安永徹&札響メンバー室内楽コンサート

 安永 徹は1951年福岡生まれ。71年に日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第1位受賞。74年桐朋学園大学卒業。75年ベルリン藝術大学に入学。77年、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に第1ヴァイオリン奏者として入団、83年~2009年まで同楽団の第1コンサートマスターを務めた。その間、ソリストやベルリン・フィル弦楽ゾリスデンなどの室内楽奏者としても活動した。

 彼の活躍は早くから承知していたが、初めて彼の活躍を目にしたのは2004年11月2日、サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の札幌公演の時であった。ドビュッシーの交響詩「海」とラベルのバレー音楽「ダフニスとクロエ」《第2組曲》などが演奏された。このコンサートは42.000円の高額料金(30.000円の席もあったが売り切れ)の印象だけが強く残っていて、演奏会での感動は深いものではなかった。

 彼の演奏を身近に聴いたのはベルリン・フィルを退団した直後の公演、
2009年9月 ≪札響 with 安永徹&市野あゆみ ハイドン「協奏交響曲」。
 プログラムは3曲。 シューベルト:交響曲第5番、ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番(ピアノ独奏:市野あゆみ)、ハイドン:協奏交響曲。
 この演奏会は指揮者なしで、安永がコンサートマスターとしての役割を果たした。札響の楽団員もつい先頃まで世界のベルリン・フィルのコンマスであった人が自分たちの楽団を率いてくれるとあって熱が籠っていたように感じられ、聴衆の期待感と相まって充実した音楽会になった。この日は数日前より私自身の体調が悪く熱もあったが、無理して出かけた。具合が悪ければ休憩中に帰ることも考えて聴いていたが、音楽を聴いているうちに体調が良くなって最後まで鑑賞できた。音楽が薬になったようだった。今でも珍しい体験として記憶に残っている。

 2010年10月。Kitara主催の〈Kitaraワールドソリストシリーズ〉として≪安永徹&市野あゆみ デュオコンサート≫が小ホールで開かれた。プログラムはモーツァルト、ブラームス、シューマンの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」の3曲。安永は市野との共演でヨーロッパや日本その他各地で多くの演奏を行っており、CDも多数リリースされている。息のあったコンビでごく自然体で音楽を紡ぐ。

 今回の公演は≪安永徹&市野あゆみ 室内楽シリーズ〈全4回〉≫の第3回として開催された。
安永徹&札響メンバー室内楽コンサート
プログラム:
 ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章(五重奏版)
 ブルックナー:弦楽五重奏曲「インテルメッツォ」(六重奏版)
 フランセ:八重奏曲
 チャイコフスキー:弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」(七重奏版)

 最初のウェーベルンの曲は予定のプログラムに無かったが幸運なことに追加されていた。昨年のPMFの東京クヮルテット演奏会でアンコールに演奏され、極めて印象深い曲として覚えていた。世界最高水準の演奏とは比ぶべくもないが思いがけない演奏が聴けて懐かしかった。ブラームスなどの後期ロマン派の音楽を思わせ、ロマンティシズムに満ちた美しい旋律の曲をあらためて味わえて良かった。コントラバスが加わったが少々違和感があった。
出演:安永徹、岡部亜希子(vn)、青木晃一(va)、猿渡輔(vc)、飯田啓典(cb)

 ブルックナーの室内楽曲は聴き慣れない曲だが、案外と素朴な親しみのある印象を受けた。ここでもコントラバスの低音域のサウンドが必ずしも心地良く響いている印象は受けなかった。
出演:安永徹、岡部亜希子(vn)、青木晃一、物部憲一(va)、廣狩理栄(vc)、飯田啓典(cb)

 フランセは聞いたことが無い作曲家。現代音楽なのだろうがお洒落で洗練されたパリのエスプリを思わせる曲。第2楽章でのスケルツォでの弦楽器のピッチカート奏法、木管・金管の洒脱な演奏が目立った。クラリネットはかなりな技巧が必要と思われる奏法だったが、ウィ―ン・フィルの名手たちで編成された八重奏団を念頭に置いた作品とあって、クラリネットの演奏はペーター・シュミ―ドルを思い起こさせた。ここでのコントラバスは本来の演奏形態にあり、木管・金管とは良く調和が取れていた。
出演:安永徹、岡部亜希子(vn)、青木晃一(va)、猿渡輔(vc)、飯田啓典(cb)、白子正樹(cl)、夏山朋子(fg)、橋本敦(hrn)

 チャイコフスキーにとってフィレンツェは忘れ難い思い出の地で、人生の節目に訪れる機会が多くて彼の人生に弾みをつける場所になったと言われている。この曲はフィレンツェ滞在中(1890年)に着想され、帰国して古都へのさまざまな思いを込めた作品として書き上げられた。「あまり苦労しないで楽しく熱中しながら書いた」とチャイコフスキーは述べている。
 第1楽章は生き生きとして歯切れが良い。第2楽章は第1ヴァイオリンの美しいロマンティツクな旋律と、伴奏が絡み合って展開する動きが面白い。第3楽章はロシア的な民謡風の間奏曲で軽快な感じ。第4楽章は民族舞踊風で躍動感にあふれ、華麗でスケールの大きなフィナーレ。コントラバスは控えめな演奏で、気にはならなかった。この曲はCDで何回も聴いて今日の演奏会に備えたので充分に堪能できた。2000年8月に訪れた芸術の都フィレンツェの街並みや美術館などを思い浮かべながら美しい曲に浸った。
出演:安永徹、岡部亜希子(vn)、青木晃一、物部憲一(va)、猿渡輔、廣狩理栄(vc)、飯田啓典(cb)

 本日の演奏会のチケットはsold outということで小ホール(453席)は久しぶりの満席で、最後の曲が終ると、あちこちから“ブラボー”の声が上がって会場が盛り上がった。聴衆もみんな満足した様子であった。

 最後に安永さんから、室内楽ではコントラバスが演奏されることは殆ど無いので今回は飯田さんにお願いして、演奏に加わってもらったとの事。楽譜も今回の演奏会のために特別に作ったそうです。
 
アンコールにハイドンの「6つの弦楽四重奏曲から 第35番ヘ短調 Op.25-5 第3楽章」

 札響の団員も室内楽のグループをそれぞれ作って活動しているが、世界の第一線で活躍した人と一緒に演奏する機会が得れることは掛け替えのない貴重な経験だと思う。札響のレヴェル・アップにも繋がることは間違いない。今後とも何らかの形でこのような室内楽演奏会で演奏技術の向上を図り、音楽フアンにもその姿を見せてほしいと願う。

 
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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