ニコライ・トカレフ札幌公演の期待

 ロシアの若き巨匠と呼ばれ日本全国で百数十回も公演活動を展開したピアニスト、ニコライ・トカレフが今年5月に4年ぶりに日本公演を行う。今のところ、東京・熊本・福岡の3公演だけのようである。

 ニコライ・トカレフ(Nikolai Tokarev)は1983年、モスクワ生まれ。両親が音楽家で、有名なグネーシン音楽学校で学ぶ(1990~2001)。6歳の時にモスクワのソロ・コンサートでデビューと英文で紹介されている記述もあるが、日本でのプロフィールでは1995年、11歳の時スクリャービン記念ホールのリサイタルでデビューとなっている。いずれにしても神童として話題になる。日本では1997年東京・紀尾井ホールでデビュー以来ほぼ毎年来日して2005年には通算で公演が100回を超えた。日本のオーケストラとも共演している。

 トカレフのリサイタルを初めて聴いたのは2004年3月、札幌コンサートホールKitaraの大ホールだった。リスト、ショパン、ラフマニノフの名曲を繊細なタッチで、時には強靭なピア二ズムで堂々と弾く姿は聴衆に極めて鮮烈な印象を残した。

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 画像は演奏会終了後にその日演奏された曲目が一部収録されているCDを購入してサインを貰った時のものである。英語で感想を述べて握手を求められた時の彼の握力の強さに大変ビックリした。その折の手の感触は今でも忘れられない。その瞬間、こんな握力があるから強い打鍵が可能なのだと思った。

 2005年3月のリサイタルのプログラムはバッハ=ブゾーニ、バッハ=ラフマニノフ、ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」とショパン名曲集。

 2006年3月のリサイタルのプログラムはベートーヴェンの「熱情」、シューベルトの「楽興の時」、ショパンの「スケルツォ第2番」他、シューマンやリストの小品、最後にリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」のピアノ編曲版。

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 上記のCDにはこの日に演奏された「熱情」と リムスキー=コルサコフ(クルサーノフ編曲)の演奏会用幻想曲「シェエラザード」が収録されていた。このピアノ曲は04年のトカレフのリサイタルの際にも演奏されて注目していた。(トカレフのためにモスクワの作曲家クルサーノフが編曲したというかなりの難曲で、NHK-FMの番組でも放送されて好評を博したと後で知った。)演奏会当日は私の誕生日でもあり、ダイナミックな律動感あふれる演奏に感動して、2度目のサインを貰う結果となった。

 2007年はトカレフの日本デビュー10周年記念として6月に開催された。この時は≪笑顔の魅力的な美少年≫が短髪で顔の周囲に髭を生やした精悍な青年に変身して登場した。モーツァルトのピアノ・ソナタK.533, ショパンの「ピアノ・ソナタ第2番」、シューマンの「子供の情景」がメインプログラム。最後の2曲はトカレフが取り組む新しい方向の一端を示すプログラム。ムソルグスキー(フドレイ編曲)の「禿山の一夜」、ローゼンブラッドの「パガニーニの主題による変奏曲」。ローゼンブラッドは聞いたこともない名前だったが、その後トカレフが演奏する機会が多い作曲家のようである。

 札幌でのトカレフの公演はその後ない。08、09年に日本での公演はあったが回数が減ったらしい。彼は04~06年まで英国のマンチェスター王立音楽院、その後ドイツのロバート・シューマン音楽院で学んだ。その間ヨーロッパのいろいろな音楽祭に出演し、06年にはゲザ・アンダ国際コンクールで2位となり聴衆賞を獲得している。今更コンクールに出場しなくても立派な実績を作っているのだが、コンサートに追い回される音楽活動の見直しを行っていたのかもしれない。チューリッヒ・トーンハレ管、BBCフィルハーモニックなど多くのオーケストラと共演したり、09年にはショパンとグリーグの「ピアノ協奏曲」のライブ録音、10年にはチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」のCDを出しているので音楽活動は順調なようである。
 毎年のように来日していたので、途切れるとイベントを主催する団体もスケジュールを組み難くなるのだろうが、現在29歳の若き巨匠として期待されているトカレフが来日する折には公演箇所が全国的になることを望みたい。08年以降の情報が余りなかったので、彼の消息が気になっていた。今年の日本公演のニュースを知って一応ホッとしたのである。




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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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