札幌交響楽団常任客演指揮者 ラドミル・エリシュカ

 ラドミル・エリシュカ(Radomil Eliska)はチェコ出身の優れた指揮者であるが東側の旧国家体制が崩壊した後も西側の世界に出るチャンスがなく、日本では21世紀に入ってから突然脚光を浴びた名指揮者である。
 2006年12月に札幌交響楽団に初登場。スメタナ:交響詩「ボヘミアの森と草原から」、ドボルジャーク:金の紡ぎ車、リムスキー=コルサコフ:シェエラザードを演奏。

 2008年4月札幌交響楽団首席客演指揮者に就任。第508回定期演奏会(4/11・12)で、ヤナーチェク:狂詩曲「タラス・ブーリバ」、モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 (ピアノ:伊藤恵)、ドヴォルジャーク:交響曲第6番。日本の聴衆にドヴォルジャークの定番である8番・9番ではなく、それこそ隠れた名曲を紹介してくれた。

 音楽評論家の東条碩夫氏によると、2006年の札響での評判が広がったせいか08年4月5日に行われた東京芸大奏楽堂での東京都交響楽団との演奏会は超満員になり、聴衆の熱気は並みのものではなかったそうである。その後のエリシュカの演奏会を札幌まで聴きに来る音楽の専門家も増えているのはその後の音楽評論家などの動向でわかる。

 2009年4月の札響定期では、モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番(ヴァイオリン:木島真優)、 ヤナーチェク:組曲「利口な女狐の物語」、ドヴォルジャーク:交響曲第7番 が演奏曲目であった。前年に引き続き一般に馴染みの少ない曲が演奏されたが、私にとっては嬉しいことでドヴォルジャークの他のCD収集でレコード店を探し回ることになった。7番も6番も聴いてみると魅力のある曲で、今迄8番や9番のCDだけを何枚も集めている状態がおかしく思えた。

 エリシュカは2009年N響定期(2/7)、九州交響楽団定期(10/21)でスメタナ:連作交響詩「わが祖国」をそれぞれ初共演で振った後、10月31日の札響名曲シリーズでも披露して名演を成し遂げて偉大な足跡を残した。

 エリシュカの「わが祖国」は2009年のコンサート・ベストテンに上記のN響と九響の演奏会を上げる評論家がいるほど全国的に話題となった。私は残念ながらこの回の名曲シリーズは聴き逃した。

 2010年4月の札響定期はドヴォルジャーク: 序曲「謝肉祭」、ヤナーチェク: シンフォニエッタ、
ドヴォルジャーク:交響曲第5番。ヤナーチェクのCDは何回も聴いていて親しんでいるが、ドヴォルジャークの第5番は田園的な情感が満ち溢れていてスラヴやボヘミヤ地方の雰囲気を何となく感じ取れた気がした。とにかくエリシュカの演奏は新鮮な感じがするのである。

 2011年4月はエリシュカ/チェコ音楽シリーズvol.4としてドヴォルジャーク:スターバト・マーテル。悲しみに満ちた宗教曲が東日本大震災の翌月に演奏されることになったが、指揮者自身は勿論、札響団員、ソリストや合唱団員すべてが特別な想いを込めて演奏会に臨んだであろうことは想像に難くない。
 演奏会の会場で義捐金募金に協力する人々の姿は更に感動を深めた。

 2012年4月の札響定期は「オール・ドヴォルジャーク・プログラム」
≪スケルツォ・カプリチオーソ≫、≪交響詩「野鳩」≫、≪交響曲第9番「新世界より」≫。やっと9番の登場となったが、やはり素晴らしかった。日本人にはこの曲は心に深く響き渡るものがある。

 チェコの音楽、特にドヴォルジャークの「新世界より」は日本特有の《ヨナ抜きの音階》=四七抜きの音階の旋律が含まれることで知られている。ドヴォルジャークが育ったボヘミア地方の民族音楽の多くはヨナ抜き音階でできている。つまり[ファ][シ]が抜けた5音音階でできている日本の演歌と共通するものがある。日本人がチェコの音楽を身近に感じて好きになる大きな理由の一つなのではと思う。民謡、唱歌などで短調の名曲は日本に数多い。

 エリシュカは札響出演が契機となって各地のオーケストラへの客演依頼も増え日本で旋風を巻き起こしている。80歳を超えているが、まだまだ活躍が期待される指揮者である。





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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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