PMFオーケストラ演奏会・プログラムA[準・メルクル指揮《ダフニスとクロエ》]
2017年のPMFオーケストラ演奏会も3つのプログラムが用意されている。日本人を母に持つドイツ人指揮者の準・メルクルは05年、08年は客演指揮者として参加して、13年、15年は首席指揮者を務めPMFには5回目の参加。3つのプログラムは札幌ではそれぞれ2公演開催。
2017年7月16日(日) 14:00開演 札幌コンサートホールKitara 大ホール
〈出演者〉 j準・メルクル(指揮)、PMFヨーロッパ、 PMFオーケストラ
(*PMFヨーロッパはウィ-ン・フィル、ベルリン・フィルの教授陣)
〈演奏曲目〉
ベルリオーズ:序曲「海賊」 作品21
細川 俊夫:夢を綴る
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」
ベルリオーズ(1803-69)の「幻想交響曲」はあまりにも有名で好んで聴くが、「海賊」は一度テレビで聴いた記憶がある程度の曲。
パリ音楽院在学中にローマ大賞を受賞して、イタリアに留学。この曲はローマ滞在中にバイロンの物語詩「海賊」に触発されて書いたという演奏会用序曲。フランスの作曲家らしい雰囲気のあるロマンティックな作品。2管編成だが、金管楽器が12本で管楽器の響きに特徴があった。10分程度の曲。
細川俊夫((1955- )は武満徹とともに日本現代音楽を代表する海外で人気の作曲家。この管弦楽曲は2010年ルツェルン音楽祭で初演された作品だそうで、もちろん初めて聴いた。日本を連想させる曲想が印象的で、打楽器が静かに奏でる音楽は神秘さを湛えている。海外で喜ばれる曲でもあり、現代曲の良さが伝わった。チェレスタをはじめ様々な打楽器の音色とそれを支える弦楽器の技法にも現代曲の工夫が見られた。15分程度の曲で聴衆の心を動かした作品。
ラヴェル(1875-1937)には輝かしいオペレーションを施した魅力的な作品が沢山ある。彼の代表作の一つ「ダフニスとクロエ」はコンサートでバレエ音楽の全曲を聴くのは初めてのような気がする。管弦楽曲として編まれた第2組曲を演奏会で何回か聴いている。15年にケント・ナガノ指揮モントリオール響、最近では昨年6月にスラットキン指揮フランス国立リヨン管の演奏を聴いた。やはりフランス系のオーケストラによる演奏は独特の味がある。バレエ音楽の全曲のCDは所有しているが、詳しいストーリーは分らずに聴いていてもライヴで音楽を直接に聴く迫力が伝わらない。
この作品はロシア・バレエ団の依頼で書かれた、3部から成るバレエ音楽。1909-12年に作曲。台本は2・3世紀のギリシャの小説家ロンギュスによる物語に基づく。牧人のダフニスと羊飼いの娘クロエが様々な障害を乗り越えて結ばれるストーリー。この健康的な賛歌をラヴェルが巨大な音楽のフレスコ画にした。恋物語の感情表現というより、古代の壁画から作り出された音の叙事詩といった方が良い作品。50分を越える大曲。
【第1部】“序奏と宗教的な踊り”、“全員の踊り”、“ダフニスの踊りとダルコンのグロテスクな踊り”、“ダフニスの優しくて軽やかな踊り”、“ヴェールの踊り~海賊の来襲”、“夜想曲とニンフの神秘的な踊り”
【第2部】“序奏”、“戦いの踊り”、“クロエの踊り”
【第3部】“夜明け”、“無言劇”、“全員の踊り”
第1部の舞台は丘や洞窟を臨む野原。第2部は海賊の陣地。第3部の舞台は第1部と同じ。日が昇り、鳥がさえずる夜明けにダフニスは海賊たちにさらわれていたクロエと再会。ダフニスがクロエへの愛を誓い、若者たちが祝って賑やかに踊る。
指揮者のメルクルもリヨン管の音楽監督在任中には演奏機会が何度かあったと思う。彼はオペラの経験も豊富なのでバレエ音楽として「ダフニスとクロエ」は手中にあるようである。
PMFヨーロッパの14人の奏者がそれぞれのパートのソロを弾いて安定感を引き出していたように思った。特に第3部の夜明けでフルートの奏でる美しいメロディが魅力的であった。戦いの場面や踊りの場面でのオーケストラの盛り上がる演奏は聴きごたえがあった。オーケストラの魔術師と呼ばれたラヴェルならではの曲の盛り上げ方に心も弾んだ。
打楽器の種類も多くて奏者も大活躍、チェレスタはPMFピアニストが演奏していたのではないかと思った。
2階の正面席2列13.・14番の特等席からオーケストラの音を友人と一緒に観覧。時折、オペラグラスで演奏者の姿もハッキリ確認しながらコンサート全体を楽しんだ。前列や右側の数席が空いていたのは大雨の被害を受けたのか都合で来れない人がいたのは気の毒であった。
※PMFヨーロッパはメインプログラムだけの出演で、全体の演奏に加わるほかソロ・パートを受け持つのが通例でオーケストラの質を高めている。ところがホルン・ソロはサラでなく昨年に続いて今年もアカデミー・メンバーが行っていたようである。経験を積ませようとのサラ・ウィリスの配慮だと思った。
2017年7月16日(日) 14:00開演 札幌コンサートホールKitara 大ホール
〈出演者〉 j準・メルクル(指揮)、PMFヨーロッパ、 PMFオーケストラ
(*PMFヨーロッパはウィ-ン・フィル、ベルリン・フィルの教授陣)
〈演奏曲目〉
ベルリオーズ:序曲「海賊」 作品21
細川 俊夫:夢を綴る
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」
ベルリオーズ(1803-69)の「幻想交響曲」はあまりにも有名で好んで聴くが、「海賊」は一度テレビで聴いた記憶がある程度の曲。
パリ音楽院在学中にローマ大賞を受賞して、イタリアに留学。この曲はローマ滞在中にバイロンの物語詩「海賊」に触発されて書いたという演奏会用序曲。フランスの作曲家らしい雰囲気のあるロマンティックな作品。2管編成だが、金管楽器が12本で管楽器の響きに特徴があった。10分程度の曲。
細川俊夫((1955- )は武満徹とともに日本現代音楽を代表する海外で人気の作曲家。この管弦楽曲は2010年ルツェルン音楽祭で初演された作品だそうで、もちろん初めて聴いた。日本を連想させる曲想が印象的で、打楽器が静かに奏でる音楽は神秘さを湛えている。海外で喜ばれる曲でもあり、現代曲の良さが伝わった。チェレスタをはじめ様々な打楽器の音色とそれを支える弦楽器の技法にも現代曲の工夫が見られた。15分程度の曲で聴衆の心を動かした作品。
ラヴェル(1875-1937)には輝かしいオペレーションを施した魅力的な作品が沢山ある。彼の代表作の一つ「ダフニスとクロエ」はコンサートでバレエ音楽の全曲を聴くのは初めてのような気がする。管弦楽曲として編まれた第2組曲を演奏会で何回か聴いている。15年にケント・ナガノ指揮モントリオール響、最近では昨年6月にスラットキン指揮フランス国立リヨン管の演奏を聴いた。やはりフランス系のオーケストラによる演奏は独特の味がある。バレエ音楽の全曲のCDは所有しているが、詳しいストーリーは分らずに聴いていてもライヴで音楽を直接に聴く迫力が伝わらない。
この作品はロシア・バレエ団の依頼で書かれた、3部から成るバレエ音楽。1909-12年に作曲。台本は2・3世紀のギリシャの小説家ロンギュスによる物語に基づく。牧人のダフニスと羊飼いの娘クロエが様々な障害を乗り越えて結ばれるストーリー。この健康的な賛歌をラヴェルが巨大な音楽のフレスコ画にした。恋物語の感情表現というより、古代の壁画から作り出された音の叙事詩といった方が良い作品。50分を越える大曲。
【第1部】“序奏と宗教的な踊り”、“全員の踊り”、“ダフニスの踊りとダルコンのグロテスクな踊り”、“ダフニスの優しくて軽やかな踊り”、“ヴェールの踊り~海賊の来襲”、“夜想曲とニンフの神秘的な踊り”
【第2部】“序奏”、“戦いの踊り”、“クロエの踊り”
【第3部】“夜明け”、“無言劇”、“全員の踊り”
第1部の舞台は丘や洞窟を臨む野原。第2部は海賊の陣地。第3部の舞台は第1部と同じ。日が昇り、鳥がさえずる夜明けにダフニスは海賊たちにさらわれていたクロエと再会。ダフニスがクロエへの愛を誓い、若者たちが祝って賑やかに踊る。
指揮者のメルクルもリヨン管の音楽監督在任中には演奏機会が何度かあったと思う。彼はオペラの経験も豊富なのでバレエ音楽として「ダフニスとクロエ」は手中にあるようである。
PMFヨーロッパの14人の奏者がそれぞれのパートのソロを弾いて安定感を引き出していたように思った。特に第3部の夜明けでフルートの奏でる美しいメロディが魅力的であった。戦いの場面や踊りの場面でのオーケストラの盛り上がる演奏は聴きごたえがあった。オーケストラの魔術師と呼ばれたラヴェルならではの曲の盛り上げ方に心も弾んだ。
打楽器の種類も多くて奏者も大活躍、チェレスタはPMFピアニストが演奏していたのではないかと思った。
2階の正面席2列13.・14番の特等席からオーケストラの音を友人と一緒に観覧。時折、オペラグラスで演奏者の姿もハッキリ確認しながらコンサート全体を楽しんだ。前列や右側の数席が空いていたのは大雨の被害を受けたのか都合で来れない人がいたのは気の毒であった。
※PMFヨーロッパはメインプログラムだけの出演で、全体の演奏に加わるほかソロ・パートを受け持つのが通例でオーケストラの質を高めている。ところがホルン・ソロはサラでなく昨年に続いて今年もアカデミー・メンバーが行っていたようである。経験を積ませようとのサラ・ウィリスの配慮だと思った。
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