ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

ブロムシュテット指揮ゲヴァントハウス管のKitaraでの演奏は2002年、05年に続き3回目となった。90歳を迎えた偉大なる指揮者ブロムシュテットが今回Kitaraに三度出演する日を昨年から一日千秋の思いで心待ちにしていた。
昨年もバンベルク響を率いての来日公演でベートーヴェンの「運命」と「田園」を熱演する様子を〈クラシック音楽館〉で観ていた。89歳になっても進化を続け毅然とした音楽つくりで演奏に臨み、定番の音楽に新しい命が宿るようで新鮮な気持ちで聴いた。演奏中は勿論だが、インタビューでの話は温かい人柄で作曲家に寄り添っての解釈にも心を惹きつけられていた。私が最も大好きな指揮者である。

Herbert Blomstedtは1927年、スウェーデン人の両親のもとに生まれ、29年に家族と共にスウェーデンに移住。ストックホルム王立音楽院卒業後はザルツブルグに留学し、スイスやアメリカでも学ぶ。1954年にストックホルム・フィルを指揮してデビュー。同年ノールショピング響首席指揮者に就任。55年ザルツブルグ指揮コンクール優勝。その後、オスロ・フィル、デンマーク放送響、スウェーデン放送響の音楽監督を歴任。75~85年にはドレスデン・シュターツカペレ首席指揮者、85-95年サンフランシスコ響音楽監督、96-98年北ドイツ放送響首席指揮者、98-2005年にはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管カぺルマイスター。
ブロムシュテットは現在バンベルク響名誉指揮者、N響桂冠名誉指揮者。
ゲヴァントハウス管在任中に同楽団の演奏水準を一気に引き上げたという評価を得ている。N響にも数多く客演して、モーツァルトやベートーヴェンなどの名曲を通して日本人にも親しまれ、N響名誉指揮者の称号を得ていたが、さらに桂冠名誉指揮者となるほど日本の音楽界に貢献している。プロフィールから判断すると、北欧の音楽を聴く機会が今までにあっても良かった感じがする。
世界のメジャー・オーケストラに客演を重ねているが、今年の1月にもベルリン・フィル定期に客演して「ブラームス:交響曲第1番」を指揮して、インタヴューでブラームスの素晴らしさを熱く語る姿も元気そうで楽しかった。

レオ二ダス・カヴァコス(Leonidas Kavakos)は1967年アテネ生まれの世界的ヴァイオリニスト。85年シベリウス国際コンクール優勝。86年インディアナ国際では竹澤恭子に次いで第2位入賞。80年代後半から国際的な活動を始め、シベリウスのヴァイオリン協奏曲の録音がグラモフォン賞に輝いて、世界の注目を一気に浴びたようである。ギリシャを拠点にしてベルリン・フィルやコンセルトヘボウ管らメジャー・オーケストラにも客演して世界的評価が確立し、2012-13シーズンはベルリン・フィルのアーティスト・イン・レジデンスを務めた。
PMF2016には芸術監督ゲルギエフの指名で急遽Kitaraに登場してブラームスのヴァイオリン協奏曲を弾いた。その様子はPMFオン・デマンドで鑑賞して、彼の情熱的で一味違う名曲の演奏に感動した。今回のKitaraの演奏会は話題の二人の登場で早くから期待を集めていた。

札幌コンサートホール開館20周年 〈Kitaraワールドオーケストラ&合唱シリーズ〉

2017年11月7日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 創立275周年記念ツアープログラム〉
  メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
  ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調 WAB,107 (ノーヴァク版)

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(Gewandhausorchester Leipzig)は1743年にライプツィヒの商人16人が出資してコンサート協会を設立。2018年に創立275周年を迎える世界最初の市民オーケストラ。1781年に500席収容の素晴らしい音響を持つゲヴァントハウス(織物会館)が完成し、オーケストラの本拠地となった(*現在の新ゲヴァントハウスは1981年完成で客席数1905)。1835年にメンデルスゾーンはゲヴァントハウス管の最初の常任指揮者となった。在任中にバッハの「マタイ受難曲」を蘇演して、バッハを復活させた貢献も大である(思い出したが、2008年にゲヴァントハウス管はマタイ受難曲の演奏でもKitaraに来演して聴いたことがある)。メンデルスゾーンは、1843年にはライプツィヒ音楽学校を設立した偉大な足跡も遺している。

このオーケストラが世界初演を行った曲はベートーヴェンのピアノ協奏曲《皇帝》(1811年)、シューベルトの交響曲《ザ・グレイト》(1839年)、シューマンの交響曲《春》(1841年)、メンデルスゾーンの交響曲《スコットランド》(1842年)とヴァイオリン協奏曲ホ短調(1845年)、ブラームスのヴァイオリン協奏曲(1879年)、ブルックナーの交響曲第7番(1884年)などである。
今回の演奏曲は2曲ともゲヴァントハウス管の世界初演曲。

3大ヴァイオリン協奏曲または4大ヴァイオリン協奏曲のひとつ「メンコン」は最も人々に愛されている明るいメロディを持つヴァイオリン協奏曲。技巧的にも難しい曲と言われるが、現今では若い才能が弾きこなし、20歳前後のヴァイオリニストがコンサートで弾くことも多い。昨年1月にイザベル・ファウストが札響定期で若い演奏家とは一味違う演奏を披露した。今回も世界的ヴァイオリニストの演奏に興味を抱いて聴きに来た人が大部分だったと思う。
カヴァコスは50歳を迎えたばかりだが、最近では弾き振りも行っているというヴァイオリニスト。作曲には余り時間を掛けないメンデルスゾーンが6年もかけて完成させた協奏曲。当時のゲヴァントハウスのコンサートマスターに迎えたダヴィットが全面的に協力して作り上げたという曲。この協奏曲は全楽章が切れ目なく続けて演奏される。緊張が途切れない演奏が期待される観点も含め、新しい試みが入っている曲とされる。
優雅で気品に満ち、明快で抒情的な旋律を持つ美しいヴァイオリン曲を第1楽章でのカデンツァでは弱音もホールの3階まで美しく届いた。30分弱の曲を驚異的なテクニックを駆使しながらカヴァコスは最初から最後までホールを埋めた2千人の聴衆の心を掴んで魅了した。
盛大な拍手に応えて、アンコール曲は「J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番より “ガヴォット”」。

休憩時間中に久しぶりにワインでも飲もうかと思ったが、ホワイエには今までに見ないほどの長い列が続いていて諦めた。男子トイレも珍しいほどの混雑ぶりで、人がホワイエにはみ出して列をなしていた。日常のコンサートでは女性客の方が多いと感じているが、昨日は特に男性客が多いようであった。当日券も出たが、結果的に座席は完売して空席が見当たらなかった。

前半から楽器配置に特徴があった。後半に備えての楽器配置に思えた。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの対抗配置は珍しくないが、コントラバスが第1ヴァイオリン横、チェロがほぼ中央、ヴィオラが第2ヴァイオリンの横。木管がやや上手寄り。
ブルックナーはブロムシュテットが得意としていることを知らなかった。2002年の札幌公演で「ブルックナー:交響曲第5番」が演目になっているのを昨日になるまで気づいていなかった。15年前の演奏会で買い求めたぶ厚いブログラムを見て分かった。
ブルックナーが書いた0番を含む11曲の交響曲の中で「第4番」と「第7番」は親しめる曲になっている。クラシック音楽に通な人は比較的ブルックナーを好んでいるようであるが、私自身は苦手である。

昨日は午前中にカラヤン&ベルリンフィルのCD、午後はマゼール&ベルリンフィルのYouTube(*映像なしだが、高音質の録音をヘッドフォンで)、夜はブロムシュテット&ゲヴァントハウス管の生演奏で「第7番」を3時間以上も聴いたことになった。ライヴが1番良かったことは勿論である。
自らオルガニストだった経験を生かしたオルガンのスタイルが感じ取れる壮大な音楽つくり。弦のトレモロによる神秘的な導入と木管の歌謡旋律は民謡的で親しめる。第1楽章の終わりにはティンパニも入って壮大なクライマックス。第2楽章ではワーグナーチューバ4本も加わって重厚なオーケストレーションが展開され、観ていて興味深かった。ワーグナーの死に関連した葬送の音楽の悲しみの表現。ワーグナーチューバとホルン各4本が並んで、他の金管セクションの楽器位置と離れているのにも注目した。
第3楽章は田園風景を思わせる明るい自然描写。第4楽章は第1楽章と同じように3つの主題を中心としたソナタ形式でドラマティックに展開されて雄渾なクライマックスで終わる。
久しぶりに座った3階1列中央からステージ全体を見渡せて特に管楽器の演奏ぶりが見れて良かった。15年前はP席からブロムシュテットの顔の表情を十分に見れ、最近は映像で指揮者の顔は焼き付いているので、後姿だけだったが90歳の凛とした姿で指揮に当たっている様子は感動的であった。
演奏終了後にはブラヴォーの掛け声があちこちから掛かった。オーケストラに対しての拍手でもあったが、90歳の指揮者に対しての感謝と感動の拍手がいつまでも続いた。品の良い紳士のブロムシュテットは、オーケストラの演奏を称え、聴衆への謝意を表すのに楽団員の退席後もステージに出てきて別れの手を振った。

※コンサートガイドによると、今回の日本ツアーはこの後に横浜、東京での4公演がある。サントリーホールの料金が札幌の2倍になっているのに驚いた。主催者のKitara が料金を低めに抑えたのだと想像する。ブロムシュテットが無事に公演を終えて帰国されることを祈りたい。


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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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