成田達輝ヴァイオリン・コンサート(ピアノ/萩原麻未)

成田達輝(Tatsuki  Narita)は2010年ロン=ティボー国際コンクール第2位、12年エリーザベト国際コンクール第2位で一躍脚光を浴びた若手のヴァイオリニスト。12年から彼の演奏会出演も回を重ね、今回の大ホールでのコンサートは5回目となる。前回は昨年1月インキネン指揮プラハ響によるニューイヤーコンサートだった。オーケストラとの共演ばかりを聴いていた。
共演の萩原麻末(Mami Hagiwara)は2010年ジュネーヴ国際コンクールで日本人初の優勝を果たしたピアニスト。13年2月の札響定期(*指揮/セーゲルスタム)に登場してグリーグのピアノ協奏曲を弾いた。二人ともパリ音楽院で学んでいるが、音楽的に相性が良いのか、13年以降デュオを組んでのコンサートが目立つ。
今回は成田が札幌出身の演奏家で、主催が〈札幌友の会〉ということで実質的なデュオ・リサイタルが成田の知名度を生かしての大ホールでのコンサート。チラシも無かったが、Kitara Newsでコンサート開催を知って2ヶ月前にチケットを購入していた。ピアノが萩原というのは後で判明して、コンサートの期待度が一層高まっていた。

2017年9月11日(月) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈Program〉
 クロール:バンジョーとフィドル
 アルベニス:タンゴ
 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番「バラード」
 ラヴェル:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番、 ツィガーヌ
 ドヴォルザーク:ソナチネ ト長調 Op.100
 ブラームス:ハンガリー舞曲集より 第1番、第2番、第5番、第6番
 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン 
 
ピアノ伴奏者はKitara Newsの8・9月の予定表で判明し、予定曲目は3曲のみ示されていた。曲目は出演者に全面的に任されていて、ラヴェルのソナタだけが同じで、コンサート当日は結果的に魅力あるプうログラムを知ることとなった。プログラムに解説がついていて未知の曲は参考になった。

クロールは20世紀のアメリカのヴァイオリニスト・作曲家。聞いたことのある曲のタイトル。彼はクライスラーに師事したということで、メロディはロマンティックで楽しい曲であった。

スペインの作曲家アルベニスは多くのピアノ曲を作っていて、この曲は組曲「スペイン」の第2曲で、のちにクライスラーがヴァイオリン用に編曲して人気が出たそうである。アルゼンチン・タンゴとは違う、ハバネラ風のタンゴ。

各3分程度の2曲の演奏後、成田がマイクを握って挨拶。プログラムにプロフィールの紹介が無かったので、彼は自己紹介で、札幌生まれで、3歳からヴァイオリンを始め、小学3年生からHBCジュニアオーケストラに加入してKitaraの大リハーサル室に通い、素晴らしい音響を持つ大ホールのステージに9年間連続して立てた喜びを語った。その後、フランスで学びコンクールや音楽祭で弾いた演奏曲目にまつわる思い出深いを話をして、その曲の演奏に入ることになった。その前にピアニストが謙虚に言葉少なに自己紹介を行った。(*この時点で聴衆の大部分ははピアニストが大物だということを知らなかったと思う。)

配布されたブログラムに載っていなかった「イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番“バラード”を追加して演奏(*8分強)。パガニーニ以来のヴァイオリンの名手・イザイの無伴奏ヴァイオリンソナタは6曲あって難曲とされている。20世紀のヴァイオリン奏法の開拓者としても知られる。

一端ステージを下がっていたピアニストが再びと登場すると、“麻未さん”を“2010年ジュネーヴ国際コンクールで日本人初の優勝者”と紹介した時に会場から“そんな実績のあるピアノ伴奏者”と知ってビックリした反応があった。ラヴェル以降の演奏を聴いて彼女の実力のほどに納得がいったはずである。
(※萩原は8月に秋山指揮広島響と「ベートーヴェン第1番」、兵庫芸術文化センター管と「ラベル:ト長調」、軽井沢大賀ホールでリサイタル、山田和樹指揮東京混声合唱団特別演奏会のピアノ伴奏と忙しいスケジュールをこなしているから驚きである。)

ラヴェルのヴァイオリン・ソナタは1曲だけと思い込んでいた。今回、「「ソナタ第2番」となっていて一瞬アレッと思った。「ト長調」でミンツとブロンフマンのCDに入っていて番号が付いていなかった。以前の演奏会で一度聴いた覚えがある。
3楽章構成。第2楽章が「ブルース」、第3楽章が「常動曲」。4年も要して書かれた曲。ジャズの雰囲気のある曲で、ラヴェル得意の楽器の独特の表現が際立ってピアノとヴァイオリンの作り出す音が現代音楽風に響いた。ピアノとヴァイオリンが相いれない楽器のようで演奏され、当時としては異端のリズムのような感じがした。時代を先取りした曲作りで、結果として生き生きとした音楽となった。第3楽章は超絶技巧が要求されるような場面が多かった。ピアノ、ヴァイオリン共に演奏が難しいように思えた。相性の合う2人ならではの息の合った演奏だった。聴き慣れると面白い曲かと思った。

「ツィガーヌ」はハンガリーのジプシーの音楽で、ラヴェルの傑作として演奏機会の多い曲。聴衆を惹きつけるヴィルトオジテイの見せ所。
前半が終ると嵐のような拍手大喝采。いつも明るい成田のステージでの振る舞いは演奏とともに客を楽しませる。プログラミングは地元の人々を楽しませようと選曲に工夫を凝らした様子が窺がえた。

ドヴォルザークの「ソナチネ」(小さなソナタの意)は我が子の音楽教育のための曲と言われる。4楽章構成。アメリカ時代のドヴォルザークの特徴が出ている旋律美に溢れ、優しさに満ちた曲。20分余りの曲で初めて聴いた気がした。

ブラームスとサラサーテの曲は誰もが耳にしている馴染みのメロディ。「ハンガリー舞曲」21曲の中で特に親しまれている4曲が続けて弾かれた。コンサートのアンコール・ピースとしてピアノ曲・管弦楽曲として「第5番」が最も有名。一気に引き抜ける成田達輝の若いエネルギーは凄いと改めて感心!

パガニーニ以降の伝説のヴァイオリニストで超絶技巧をふんだんに取り入れたサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。曲のタイトル通り、ハンガリーのジプシー音楽の濃厚な香りが漂う曲で聴く者を魅了する。
成田と萩原は若さあふれる演奏で最後まで聴衆の心を掴んで音楽の楽しさを共有した。
アンコール曲は初めの2曲は成田独奏で《パガニーニ:「24のカプリース」から 第1番 と 第9番》、3曲目は萩原も加わって「ポンセ:エストレリータ」。

※昨年に続く「札幌友の会」主催の大人の音楽会。子どもの音楽会も開催されているのではないだろうか。実は昭和50年代に旭川に在住の頃、妻が「旭川友の会」で10年ほど活動していた。その頃の旭川の指導者の息子さんが辻井伸行を育てたピアニスト川上昌裕。彼は辻井のために曲を録音して指導に当たった話を今回思い出した。辻井の指導は横山幸雄につなげたが、当時の様子を書物にしたようで知っている人も多いかもしれない。35年~40年前くらいの旭川での友の会での母と子の活動を久しぶりに思い出して書いてみた。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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