反田恭平ピアノ・リサイタル 2017 全国縦断ツアー(札幌公演)

待望のSorita Kyoheiのリサイタル。Soritaが高校在学中の2012年に日本音楽コンクールで優勝した様子を偶々テレビで観ていた。その後、モスクワ音楽院に在学中にホロヴィッツ愛用のピアノを使ってのCD「リスト」が発売され、2年前には購入していた。透明感のある音色で他のCDとは違って生き生きとした響きに気分が高揚した。CDを聴いて興奮するのは珍しいことであった。その頃、Twitterをしていたので彼がロシアと日本を忙しく行き来する様子も分かっていた。
昨年11月Kitara 主催公演でサクソフォン奏者上野耕平とのデュオ・リサイタルがあって、反田恭平もリストの「愛の夢」や「タランテラ」を弾いたが彼のピアノを存分に楽しむまでには至らなかった。 
今回のリサイタルは札幌生まれの彼にとっても家族にとっても念願のリサイタルとなった。チケットは2月中旬から早々に売り出されていて完売となっていた。昨日はコンサートの前に彼のCDを聴いて出かけた。地下鉄を降りた時間帯にはKitaraに向かう人の群れで活気があった。エントランスホールも入場中で人々の期待度も高まっていた。札幌市民にとっても待ち望んでいたリサイタルであったことが演奏中の聴衆の鑑賞態度や帰りのサイン会に並ぶ長蛇の列にも表れていた。

2017年8月3日(木) 7:00PM開演  札幌コンサートホールKitara大ホール
〈Program〉
 武満 徹:遮られない休息
 シューベルト:4つの即興曲 D899/op.90
 ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
 リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

武満のこのピアノ作品は初めて聴く。悲しい調べが静かに響き渡る。抽象的な現代音楽で、3分ほどの2曲の後に“愛の歌”が奏でられた。不規則な音の展開にいろんな心模様を想像して耳を傾けた。

シューベルトは亡くなる前年に「4つの即興曲」 op.90 とop.142の作品を計8曲書いた。シューベルトが気のおもむくままに書いたような曲は「即興曲」として親しまれている。心地よい響きで「楽興の時」と同じように人気の調べに包まれたピアノ曲。
2000人の客が入ると曲の切れ目にパラパラと拍手が起こりがちだが、昨日の公演では一切、それが無かった。聴きなれていない人もいただろうが、聴衆の鑑賞の仕方に感心した。

久しぶりにワインを飲んでホワイエでひと時を過ごした休憩後のフランス音楽は美しいラヴェルのピアノ曲。個性的なリストの大曲を前に色合いの違う作品を演奏して対照性を浮き彫りにした。ここまでの曲は楽譜を見て、自ら譜めくりをしながらの演奏で少々意外であった。何らかの思いがあったと思われる。楽譜に忠実に丁寧に弾いたのであろう。

リストの「ロ短調」をライヴで初めて聴いたと思うコンサートが2006年小山実稚恵の演奏だったが、強烈な印象を与えられた演奏は09年ケマル・ゲキチ。それ以後、それまで聴き慣れていなかった曲をアルゲリッチやリヒテルのCDで親しむようにして何度か聴いた。ライヴの前には必ず数回は耳にしているが、最近では昨年はガジェヴ、紗良・オット、今年5月は牛田と続けてライヴで聴く機会があってそれぞれ素晴らしい演奏だった。
今回は予めオグドン(*イギリスのピアニストで1960年ブゾーニ・コンクール、61年リスト・コンクールに優勝。62年チャイコフスキー・コンクールでアシュケナージと共に優勝。89年に急逝)の演奏(*64年)を予め聴いておいたがCDでも曲の凄さが伝わってきた。

,ヴィルトオーゾ的な華やかさと溢れるファンタジーを盛り込んで、リストが試みた大胆で革新的なソナタの傑作。緩徐楽章的要素も取り入れた構成の変則的なソナタ形式で3部から成る長大な単一楽章。
第1部に「ファウスト風の主題」、「メフィスト風の主題」が出てくるが、人間の二面性の葛藤を描いた表現だろうか。第2部のアンダンテでは美しいメロディ(ファウストの恋の主題か?)とメフィストの音型。第3部の再現部に入って、メフィストの音型が再現され、最後には様々な主題が組み合わさって壮大なコーダで結末を迎える。

今では鑑賞力も高まって曲の理解がかなり深まった。以前はただ漠然と聴いていてピアニストの魔術に魅せられていた感があった。反田は「ロ短調」を楽譜なしで、リストの演奏に没入していた。2月中旬にはチケットを購入していたが、その時点で演奏者の運指が見える1階席が取れずに、1階席最後部の中央ではあるが、指の動きが見えない席だったのが残念であった。リストの集大成ともいえる作品を若くして堂々と弾きこなすピアニストが増えているが、それぞれのピアニズムを発揮しているように思った。
鑑賞が難しい作品だと思うが、聴衆は演奏技術に魅せられるので興味を持続できたようであった。聴衆の集中度は高くて演奏終了後の拍手は一段と大きくなっていた。会場は札幌出身のピアニストへの歓迎と称賛が入り混じった大声援に包まれた。

赤ん坊の頃に札幌を離れたとはいえ祖父母の家に来てKitaraに通い、いつかKitaraのステージにという想いが巡って迎えたソロ・リサイタル(*昨年のデュオ・コンサートの折に本人が話していた)。感慨も一入であったと思う。アンコール曲は2曲で終わりかと思ったら3曲も弾いてくれた。第2曲の{月の光」が余りにも美しくて、今まで何十回も聴いたであろうメロディが一段と美しく心に響いた。
アンコール曲は①ショパン:12の練習曲より「第1番」 ②ドビュッシー:月の光  ③シューマン=リスト:献呈

※反田恭平はロシアに在住して一時ロシアと日本を行き来して音楽活動を行っていた。ロシア音楽を得意としているが、現在は多分パリに移っているとTwitterに書いていたのを記憶している。今回のプログラムにフランス音楽が入っていて、ロシア音楽とは趣の違った曲に集中しているのかなと勝手に想像した。
弱冠22歳で輝きながら、個性的な活動を続けるピアニストの今後がますます楽しみである。
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Re: No title

> 楽譜を見ながら演奏するピアニストは別に稀ではありません。
> 例えば、往年の巨匠リヒテルもリサイタルでは楽譜を見ていました。
> また、楽譜を見ていても必ずしも忠実・丁寧に演奏しているとは限りません。
> 反田の演奏は個性的で魅力を感じる面もありますが、厳しく言えば過剰なルバート、スタイルを無視した強弱が目立ちます。
> また、練習不足なのか雑で結構ミスタッチも散見されます。
> さらに曲を理解され力を高めた上でお聴きになられると、様々な発見?があることでしょう。

コメント有難うございました。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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