オロスコ=エストラーダがベルリン・フィルでデビュー(ショスタコーヴィチ:交響曲第5番)

昨夕は妻と映画鑑賞。それぞれの趣味を中心に生活しているので一緒に外出することは稀である。6月10日封切の映画「光をくれた人」の試写会が劇場公開に先立って朝日新聞北海道支社主催で開催された。Asahi Family Clubのメンバーで毎年のように映画上映会や講演会に応募して参加していたが最近は久しぶりである。映画は平日の都合の良い時間帯に鑑賞していて、夕方に観ることはない。今回は妻が応募して招待状が届き、偶々時間が空いていたので一緒に出掛けた。
“The Light Between Oceans”はアメリカ・オーストラリア・ニュージーランドの合作映画で灯台守が主人公の物語。オーストラリアの孤島に暮らす孤独な灯台守が妻を迎えて幸せに暮し始めるが、ある出来事が彼らの人生を狂わせる。お互いの愛が人々の心を揺さぶるラブストーリー。一見の価値がある映画である。

昨日の午後は5月開催の3つのデジタル・コンサートホールの最終コンサートを視聴した。
客演指揮者Orozco-Estrada(アンドレス・オロスコ=エストラーダ)は1977年コロンビア出身。若手の俊英指揮者として注目されて既に日本でも客演している。現在、フランクフルトhr響、ヒューストン響の首席指揮者、ロンドン・フィルの首席客演指揮者。今回べルリン・フィルハーモニーに初登場。

前半の演目は珍しい曲。近年、ベルリン・フィルで演奏されていない曲と時間配分を考えて指揮者が選んだ2曲。(*インタヴューで選曲の様子を答えていた。)

〈PROGRAM〉
 R.シュトラウス:交響詩「マクベス」 op.23
 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番 ト短調 op.40
 ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47

シュトラウスの最初の交響詩となる「マクベス」はベルリン・フィルの前回の演奏が2000年という。シェイクスピアの戯曲を基にしているが、ドラマティックな要素もなく何となくスムーズに20分ほどの曲が終わった感じがした。初めて耳にしたので曲の特徴がよく分からなかった所為もある。

ラフマニノフはピアノ協奏曲は第2・3番は名曲として演奏機会が多いが、第4番は最も頻度が少ない。1941年にラフマニノフ自身のピアノ演奏によるオーマンディ指揮フィラデルフィア管のCDで何度か耳にしているが、生で聴いたのは2011年清水和音が高関指揮札響と4曲全曲を弾いた時だけである。

今回のピアニストLeif Ove Andnes(レイフ・オヴェ・アンスネス)は1970年、ノルウエー出身の巨匠。92年にはベルリン・フィルにデビューして国際的に活躍して、十年ぐらい前から何度も来日しているが残念ながら彼の公演を生で聴いたことはない。アンスネスは2010-11年シーズン、ベルリン・フィルのアーティスト・イン・レジデンスを務め、ベルリン・フィルとの共演は数多いピアニスト。

1917年のロシア革命後にアメリカに亡命したラフマニノは演奏家としての活動が多くて、作品は余り残していない。代表作は「ピアノ協奏曲第4番」と「パガニーニの主題による狂詩曲」ぐらいである。
「第4番」は変奏曲の形式が使われるなど従来の曲とは違う革新的な試みがなされている。第1楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ。オーケストラとピアノが一体となって壮大な音楽を奏でる。第2楽章はラルゴで静かな主題がピアノと弦で交互に紡がれ、素朴なメロディが流れる。第3楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ。自由な形式によるラプソディ風の音楽。オーケストラの激しい響きに始まり、ピアノが主題を色彩豊かにいろいろに彩る。力強い響きでフィナーレ。

ピアノの名手アンスネスの比類ない美しさを湛えて情感が籠った演奏は聴衆を圧倒した。アンコールに「シベリウス:ロマンス」。北欧出身でグリーグで脚光を浴び、比較的に地味なデビューだったが今やベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲をマーラー・チェンバー・オーケストラと弾き振りするなどの活躍ぶりは実に頼もしい。アンコール曲に北欧の作曲家の作品を演奏したのも印象的だった。来札公演を期待したいピアニストである。

「ショスタコーヴィチ:交響曲第5番」は2011年の佐渡裕がベルリン・フィル・デビューで指揮した曲でもある。ベルリン・フィルは数年前にも演奏したらしいが、人気の大曲なので指揮者は腕の見せ所として選曲したと思われる。

戦前、戦中、戦後の社会主義国ソ連で生きたショスタコーヴィチは生涯に交響曲を15曲書いた。その中で最も演奏機会が多くて親しまれているのが「第5番」だと思う。ベートーヴェンの「第5番」を意識して作られた「マーラーの第5番」とともに20世紀後半以降では人気の作品。

ショスタコーヴィチはこの曲の発表前に彼の作品はソヴィエト共産党機関紙プラウダによって社会主義にふさわしくないと批判されて苦境に陥っていた。1937年の革命20周年記念演奏会の曲として作られたこの曲の初演で成功を収めて彼の名誉が回復された。“革命”という愛称がある「第5番」は英雄的曲想を持ち「苦悩から勝利へ」、「暗から明へ」と向かう様子が当時のソヴィエト連邦という社会主義国で好意的に受け止められた。ベートーヴェンやマーラーを意識して書き上げた作品かも知れない。
ショスタコーヴィチは極端な社会体制の下で友人を含めて多くの人々を失い苦悩していたが、「第5番」では抒情的な着想で書かれていて、明るい人生感、生きる喜びで結ばれている。人間性をテーマとした作品に仕上げているが、その後の作品でも社会体制に疑問を投げかける作品も多くあり、何処までが彼の本心かは分からない。
いずれにしても「第5番」はショスタコーヴィチの交響曲の中でも最も聴く機会が多くて各楽章に親しみのあるメロディも多くて、一番聴きやすい曲になっている。

オロスコ=エストラーダの指揮ぶりは初めて観たが若々しくて勢いがあり、オーケストラとの調和を図って楽団員の個性も生かしたようであった。(*ヴァイオリニストのインタヴューでの応答ぶりからも判断した。)

※当日のコンサートマスターは樫本大進で第2楽章での美しいソロ・パートの場面も観れて良かった。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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