ウィ-ン室内管弦楽団~3つのコンチェルト(モーツァルト・プログラム)

札幌コンサートホール開館20周年に招聘されたWiener Kammer Orchesterは今回が実質的に3度目のKitara登場。ウィ-ン室内管弦楽団は1946年創立。1998年の初来札の英語名はThe Vienna Chamber Orchestraで《モーツァルトの夕べ》、2度目の2014年6月はウィ-ン・カンマー・オーケストラ(*ドイツ語名の和訳)でシュテファン・ブラダーが率いていた。2014年の日本公演は国内8か所で開催され、札幌でのプログラムは「モーツァルト:ジュピター、ショパン:ピアノ協奏曲第2番(ピアノ/牛田)」など。今回のオーケストラの日本名は初回と同じだが、原語のオーケストラ名が付いている。メンバーが入れ替わっていてもオーケストラはオーストリアを代表する室内管弦楽団として世界的に有名である。

シュテファン・ヴラダー(Stefan Vladar)は2008年から芸術監督兼首席指揮者を務めている。彼は1965年ウィ-ン生まれ。13歳でウィ-ン・ムジ―クフェラインザールにデビュー。85年ベートーヴェン国際ピアノコンクール優勝。ピアニストとして世界的に活躍していたが、91年から指揮者としての活動もはじめ、現在はソリスト、室内楽奏者、指揮者という幅広い能力を発揮している。

本日の演奏会は3名のソリストを迎えて《コンチェルトの競演》として開催されたオール・モーツァルト・プログラム。1回のコンサートで3つのコンチェルトが演奏されることは珍しく、5年ぶりのことである。

2017年10月1日(日) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈出演〉指揮・ピアノ/ シュテファン・ヴラダー(Stefan Vladar)
     フルート/ 高橋 聖純(札幌交響楽団首席奏者)(Seijun Takahashi)
     ヴァイオリン/ オスカール・ヴァルガ(Oscar Varga)
     管弦楽/ ウィ-ン室内管弦楽団(21名のメンバー)
〈曲目〉交響曲 へ長調 K.Anh.223(19a)
     ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 「ジュノム」 K.271
     フルート協奏曲 第1番 ト長調 K.313(285c)
     ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 「トルコ風」K.219

昨日の演奏会で本日の予定曲目に交響曲が加わっていることを知った。この交響曲の存在は知られていたが、1980年ミュンヘンでモーツァルトの父親の手による写譜が発見され、その全貌が明らかになったそうである。2005年ドイツで発売されたモーツァルト交響曲全集に46曲が録音されている10枚のCDを持っていた。今朝そのCDを確認して、“SYMPHONY IN F MAJOR, K.19A(1765)”を2回聴いておいた。
本日の10分弱の曲と同じであった。緩・急・緩の3楽章構成でメリハリの効いた楽想は9歳の時に書かれたとは思えないような作品。番号が付いていない交響曲をコンサートで聴いたのは 初めてで新鮮な気持ちを味わえた。
ウィ-ンならではの演奏に第1曲目から惹きつけられた。

「ピアノ協奏曲第9番」は21歳の時にフランスのピアニスト、ジュノムのために 書かれ彼女に献呈された。ピアノ協奏曲で20番台の作品の演奏機会は多いが、一桁の番号の曲が演奏されるのは「第9番」だけではないだろうか。田部京子&ローザンヌ室内管による演奏のCDで時折聴くが、コンサートでは3年前に尾高&小曽根の札響特別演奏会で聴いた。
ピアノ・ソロが美しい旋律を奏で、ピアノとオーケストラの対話が素晴らしかった。華麗なロンドの第3楽章でカンタービレの変奏を伴うメヌエットが印象的だった。
ヴラダーの弾き振りも堂に入って魅力的であった。演奏終了後には力強いブラヴォーの声も上がって、アンコール曲に「リスト:コンソレーション第3番」。美しい調べがとても心にしみた。ピアニストとしても凄い腕前の持ち主の印象を深くした。

「フルート協奏曲第1番」はランパルのCDで親しんでいた。PMFのウィ-ン・フィル首席奏者や工藤&札響などで聴く機会が何度かあった人気のナンバー。編成が独奏フルートのほかはオーボエ2、ホルン2と弦楽17なので、もっと大きな編成で聴いていた気がして意外であった。
いつも聴き惚れている札響首席の高橋の演奏は久しぶりのソロで改めて素晴らしい演奏だと思った。彼は大柄な体躯で身長(190cm以上)があるので外国人に見劣りしない堂々とした演奏ぶりが一層際立った。フルートは何と美しい響きを作り出すのかといつも感動する。

最後のコンチェルトはモーツァルトが書いた5曲のヴァイオリン協奏曲の中で最も演奏機会の多い「第5番」。1775年、20歳になる前年にザルツブルグで一気に書かれた5曲の作品。モーツァルトはピアノの名手であったが、ヴァイオリンの腕も凄かったのは、1年のうちに全曲を書き上げたことからも想像できる。
この曲は5曲中で最も規模が大きくて明確な構成感があり、フランス風の優雅さ、ドイツ風の堅実さを備え、第3楽章にトルコ風の音楽も入って親しまれている。トルコの軍楽隊のリズムが入って異国的な情緒があるのが人気の所以だろうか。

セルビア生まれのヴァルガはハンガリーに移住してリスト音楽院に学び、現在は博士課程に在籍して、同音楽院で教鞭も執っているヴァイオリニスト。ソリスト、室内楽奏者としてヨーロッパの音楽祭で活躍中。
細身の体だが、力強い魅力的な演奏ぶりで聴衆の期待に応えた。

後半2曲のそれぞれの演奏後に会場は盛大な拍手に包まれたが、時間の関係もあってだろうがソリストのアンコール曲は無かった。
モーツァルトのポピュラーで軽快な曲は特に鑑賞後の心が晴れ渡る。3つのコンチェルトを堪能できた今日のコンサートはいつまでも記憶に残るだろう。3曲ともに聴き応えのある曲で、今日の演奏を聴きに来た人は幸福感に包まれて会場を後にした様子であった。

※後記:旭川に在住していた1969-88年当時、ウィ-ン・フィルのコンサートを札幌に聴きに来ていた(1973年)こともあったが、1979年のWIENER KAMMERENSEMBLE(ウィ-ン室内合奏団)の公演を旭川市公会堂で聴いていたプログラムが出てきた。当時の立派な装丁のプログラムは保存してあった。8人全員がウィ-ン・フィルのメンバーでコンサートマスターのゲルハルト・へッツェルの名は今でも記憶している(*へッツェルのリサイタルが後に札幌で開かれていたからである)。国内18公演の同一プログラムの内容は全て忘れていた。当時の室内合奏団・弦楽四重奏団の来日公演は限られていたと思われ、4週間にもわたる公演のスケジュールはかなりきつかったと思う。
ピアノのラベック姉妹やテノールのジュゼッペ・ディ・ステファーノなどは忘れ難い演奏家であったが、ひと昔の出来事は特別な印象がなければ忘れ去っている。
ハイドン、モーツァルト、べートーヴェンの時代からウィ-ン室内楽の伝統が現代にも永遠に引き継がれていることを、今回のウィ-ン室内管弦楽団のコンサートを通して改めて認識した。(10月2日)
    

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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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