エフゲニ・ボジャノフ ピアノ・リサイタル

ポジャノフの名を初めて耳にしたのは2010年ショパン国際ピアノコンクールの時だった。特異な才能と派手なパフォーマンスで聴衆を魅了して、審査員のアルゲリッチも思わず拍手を贈るハプニングもあって話題を集めたピアニスト。結果的には第4位に終って、彼は授賞式を欠席し、ガラコンサートにも参加しなかった。
1995年第13回ショパン国際ピアノコンクールから5年ごとに札幌で入賞者ガラコンサートが開催されている。2011年1月の入賞者ガラコンサートには第1~3位までの4名が出演したが、ボジャノフは参加しなかった。

Evgeni Bozhanovは1984年ブルガリア出身で数々のコンクールに出場して入賞している。彼のピアニズムは聴衆を興奮の渦に巻き込むもので審査員の意見が割れるらしい。2011年8月にはワルシャワの音楽祭に招かれ、ショパンのピアノ協奏曲を演奏して、リサイタルでは「リスト:メフィスト・ワルツ」を弾いた。同年秋には佐渡裕指揮ベルリン・ドイツ響の日本ツアーのソリストとして12公演に同行して、Kitaraの最終公演で「モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番」を演奏した。

12年の日本ツアーではリサイタルを開催。札幌では新しいヤマハのピアノを持ち込み(*多分ヤマハ札幌支店の協力)、ショパン(舟歌、ソナタ第3番)、シューベルト、ドビュッシー、スクリャービン、リスト(メフィスト・ワルツ第1番)を弾いて、大ホールに集まった聴衆を喜ばせた。(*この時はピアノ学習の子どもたちを含めた親子連れが目立って、コンクールの時にYAMAHAを利用していたポジャノフの期待に応えたのだと思った)。

5年ぶりのKitaraのステージであったが、今回は小ホールの響きの良さもピアニスト自身、味わったのではないだろうか。

2017年9月28日(木) 19:00開演  札幌コンサートホール小ホール
〈Program〉
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 op.27-2「月光」
           ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 op.31-3「狩」
 ラヴェル:ラ・ヴァルス
 シューベルト:ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D.960

プログラムは予定された曲目でボジャノフ自らの簡潔な解説が載っていたので、演奏前に読んでバッグに閉まった。「月光」は何十回も耳にしていて親しみのある曲だが、ピアニストが弾き始めたメロディが違った。予定以外の曲を弾いているのかと思った。しばらく時間が経ってから、「第18番」を演奏しているのではないかっと思った。
実は「第18番」は10年以上前にシュナーベルのベートーヴェン・ソナタ全集の中で一度サラッと耳にしたことはあったが全く記憶になかった。コンサートでも聴いた記憶は無い。前日にSPレコードの録音をCDにした曲を耳にしていたので、その曲の感じから演奏の途中でやっと気が付いた。「狩」は明るい曲想で喜びと幸せに満ちた曲だった。
指を縦にしての打鍵がかなり目立って、この曲の特徴なのかと思ったりした。曲名がハッキリしない曖昧な感じで20分程度が過ぎて集中力が保てなかった。

2曲目の暗い序奏が始まる「月光」の独特なメロディでホット安心して落ち着いた気分になれた。1曲目と対照的な音楽の世界が展開された。フィナーレが素晴らしかった。やはり、この曲は心に染みる度合いが違う。演奏法では曲調が違うので、手や指の動きも前曲とはかなり異なっていた。

前半最後の「ラ・ヴァルス」は管弦楽曲としての演奏機会が多くて、ピアノ曲として聴いた記憶がなかった。ラヴェルはオーケストラ版やピアノ版が数多くあるが、この曲のピアノ版はCDでも所有していなかった。
ラヴェルの見事なオーケストレーションによる「管弦楽のための舞踏詩」に慣れていたが、ピアノソロでの「ラ・ヴァルス」は興味津々! 非常にリズミカルな響きで、実際に踊れる曲ではないがウィ-ン舞踏会のワルツの主題が美しく、バレーに合うような雰囲気が出ていた。ボジャノフは得意の高度な技巧を発揮して実に魅力的な演奏となった。

2・3曲目は続けて演奏されたが、演奏終了後のブラヴォーの声がひと際大きく、期待していたピアニストの演奏に客席も満足の様子であった。

前半終了後の休憩時間にプログラムの演奏順変更のアナウンスがあった。演奏会の開始前に放送すべき録音を失念して事後に流した。お詫びの言葉もなく非常に残念なことであった。客への影響は多大なものがあることを主催者は自覚してほしい。
7年前にスロヴァキア管弦楽団の演奏会でドヴォルジャークの「第9番」の予定演目が突然「第8番」の演奏になってしまったことがあった。その折は、コンサートマスターと事務局の打ち合わせで行き違いがあったらしく、事後の対処は一応適切であった。
一個人の不注意が多くの客に与える影響を改めて認識てほしいものである。

シューベルトの「第21番」は繰り返して言及するまでもないくらいブログに書いてきた。人間の喜びと悲しみが音楽で表現されている。ボジャノフは“シューベルトは長調で悲しみや憂鬱、抑制を表現し、逆に短調で戯れや喜びを表現できる偉大な作曲家”と言っている。前半3曲とは違った趣のあるシューベルトの大曲をそれぞれの個性を持ったピアニストを通して何回も耳にできる機会があるのは嬉しい。

アンコール曲が1曲あったが曲名は不明。盛大な拍手が続いたが、数曲弾くのは体力的にも難しそうな印象を受けた。ただ、前回もそうだったが派手な印象はなく、どちらかといえは非常に個性的で控えめではあった。内なる強さは秘めている印象も受けた。曲ごとに演奏技法を変えて非常に個性豊かな演奏をするピアニストの印象を深くした。

プログラムによると、今回の日本ツアーは大阪、東京、名古屋、鎌倉と続く。

※後記:札幌コンサートホールKitaraの情報によると、ボジャノフのアンコール曲は「ラフマニノフ:サロン小品集 作品10-3「舟歌」。偶々、昨日、クラシック・ソムリエ検定ゴールドクラス過去問題に次のことが書かれているのに気付いたので、ここに書き記しておく。ヴィルヘルム・バックハウスは最後の演奏会の途中で気分が悪くなって中断した曲の作品名が「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第18番」。第3楽章で中断して、その1週間後に亡くなったそうである。(9月30日)
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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