ふきのとうホール 秋のフェスティバル2017〈プラハへの旅〉 スークピアノ四重奏団&中嶋彰子/バノハ弦楽四重奏団

六花亭札幌本店に《ふきのとうホール》が開館して3年目を迎えている。この素敵な小ホールがオープンした7月には7つのコンサートを聴いた。今、思えばよく7回も聴きに出かけたものである。昨年8月には夏のフェスティバルが3日間開催され、第2日にシューベルトの室内楽を楽しんだ。今年は開催月が9月で秋のフェスティバルとなった。札幌も朝晩は涼しくなって、すっかり秋に入っている。3日間のうちソプラノ歌手中嶋彰子とスークピアノ四重奏団の演奏会を選んだ。

実はヨゼフ・スーク(*ドヴォルザークの曾孫)&堤剛&ダン・タイソンによる〈トリオの夕べ」の演奏会を89年7月、当時の札幌市民会館で聴いた。スーク・トリオのCDで「チャイコフスキー:偉大な芸術家の思い出に」はこのピアノ三重奏団を通して親しんだ。歌手の中嶋の歌はライヴでは一度しか聴いていなかったのでこの機会に是非と思った。

2017年9月2日(土) 16:00開演 ふきのとうホール
〈Program〉
 J.スーク:ピアノ四重奏曲 第1番 イ短調 op.1 (ヨゼフ・スークピアノ四重奏団)
 ドヴォルザーク:ジプシーの歌 op.55 (ソプラノ:中嶋彰子、ピアノ:V.マーハ)
           歌劇「ルサルカ」 op.114より “月に寄せる歌”
 ドヴォルザーク:弦楽六重奏曲 イ長調 op.48
                    (バノハ弦楽四重奏団+スークピアノ四重奏団)

世界的なヴァイオリン奏者だったヨゼフ・スーク(1929-2011)の父Josef Suk(1874-1935)はチェコの作曲家・ヴァイオリニスト。彼はドヴォルザークの孫にあたる。このピアノ四重奏曲はプラハ音楽院でドヴォルザークに学んでいた10代の頃に書かれたそうである。ドヴォルザークやブラームスの影響が感じられるロマン派の情熱的で美しい作品。
作曲家のヨゼフ・スークからその名を取ったピアノ・カルテットは2014年に結成された若手のQuartet。若さに溢れた瑞々しい曲として感じられた。ピアノが加わると音が響き渡り力強さが増す。

中島彰子(Akiko Nakajima)は今月9月号の音楽の友誌の“People”でも紹介されているが、彼女は日本人初となるウィ-ン私立音楽・芸術大学教授に就任。忙しい演奏活動と教育活動を精力的に両立させている様子が分る。8月・9月は日本各地での活動も入ってタイトなスケジュールをこなしている。
歌唱の前にドヴォルザークについての印象をピアニストに確認しながらトークを始めた。ドヴォルザークは汽車の音が好きだったということで「ユモレスク」のメロディを日本人の妻を持つマーハに弾いてもらっていた。彼女は日本語を6ヶ月間勉強して今回の来日に備えたと語った時に聴衆は一瞬驚いた反応を示した。普段の生活でドイツ語や英語ばかりを使っていると、日本語のリスニングに不自由は無くてもスピーキングが思うようにならないからではないかと思った。
3人、集まればチェコ人、ハンガリー人、オーストリア人という話も興味深かった。ジプシーは誇りが高く、ロマンティックで力強い生き方をしているようである。ジプシーの民俗音楽を耳にして歌曲に綴った歌曲集「ジプシーの歌」は7曲から成る。第4曲の「わが母の教え給えし歌」はヴァイオリン曲をはじめ色々な楽器に編曲されて親しまれている馴染みの曲。この曲は涙を誘うメロディであるが、他の曲は全てジプシーの力強く生きる姿が明るく描かれている。プログラムに曲の訳詞が添えられていたので第4曲の日本語訳を参考に書いておく。
 “私の年老いた母が歌を、歌を教えてくれたとき
  不思議なことにいつも、いつも涙を浮かべてた
  そして今、この日に焼けた頬にも涙が落ちる
  私がジプシーの子供たちに遊びや歌を教える時には!”

中嶋が“宝石箱のようなホール”と印象を語った会場に第一声が響き渡った時の歌声は何とも素晴らしくて適当な言葉が見つからないほどであった。彼女の声量は厚みと艶があってKitara小ホールの半分くらいの客席(221席)のどの席でも直接音と反射音が相まって高音も中低音もよく響いた。さすが世界的なソプラノ歌手の歌声は未だ健在で、今までに耳にした日本人歌手でも凄く印象に残る歌声であった。歌詞を参考にして聴けたので、感情も十分に込められているのが分かった。

歌劇《ルサルカ》は3年前のMETビューィングでルネ・フレミングが歌ったアリア「月に寄せる歌」の絶唱が眼前に浮かぶほどの名場面を思い出した。ステージで1曲だけ抒情的な歌唱で感情移入をしながら熱唱した直後の聴衆の盛大な拍手にも全員の感動の様子が伝わっていた。拍手喝采はしばらく鳴りやまなかった。

休憩後の弦楽六重奏曲の演奏は初めて聞くカルテットの名だがチェコの誇る名門だそうである。スークピアノ四重奏団のヴィオラとチェロ奏者が加わったアンサンブル。若手2人とヴェテラン4人の弦楽器の織りなす繊細な音色が自由自在に変化する様にも魅せられた。第3楽章のスラヴ舞曲が激しい曲想となって特に印象に残った。溌溂としたエネルギーが溢れる音楽のあとの終楽章は再び優しい調べでフィナーレ。
35分ほどの演奏でアンコール曲はないかもと思ったが、アンコールに第3楽章の一部を再び演奏してくれた。

2015年7月1ヶ月に亘って行われた《ふきのとうオープニング・フェスティバル》での演奏の一部が抜粋され3枚の記念CDとなった。2016年のニューイヤーコンサート「モーツァルトの愉しみ」(出演/カルテット・アルパ&阪田知樹)と2016年8月夏のフェスティバル「ヴィヴァルディの奇跡」(曲目/「四季」、出演/日下紗矢子&神戸市室内合奏団)の3種類のライヴ・録音のCDを今までのチケット6枚と交換して手に入って嬉しかった。



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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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