オリジナル楽器で聴くブラームス(佐藤俊介X鈴木秀美Xスーアン・チャイ)演奏会

先月末の朝日新聞で浜離宮朝日ホール主催による室内楽コンサートの広告が目に入った。出演者と演奏曲目を見て札幌でも開催されたら良いのにと思っていた。先月27日のKitara小ホールで開かれた《クァルテット・エクセルシオ札幌定期演奏会》の会場で渡されたチラシに札幌でも東京と同じ演奏会があることを知った。7月はもう9回のコンサート鑑賞の予定が入っているが、当日は空いているので是非チケットを手に入れようと思った。
入場料に使用できる六花亭ポイントカードを妻から借りて近くにある支店で購入できた。店員の対応も感じが良くて、現金を使わないで済んで非常に得をした気分になった。

2017年7月4日(火) 午後7時開演  六花亭札幌本店 ふきのとうホール
〈出演〉佐藤俊介(Vn)、鈴木秀美(Vc)、スーアン・チャイ(フォルテピアノ)
〈曲目〉ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 op.100
            チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 op.38
            ハンガリー舞曲より(抜粋) 3曲
            ピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 op.101  

佐藤俊介(Shunsuke Sato)は1984年、東京生まれ。モダン、バロックの双方の楽器を弾きこなす世界的に有名なヴァイオリニスト。2歳からヴァイオリンを始め、4歳の時に父親の米国留学に伴って渡米し、カーティス音楽院教授に師事したあと、ジュリアード音楽院のプレ・カレッジでドロシー・ディレイと川崎雅夫に師事。10歳でフィラデルフィア管にデビュー。ボルティモア響、ナショナル響、シアトル響などと共演。2002年のディレイの死後、03年パリ移住。、パリ市芸術大学やエコール・ノルマル音楽院の特別奨学生に選ばれてジェラール・ブーレの下で更なる研鑽を積む。10年J.S.バッハ国際コンクールで第2位。13年よりアムステルダム音楽院古楽科教授。古楽のオーケストラのコンサート・マスターを務め、オランダ・バッハ教会の次期音楽監督に就任予定。オランダ在住で、国内オーケストラとの共演も多い。現在はヨーロッパを中心に活躍中で、日本に滞在中はソリスト、室内楽奏者として活動。

鈴木秀美(Hidemi Suzuki)は1957年、神戸生まれ。79年第48回日本音楽コンクールに優勝し、その後ハーグ王立音楽院でアンナー・ビルスマに師事。パリの第1回国際バロック・チェロ・コンクールで第1位。「18世紀オーケストラ」や「ラ・プティット・バンド」のメンバーを務め、兄の鈴木雅明が率いるBCJで創立以来、2014年まで首席ソロ奏者を務めた。チェリスト自身が創設した「リベラ・クラシカ」(*ハイドンの交響曲CDを何枚か所有)の指揮者としても活躍し、ヴェトナム、オーストラリア、ポーランド、オランダなどでも客演。13年、山形響首席客演指揮者に就任。現在、東京藝術大学非常勤講師、東京音楽大学客員教授として後進の指導にも当たる。

スーアン・チャイ(Shuann Chai)は中国出身の演奏家。ボストンのニューイングランド音楽院とオランダのハーグ王立音楽院に学ぶ。モダン・ピアノとヒストリカル・ピアノの双方の楽器の活動で注目を浴びている。最近ではオランダやパリの教会でベートーヴェンのリサイタルを開いている。中国、台湾、スコットランド、アメリカなどの音楽院や大学でマスター・クラスを開催。2013-14年シーズンの大部分はベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏に打ち込む。現在、ハーグ王立音楽院客員講師。(*音楽雑誌「ぶらあぼ」によると佐藤俊介の奥様という。)

午前中にブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番をはじめ、ピアノ四重奏曲やピアノ五重奏曲、チェロ・ソナタ、チェロとヴァイオリンのための協奏曲など手元にあったモダン楽器でのCDをたっぷり聴いて、バロック楽器との違いを把握しようとした。ブラームスがピアノを得意にしていたことを改めて認識することにもなった。

今回のコンサートは今までにない自由席で会場にはいつもより早めに出かけた。長い間、待ち望んだ佐藤俊介のコンサートでもあったので気持ちが高揚していた。

コンサートの開始前に鈴木秀美がステージに登場して、ステージのピアノについて話した。ブラームスが愛用していたピアノでブラームス博物館に展示されていたこともある1871年製の同型のウィーン式ピアノ。当時のピアノを日本の江森ピアノが購入して、彼の工房から借り出してきたとのこと。ブラームス時代のピアノで、まさにオリジナル楽器のヴァイオリン、チェロを含めて、曲が作られた当時の様子を優れた音楽家の演奏で楽しめる趣向になった。外観が黒でなく木製のピアノから受ける感じもいつものコンサートとの違いを浮きだたせた。

1曲目は今では“My favourites”となったヴァイオリン・ソナタ。第1番「雨の歌」は先日の千住真理子のストラデヴァリウスで聴いたばかり。今回はバロック・ヴァイオリンで聴く「第2番」。曲の規模も雰囲気も第1番に似ていて抒情的で美しいメロディが心に響く。2009年に寺神戸亮がバロック・ヴァイオリンやヴィオラ・ダ・ガンバを用いて弾いたバッハの曲の印象とは全然違った。モダン楽器で弾いているような感じがしたのが率直な印象。佐藤の演奏は生き生きとして柔らかく艶やかな演奏でロマンティックな気分に浸り、聴き惚れてしまった。
ピアノとも非常に良く調和していて素晴らしかった。ブラームスをオリジナル楽器で聴いて何の違和感もなかった。ブラームスの時代に使われていた弦は羊の腸をよじったガット弦だから、現在使われているスティール及びナイロン弦ではない。演奏技法も違うが、響く音に違いがあるのは何となく判っていた。

2曲目のチェロ・ソナタはデュ・プレ&バレンボイムのCD(68年録音の輸入盤)で時折聴くがモダン楽器による演奏だと思う。鈴木秀美のバッハの無伴奏チェロ全曲演奏会が二夜連続で2001年Kitaraで開かれた。多分、古楽器だったのだろうが、当時は意識していなかった。ブラームスの曲ではやはり、古楽器とモダン楽器の違いが出ていた。チェロの音が弱く、ピアノの綺麗な音が勝っている感じがした。
演奏終了後にブラヴォーの声を上げる人もいたので、コンサートの受け取りは人それぞれである。素晴らしい演奏には変わりがなくても、人々の鑑賞力には違いがあるのは当然と思った。

ハンガリー舞曲から抜粋されて演奏された3曲は「第1番」、「第14番」、「第2番」。ハンガリー舞曲21曲の原曲はピアノ連弾用。20歳ころから作られた曲は1872年にはピアノ曲編曲版が書かれ、ブラームス自身が管弦楽用に編曲した曲もある。ヴァイオリン曲への編曲版も親しまれているが、「第12番」は初めて聴いた。ハンガーリ舞曲は心を浮き立させる曲で楽しかった。

ピアノ曲は大好きだが、2台ピアノのための曲やピアノ三重奏曲にはそれほど親しんでいない。これらの曲は多くの作曲家が作品を遺しているらしい。ここニ三年はピアノ三重奏曲の演奏会が市内のあちこちで開かれるようになった。曲にタイトルが付いているベートーヴェン、チャイコフスキー、ドヴォルジャークのピアノ三重奏曲は知っていても、今回のブラームスの「ピアノ三重奏曲」は聴くのが初めてだった。
ブラームスはピアノ三重奏曲を3曲書いているが、今回の「第3番」はヴァイオリン・ソナタ第2番、チェロ・ソナタ第1番と同じ1886年に書かれた曲。当時のブラームスが慣れ親しんでいたシュトライヒャーピアノの馴染んだ音色が出ている作品と思われる。
第1楽章がアレグロで始まる力強い調べ、第2楽章はプレストでヴァイオリンは弱音器を付けて演奏され、文字通り全楽章とは違う対照的な低い音。第3楽章はアンダンテの緩徐楽章で美しい旋律、最終楽章はアレグロで動きのある激しいリズム。20分程度の曲で、ヴァイオリン・ソナタやチェロ・ソナタと趣が異なる曲で聴きなれないと今一歩良さが分からないと感じた。

演奏会終了後のサイン会に備えて、休憩中に佐藤俊介のCDを2枚購入した。話題を呼んだパガニーニとイザイの無伴奏曲は他のヴァィオリニストのCDを所有しているので、「テレマン:ヴァイオリンのための12の幻想曲」と「preludes(佐藤卓史とデュオの名曲集)」を手に入れた。佐藤俊介と佐藤卓史がデュオで7・8年ぐらい前に札幌市内の奥井理ギャラリーでコンサートを開いたことがあったが、その時は聴き逃した。いずれKitaraに来演すると思っていた。ピアニストは日本に本拠地を移してKitaraで聴く機会があったが、ヴァイオリニストは本拠地がオランダで一時的に帰国しても東京中心で札幌での演奏機会が無かった。念願のコンサートが聴けて凄く嬉しくなっていた。しばらく買わないようにしていたCDは一度に2枚も求めることになった。

サイン会に現れたチェリストと16年前のリサイタルやバッハ・コレギウム・ジャパンの話ができた。ヴァイオリニストはtelemannのCDに注目して、2枚も買ってくれたことに嬉しそうに快くサインをしてくれた。ピアニストにも英語で挨拶して場所を後にした。テーブルにはサインペンが用意してあったので、彼らのCDは買わなかったがプログラムにでもサインをもらえば良かったと後悔した。



           
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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