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棟方志功(MUNAKATA SHIKO)展

昨年はゴッホ展を観る機会を得たが、今回は棟方志功展の鑑賞で北海道近代美術館へ出かけた。棟方が18歳の時にゴッホの「向日葵」を見て感動し、“わだば、ゴッホになる”と決意して青森から上京したという話で、前回の美術展との繋がりも味わえた。

私が棟方志功の名を知り、本人の講演を聴いたのは、彼がヴェネツィア・ビエンナーレ展で国際版画大賞を受賞(1956年)して高校の文化講演会に来校した時であった。60年以上も前のことであるが、講堂の演壇から部厚い眼鏡をかけた小柄の人物の姿は今でも瞼に浮かべることができる。残念ながら講演の内容はほとんど覚えていないが、視力が良くない状況で繊細な木彫りの作業を通して版画を作り上げてグランプリに輝いたという偉業は伝わっていた。当時の珍しい言葉“ビエンナーレ”も印象的で、ずっと頭の隅にあった。2年に一度というイタリア語で、3年に一度はトリアンナーレということも後で解るようになった。

今迄、ニューヨークの近代美術館や英国博物館などで棟方志功の作品を観ることもあったが、今回のような74作品、およそ350点もの大々的な展示物の公開は珍しい。
STV創立60周年・STVラジオ開局55周年記念美術展で2月3日より3月25日までの開催。 会期後半や土・日は混み合うことが予想されるので、2月中の平日に鑑賞しようと計画した。

棟方志功と言えば版画(*本人は木を使い、木の魂というイメージを得て途中から「板画」と書いている)だが、油絵から入って板画に転向した。初期の油絵5作品のほかに、晩年のひまわりの油絵「太陽花」(*花瓶は黄・青・真赤・黒・瑠璃の5色)も過去の自分を振り返った作品として興味深かった。

棟方の版画は菩薩など宗教をテーマにした作品、岡本かの子や吉井勇、宮沢賢治などの詩歌を使って絵と組み合わせたユニークな作品もあり、時代によって作品の変化がある。谷崎潤一郎の《鍵》の挿絵を担当した当時の60点の作品は意外だった。仏像や詩などから人生の奥深さを学び取って作品に仕上げている姿が解って、棟方の芸術を追求する心の豊かさを感じ取ることができて素晴らしいと思った。ただ単に、ユニークな版画の作品を通して「世界のムナカタ」として高い評価を受けたのではないと感じた。

彼の戦後の作品で女人が多いが、顔立ちがふっくらとして、切れ長の目で、鼻筋が通っていて、口が小さいのが魅力的である。1959年にアメリカに渡った時のいくつかの作品で絵の中に英語が書かれているのも面白かった。1967年に描かれた「ニューヨーク近代美術館図」、「グリニッチビレッジ図」、「ハドソン河」が1967年制作となっていたのに感慨を覚えた(*この年に私はニューヨークに1週間滞在して市内を隈なく歩き回った。1967年は彼の2度目の紐育訪問では無くて、たぶん前回のスケッチを参考にして後で描いたのかもしれない)。観光で訪れた場所を芸術で表現できる才能が普通の人間とは違うとつくづく思った。
1959年には船でアメリカと同時にヨーロッパの各地も回ったようだ。1963年制作の板画「歓喜自画像の柵」には自画像に加えて、主に片仮名を用いて“ゴッホ エヲカキ二デル”や“ベートーべン 讃 ヨロコビノウタ”の字も入っていた(*かなり、注意をして見ないと判らない)。こういう細かい点まで見て回れたが、混雑している場合はたぶん気が付かない。興味のある人にはお勧めの小品。

全74作品の中には全長約27メートルの板画や全長約17メートルの絵巻物もあった。物凄いエネルギーが無いと、こんな巨大な作品は出来ない。「柵」という字が使われている作品が多いが、四国巡礼の際に首に下げる寺々へ納める廻札の意味で、自分の願いと信念を寺に納めていくそうである。こういう解説がないと「柵」の意味も簡単には理解できない。「板画」、「柵」にも画家独特の意味が込められているのを知った。

還暦を迎えてからは故郷への想いが強くなり、数多くの「望郷の作品群」が作られた。70年代の初めには北海道も訪れて、「北大構内並木図」の油絵や「厚岸港図」などの珍しい小品も展示されている。
力強いダイナミックな書も3点あったが驚いた。芸術家の幅の広さと能力の高さを感じた。

1時間の鑑賞の後に、椅子に座れる時間もあって休憩も取れて、13時から15時まで2時間たっぷり充実した美術展鑑賞ができた。美術展の会期も後半に入るが勤務時間の関係で土日しか時間が取れない人は止むを得ないが、時間に余裕のある人は会期末にならない平日に鑑賞するようにお勧めしたい。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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