直木賞・本屋大賞受賞作「蜜蜂と遠雷」を読んで聴こえる音楽

現在はクラシック音楽鑑賞が最大の趣味ではあるが、映画も20年前から鑑賞機会が増えている。高校時代には読書にも親しんでいた。世界文学全集はかなり読んだ。大学に入ってからは専門の英語の勉強の合間に日本文学にも親しんだ。就職してからは気晴らしに松本清張の推理小説を新書版で100冊以上は読んだと思う。30年前は何百冊かの本は図書館に寄贈できた。100冊余りの世界文学全集を購入していたが積読で終わって、今年の初めに廃棄処分にした。シェイクスピアの原文の全集だけは未だ手元にある。読書の習慣は以前より減ったが、元々、文学賞で話題になった本はめったに読まない。10年ほど前には図書館から音楽演奏家に関する著書を借りて呼んでいた時期もあった。
近年は文庫本は読んでも新版の単行本は読まない。村上春樹の小説も文庫本として出版されてから読みだしている。例外的に新刊「小澤征爾さんと音楽について話をする」は発売当時に直ぐ購入した。村上春樹が音楽に詳しいことをこの本を読んで知って、彼の著書を読んでみる気にもなった。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」はリストの「巡礼の年」のCDを買う動機にもなった。彼の著作には音楽史上で有名な曲が出てくることもあって最近はよく手にする。
村上の最新作「騎士団長殺し」も丁度読み始めたところである。

実はこのブログを書いてみる気になったのは、先日読み終えたばかりの恩田陸著「蜜蜂と遠雷」。直木賞・本屋大賞受賞作で国際ピアノコンクールの様子が生き生きと描かれていて大変面白かったからである。正に文学と音楽が結びつく様を満喫できた。一気に読めるが演奏場面が心に浮かぶように、500ページほどの単行本を持ち歩いて15分程度乗車の電車の中でも読み続けた。

フィクションとはいえ、この本の舞台は実在する浜松国際ピアノコンクール。昨年逝去した日本が世界に誇るピアニスト中村紘子が審査委員長として活躍し、世界的に評価の高い国際コンクールに成長している。1991年に第1回が開かれ、3年ごとの開催で世界的ピアニストがこのコンクールから巣立っている。私のブログでも第4回優勝者ガブリリュクと、オンデマンドで聴いた2012年第8回コンクールの様子を書き綴った。2015年の第9回大会優勝者ガジェヴのリサイタルも日本国内で開かれて彼の演奏会を堪能した。次回は2018年開催である。

登場人物の姿がまるで実在する人物に思え、弾かれる曲目が音を伴って聴こえてくる。第一次予選、第二次予選、第三次予選、本選が行われる2週間と彼らを取り巻く審査員の様子も描かれて興味を増す。
出場ピアニストの個性も豊かであり、著者の音楽鑑賞のレヴェルも一流である。音の広がりの解釈は人それぞれであろうが、達者な表現力で言葉も判りやすい。目次が演奏曲目になっているのもあって興味を惹くタイトル。
主要な出演者の予選、決戦での演奏曲目一覧が載っていたのもストーリー展開の予想が自由に描けてワクワクした。50曲ほどのうち8割は聴いたことのある曲でCDもある。書斎でCDをかけながら読み進める試みもしてみた。

ファイナルの演奏曲目ではCDをかけながら今までKitaraなどで聴いたライヴの様子も思い浮かべた。「プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番」ではPMF2002 デュトワ&アルゲリッチの名演奏、「プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番」では2007年マゼール&ユンディ・リのライヴと小沢&ベルリン・フィルのCD、「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番」では2010年札響&横山、2013年佐渡&BBC&辻井の感動的なライヴを思い出す。ラフマニノフの第3番ではPMF2017のベレゾフスキーの演奏を思い出した。今回CDでは第2・3番のキーシンの演奏を改めて聴いた。
「バルトーク:ピアノ協奏曲第3番」は2月にブロムシュテット&シフのデジタル・コンサートホールで聴いた。「第3番」は今まで聴いたことが無くてアンドラシュ・シフ{*20年前のKitara開館の年にKitaraで演奏)の姿と独特な演奏を聴いて印象付けられた曲。

今回は特別な読み方をしたが、別な機会に本だけに集中してもう一度読み直してみたいと思う。

※2013年本屋大賞を獲得した「海賊とよばれた男」を読んで大変面白かったことを覚えている。映画化もされたが本の面白さを失わないように映画は敢えて観なかった。原作者が社会的に発言する内容は意に沿わないが、本は非常に面白く読んだ。
今回も話題の本を読んで全国の書店員が選ぶ大賞への興味が募った。
※「蜜蜂と遠雷」の中で書かれたカタカナ語「アンラック」が3回でてきて気になった。英語のluckyの反対語はunluckyであるが、名詞で使うと“bad luck”が適当である。「アンラック」が“unlucky”の意味で使っていると思って読み流したが、実際に日本語でも普通に使われだしたのかと思った次第である。(*もと英語教師として、こんなことも気になるので書いてみた。)
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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