ベルリン・フィル次期首席指揮者ぺトレンコがモーツァルト&チャイコフスキーを指揮

今年からデジタル・コンサートホールを視聴している。2016年12月の7つのコンサートのうち視聴可能な3つはアーカイヴで1月に視聴した。2017年1月は4つのコンサートのうち3つを視聴した。オーケストラはベルリン・フィルとは必ずしも限らない。ベルリン・フィルのコンサートは2つで、ブロムシュテッドの指揮が強く印象に残った。プログラムは「バルトーク:ピアノ協奏曲第3番」(ピアノ:アンドラーシュ:シフ)と「ブラームス:交響曲第1番」。シフの姿を20年ぶりに見れて良かった。1997年の札幌コンサートホールの開館年にKitaraに来演して、彼自身がウィーンで選定したKitaraのベーゼンドルファーを弾いた。その後の彼の名声は一気に高まって今では世界有数のピアニストとして活躍し彼の弾くバルトークも知的で思慮にあふれたものであった。

ヘルベルト・ブロムシュテッドは2002年、05年と続けて2回ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管とKitaraに登場している。今年の11月にも同管との来札が予定されていて楽しみにしている大好きな指揮者。彼はN響公演がテレビ中継される際のインタービューでは演奏曲目のメロディを口ずさみながら実に楽しそうに細かく解説してくれる。今回の演奏後のインタビューで記憶に残るコメントがあった。“ハイドンやモーツァルトは第1楽章が重要であるが、ベートーヴェンやブラームスでは最終楽章が大事である”(*大まかな作曲家の特徴を掴むコメントとして印象に残った)。第2・3楽章を短くして終楽章を最高潮に盛り上げる生気溢れる指揮ぶりは89歳にして信じられないほどのダイナミックな曲の展開に改めてこの曲の良さを味わった。来日時には90歳を迎えている。健康を維持しての来演の実現を祈る気持である。

2月はラトル指揮の2つのコンサート。1つは「マーラー:交響曲第4番」とコパチンスカヤの「リゲティ:ヴァイオリン協奏曲」。もう一つはリゲティのオペラ「グラン・マカーブル」(演奏会形式)。マーラー「第4番」は今や聴きなれたメロディを持つお気に入りの曲になっている。ソプラノ独唱は2015年9月にアンネ・ソフィ・オッターと共にKitaraに来演したカミッラ・ティーリングだったので身近に楽しめた。ラトルは日本の公演では実施が不能と思われる演目の指揮を担当していることも多くて日本とヨーロッパの違いの大きさを感じる。オペラは一応観たが、面白いと思うまでには至らない。慣れていないアーカイブは時間の余裕ができればということで後回しになる。

3月は6つのコンサートに3つを鑑賞。メータ指揮の演奏会が2回。もう一つはぺトレンコ登場の演奏会。
ズービン・メータはイスラエル・フィル管を率いてKitaraに登場したのが2000年3月。Kitaraの開館当初数年は外国のオーケストラが続々と来演していた。毎月のように公演があって、この頃もロイヤル・コンセルトへボウ管、ドレスデン国立歌劇場管などがやって来てできるだけ安い席でほぼ全てのコンサートを聴いていた。メータの演奏会は一番安い席(76席分のP席)で1万円。ウイーン・フィルやベルリン・フィルを除いての話だが、現在でも一番安い席が万を超える記憶はない。P席は好んで座ったこともあり、オルガン左右のP席にも数度座ったことがあるが、メータの時は鑑賞に特に不便を感じなかった。今では懐かしい思い出である。

ズービン・メータはインド出身で小沢征爾と同世代で大の親友同士。メータが東日本大震災の折に示した日本への対応は真に愛情あふれるものであった。彼の姿はウィーン・フィルやN響共演の様子をテレビで観る機会も多い。今回のベルリン・フィルではインドの伝統民俗楽器奏者と「シター協奏曲」と「バルトーク:オーケストラのための協奏曲」。2回目の公演はイスラエル出身のヴァイオリンの巨匠ピンカス・ズーカーマンと共演して「エルガー:ヴァイオリン協奏曲」。エルガーの器楽曲で最長50分の演奏時間を持つ曲はズーカーマンの名演奏で聴きごたえ十分であった。もう1曲が「チャイコフスキー:交響曲第5番」で言うまでもない名曲の演奏だったが、オーボエを担当したヴォレンヴェーバーの音色にウットリ。高音質で聴くアーカイヴをたっぷり堪能した。

2015年10月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団次期首席常任指揮者に選ばれていたキリル・ぺトレンコ(Kirill Petrenko)が発表以来はじめてベルリン・フィルハーモニーに登場したのが3月23日。
ぺトレンコは1972年ロシア出身。18歳の時にオーストリアに移住してウィーン国立大学に学ぶ。1999年マイニンゲン州立歌劇場音楽総監督、ベルリン・コーミッシェ・オーパー音楽監督(2002-07年)を歴任。09年ロイヤル・オペラで《ばらの騎士》を指揮し、10年リヨン劇場で《エフゲニー・オネーギン》、《スペードの女王》。13年バイロイト音楽祭でデビューを飾って「ニーベルングの指輪を指揮。2013-14シーズンからバイエルン国立歌劇場音楽監督に就任。15年ベルリン・フィル次期首席指揮者兼芸術監督に指名された。(*正式就任は2018年9月)

3月の最終回のコンサートの曲目は《モーツァルト:交響曲35番「ハフナー」》、《ジョン・アダムズ:バリトンと管弦楽のための「ウンド・ドレッサー」》、《チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」》。
指揮者の解釈と音楽性が如実に出る作品としてモーツァルトとチャイコフスキーが選曲されたようである。オーケストラのヨーロッパと指揮者の祖国ロシアを挟んでアメリカの現代曲。
ぺトレンコはCDを殆どリリースしていなく世界的には無名に近かったので、今回のデジタルコンサートでの演奏は一層注目された。ぺトレンコは個性的で独自の演奏を展開したと思う。数回のリハーサールを通して互いに求める音楽の目指す方向も見えてくのではないだろうか。指揮者と演奏家の相互理解を深めるうえでの良い事前演奏会となったようである。
今回のコンサートマスターは樫本大進が務めた。
モーツァルトでは樫本は時折指揮者に目をやりながら心配りをしている様子。明るい軽やかなモーツァルトらしい響きが広がっていた。アダムズの曲では金管・打楽器の音が印象的に響いた。弦楽が抑えながら響く物悲しい音楽に合わせてバリトンが伸び伸びと歌い続ける現代音楽。
チャイコフスキーになると指揮者の手の振り、体の動きが大きくなってオーケストラから求める音の表情もドラマティックな様相を呈した。特に第3楽章での力の入った指揮ぶり。第4楽章への切り替えも極めて巧みであった。

演奏終了後の聴衆の反応は好ましいもので、楽団員が全員ステージを去った後に、ぺトレンコが大拍手を受けてステージに出てきて一部の観客と交流する姿もあった。
楽員代表との30分ものインタビューで中庸の大切さを訴えるぺトレンコの言葉にベルリン・フィルの音を急に変えることは無さそうだと思った。べトレンコは今秋、バイエルン国立歌劇場公演で来日する。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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