Kitaraあ・ら・かると 《きがるにオーケストラ》(大植英次&札響)

2013・2014年に次いで3年ぶりの“Kitaraあ・ら・かると”鑑賞になった。ゴールデンウィークの音楽祭として定着しているが、個人的には魅力あるプログラムではない。大植英次の指揮に魅力があって2年連続して聴いた。大植は昨年に続いて《きがるにオーケストラ》に4回目の出演となった。

2017年5月3日(水・祝) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 大植英次     管弦楽/ 札幌交響楽団

〈プログラム〉
 リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30より “導入部”
 ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版より) “火の鳥のヴァリエーション”
 伊福部 昭:ゴジラのテーマ
 ヨハン・シュトラウスⅡ:ワルツ「美しく青きドナウ」作品314
 ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)より 3曲
 ジョン・ウィリアムズ:映画「シンドラーのリスト」より “メイン・テーマ”
 バーンスタイン(ハーモン編):組曲「キャンディ-ド」
 レスピーギ:交響詩「ローマの松」より “アッピア街道の松”

オープニングはドイツの大哲学者ニーチェの著作に基づく作品。曲の導入部“日の出”は2分程度で、映画「2001年宇宙の旅」(1968)で人気曲となった。トランペットが吹奏する荘厳な「自然のテーマ」が宇宙の壮大さを感じさせた。大植は北海道の広大さも表現したかったようである。

指揮者は札幌の歴史を調べて今回のコンサートの選曲を行った。札幌の語源はアイヌ語で「乾いた大きな川」を意味する“サッ・ポロ・ベツ”。「乾いた」はストラヴィンスキーの作品に感じられる“dry”な感性。「大きな」は札幌で学生時代を過ごした北海道出身の作曲家・伊福部の“ゴジラ”で北海道の大きさとスケール感を表現。「川」は「ドナウ河」で表した。

ストラヴィンスキーの3大バレエ音楽の第1作「火の鳥」。組曲は7曲から成る。第3曲が“火の鳥のヴァリエーション”。第5曲“カスチェイ王の悪魔の踊り”、第6曲“子守歌”、第7曲“終曲”の3曲が続けて演奏された。この組曲(1919年版)が演奏曲目になった理由は世界的に知られるようになった札幌味噌ラーメンの創始者が1919年生まれだという。こんな話は初耳である。かなりのこじ付けだが札幌に寄せる指揮者の並々ならぬ想いを感じた。

前半は札幌に視点を当てた曲。演奏時間30分、トーク30分。とうとうと話しまくり、知らない話もあったが、音楽でもっと雄弁に語って欲しいと思ったのが正直な感想。

後半の「シンドラーのリスト」は映画で感動したのが20年も前のことで、音楽は全く印象に残っていなかった。札響コンサートマスター・大平まゆみのヴァイオリン独奏による哀切なメロディを持つオーケストラ演奏を通して戦争の悲惨さ、人種を越えての他人への思いやりなどを感じ取ってもらおうと選曲したようである。作曲者は指揮者の友人でもあるそうである。

バーンスタインは大植英次の師匠。「キャンディ-ド」はPMFを含めて耳にする機会の多い曲で、いつもと少々違う感じのする曲だと思った。後で気づくと編曲版だった。曲には馴染んでいても、ヴォルテールの原作「カンデイ-ド、あるいは楽天主義説」のストーリーは知らなかった。ドイツの片田舎で暮らしていた楽天家の主人公が城を追い出されて、行く先々で様々な苦難を経験した末、故郷の良さを知って生まれ育った土地へ帰る物語。北海道を故郷に持つ幸せを感じ取って欲しいという指揮者の願いが込められた選曲。

最後の曲は「アッピア街道の松」。レスピーギが古代ローマの幻影を追い求めて書いた曲。北海道には松前藩があった。(ほっ)かいどうのまつ(まえはん)---街道の松---から連想した選曲。かなりのこじ付けに笑いを堪えられない発想に驚いた。松がたくさん自生する北海道の自然に着目し、金管楽器のファンファーレで勇壮に閉じられる人気の曲で最後を飾って、聴衆の記憶に届ける印象の深さを狙ったようである。

最初と最後の曲にはオルガンが用いられて札幌コンサートホール専属オルガニストのダヴィデ・マリアーノが出演。「アッピア街道の松」ではバンダで札幌日本大学高等学校吹奏楽部員9名が出演。2階のRB, LB席横からの吹奏で聴衆の喝采を浴びた。

映画音楽や気軽に楽しめる曲が多くて客席には高校生、特に吹奏楽部員らしい生徒がかなり多く目立った。大植の指揮ぶりはダイナミックで聴衆を楽しませる雰囲気を見せたが、トークの準備が大変だったようである。熱意は評価できるが、年月日などあまり意味のない言及も目立った。ドナウ河が流れる20近い国(たぶん17ヶ国)の名を早口で並べ続けたのには感心して舌を巻いた。
最後の曲でコンサートを盛り上げる演出は巧みであった。

聴衆の拍手大喝采に応えてアンコール曲は映画音楽「スターウォーズ」。前半は札幌、後半は北海道に焦点を当てた演奏。アメリカのミネソタやドイツのハノーファーで絶大な人気を集めた熱い心が伝わり、“情熱のマエストロ”と呼ばれる所以が判った気がしたことは確かである。




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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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