田代慎之介ピアノリサイタル

田代慎之介という名のピアニストの名は20年くらい前からコンサート案内で知っていたが、今まで聴く機会が無かった。東京と札幌で定期的にリサイタルを開催し、加えて各地での演奏会、公開講座、録音などで活躍しているようである。

2017年8月29日(火) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール
〈Program〉
 バッハ=ブゾーニ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルテイータ第2番より
             「シャコンヌ」 ニ短調 BWV1004
 ブラームス:自作主題による変奏曲 ニ長調 op.21-1
        ハンガリーの歌による変奏曲 ニ長調 op.21-2
 バルトーク:子供のためにⅠーⅡ ハンガリー民謡編より
 リスト:死の舞踏(「怒りの日」」によるパラフレーズ)

「シャコンヌ」は数年前から原曲よりピアノ曲として毎年何度も耳にする曲。アルバムにしてリリースするピアニストも増えているほどの人気曲。変奏形式の曲が3部から成り、第1、3部はニ短調、第2部はニ長調と初めて知った。ピアノの豊かなハーモニーで崇高な音楽の響きが心を洗ってくれる感じがする。

ブラームスは変奏曲が得意だったようで、《ヘンデル、ハイドン、パガニーニの主題による変奏曲》をそれぞれ遺している。彼はピアノ曲で変奏の巧みさを示していると聞くので、有名な作曲家による変奏曲のほかに、彼のオリジナルの主題による変奏曲があるのは当然だと思った。今までに聴いたことが無かったので予めYouTubeで聴いておいた。
主題と11の変奏から成り、全体的にブラームスらしい穏やかな深みのある音の調べがしたが、第8~10変奏における激しいリズムで楽想が一変した。シューマンの死に動揺し、クララへとの関係にも苦悩した様子が表現されたのだろうか。最後の第11変奏は主題を大きく展開して印象的なフィナーレとなった。

ヴァイオリニストのレメーニを通して知ったと言われるハンガリーの歌を主題に奔放なジプシー音楽が表現された曲。テーマに関連した多彩な変奏で、ブラームスが後に書いた《ハンガリー舞曲集》に繋がったものと類推できた。

バルトークがハンガーリやルーマニアの民俗音楽を収集して、数多くの作品を遺しているが、「子供のために」はタイトルさえ知らなかった。予め、YouTubeで曲の一部を赤松林太郎のピアノ演奏で聴いておいたので曲のイメージは大体つかめた。
プログラム解説によると、「子供のために」は4巻(79曲)中、Ⅰ、Ⅱ巻に収められている全ての曲(40曲)はハンガリー民謡の編曲。
演奏曲は19曲で1曲1分程度で簡潔なピアニズムが美しいハーモニーで彩られている。
田代はリサイタルの全曲を暗譜で弾いたが、全曲40曲から抜粋した19曲を番号順に暗譜で弾くのはプロでも簡単にできることではないのでないかと思った。未だ還暦を迎える年齢ではないようだが、味わい深いピアニズムと合わせて、このピアニストの並々ならぬ研鑽が伝わってきた。

今回のプログラムで楽しみにしていた曲が「死の舞踏」。「死の舞踏」と言えばサン=サーンスの交響詩を連想していたが、実は〈ピアノと管弦楽のための作品〉としてリスト作曲の「死の舞踏」はベレゾフスキー演奏(*ヒュー・ウルフ指揮フィルハーモニア管)のCDを所有している。リストのピアノ協奏曲2曲と一緒に収録されていたので長い間気づいていなかった。昨年ハイメスオーケストラ演奏会で札幌フィルと共演した米国在住の日本人ピアニストがピアノ協奏曲ともいえるこの曲を演奏してとても面白かった。自分でも何処かで聞いたことのある曲の感じはしていたが、ライヴで聴いたのはその時が初めてであった。
また前置きが長くなったが、コンサート当日前にベレゾフスキー(*90年チャイコフスキー国際コンクール優勝者)のCDを聴いた。ピアノ独奏の曲を聴いてみたくなってYouTubeを開いた。偶々、観たのが菅原望(*2012年ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ)演奏の特級二次予選での「死の舞踏」。キーシンがデビューした当時を思わせる容姿のピアニストが繰り広げる魅力的な演奏に心を揺さぶられた。余りにも感動して繰り返して2度観たほどだった。
リストの曲は最高難度の技巧が次々と披露される。手の動きを観ていると興味深さが倍加する。とにかくライヴの前にワクワクが募っていた。

グレゴリオ聖歌「怒りの日(ディエス・イレ)」は死を意味するものとしてロマン派以降の作曲家に多く用いられ、ベルリオーズ、サン=サーンス、ラフマニノフの作品でも使われている。
曲は変奏曲の形はとっているが、テーマの提示や変奏などを含めて既成概念に囚われない自由な発想で展開される。第2変奏と思える箇所ではビックリするような技巧が何度も使われる。「メフィストワルツ第1番」、「ロ短調」など度肝を抜く演奏はリストならではとつくづく魅せられる。
数十年前はリストの超絶技巧曲の演奏は限られたピアニストによって可能であったようだが、現在では20歳前後の若いピアニストが次々と難曲を弾きこなしている。還暦前後のピアニストは演奏可能でも、実際の演奏会でプログラムに入れるのは大変なことだと思う。まずは挑戦したピアニストに敬意を表したい。経験豊富な重厚なピアニズムを味わった後で、迫力に満ち溢れた力強い演奏を聴かせてもらって満足した。

聴衆はピアノが専門の聴衆が多いような気がした。
アンコールに2曲。①リスト:コンソレーション第3番  ②リスト:ラ・カンパネラ
誰にも耳慣れたリストの名曲が会場を和やかにした。

※所有のCDの解説によると、リストが1849年に〈ピアノと管弦楽のための作品〉(死の舞踏「怒りの日」によるパラフレーズ)を作曲した。この曲はTotentanz(死の舞踏) 作品番号S126 R457となっている。その後53年と59年に改訂し、59年に2台ピアノのための曲に編曲。別の書物ではサン=サーンスが74年に作曲した「死の舞踏」をリストは76年にピアノ独奏版に編曲したことになっている。(*この最後の記述はチョット変だと思っている。よくわからないが、サン=サーンスの交響詩と無理やり繋げた印象が残っていた。
リスト音楽院で研鑽を積んだ田代慎之介によると初稿の最終的な完成年は62年となり、その折にピアノ独奏用と2台ピアノ用も作られ1865年に出版されている。リストはオーケストラ曲をピアノ版に数多く編曲しているが、彼の記述の方が信頼性があるように思う。リストの曲を演奏して東京藝術大学などで教鞭も執っている専門のピアニストの解説に納得した。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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