藤郁子)

〈森の響フレンドコンサート〉

2017年6月24日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/円光寺 雅彦      ピアノ/遠藤 郁子    管弦楽/札幌交響楽団
 〈Program〉
  ドヴォルジャーク:序曲「謝肉祭」 作品92
  ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11(ピアノ独奏:遠藤郁子)
  ムソルグスキー(R.コルサコフ編):交響詩「はげ山の一夜」
  ハチャトゥリアン:「ガイ-ヌ」より  “剣の舞” 他3曲
  ボロディン:「イーゴリ公」より “だったん人の踊り”

円光寺雅彦(Masahiko Enkoji)は1954年東京生まれ。桐朋学園大学卒業後、1980年ウィ-ン国立大学に留学。オトマール・スイトナーに師事。東京フィル指揮者、仙台フィル常任指揮者、札響正指揮者などを歴任。仙台フィル時代に同オーケストラの飛躍的向上に貢献。現在、名古屋フィル正指揮者、桐朋学園大学院大学特別招聘教授。
93年以降、札響との共演で10年まで7回は聴いている。10年2月の名曲シリーズで中村紘子デビュー50周年の演奏会、10年夏の特別演奏会「札響リクエストコンサート~3大ピアノコンサート」を指揮した印象が残っている。今回は7年ぶりだった。

遠藤郁子(Ikuko Endo)は札響との共演は久しぶりだが、彼女の演奏を聴くのは8回目。Kitara大ホールで〈オール・ショパン・プログラム〉によるリサイタルを何度か聴いた。最近は他のホールで毎年コンサートを開いている。札響定期との共演は68年、78年、88年と続き、私は94年1月定期で「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番」を聴いた。50年ぐらい前から札響と何回も共演を続けている偉大なピアニストである。

札幌と繋がりの深い音楽家と魅力的なプログラムのコンサートに会場は満席状態。人気曲のピアノ協奏曲を中心として、それほど聴く機会の多くない名曲に関心が集まったようである。

チェコの民族音楽の要素が入り、生命を謳歌するような躍動的なリズムに溢れた《序曲「謝肉祭」》でコンサートの雰囲気が盛り上がった。

演奏会では珍しい着物姿の遠藤郁子は見慣れているが、自然体で彼女の得意とする正統派のショパンを淡々と綴った。年齢を感じさせない演奏姿に日本の伝統美も感じ取れた。
大曲の演奏が終わってアンコール曲は無いかもしれないと思ったが、会場の盛大な拍手歓声に応えて「パデレフスキー:メヌエット」を弾いた。

後半のプログラムは旧ソ連の作曲家の代表的な曲。
「はげ山の一夜」は曲のタイトルが珍しくて昔から覚えていた。好みのメロディではなくても曲の一部分には慣れ親しんでいた。夏至の夜に魔物たちが集まって饗宴を開くロシア民話に由来するタイトル。管弦楽でクラリネットの独奏のメロディが印象に残った。

ハチャトゥリアンの代表作として知られるバレエ音楽「ガイ-ヌ」はスターリン賞を受賞して当時のソ連では話題となった。アルメニア山岳地帯の集団農場が舞台で社会主義を背景にしたストーリーであるが、民謡を用いた音楽が魅力的である。
「剣の舞」も馴染みのタイトルで、この曲のメロディは独特で学生時代にSPレコードでよく耳にした。クルド人の出陣の踊りで、東洋的な強烈なリズムと色彩を放つ曲。「子守唄」、「薔薇の少女たちの踊り」は「剣の舞」の勇壮な音楽と違ってタイトルから想像できるようなアルメニア民謡に基づく曲。「レズギンカ」はコーカサス地方に住むレズギ族たちのエネルギッシュな舞踊を描き管楽器と打楽器の活躍が目立った。

「イーゴリ公」はロシアでは特に人気のオペラのようである。METオペラビューィングでも数年前に見たことがある。音楽としては「だったん人の踊り」が最も有名な曲。この曲は囚われの身となったイーゴリ公を前にポロヴェツ人が異国的な踊りをする場面で演奏される。東洋風の旋律が管楽器で歌われ、打楽器が炸裂するのも印象的だった。
美しいメロディや勇ましい音楽で盛り上がる曲。

ロシアの大地に響くような音楽の演奏終了後に聴衆の拍手大喝采が沸き起こった。アンコール曲は《チャイコフスキー:「くるみ割り人形」より “トレパック”》。

※コンサート終了後、まっすぐ帰宅せずに中島公園内を散策した。池にたたずむカモの親子連れの姿が目に入った。10羽ほどの小鴨を親ガモが見守る珍しい姿。普段、何気なく通り過ぎる公園内にも少し時間と取ると自然界の様子が目に入る。
夕方から、以前勤めた学校の退職者の毎年恒例の会合に出席した。退職後に初めて会う先生もいて旧職員と懐かしい思い出話に花が咲いた。在職当時の学校長とも親しく話もでき、今年定年退職したばかりの人たちとも旧交を温めれて嬉しい思いをした。
プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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