札響第604回定期演奏会~エリシュカ最後の来日公演

札幌交響楽団と2006年に共演し、08年からは首席客演指揮者を、15年からは名誉指揮者を務めたエリシュカが健康上の理由で本日の公演が最終公演となった。
09年の九州響、N響に客演して《わが祖国》で日本のクラシック音楽界に大反響を巻き起こしたラドミル・エリシュカは札響の存在も全国に轟かせる役割を果した。ドヴォルザーク、スメタナ、ヤナーチェクなどチェコ音楽を広めただけでなく、チャイコフスキー後期三大交響曲、ブラームス交響曲全曲演奏のプロジェクトを行って全曲録音も行われ高い評価を得た。札響のレヴェル向上に多大な貢献を成し遂げ、オーケストラ楽員から尊敬を集め、聴衆の人気が絶大である。三位一体の音楽が毎回展開されているのが特に嬉しい。

札響での共演は今回で24回(42公演)となり、私は18回聴いたことになる。マエストロ尾高がエリシュカを札響に迎えた慧眼は物凄い。エリシュカの公演は毎回大盛況であるが、今回のサヨナラ公演の高まりは例を見ないものとなった。

2017年10月28日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
 スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲
 ドヴォルザーク:チェコ組曲 ニ長調 op.39
 リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 op.35

チェコ国民楽派の祖として名高いスメタナの作品で人々に最も親しまれている曲が「わが祖国」。「売られた花嫁」のタイトルも有名で序曲を度々耳にすることはあるが、メロディには親しんではいない。スメタナは日本で考えられている以上にチェコでは人気が高いと言う。農家の娘が地主に売られ、相愛の青年によって取り戻される物語。
エリシュカは同じ曲は殆ど取り上げないが、この序曲は今回が3度目である(ただし、定期では今回が初めて)。チェコで如何に人気が高いか分るオペラ。

ドヴォルザークの「チェコ組曲」は今まで聴いたことがない。有名な「スラヴ舞曲集」に続いて作曲したとされ、「弦楽セレナード」に似た雰囲気の作品で、管楽器の活躍が目立った。5曲編成。①前奏曲(牧歌) ②ポルカ ③メヌエット(ソウセツカ舞曲) ④ロマンス ⑤フィナーレ(フリアント)。フィナーレではティンパ二も加わってチェコの民族舞曲のリズムで力強く終わる。管弦楽曲として、ボヘミアの郷土色が濃い作品。20年ほど前に函館、青森での札響演奏歴があるが札幌では初演らしい。チェコ音楽には良い曲がまだまだ沢山あることを知った。

エリシュカの最後の曲は彼が札幌と初共演した時の「シェエラザード」。彼にとって札響との縁を結べた記念すべき曲。エリシュカはヨーロッパでは評価の高い指揮者として認識されているようだが、1989年に起ったビロード革命のためにチェコ国内で指揮者の活動が出来なくなり、指導者の道を歩んだ。当時、札響と共演したチェコの指揮者が意外と多いのに驚く。75歳で出会った札響との演奏で日本では巨匠と呼ばれる指揮活動だったが、残念ながら世界的には注目されていないのは残念である。個人的な感想であるが、ヨーロッパでは日本の後追いはしたくないのかも知れない。いずれにしても、エリシュカの最後の演奏曲はとにかく強烈な印象を残す彼の解釈に基づいた「シェエラザード」で新鮮な曲として聴けた(*前回の札響との共演は聴き逃していた)。

リムスキー=コルサコフはロシア国民楽派の「五人組」のひとり。殆ど独学で音楽を学び、職業は海軍士官で、のちにペテルブルグ音楽院教授を務めた。華麗なオーケストレーションを施した曲を書き、ボロディンなどの未完成曲の補筆でも活躍した。「シェエラザード」は彼が遺した最高傑作。華麗なオーケストラの響きとエキゾチックなメロディで絵巻物のように極彩色の音楽が展開される。ラヴェル同様にオーケストラの魔術師の感じがする。

メータ指揮イスラエル・フィルが1987年に録音したCDで楽しんでいたが、ここ何年も聴いていない。生演奏でこの曲を聴くのも久しぶりである。初めて聴く人々も心から楽しめる音楽。伝統的な作曲技法に囚われずに独創的に書き上げたと思われる魅力的な作品。「アラビアン・ナイト」で知られるストーリーを4楽章構成の曲にした。
①海とシンドバッドの船 ②カランダ―ル王子の物語 ③若き王子と王女 ④バクダッドの祭り、海、青銅の騎士の立つ岩での難破、終曲。王の威圧的な主題に続いてシェエラザードの優美な主題を独奏ヴァイオリンが歌う。この王女の主題が曲全体で流れる。第1曲で航海の様子が巧みに描かれ、第2曲のファゴットが奏でる主題がユーモラス。第4曲では王とシェエラザードの主題がいろいろ変化して現れ、海の情景が荒々しくなって船が難破。コーダに入り田島コンマスの奏でるシェエラザードの主題で曲が閉じられた。

予め“曲の余韻を楽しんでから拍手をお願いします”というアナウンスがあって、間をおいてブラヴォーの嵐。聴き慣れた美しい音楽の後に人々の感動の叫びと嵐のような拍手が続いた。何度ものカーテンコールでエリシュカも感極まった様子。スタンディング・オヴェイションをする人の数が多くなり、指揮者は何度もステージを出入りを繰り返す。楽員が退場した後でも鳴り響く拍手にエリシュカがあちこちに礼をする姿を見て、最後には会場に残っていた全員がスタンディング・オヴェイション!残っていた千人を超える人々の別れを惜しむ様子は正に感動的であった。目頭が熱くなる瞬間を味わった人々が多かったのではないだろうか。

コンサートの前後にホワイエに展示されていた札響でのエリシュカの思い出の写真を見る人が重なり合っていたり、指揮者に伝えるメッセージを書いている人々の列が延々と続いている様子も前代未聞。予想を超える状況に驚くと同時に人々のエリシュカに対する感謝の想いが伝わった。音楽家として人間として札幌に偉大な足跡を残した指揮者を改めて素晴らしいと思った。

※実は2年前の心臓バイパス手術後の昨年2月にカテーテル施術でステントを入れて経過観察のため、昨年10月に続いて、今年も昨日カテーテル検査で1泊入院。今日の午前中に退院したばかり。血液がきれいに流れていると分って一安心。万が一の場合はキャンセルも覚悟していたが、楽観主義で生きているので明日の午後もコンサート鑑賞の予定。コンサートを楽しめるのも健康のお陰である。


 
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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