札響ウインド・アンサンブル演奏会(モーツァルト:グラン・パルティータ)

垣内悠希が指揮するコンサートを聴く機会を一度は持ちたいと思っていた。彼は1978年東京生まれ。東京藝術大学、ウィーン国立音楽大学に学び、2011年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。フランス、ベルギー、ロシアなどの海外のオーケストラを含め日本各地のオーケストラにも客演している俊英の指揮者。昨年4月より札響指揮者に就任したが、定期や名曲シリーズにはまだ出演していない。偶々、ふきのとうホールでのコンサートの出演を知って六花亭札幌本店まで出かけてチケットを購入していた。

2017年4月5日(水) 午後7時開演  六花亭札幌本店 ふきのとうホール

〈出演〉札幌交響楽団木管楽器奏者&ホルン奏者
〈指揮〉垣内 悠希(Yuki Kakiuchi)
〈曲目〉R.シュトラウス:13管楽器のための組曲 変ロ長調 op.4
    モーツァルト:セレナード第10番 変ロ長調 K.361 「グラン・パルティータ」

R.シュトラウス(1864-1949)の父は宮廷オペラのホルン奏者、王立音楽学校教師であったこともあり、息子リヒャルトは幼少より音楽に秀でていた。17歳で「13吹奏楽器のためのセレナード」を書いた曲が翌年ドレスデンで初演された。その後、ミュンヘン大学に入学して哲学や美術も聴講して教養を広げた。84年マイニンゲン管弦楽団のために「13管(=吹奏)楽器のための組曲」を作曲し、ミュンヘンで自らの指揮で初演。翌年マイニンゲン宮廷管弦楽団の第2指揮者に就任して、ビューローの代理指揮者となる。86年に病気のためマイニンゲンを去り、作曲家としての道を歩んだ。

この曲の楽器編成はフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4。4楽章構成。今までに全く聴いたことのない曲で見当もつかなかった。ただ「23の独奏弦楽器のためのメタモルフォーゼン」(*1945年の作品)という彼の曲のディスクが手元にあって、シュトラウスらしいタイトルだとは思っていた。
Ⅰ.前奏曲 Ⅱ.ロマンス Ⅲ.ガヴォット Ⅳ.序奏とフーガ(*各楽章のドイツ語の翻訳は当てずっぽう?)。第1楽章は少々重々しい感じだったが、第2・3楽章は軽やかな雰囲気で第4楽章は歯切れが良い曲に思えた。30分余りの曲の良さは充分には分からなかった。

モーツァルトのセレナードの中で《第13番 弦楽のためのセレナード 「アイネ・クライネ・ナハトムジ―ク」》が最も親しまれていて演奏機会も多い。「第10番」は彼が書いた管楽アンサンブルで最大の編成であり、全曲で50分ほどの大曲。楽器編成がオーボエ2、クラリネット2、パセットホルン2、ホルン4、ファゴット2、コントラバス1(*コントラファゴットで代用される場合は「13管楽器のためのセレナード」と呼ばれることもある)。オルフェウス室内管のディスクで数回聴いたことがある曲だが、メロディには親しむまでには至っていない。午前中も一応は曲を聴いてコンサートに臨んだ。
「グラン・パルティータ」は“大組曲”の意味。7楽章構成。Ⅰ.ラルゴ-モルト・アレグロ Ⅱ.メヌエット Ⅲ.アダージョ Ⅳ.メヌエット、アレグレット Ⅴ.ロマンスーアダージョ Ⅵ.主題と変奏(第1~第6) Ⅶ.ロンド-モルト・アレグロ。
印象的なメロディが多く、多彩な楽器の音色が駆使されている。生演奏で聴く曲は良さが伝わる。第1楽章からモーツァルトらしい軽快なメロディの連続。ハーモニーも美しく心地良く聴けた。特に心躍るようなフィナーレはバロック時代の組曲パルティータの名にふさわしかった。

小ホールのステージは13名の奏者に指揮者が加わると狭く見えた。リーダーがいる弦楽合奏と違って、楽器の種類が多い管楽合奏には指揮者がいないとハーモニーが難しいのかなと感じた。大編成でなくても指揮者の存在感のあるコンサートを味わった。
垣内はフランス在住で本拠地をフランスと日本においての活動なのだろう。コンサートガイドによると、3月も札響、オーケストラ・アンサンブル金沢、京都響、東京シテイ・フィルと4回全く違ったプログラムで全国を駆け巡っての公演活動は頼もしい限り。4月1日もKitaraで札響と共演した様子。
現在、ポンマー、エリシュカ、尾高という名指揮者で最強時代を築き上げている札響。佐藤俊太郎、垣内悠希など若い指揮者が札響に吹き込むエネルギーも潤滑剤になっているような気もする。最近、安定した実力を誇る札響オーケストラであるが、管楽器セクションの著しい実力向上の結果とも言えるだろう。今回のような管楽作品のプログラムはオーケストラ全体の向上にも繋がる試みで大いに評価したい。

今夜も満員となったホールは大いに盛り上がった。六花亭主催のコンサートではプログラム・ノートが無いが、短い解説でも聴衆にとっては有難いのではないかと思う。コンサート前のコーヒー&ケーキのサービスも悪くはないが、コンサートのサービスの在り方の工夫があっても良いと思った。

※ブザンソン国際指揮者コンクールは1951年に第1回が始まって59年の第9回で小澤征爾が優勝し、国際指揮者コンクールとして長い伝統を誇り、日本人優勝者が多いコンクールとしても知られている。93年の第43回まで毎年開催されていたが、その後は隔年開催となっている。
ブザンソンはフランス東部の都市。時計産業(高級時計製造業)で知られる。2017年9月に第55回コンクールが予定されているが、結果も楽しみである。
歴代のブザンソン国際指揮者コンクールの日本人優勝者。
 1959年 小澤 征爾   1982年 松尾 葉子   1989年 佐渡 裕   
 1990年 沼尻 竜典   1991年 曽我 大介   1995年 阪 哲朗   
 2001年 下野 竜也   2009年 山田 和樹   2011年 垣内 悠希


 

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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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