札響第602回定期演奏会(スダーン指揮フランク交響曲&モーツァルト協奏交響曲)

ユベール・スダーン(Hubert Soudant)は1975年の札響定期に客演し前回の札響との共演は2015年1月定期で見事なフランス音楽を聴かせてくれた(フォーレ:組曲“ペレアスとメリザンド”、ラヴェル:“ダフニスとクロエ”第2組曲)。
スダーンは2006年にザルツブルク・モーツァルト管を率いてKitaraに登場してオール・モーツァルト・プログラムを披露してモーツァルト生誕250年を祝った。
今回は「フランク:交響曲」がメイン曲で、もうひとつの話題曲は【プリンシパルズの協奏】とタイトルを付けて札響管楽器首席奏者をソリストにしての「モーツァルト:協奏交響曲」が演奏された。

2017年8月26日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara 大ホール

指揮/ ユベール・スダーン
独奏/  関 美矢子(オーボエ)、三瓶 佳紀(クラリネット)
     坂口 聡(ファゴット)、 山田 圭祐(ホルン)
〈Program〉
 ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番 op.72b
 モーツァルト:協奏交響曲 変ホ長調 K.297b(Anh. C14.01)
 フランク:交響曲 ニ短調 

「レオノーレ」序曲は3曲の中で最も壮大で勇ましいが、歌劇「フィデリオ」の序曲としては長すぎることもあってオペラ上演では演奏機会は殆ど無いようである。ただし、オペラの幕間に入れられたりする場面も多いと聴く。この序曲は単独で演奏される機会が多いと思うが札響定期演奏会で聴くのは久しぶりである。この序曲にはフロレスタンの妻レオノーレが男装して名をフィデリオに変えて夫を救い出す歌劇の場面が暗示されるトランペットの響きをはじめ、歌劇から取られている材料が多いといわれる。「序曲」として長い方であるが、ドラマティックな展開で聴きごたえがある。舞台裏から演奏されるバンダトランペットが印象的であった。

協奏交響曲は複数の独奏楽器を持つ交響曲風の楽曲でソロの活躍が目立つ。モーツァルトのこの曲では「オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン」の4つの管楽器がソロとなる協奏交響曲である。協奏曲は通常、外部から独奏者を招くが、協奏交響曲ではソリストにオーケストラの首席奏者を起用する(*PMF2000の札響演奏会ではソリストは4人のウィ-ン・フィル奏者が務めた)。
今回は札響首席奏者がソリストを務めるほど札響の管楽器奏者のレヴェルが高くなっている証左といえよう。4つの管楽器が織りなす魅力的な音色は得も言われぬ美しい響きとなってホールを包んだ。
(*本来の独奏楽器はフルート、オーボエ、ファゴット、ホルンだったが、依頼人がモーツァルトの手稿を失くしたためにモーツァルトが記憶で書き直した。その際にフルートがクラリネットに変わっていたのだが、その理由は不明のままだというエピソードのある曲でもある。この曲の筆写譜は20世紀初頭に発見された。1964年以降の研究でも結論が出ずに「疑作・偽作」を示す番号が付けられて複雑のままである。)

スダーンはオランダ出身であるが、新フランス放送フィル音楽監督(1982-83)などを務め、94年ザルツブルク・モーツァルト管首席指揮者・首席客演指揮者を10年以上務める。彼は99年から東京交響楽団首席客演指揮者に就任し、04年から14年まで音楽監督。現在は東京響桂冠指揮者。90年代より在京オーケストラを一通り指揮して評価を高めて、日本各地のオーケストラの客演指揮も多い。東京響とは相性が良く、同響のレヴェルを一段と押し上げたのではないだろうか。彼はオペラの分野でも話題作を上演し続け、ヨーロッパの歌劇場やオーケストラへの客演も多い。東京では外国人がシェフを務めるオーケストラが多いが、日本のオーケストラの実力向上に果している役割は多大である。

ベーム指揮ベルリン・フィルのCDで何回か聴いたことがある曲だったが、モーツァルトの権威の指揮者が札響のソリストを中心にオーケストラから引き出す音楽に惹きつけられた。4人の顔なじみの奏者がステージの真ん前で演奏する姿も普段と違う雰囲気が出ていて新鮮であった。女性のオーボエ奏者がソリストを務める時の衣装も一段と華やかで彩を添えた。

フランクの「交響曲」は久しく耳にしていない。近年は「ヴァイオリン・ソナタ」は聴く機会が極めて多い。フランク唯一の交響曲は66歳の時に作曲された。亡くなる2年前であった。この交響曲ニ短調は珍しい3楽章構成。しかし、第2楽章の中間部にスケルツォが入っているので、実質的には4楽章の形式を持っているとも言える。

冒頭のヴィオラ、チェロ、コントラバスの低音楽器による序奏で始まるテーマが全曲の循環主題となる重々しい響き。続いて第1ヴァイオリンが奏でる清らかな“希望の動機”。第2主題は全管弦楽による“信仰の動機”で曲の高まりを見せる。第2楽章では
弦楽器のピツィカートとハープの序奏のあとイングリシュ・ホルンの悲しげな調べの第1主題。弦楽器が奏でる第2主題も合わさる。第3楽章は管楽器の総奏のあとファゴットとチェロによる明るい“歓喜の主題”。この第1主題が様々に繰り返されて発展し、第2主題はトランペットが奏でる。その後、第1楽章や第2楽章の主題が組み合わされ、最後は“歓喜の主題”によってフィナーレとなる。

ニ短調からニ長調へと変わる“暗”から“明”への流れが全曲を貫いている感じをスダーンの明解な指揮ぶりから充分に鑑賞できた。フランクの生い立ちも本を読んで知っていたこともあって、曲の中にオルガン奏者としての重厚な響きも感じた気がした。
管楽器首席奏者4人が抜けても、前首席奏者や客演奏者が補ってメイン曲を演奏できるくらいの実力を備えていることは喜ばしい。

演奏終了後に指揮者が楽団員を称える関係にもスダーンと日本人との相性の良さが見て取れた。本拠地を日本にも置いて活躍する姿を確認できて良かった。また、札響と客演する日を楽しみにしたい。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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