札幌西高等学校管弦楽団第48回定期演奏会

日本の学校教育で合唱や吹奏楽が課外活動で盛んに行われているがオーケストラが高校レヴェルで設立されている学校は稀である。北海道内では札幌西高校だけである。四半世紀前に息子の入学式で札幌西高校のオーケストラの演奏を聴いた。同校の定期演奏会に足を運んだのは今回が初めてである。

札幌西高校オーケストラ部は60年を越える歴史と伝統を誇り、1970年(昭和45年)の第1回定期演奏会以降は毎年1回定期演奏会が開催されてきている。道内の有数の進学校で伝統を守り続ける姿は誠に頼もしい。

2017年8月12日(土) 18:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈PROGRAM〉
 ドヴォルザーク:「スラヴ舞曲第1集」より 第8番
 ハチャトゥリアン:組曲{仮面舞踏会」しt
 ドヴォルジャーク:交響曲 第8番 ト長調 作品88

演奏会の初めに「札幌西高等学校校歌」と「札幌第二中学校校歌」が部長の指揮のもとで演奏された。校歌は本来、オーケストラ用ではないので、盛り上がりに欠ける演奏だったのは止むを得ない。

正式なプログラムが顧問の高橋利夫先生のタクトで始まるとオーケストラは見違えるような音を発した。
スラヴ舞曲は第1集は8曲から成るが、「第8番」はコンサートのアンコール曲としても演奏機会が多く親しまれている。スラヴ舞曲ならではの音楽で色彩感も豊かで活気あるリズムは高揚感を搔き立てた。最初のプログラムに相応しい選曲と思った。

ハチャトゥリアンは当時のグルジア生まれのソ連の作曲家。ロシアの作家レールモントフが書いた戯曲「仮面舞踏会」にハチャトゥリアンが音楽を付けた。帝政ロシアの貴族社会を舞台に嫉妬にかられた夫が妻を殺してしまう悲劇の物語。この劇音楽の中から5曲が組曲として編まれた。
第1曲の「ワルツ」が浅田真央がフィギュア・スケートで使用した曲で一気に有名になり日本だけでなく世界で親しまれるようになった。第2曲ノクターン、第3曲マズルカ、第4曲ロマンス、第5曲ギャロップ。タイトルで曲の展開がある程度判断できる。抒情的で美しいメロディ、ポーランド風の舞曲、悲しいドラマの後で様々な人間模様が時には静かに、時には賑やかにと描かれて華やかなフィナーレとなる。
曲に変化があり、弦楽器、管楽器、打楽器の活躍がそれぞれあって勢いのあるドラマテイックな音楽が繰り広げられた

前半は85名の部員がほぼ全員が参加しての演奏。26名の新入部員を加えてのまとまりのある演奏に顧問の先生の苦労は並大抵でなかった様子がプログラムの中の言葉からも窺がえた。短期間でこれだけの成果を上げるのは大したものである。

後半は馴染みのドヴォルザークの「第8番」。この曲の演奏ではOB・OG5名の協力を得て総勢65名の出演者。在学中の短期間でまとまった演奏に仕上げるのは簡単ではない。顧問の叱咤激励を得ながら苦しい練習を積み重ねてきたことは容易に想像できる。とにかく違和感なく演奏を最初から最後まできちんと聴けた。勉強と両立しながら部活動を行い、この夏休みは最後の仕上げで猛練習したことだろう。
この大曲を届けてくれた高校生を称えたい。プロの道に進む人も中にはいると想像されるが、高校で活動に終止符を打つ者もいるだろう。でも、音楽は何らかの形で彼らと繋がっていくことを確信している。

演奏終了後に会場に集まった1200名以上の聴衆から盛大な拍手が沸き起こった。今年で現役を退く顧問と部長の挨拶に際してはプロや他のアマチュア・オーケストラのコンサートとは少々違った聴衆の応援と感謝の気持ちが広がって感動的であった。
アンコール曲は85名の部員全員で「エルガー:ニム・ロッド」と「ヨーゼフ・シュトラウス:鍛冶屋のポルカ」。

※今回の定期演奏会に際して札幌西高でコントラバス奏者を務めた卒業生が寄稿文を載せていた。彼は高校卒業後イタリアの弦楽器製作所に入学して、卒業後も工房に通って約8年間修業。2012年に帰国して、現在は名古屋で弦楽器の修理工をしているという。彼は今年の初めに西高を訪れて当時の楽器に触れる機会を得た時の感慨も綴っていた。西高オケに出会って現在の自分があると記している。いろんな道で引き続き音楽と関わって人生を歩んでいる人の姿は美しいと思った。

※帰路、Kitaraを出ると通路を戻ってくるレセプショニストと出会った。間もなく友人の姿が目に入ると、ステッキをついていたがコンクリートに躓く瞬間を見て慌てて彼の名を呼んで声を掛けた。彼もすぐ気づいてくれた。伝えてあげたコンサートの情報で、まさかと思っていたら、連日のKitara通い。翌日の西高OBオーケストラの時間も訊かれた。日曜日の教会の話が早く終わったら、また鑑賞に来るとのことだった。オルガニストのフェアウエル・コンサートのチケットは先日買い求めたと言っていた。今月末のソプラノ・リサイタルの招待状の申し出を受けたが東京からの帰りの飛行機の中の時間になるということでお断りした話など、いろいろ話をしてくれた。全盲など感じさせない力強い生き方に刺激を受けつつ、相手の立場で考えることも学んでいる。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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