池辺晋一郎&上杉春雄ジョイント・コンサート(ゲスト:小林沙羅)
作曲家・池辺晋一郎と医師兼ピアニスト・上杉春雄のジョイント・コンサートがKitaraで始まったのが2006年である。その後、この二人のジョイント・コンサートは2年ごとに開催されていた。06年のコンサートⅠがモーツァルト、08年のⅡがベートーヴェン、10年のⅢがシューマンの作品。一人の作曲家の作品が池辺・上杉のほかにゲストを入れて演奏された。東日本大震災後の12年は池辺が総合プロデュース&トークで藤原真理、波多野睦美、上杉春雄の出演でバッハの曲で被災者への“祈りと希望”というタイトルのコンサートとして開催。
今回は間が空いて5年ぶりのジョイント・コンサート。《フランス音楽の魅力》。
2017年4月15日(土) 1:30開演 札幌コンサートホールKitara大ホール
【第1部】「これもフランス音楽!?から、これぞフランス音楽!まで」
マショー(池辺編):ノートルダム・ミサ曲より クープラン:恋のナイチンゲール
ロワイエ:めまい ラモー:ガヴォットと変奏
【第2部】「ザ・フランス音楽百花繚乱」
アーン:クロリスに デュパルク:悲しき歌、旅へのいざない
フォーレ:夢のあとに (以上4曲 ソプラノ:小林沙羅)
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女、 映像第1集より「水の反映」(ピアノ:上杉)
ラヴェル:水の戯れ(ピアノ:上杉)、 「マ・メール・ロワ」より 3曲(ピアノ:池辺・上杉)
グノー:宝石の歌 (ソプラノ:小林沙羅)
第1部は“教会や王侯貴族のためのフランス音楽”。
マショー(1300頃ー1377)は聖職者・作曲家・詩人で中世の怪人と呼ばれる人物。オリジナルは全6曲から成る合唱曲。曲中の“キリエ”を池辺晋一郎が編曲した2台ピアノ版「ノートルダム・ファンタジー」で池辺と上杉の共演。
クープラン(1668-1733)はラヴェルを通して親しんでいる作曲家名。クープラン家のうち最も有名なフランソワはフランス・バロック音楽を代表する人物。鍵盤楽器の名手であったフランソワの「クラブサン曲集」の1曲。愛らしい調べ。
ロワン(1705-55)はイタリア生まれだがフランスでバッハと同時代に活躍した。エネルギッシュな音楽。
ラモー(1683-1764)はバッハの陰に隠れていたが近代音楽の父と呼ばれていたこともあってか名前は知っていた。鍵盤音楽の大家だがオペラも作曲したそうである。舞曲で華やかな印象とともに何となく品の良い調べ。
4人の曲を聴くのは初めてだったが、曲はドイツのオルガン曲とは違うシャレたフランス風の音楽に思えた。コンサートは池辺の勧めで地元のピアニスト上杉の司会で進行。大学の作曲コースでフランス楽派を専攻した池辺のトークで新しい知識を得た。
第2部はフォーレ、ドビュッシー、ラヴェルたちがひと時代を築いた“市民のフランス音楽”。
小林沙羅がKitaraのステージに初登場して歌曲を4曲、続けて熱唱。透明で伸びやかな歌声で聴衆を魅了。彼女は東京藝術大学大学院終了後、2006年に国内デビュー。2010年にウィーンとローマで研鑽を積み、2012年にソフィア国立歌劇場でオペラ・デビュー。近年はオペラ以外での活躍も目立ち、多くの国内オーケストラとの共演でコンサートソリストとしての活動も多い。映画、ミュージカル、テレビなど多方面での幅広い活動が注目されている人気のソプラノ歌手。
今回のKitara 初出演でフランス歌曲も勉強してきたと初々しく語った。
フランスの作曲家は19世紀に入ってベルリオーズ、サン=サーンス、ビゼーなどが活躍したが、ドイツ・オーストリアと比べると後世に残る作曲家は少ない感がある。フォーレがフランス近代音楽の先陣を切った。「夢のあとに」はチェロの曲として耳にすることが多いと思うが、歌曲で聴けたのは新鮮だった。
ドビュッシーやラヴェルについては言及するまでもない。上杉春雄のリサイタルはデビュー15周年と25周年の2回聴いた。2013年のリサイタルは感動的なリサイタルで、医師とピアニストの両立を図っている高度なレヴェルの演奏がいまだ記憶に残る。近年はピアニストの活動が増えている様子。水の音と水面の輝きをイメージした曲がそれぞれ違う美しさで聴きとれた見事な演奏に心癒された。上杉は近年はバッハを得意としているようだが、どんな音楽でもカバーできる正にプロフェッショナル。
「マ・メール・ロワ」より“眠れる森の美女のパヴァーヌ”、“バゴタの女王レドロネット”、“妖精の園”の3曲。ピアノ連弾でメルヘンの世界が繰り広げられた。音楽ではマ・メール・ロワ、文学ではマザー・グースとして広く知られている。フランス語と英語の違いで池辺の説明もあった。
最後の曲はグノー(1818-93):歌劇「ファウスト」より“宝石の歌”。華やかな衣装でステージに登場した小林が得意とするオペラのアリアを披露。歌曲とは違った演唱にウットリ! 若い純真な娘が虚栄心を垣間見せながら無邪気に喜ぶ場面が描かれた。
コンサートの最後を飾るにふさわしいアリアで聴衆を湧かせた。
アンコールに「サティ:ジュ・ドゥ・ヴュ(あなたが大好き)」。ピアノのイントロで始まり、ピアノ・ソロと思わせたが、曲の感じでソプラノが入ると思った。下手のドアーが開いていて小林が歌いながらステージの真ん中に。なかなかシャレた演出だった。拍手大喝采でフィナーレ。
※Kitara のホールから外に出ると、目の不自由な人がレセプショニストに手を引かれて歩いている姿が目に入った。先月も同じ状況があった時に思ったことを直ぐに実行に移した。レセプショニストと別れた時に、彼に話しかけて帰路を共にした。地下鉄大通り駅で彼が降車するまでご一緒した。ごく自然に行動でき、帰路にいろいろ音楽の話などができて良かった。見ているだけでなくて助けになることを自然にできたことを嬉しく思った。
今回は間が空いて5年ぶりのジョイント・コンサート。《フランス音楽の魅力》。
2017年4月15日(土) 1:30開演 札幌コンサートホールKitara大ホール
【第1部】「これもフランス音楽!?から、これぞフランス音楽!まで」
マショー(池辺編):ノートルダム・ミサ曲より クープラン:恋のナイチンゲール
ロワイエ:めまい ラモー:ガヴォットと変奏
【第2部】「ザ・フランス音楽百花繚乱」
アーン:クロリスに デュパルク:悲しき歌、旅へのいざない
フォーレ:夢のあとに (以上4曲 ソプラノ:小林沙羅)
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女、 映像第1集より「水の反映」(ピアノ:上杉)
ラヴェル:水の戯れ(ピアノ:上杉)、 「マ・メール・ロワ」より 3曲(ピアノ:池辺・上杉)
グノー:宝石の歌 (ソプラノ:小林沙羅)
第1部は“教会や王侯貴族のためのフランス音楽”。
マショー(1300頃ー1377)は聖職者・作曲家・詩人で中世の怪人と呼ばれる人物。オリジナルは全6曲から成る合唱曲。曲中の“キリエ”を池辺晋一郎が編曲した2台ピアノ版「ノートルダム・ファンタジー」で池辺と上杉の共演。
クープラン(1668-1733)はラヴェルを通して親しんでいる作曲家名。クープラン家のうち最も有名なフランソワはフランス・バロック音楽を代表する人物。鍵盤楽器の名手であったフランソワの「クラブサン曲集」の1曲。愛らしい調べ。
ロワン(1705-55)はイタリア生まれだがフランスでバッハと同時代に活躍した。エネルギッシュな音楽。
ラモー(1683-1764)はバッハの陰に隠れていたが近代音楽の父と呼ばれていたこともあってか名前は知っていた。鍵盤音楽の大家だがオペラも作曲したそうである。舞曲で華やかな印象とともに何となく品の良い調べ。
4人の曲を聴くのは初めてだったが、曲はドイツのオルガン曲とは違うシャレたフランス風の音楽に思えた。コンサートは池辺の勧めで地元のピアニスト上杉の司会で進行。大学の作曲コースでフランス楽派を専攻した池辺のトークで新しい知識を得た。
第2部はフォーレ、ドビュッシー、ラヴェルたちがひと時代を築いた“市民のフランス音楽”。
小林沙羅がKitaraのステージに初登場して歌曲を4曲、続けて熱唱。透明で伸びやかな歌声で聴衆を魅了。彼女は東京藝術大学大学院終了後、2006年に国内デビュー。2010年にウィーンとローマで研鑽を積み、2012年にソフィア国立歌劇場でオペラ・デビュー。近年はオペラ以外での活躍も目立ち、多くの国内オーケストラとの共演でコンサートソリストとしての活動も多い。映画、ミュージカル、テレビなど多方面での幅広い活動が注目されている人気のソプラノ歌手。
今回のKitara 初出演でフランス歌曲も勉強してきたと初々しく語った。
フランスの作曲家は19世紀に入ってベルリオーズ、サン=サーンス、ビゼーなどが活躍したが、ドイツ・オーストリアと比べると後世に残る作曲家は少ない感がある。フォーレがフランス近代音楽の先陣を切った。「夢のあとに」はチェロの曲として耳にすることが多いと思うが、歌曲で聴けたのは新鮮だった。
ドビュッシーやラヴェルについては言及するまでもない。上杉春雄のリサイタルはデビュー15周年と25周年の2回聴いた。2013年のリサイタルは感動的なリサイタルで、医師とピアニストの両立を図っている高度なレヴェルの演奏がいまだ記憶に残る。近年はピアニストの活動が増えている様子。水の音と水面の輝きをイメージした曲がそれぞれ違う美しさで聴きとれた見事な演奏に心癒された。上杉は近年はバッハを得意としているようだが、どんな音楽でもカバーできる正にプロフェッショナル。
「マ・メール・ロワ」より“眠れる森の美女のパヴァーヌ”、“バゴタの女王レドロネット”、“妖精の園”の3曲。ピアノ連弾でメルヘンの世界が繰り広げられた。音楽ではマ・メール・ロワ、文学ではマザー・グースとして広く知られている。フランス語と英語の違いで池辺の説明もあった。
最後の曲はグノー(1818-93):歌劇「ファウスト」より“宝石の歌”。華やかな衣装でステージに登場した小林が得意とするオペラのアリアを披露。歌曲とは違った演唱にウットリ! 若い純真な娘が虚栄心を垣間見せながら無邪気に喜ぶ場面が描かれた。
コンサートの最後を飾るにふさわしいアリアで聴衆を湧かせた。
アンコールに「サティ:ジュ・ドゥ・ヴュ(あなたが大好き)」。ピアノのイントロで始まり、ピアノ・ソロと思わせたが、曲の感じでソプラノが入ると思った。下手のドアーが開いていて小林が歌いながらステージの真ん中に。なかなかシャレた演出だった。拍手大喝采でフィナーレ。
※Kitara のホールから外に出ると、目の不自由な人がレセプショニストに手を引かれて歩いている姿が目に入った。先月も同じ状況があった時に思ったことを直ぐに実行に移した。レセプショニストと別れた時に、彼に話しかけて帰路を共にした。地下鉄大通り駅で彼が降車するまでご一緒した。ごく自然に行動でき、帰路にいろいろ音楽の話などができて良かった。見ているだけでなくて助けになることを自然にできたことを嬉しく思った。
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