ヤンソンスとトリフォノフがシューマンで共演

ダニール・トリフォノフ(Danill Trifonov)がベルリン・フィル・デビューを飾った2016年ジルベスターコンサートを楽しみにしていたが、デジタルコンサートホールでの日本中継は許可が下りずに残念な思いをしていた。2018年1月下旬のベルリン・フィル定期演奏会でヤンソンスとトリフォノフが共演するプログラムを2月に入って2度視聴する機会を持った。

現在、自分が一番聴きたいと思っているピアニストがロシア出身のダニール・トリフォノフである。彼はKitaraのステージには既に2度登場している。1991年生まれのピアニストが2010年ショパン国際コンクールで第3位入賞。11年のルービンシュタイン国際コンクールとチャイコフスキー国際コンクールで共に優勝。彼は11年1月ショパン国際ピアノコンクール入賞者ガラコンサート、12年4月チャイコフスキー国際コンクール優勝者ガラコンサートの日本公演で来札した。アンコール曲の演奏でも作曲活動も行っている才能豊かな雰囲気を感じて魅力が増した。

マリス・ヤンソンス(MARISS JANSONS)は今世紀のクラシック音楽界を牽引している人気の指揮者。現在75歳で指揮台に立つだけでオーラを放つマエストロ。ヤンソンスが1997年ピッツバーグ響の音楽監督に就任した翌年1998年に初の日本ツアーを行い、同じラトヴィア出身のクレーメル(vn)とマイスキー(vc)を同伴した。札幌での共演者はマイスキーでシューマンの協奏曲を聴いたのは忘れもしない曲。交響曲は記憶していなかったが、当時のプログラムで確認してみると「運命」だった。
同じ週にKitaraでラトル指揮バーミンガム市響の演奏会があって、どちらにしようか迷ったものである。やがて、彼ら2人がべルリン・フィルのアバドの後継者となる有力候補に挙がった。
ヤンソンスはその後、2003年にバイエルン放送響音楽監督、04年ロイヤル・コンセルトへボウ管首席指揮者に就任。日本へは2つのオーケストラが交互に隔年で来日公演を開催していた。現在はバイエルン放送響に専念しているが、他のメジャー・オーケストラへの客演機会も多い。マエストロの来札の機会は無くて、ライヴは一度きりである。 テレビ中継では何度か視聴したことはあり、最近では2016年ウィ-ン・フィル・ニューイヤーコンサートで久しぶりにヤンソンスの姿を見れた。16年10月にはKitara で内田&マーラー・チェンバー・オーケストラの「モーツァルトのピアノ協奏曲」を聴いた夜に立ち寄った市内のバーでヤンソンス&バイエルン放送響&内田による「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番」の録画を高音質・大音量でワクワクして聴いたことも忘れられない。

久しぶりに登場したベルリン・フィルの2017年4月定期では、ヤンソンスは「シベリウス:交響曲第1番」、「バルトーク:中国の不思議な役人」を指揮した。予定のプログラム「モーツァルト:交響曲第33番」は変更されて、「ウエーバー:クラリネット協奏曲第1番」(独奏/アンドレアス・オッテンザマー)になっていたが、若き有能なクラリネット奏者の響きが楽しめた。

今回の[ヤンソンスとトリフォノフがシューマンで共演]が私の心を惹きつけていた。20年前にヤンソンス指揮の下でシューマンのチェロ協奏曲を聴き、今回はヤンソンス指揮の下でシューマンのピアノ協奏曲。大好きなミッシャ・マイスキーとダニール・トリフォノフの演奏をマリス・ヤンソンスがつないでくれる想いを勝手に抱いて悦に入っている自分がいた。

Robert Shuman: Piano Concerto in A major, op.54
Anton Bruckner: Symphony No.6 in A major

個人的にはピアノ協奏曲の中でシューマンの作品は最も気に入りの5曲には入る。昨年10月にはラトル&内田のシューマンを09年のアーカイヴで聴いて感銘を受けた。ピアニストが違うとそれぞれの個性が出てきて少々異なる印象を受けるのは当然である。
この曲は最初「ピアノと管弦楽のための幻想曲」として発表され、その後、その幻想曲が第1楽章となり、第2・3楽章が加わってピアノ協奏曲の形になったといわれている。曲は妻のクララに捧げられ、メンデルスゾーン指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管とクララの共演で初演された。
曲はシューマンのクララへの想いが綴られて幻想風に展開され、気分が移り変わるシューマンの心情が読み取れる。2管編成で、室内楽のようにピアノがオーケストラ、特に木管楽器と対話する(*樫本がコンマスを務めたが、マイヤーとオッテンザマーの奏でるメロディの美しさにも感動)。トリフォノフのしなやかな長い手が鍵盤を這うさまに目が吸い込まれてしまう。愛情に包まれた雰囲気が巧みなトリフォノフのピアニズムで綴られていく様は実に美しかった。間奏曲の第2楽章はピアノと弦の対話も印象的で適度なロマンティシズムが表現された。アタッカで入った第3楽章は輝かしさに溢れ、コーダは華麗さを発揮しながらフィナーレとなった。
トリフォノフはゆるぎないテクニックで繊細な表現を遺憾なく流れるようなピアニズムで展開した。曲に込められた心情を淡々と柔らかなタッチで綴る姿には感動さえ覚えた。あごひげや頬ひげをはやしている顔は想像していなかったが、深い音楽性を湛えたトリフォノフの今後はヴィルトオーゾとしての評価をますます高めていくことは間違いなさそうである。
演奏終了後に聴衆からブーケを受け取って弾いたアンコール曲は「ショパン(コルトー編):チェロ・ソナタ 第3楽章」。アンコールに応えて弾く曲も個性的だと思った。

ブルックナーの「第6番」は2014年9月の児玉宏札響定期でコンサートでは初めて耳にしたように思った曲で、めったに聴くことはない。CDで1・2度聴いたぐらいでは分からない。ライヴで聴いた時には集中して聴いているので、それなりに曲の良さを味わったが、親しむまではいかない。
ブルックナーは曲を書いた後に書き直すことが多かったようだが、「第6番」は全4楽章が初演されたのは、作曲家の死後だそうである。その時の指揮者がマーラーで彼の手直しとカットが施されて演奏されたという。
ヤンソンスは今回がベルリン・フィルとのブ共演では初のブルックナーであったのは意外である。シェフを務めていたオーケストラとの共演は数多くあるという。指揮台に立っているだけで存在感のある指揮者。曲の内容は詳しく分からないが、円熟の境地で指揮にあたっている様子であった。年齢的にまだまだ第一線で活躍が期待されるマエストロ。

※ピッツバーグ交響楽団は一時アメリカの6大交響楽団だった時代があって、クレンペラー、ライナー、サーバタ、、スタインバーグ、プレヴィン、マゼールと続いてヤンソンスがシェフを2004年まで務めた。
数年前に50年前の米国留学中にフロリダ州立大学の講堂でスタインバーグ指揮ピッツバーグ響の演奏会を聴いていたことが判った。フロリダの州都タラハッシは当時人口5万人で大学内には5万5千人収容のフットボール競技場もある広大なキャンパスがあり、2つしか州立大学がない州で、フロリダの人口は北海道とほぼ同じ550万人だった(*現在は州の人口も州都の人口も4倍を超えている)。大学は音楽学部もあり、校内で各種のコンサート、バレエ、映画やサーカスも原則無料で楽しめた。有料の場合は1ドル程度。留学中に日記をつけていたのだが、帰国して見直す時間も無かった。2・3年前に大雑把に読み返してみたら記憶が蘇ったことが数多くある。ピッツバーグ響を聴いた記憶はあったが、指揮者がまさか音楽監督だとは想像もしなかった。「レオノーレ序曲第1番」、「幻想交響曲」を聴いたのだが、当時は指揮者のことも、ベルリオーズのことも詳しく知らなかった。曲を聴いて感動する余裕はなかったようだ。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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