スタニスラフ・ブーニン ピアノ・リサイタル 「幻想」

 1989年1月7日が私が初めてブーニンのリサイタルを聴いた日であった。その日は昭和天皇が逝去した日で、中止になるかも知れないと思って主催者に電話をして確認をしてから会場の旧北海道厚生年金会館に出かけた。

 演奏会に先立って当日の「プログラムの最初にショパンのソナタ第2番の第3楽章《 葬送行進曲》が演奏されるので終了後に拍手をしないでください」との放送があった。満席の聴衆は厳粛な気持ちで曲に身を投じ天皇の冥福を祈った。

 演奏曲目はシューベルトの「ピアノ・ソナタ第13番 D664」、あとは全曲ショパン。「夜想曲第20番」、「ポロネーズ第1番」、「練習曲 作品25より第1番、第12番」など。85年のコンクールのテレビ中継で味わった興奮を目の当たりにして嬉しかったものである。

 それから10年ほど経った98年3月に再び彼のリサイタルをKitara大ホールで聴いた。バッハの「イギリス組曲第1番」、ベートーヴェンの「ソナタ第17番《テンペスト》、予定されていたショパンの「12の練習曲Op.10」に変わってシューマンの「クライスレリアーナ」。1月末予定のコンサートが体調を崩して延期になっていたが、無事に体調が回復して何よりだった。当日はブーニンのサイン入りのメッセージが入場者に配られた。格好いいサインがしてあった。

 2001年11月は全国8都市で公演。
Stanislav Bunin with Warsaw Philharmonic The National Orchestra of Poland
演奏曲目は勿論、Chopin: Piano Concertos Nos.1&2
普通のコンサートでは珍しい大判のプログラムが販売されていて購入したが、それによると、ブーニンは1999~2001の3年間に亘ってショパン・チクルスを世界の多くの国々で開催し、3年間で100回以上のショパン・コンサートを行ったそうである。ロシアでは一度も「チクルス」は開けなかったのが残念そうであった。
 やはり、オーケストラと共演のピアノ協奏曲は実に華麗であった。ブーニンも一層のオーラを放って輝いていた。

 彼の札幌でのコンサートに毎回行っているわけではない。
05年11月は彼のデビュー20周年記念《オール・ショパン・リサイタル》
プログラムは「スケルツォ第2番」、「ワルツ第5番」、「バラード第4番」、「幻想ポロネーズ」他。

 07年11月もピアノ・リサイタル。
ベートーヴェンの「ソナタ第8番≪悲愴≫」、「ソナタ第23番≪熱情≫」他。
93年にバッハやベートーヴェンのレコーディングを精力的に行った成果の発表の機会であったが、ベートーヴェンをコンサートの曲目にするのに葛藤があって時間を要したようだ。

 10年はショパン生誕200年に当たり《オール・ショパン・プログラム》。
「ポロネーズ第3番、第4番」、「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」。
「ノクターン第4番」、「ソナタ・第2番≪葬送≫」。
ソナタ第2番と第3番が予定されていたがプログラム変更でチョット残念だった。
 何となくブーニンにしては盛り上がりに欠けたコンサートの印象を受け、結果的にアンコールにも応えてもらえなかった。

 ブーニンは10年の頃 "FAZIOLI"(ファツィオーリ)というイタリア製のピアノが気に入って夢中になっていた様子。「スタインウェイに気が乗らなかったのかな?」というのは私の勝手な思い込みだったのだろう。
  話は横に逸れるがアルド・チッコリーニが〈ファツィオーリを弾く〉という宣伝でKitara大ホールにピアノを持ち込んで演奏を披露したのが03年と05年のことであった。 ファツィオーリは10年のショパン・コンクールから公式ピアノになって今や完全にピアノの名器となっている。

 2012年12月1日 スタニスラフ・ブーニン ピアノ・リサイタル「幻想」が札幌で開催された。
プログラムは ショパン:幻想曲 へ短調、 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」、
         ショパン:幻想即興曲、   シューマン:クライスレりアーナ(8つの幻想曲)。
 予想通り予定のプログラムに変更があったが、半年も前にプログラムを作らされる音楽家にとっては止むを得ない事情があるのはむしろ当然だろう。ブーニンの責任ではないことは言うまでもない。

 ベートーヴェンの「月光」も≪幻想ソナタ≫と言えるし、特に「クライスレりアーナ」をFantasiaとして聴くと非常に理解しやすい。シューマンがクララと恋に落ちた時の心情と重ね合わせて聴くと、まさにファンタジーである。今迄とは違った角度から曲を鑑賞できて嬉しい発見をしたような感じ。

 ショパンの優雅さや抒情性はたっぷり味わえたし、ベートーヴェンも夕闇せまる冬の空を連想して幻想的な雰囲気を自ら作り出しながら心地良い音楽に耳を傾けることができた。

 ブーニンも今日は気分も良さそうで、アンコールに応えてショパンの「ワルツ第9番≪別れのワルツ≫」。

 プログラムを読むとブーニンは1993年の北海道南西沖地震の際には、ピアノを持参して奥尻島でコンサートを開き、そのピアノを小学校に寄贈したとある。最近では東日本大震災による遺児救済のためやユニセフのチャリティ・コンサートを積極的に実施している。プログラムは一見中身が充実していないと思ったが耳寄りな記事があって買って損はしなかった。


 






 
 
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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