MET Live Viewing 2012~13 第6作 ヴェルディ≪アイーダ≫

 2000年11月20日は初めて本格的なグランド・オペラ「アイーダ」を観た忘れられない日である。
「アイーダ」のような壮大なオペラは札幌ではそう簡単に上演される機会がなかった。
この日はエリアフ・インバル指揮ベルリン交響楽団のチケットを既に購入してあったのだが、前年にフランクフルト放送交響楽団を率いたインバルの演奏を聴いたこともあって、そのチケットは妻に譲り私はプラハ国立歌劇場が上演する「アイーダ」を北海道厚生年金会館で観ることにした。
 このオペラで大がかりなセット、エキゾチックな雰囲気、150名にも上る出演者などが一体となったスペクタクルに今までにない大きな感動を味わった。
 
 MET Live Viewing  VERDI ≪AIDA≫ 
 先週に続きメトロポリタン歌劇場管弦楽団の指揮はファビオ・ルイージ。
ルイージは大きな舞台装置や衣装の豪華さなどは関係なく、主演の三人の人間関係がオペラの中心とインタビューで答えていたが、私が今回のオペラに足を運んだ最大の理由は外国での引っ越し公演では目にすることのできない大きな広い舞台を背景にしての世界一流の歌手陣が繰り広げるドラマである。本場の歌劇場での鑑賞と違って臨場感を味わうことはできないが、幕間の舞台転換での裏方の仕事ぶりや出演者のインタビューなど、普段のオペラ鑑賞とは違った味わい方ができるのがMETビューイングの面白さである。

 古代エジプトを舞台にしてエチオピアの王女(アイーダ)、エジプトの将軍(ラダメス)、エジプトの王女(アムネリス)との三角関係を描いた壮麗な愛の悲劇。勇壮な「凱旋行進曲」が有名だが、このオペラの真のテーマはアイーダとラダメスの悲劇。華やかな場面はあるが、二人の悲劇を劇的に描写して他の登場人物の心情も見事に表現された音楽に満ち溢れている。休憩をはさんで4時間ほどのビューイングが「第1幕への前奏曲」から始まった。

 ルイージに2年前ウクライナのキエフでその才能を見い出されMETデビューとなるアイーダ役のリュドミラ・モナスティルスカは中低音もしっかりと出るドラマティックなソプラノで独特な新人歌手である。強い女性役を演じるのが好みのようで初出演とは思えない堂々たる演技ぶりであった。

 メゾ・ソプラノのオルガ・ボロディナはアムネリス役が今回で三十数回という当たり役で他の追随を許さないほどの名演。テノールのロベルト・アラーニャもMETの常連のようで、第1幕前半では有名なアリア「清きアイーダ」を抒情的に歌い上げ、第3幕最後の幕切れの曲は聴かせどころのある名調子の歌声で主役としての存在感は充分。

 第2幕の凱旋の場の大スぺクタル。数階建ての舞台でファラオやアムネリスが見守り、凱旋ラッパが鳴り渡る。歓呼して迎える民衆の中を本物の栗毛の2頭の馬を先頭に兵士たちが登場。その後に白馬も登場。ビックリ仰天。次々と凱旋軍が入場し、二頭引きの馬車(ポニー)に乗ったラダメスの登場で場面は最高に盛り上がり、25名のバレリーナによる華麗なバレエ。

 5頭の馬は舞台用に騎馬隊が訓練して劇場内の騒音も含めて音楽にも慣れているが、万一に備えて代役も用意するそうである。(ちなみに「カルメン」では7頭が出演。)19世紀のオペラ劇場の開館以来、今回のアイーダ上演は1129回目になるというから信じられない回数!!! 昔は舞台衣装は歌手たちの自前だったそうである。その頃の衣装が劇場に寄付されて地下の衣装室に保管されている。
 このような面白い情報を得れるのもMETビューイングの楽しさ

 オペラの筋書きはこれ以上書くつもりはない。全4幕で各幕毎に主な出演者が緞帳の前に姿を現して、いわゆるカーテンコールはなかった。登場人物で他に存在感をはなったのはエチオピア王役のバリトンと祭司長役のバス。脇役とは言ってもこの壮大なオペラでは重要な役で声の違いを生かして好演。出演者が一人二役をする150人の兵士や裏方やオーケストラ団員など含めると総勢1000人にも達するオペラなので、≪アイーダ≫はオペラのなかのオペラと言っても過言ではない。

 最後になるが、期待していた舞台装置は想像していたよりも立派でとても満足した。30メートルもある天井の高さを生かした舞台作りには圧倒された。特にメンフィスの巨大な柱やラムセス2世の像は本物に近い作りで凄かった。2000年2月に訪れたエジプトのアブ・シンベル神殿を思わせる荘厳な石像や古代エジプトの雰囲気が何となく味わえて古代への想いのほかに身近な旅の思い出を想起できて良かった。


*所有のCDが1974年録音でムーティ指揮ニュー・フィルハーモニア管、アイーダがカバリエ、ラダメスがドミンゴ、アムネリスがコッソット。フィオレンツァ・コッソットは2007年12月Kitaraのリサイタルで聴いたが今日のオペラの役とは全然違うイメージだった。いろんな役作りが出来るのは名歌手にとって当たり前のことであった。このCDを早速聴いてみようと思う。



 
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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