札響名曲シリーズ 2012~2013 第5回

森の響フレンドコンサート≪札響名曲シリーズ2012~2013》
 音楽を紡ぐ物語 vol.5   パリで結ぶエピローグ

指揮:高関健  ヴァイオリン:山根一仁
 
 高関健は2003年に札幌交響楽団正指揮者に就任し、2012年3月に退任するまで札響に多大な貢献をした。私自身この25年間で尾高音楽監督に次いで聴く機会の多い指揮者であった。若い時にカラヤンの助手を務めた経験が彼のその後の指揮者としての人生に多大な影響を与えたようである。
国際指揮者コンクール優勝などでキャリアを重ね30歳の頃に日本フィルで国内デビュー。86~90年広島交響楽団常任指揮者・音楽監督、94~2000年新日本フィル正指揮者、93~2008年群馬交響楽団音楽監督などをを歴任した。特に群馬交響楽団の演奏水準を高めた功績は全国に知られている。ウイーン響、ベルリン・ドイツ響、ケルン放送響など海外メジャー・オーケストラへの客演も多い。
 2011年8月に札響の練習見学会とその後の15分間程度の指揮者トークコーナーで、彼の人間性の一端を改めて知る機会があった。楽団員と共に音楽を作り上げる姿勢が一貫している。楽団員に対する指示も「お願いします」という丁寧な言葉で相対しており、彼らに対する言葉使いには常に気を付けていると述べていた。仲間としての楽団員へのレスペクトが良い音楽を作る基本姿勢であるらしい。勿論、緻密な構築で思い通りの響きをオーケストラから引き出している。
今回は札響正指揮者退任後、5月の定期に続く札響客演指揮である。

 ヴァイオリン独奏の山根一仁は昨年1月オーケストラ・アンサンブル金沢ニューイヤーコンサートに次いで2度目のKitara登場。話題の指揮者、山田和樹との共演でワックスマン「カルメン幻想曲」、マスネ「タイスの瞑想曲」、サラサーテの「ツゴイネルワイゼン」を弾いてスケールの大きい華やかな演奏を披露した。札幌出身で地元の期待が高まる演奏会になった。

 近年、日本人の十代ヴァイオリニストの活躍が目覚ましい。ドロシー・ディレイに指導を受けた五嶋みどり、諏訪内晶子など数多くの日本の名ヴァイオリニスト、ザハール・ブロンに教えを受けた樫本大進、庄司紗矢香、川久保賜紀や神尾真由子。名伯楽と師弟関係にある日本人の指導体制も充実しているようである。成田達輝、郷古廉なども十代から注目され、彼らの活躍も軌道に乗ってきている。
山根一仁(1995年生)は2010年の日本音楽コンクールで26年ぶりの中学生での1位。彼はショスタコーヴィチを弾いての優勝というから驚嘆する。このコンクールの上位3人が15~16歳だった。2位の城戸カレン(1994年生)、3位の毛利文香(1994年生)。
 佐渡裕は2011年「スーパーキッズ・オーケストラ」を率いてパリ公演を行ったが、ソリストとして辻井伸行と共に周防亮介(1995生)を伴っている。
 昨年12月にザハール・ブロンのマスタークラスが東京文化会館で行われ、受講生発表コンサートで千葉水晶(16歳)、服部百音(12歳)、寺内詩織(22歳)が優秀賞に選ばれた記事が「音楽の友」2月号に載っていた。上記の十代ヴァイオリニストの名がやがて多くの人々の注目を集める日も遠くないかもしれない。

 今日の演奏会のプログラム。
  オネゲル:交響的断章 第1番「パシフィック」
  ラロ:スペイン交響曲
  ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」より(管弦楽曲抜粋)

 オネゲルの作品の英語名は“Symphonic Movement”なので「交響的楽章」と呼ばれるのが普通で、所有しているオネゲルのCDも日本語名は同じだったが、「断章」はいささか腑に落ちない訳語だと感じた。曲のタイトルは「アメリカ大陸横断用急行列車の名称。SLの〈シュッ・シュッ・ポッポ〉の擬音が入り機関車の様子が伝わり、心理的興奮も掻き立てられた。1924年クーセヴィッキー指揮によりパリ・オペラ座で初演。

 ラロの「スペイン交響曲」はヴァイオリン協奏曲でありながら「交響曲」と名が付いているが、ヴァイオリンがヴィルトゥオーゾ的協奏曲ではなく、独奏ヴァイオリンとオーケストラが有機的にからみあう構成の作品ということを強調しようとして、シンフォニーとしたと考えられている。曲は5楽章全体に亘ってスペインの原色的色彩が濃厚に満ち溢れている。当時のヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストのサラサーテに献呈され、1875年パリのシャトレー座でサラサーテの独奏で行われた。
 山根はダイナミックな変化と原色的色彩感に満ちたドラマティックな第1楽章から思い切りの良い演奏であった。第4楽章の緩徐楽章ではセンチメンタルな美しい旋律を奏でた。最終楽章はフィナーレに相応しい絢爛豪華な楽章。17歳の細身の体ながら堂々として迫力ある演奏を表情豊かに軽々と展開して見せた。
 指揮者の話によると、2010年の日本音楽コンクールの受賞者コンサートで高関がたまたま指揮を担当した時に強い印象を受け、山根が札幌出身ということもあって今回のソリストに指名したとのことであった。山根はアンコールに応えてバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティ―タ第2番第1楽章」を弾いた。厳かに奏でられ荘重な雰囲気の漂う楽章で、レパートリーの広さを印象づけた。

 「シェークスピアの喜劇・悲劇」をプロローグとしてチャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」で幕を開けた一連の名曲シリーズ2012~2013≪音楽を紡ぐ物語≫は、最後に「パリで結ぶエピローグ」としてベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」で幕を閉じる。高関健の見事な選曲と言えよう。

 ベルリオーズ「劇的交響曲」の原曲は合唱や独唱を伴うオラトリオやカンタータの要素と、交響曲の形式を組み合わせた作品だそうです。手持ちの輸入盤CDでシャルル・ミュンシュ指揮の「ロメオとジュリエット」の“Scene d'amour”の収録曲だけしか知らないが、この〈愛の情景〉の場面は美しい旋律に溢れて美しい曲である。
 この曲が作曲された時のエピソードがCDに英文で書かれていたので紹介しておきたい。ベルリオーズは1827年にパリでイギリスの劇団の上演による「ロメオとジュリエット」を観た時に、劇に感激すると同時に主演女優に恋をしてしまった。劇場を出るときにはその劇のための曲を作って、ジュリエットと結婚しようと心に決めていた。彼の思いは実を結んだが順序が逆だった。1833年にそのアイルランドの女優と結婚できたが、生計を立てるのに苦労して曲は作れなかった。1838年12月パガニーニがベルリオーズの「イタリアのハロルド」の演奏に感動して、オーケストラのメンバーがまだステージに残っている時にステージに上がってベルリオーズの前に膝まづいて彼の手にキスをした。その時パガニーニは2万フランの銀行小切手を入れて感謝の言葉を述べた手紙をベルリオーズに手渡した。そのお蔭で彼はお金の心配をせずに作曲に専念でき、曲は1839年に完成してパリ音楽院でベルリオーズ自身の指揮で初演された。

 高関は丁寧で緻密に構築された曲の解釈で、バランスの良い響きをオーケストラから引き出す指揮者。彼が指揮する時の楽器配置は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが向き合う対抗配置。今日の最後の曲では打楽器奏者が6人。高関の札響との演奏会も今回で一区切り。来シーズンの札響への客演は無い予定。
 アンコール曲はベルリオーズの《劇的物語》「ファウストの却罰」より≪ラコッツイ行進曲≫。ハンガリーの民俗的色彩を湛えた魅力あふれる行進曲。高関は身体全体を使った極めて大きな動きで勇壮な曲を指揮した。印象深い締めくくりの演奏であった。

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さっぽろ雪まつリ~大通り公園の大雪像「豊平館」。中島公園に立つ国指定の重要文化財。明治天皇の北海道行幸に際して1880年(明治13年)に建造された日本最古の純洋式木造ホテル建築。
 


 
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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