エディタ・グルベローヴァ オペラ名曲を歌う

半年前にグルベローヴァがKitaraのステージに登場するニュースを知ってビックリした。彼女は2015年での引退表明をしていた。思わぬ吉報に心も弾んでいち早くチケットを購入した。
20世紀のディーヴァ(歌姫)はマリア・カラス。オペラの主役(プリマ)を歌う女性(ドンナ)は数多く生まれるが、ディーヴァの称号を得る歌手は限られている。現在のディーヴァとして世界最高の評価を得ているソプラノ歌手はアンナ・ネトレプコと言えよう。一世代前のディーヴァとしてオペラ界の人気を得ていたのはエディタ・グルヴベローヴァだろう。70歳を迎えたグルベローヴァが現役として活躍を続けて、札幌を訪れてくれることは大きな喜びである。

今回の札幌公演が17年ぶりと判って、過去のことを思い出した。Kitaraが開館して5年ぐらいは世界のオーケストラや演奏家が大挙してKitaraにやってきた。ヨーロッパのオーケストラのいくつかのコンサートのチケットを既に買っていて、日程的に連続したのでグルベローヴァのデュオ・リサイタルは残念ながら聴かなかった(*デュオの相手の名を知らず、料金が高額だったことも聴かなかった一因)。
今月は世界的な指揮者、オーケストラ、演奏家の来札が続くので一層充実した音楽鑑賞が楽しめる。

2017年11月2日(木) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

ソプラノ/ エデイタ・グルベローヴァ(Edita Gruberova)
指揮/ ペーター・ヴァレントヴィッチ(Peter Valentovich)
管弦楽/ 札幌交響楽団(Sapporo Symphony Orchestra)

〈Programme〉
 第1部
  モーツァルト:歌劇《後宮からの誘拐》序曲
  モーツァルト:歌劇《後宮からの誘拐》より コンスタンツェのアリア
            「悲しみが私の宿命となった~どんな拷問が待っていようとも」
  モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》序曲
  モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》より ドンナ・アンナのアリア
            「ひどいですって? そんなことはおっしゃらないで」
  モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》序曲
  モーツァルト:歌劇《イドメネオ》より エレットラのアリア
            「オレステとアイアーチェの苦悩を」
 第2部
  ベッリーニ:歌劇「夢遊病の女」より アミーナのアリア
           「ああ、もし私があと一度でも~ああ、信じられないわ」
  ロッシー二:歌劇《セヴィリアの理髪師》序曲
  ドニゼッティ:歌劇《アンナ・ボレーナ》より アンナのアリア
           「あなた方は泣いているの?~あの場所に連れて行って~邪悪な夫婦よ」
  ロッシーニ:歌劇《泥棒かささぎ》序曲
  ドニゼッティ:歌劇《ロベルト・デヴリュー》より 最後のシーン

ヴァレントヴィッチは2004年スロヴァキア・フィル管を指揮して注目を浴び、スロヴァキア国立歌劇場にも登場、2013年のウィ-ンでのグルベローヴァとの共演以来、彼女との縁が深い。昨年、プラハ国立歌劇場の来日公演では彼女の出演公演すべてで指揮を担当したという。
オペラ公演に慣れていて、初共演となる札響を指揮して5曲の序曲の演奏でオペラの雰囲気を醸し出す役割を十分に果たしていた。

グルベローヴァがステージに登場すると大きな拍手とともに歓声も沸き上がった。大スターの貫録を感じた。
大ホールに入場する前に知らされていたが、第1曲の後半部分の有名な「どんな拷問が待っていようとも」がキャンセルされた。アリアのなかでも最も難しい曲とされるようだが、体調が思わしくなったのかも知れないと思った。聴きどころが聴けなかったのと、やはり年齢を感じさせる歌唱になって第一印象はこんなものかと少々落胆した。

ところが2曲目から見違えるように劇的なオペラに引き込まれる歌唱と演唱。
各曲の演唱終了後にはブラヴィー(*二人以上の男女混合の演奏者に贈られる絶賛の叫び)の声が多分、同一人物と思われる人から何回も続いた。ブラヴォーと叫ぼうとした人も声を出したくても出せなかったのかもしれない状況だったが、会場は盛大な拍手に包まれた。それくらい素晴らしい聴衆の心を打つ歌唱がプログラムの最後まで続いた。

《イドメネオ》や《ロベルト・デヴリュー》は昨年と今年にそれぞれMETビューイングで観ていたので、歌唱の場面が判ってより良い鑑賞ができた。
怒りのアリアや狂乱の場面をアリアに込める超絶技巧を駆使しての感情移入には凄い迫力を感じた。コロラトゥラ歌手として絶頂期の頃と比しての衰えはあっても、鮮やかな声質の転換や表情豊かな演唱は絶品であった。最後の曲まで彼女の熱唱は衰えなかった。まさにディーヴァの名に相応しい演唱であった。

6年前に札幌でドミンゴとパヴァロッティが主演したオペラ映画の上映会が4回あった。「トスカ」(1976)、「カルメン」(1983)、「リゴレット」(1982)、「オテロ」(1986)。「リゴレット」でマントヴァ公爵役がパヴァロッティ、ジルダ役がグルベローヴァだったが、エディタの映像を観たのがこれが最初だった。
今回、グルベローヴァの歌唱を聴けて物凄く感激した。ピアノ伴奏による歌唱とオーケストラをバックにした歌唱では迫力も違った。演奏終了後のホールの盛り上がりも凄かった。

絶賛の嵐に応えてアンコールに「プッチーニ:歌劇《ジャン二・スキッキ》より“私のお父さん”」。止まらない拍手大喝采に「ヨハン・シュトラウスⅡ:喜歌劇《こうもり》より“侯爵様、あなたのようなお方は”」も歌われた。

今月はハンガリー国立歌劇場の来日公演があり、グルベローヴァは9日の東京文化会館での「ランメルモールのルチア」に出演予定。この機会を利用して札幌と東京でコンサートが開かれたようである。彼女はデビュー50周年を迎える来年に正式引退する。
今回が札幌でのサヨナラ公演の意味もあって花束を捧げる人、感謝を告げる幕を用意する人もあって、会場は延々と止まらぬ拍手で最後は聴衆全員総立ちの拍手で別れを告げた。
先週のエリシュカの時と同じような感動的な音楽家との心の交流は記憶に残るだろう。グルベローヴァは旧チェコスロヴァキアのブラティスラバ生まれ、音楽を通してチェコ、スロヴァキア、ハンガリーと日本の繋がりを感じることが時折ある。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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