アレクサンドル・タロー ピアノリサイタル

札幌コンサートホール開館20周年 〈Kitara ワールドソリストシリーズ〉
Alexandore Tharaud Piano Recital

第12代Kitara専属オルガニストの名がジローだったので、タローの名も日本人には親しみやすくて覚えやすい名前である。
アレクサンドル・タローは1968年パリ生まれ。父はバリトン歌手、母はバレリーナ。幼少の頃からバレエを習って芸術的環境の中で育ち、パリ国立高等音楽院に入学。1989年ミュンヘン国際コンクールで第2位入賞。2001年、オルガンのために書かれた作品をモダンピアノで斬新な音楽にした「ラモー作品集」でブレイク。ダンサーとのコラボレーションでピアノ音楽の新境地を広げた。モダンピアノならではの古楽の魅力を伝えるピアニスト。

2018年3月18日(日) 14:00開演
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988

「ゴルトベルク変奏曲」は2000年にグールドのCDを購入して、数回聴いている程度。コンサートで初めて聴いたのは、10年前のKitaraでのセルゲイ・シェプキン、2回目は3年前の小山実稚恵。親しみやすい曲とは違うので、コンサートの前に聴いたりしていても、アリア以外のメロディには馴染んでいない。
この作品は2段鍵盤を持つクラヴィチェンバロのために書かれ、アリアと30の変奏曲と再びアリア、計32曲から成る大曲。グールドの1955年の録音盤の演奏時間は40分程度、2度目の1981年のCDはテンポを遅くした演奏で50分程度。同じピアニストでも、こんなに違うが、今まで聴いたピアニストは60分程度だったと思う。タローの「ゴールトベルク変奏曲」は新しいアイデアが入った新鮮な演奏で世界の話題を集めているらしい。どのように曲が展開されるか興味津々であった。

サラバンド風の装飾豊かな美しい主題と、この主題に基づく低音の変奏が続く。30の変奏曲は2部構成で前半が15曲、後半が15曲。3曲ごとに“舞曲”、“トッカータ風”、“カノン”とキリスト教の三位一体論に基づくアイデアで、数学的にも工夫が凝らされた作品になっている。各ユニットの2曲目が2段鍵盤を駆使した両手の交差が使われる(*1段しかないピアノでの工夫に右手と左手の交差が必要なようであった)。前2回のホールでの演奏の座席はステージに向かって右側だったので、ピアニストの手の動きが見えなかったが、今回はホール中央左側の座席からピアニストの手の交差が良く見えたので、何番目の変奏をしているか分かって非常に良かった。譜めくりストがいたことで変奏の切れ目が解りやすかった。第26変奏の演奏が難易度が凄く高そうなことが観ていて分かった。第29変奏もフィナーレと言えそうな素晴らしい演奏で心に響いた。
音楽の専門的なことが解ると、鑑賞が一層、楽だったのだろうが、とにかく良かった。タローの演奏も舞踏の場面を連想させ、非常に洗練された音色で情感がこもっていた。ことし中に50歳を迎えるとは思えない若さとスタイルの良さも兼ね備えた格好いいピアニストの品格のある新鮮なピアニズムを味わえた。

70分の演奏時間を集中力を保って良い音楽が聴けた。“眠りのための音楽”というより“心の癒しとなる音楽”であった。満席の聴衆が70分間も静聴を続け、ピアニストが鍵盤から手を放して心を開放する瞬間まで見守る姿も大変よかった。
アンコール曲は「スカルラッティ:ピアノ・ソナタ K.141」だったが、左手の弾き方に特徴があって面白いタッチが見れた。

※アレクサンドル・タローは音楽の領域を超えた多彩な活動で注目されている。12年にはスイスでコンサートと並行して写真展を開催。12年のフランス・オーストリア合作映画「AMOUR](愛)ではピアニスト役で出演した。この作品はカンヌ国際映画祭パルム・ドールを獲得し、ゴールデングローヴ賞やアカデミー賞外国語映画賞も受賞している。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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