札響第600回記念定期演奏会《モーツァルト3大交響曲》(ポンマー指揮)

1961年創設の札幌交響楽団が第1回定期演奏会を開いたのが1961年9月。今回は第600回となる記念すべき定期演奏会。前回の第500回定期は2007年6月、尾高忠明指揮による《マーラー:交響曲第2番「復活」》。
第1回定期の演奏曲目は「ベートーヴェン:交響曲第1番」他、第100回定期(1970年)は「モーツァルト:交響曲第36番」と「ブルックナー:交響曲第7番」、第200回定期(1980年)は「マーラー:交響曲第1番」他、第300回定期(1989年)は「レスピーギ:ローマの松」他、第400回定期(1998年)は「マーラー:交響曲第7番」。

前札響正指揮者の高関健が第500回記念定期演奏会の折に彼自身がニューヨーク・フィル(1842年創立)の一万回目のコンサートに同席した思い出が書かれていた。欧米のオーケストラの歴史には遠く及ばないが、日本のオーケストラの最近のレヴェルは欧米並みに達していると評価されている。札響も創立以来何回目かの黄金時代を迎えているのではないかと思われる演奏会が続いている。札幌市民、北海道民のオーケストラとして着実な歩みを続けてほしいとこの機会に願いを新たにした。

札幌交響楽団第600回記念定期演奏会
第600回記念・モーツァルト3大交響曲

2017年6月10日(土) 14:00開演  札幌コンサートホール大ホール
 指揮/ マックス・ポンマー(Max Pommer)
《プログラム》
 モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 K.543
          交響曲第40番 ト短調 K.550
          交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

モーツァルトは家庭の経済状況が悪化していた31歳の時に機会音楽と思われる3つの交響曲を僅か3ヶ月で書き上げた。当時41曲と考えられていた交響曲数も現在では50数曲ともされている。私自身が所有している曲も46曲は有る。旧モーツァルト全集では「ジュピター」が最後の交響曲となっている。

3つの交響曲はいずれも違った持ち味のシンフォニーで短期間でそれぞれ特徴的な曲を作った才能に驚嘆するばかりである。3曲を1回の演奏会で聴いたのは数年前のNHKの「クラシック音楽館」だったと思う。ブロムシュテットがN響と共演した時のプログラムで、放映に先立って歌いながら各曲を解説していた様子が今でも眼前に浮かぶほど印象深かった。3曲はこの十数年に亘ってよく耳にしている。演奏会では第40・41番が演目になっていることが多いが、メロディには3曲ともに馴染んでいる。

「第39番」は演奏会で聴いた記憶は無い。生で聴いて気づいたのは楽器編成である。2管編成だが、オーボエが入っていない。クラリネットを使って、当時としては目新しい音色を創り出したようである。清楚で美しいメロディが歌心に満ちている。モーツァルトのクラリネット協奏曲やクラリネット五重奏曲は一時CDでよく聴いていたので、シンフォニーにクラリネットが使用されているのが当然と思い込んでいた。音楽に親しんでいるようでも素人には曖昧なことがまだ沢山あるようである。

「第40番」の楽器編成はフルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦5部。クラリネットは無し。ティンパニも使われていなかった。(*クラリネットを使った版も後に書かれている)。モーツァルトの曲で短調で書かれてる作品は珍しく、短調の交響曲は他に同じト短調の第25番だけで演奏会で一度聴いたことがある。
強烈なインパクトを持つ、悲劇的で格調の高い作品。何度か生のコンサートで聴いたことのある曲はドラマティックに響いた。激しい感情と安らぎに満ちた穏やかな表情の対比がよく出ていた。第3楽章のメヌエットでの管楽器の響きも良かった。偉大な作品に相応しいフィナーレ。

「第41番」はローマ神話で最高の神であるジュピターの愛称を後に付けられた。その名に相応しい偉容と充実した内容を持つ。最後の交響曲の楽器編成はクラリネットは無く、トランペット2とティンパニが加わった。
第1楽章は明るく力強い総合奏で始まる第1主題、弦楽器の典雅で軽快な第2主題の対比が印象的。民謡的な旋律は深いニュアンスがあって素晴らしい。第2楽章のアンダンテ・カンタービレは情感が豊か。第3楽章はチャーミングで親しみやすく壮麗なメヌエット。個性的な第4楽章は「終楽章にフーガを持つ交響曲」と称されるほどの特徴があるフィナーレ。

モーツァルトの有名な交響曲のコンサートで親しみやすかったのか、最近の札響定期演奏会では最も客席が埋まったように思えた。個人的には聴きなれて親しみのある曲ばかりだったのと、テレビ放映を通してとはいえ《モーツァルト3大交響曲》の新鮮味が薄れていたこともあって感動を味わうほどではなかった。

比較的短い期間でこのような偉大な作品を書いたモーツァルトの偉大さを改めて感じたことは確かである。1789年のフランス革命の前年に作曲されたこれらの交響曲はヨーロッパの新時代を予見する曲にもなっているように思えた。そういう意味で札響の新時代へ向けての選曲だったのかも知れない。

演奏終了後にはブラヴォーの声も上がって聴衆は拍手大喝采でポンマーと札響の演奏を称えた。ポンマーは管楽器奏者、大平コンマスの健闘を労った後に、第2ヴァイオリン首席奏者の大森潤子に歩み寄り言葉をかけていた様子。珍しいことに結構な時間をかけて話していたので、多分、第2ヴァイオリンが果たした役割の労をねぎらっていたのではと類推した。オーケストラ演奏で地味な楽器が演奏に果たす貢献を評価したのだと思った。(*勘違いかも知れないが、敢えて書いてみた。)


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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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