札響第597回定期演奏会(エリシュカ&札響ブラームス交響曲全曲達成)

ラドミル・エリシュカが2008年4月に札幌交響楽団の首席客演指揮者に就任してから、日本の音楽界に多大な反響を呼び起こした。当初はモーツァルトも定期演奏会プログラムに入っていたが、チェコ音楽シリーズとして最初の6年間はドヴォルジャーク、ヤナーチェクが取り上げられた。ドヴォルジャークの交響曲も「第5番」~「第9番」が演奏された。特に最初の年から年1回、第6番、第7番、第5番の順に日本での演奏回数の少ない交響曲が選曲されたのが印象深い。
エリシュカはシーズン最初の4月定期に客演していた。4年目には東日本大震災の発生で予定のコンサートを辞退した音楽家が多かったが、エリシュカは予定をキャンセルせずに「ドヴォルジャーク:スターバト・マーテル」の祈りの曲を演奏して被災者に捧げた。
5・6年目の「第9番」、「第8番」でドヴォルジャーク交響曲シリーズが終了した。

2013-14シーズンから定期2回の客演がスタート。13年10月、ブラームスの交響曲「第3番」に始まり、14年11月の「第2番」、15年6月の「第4番」と続いて、今回が「第1番」で〈ブラームス交響曲全曲達成〉の運びとなった。

※〈チャイコフスキー後期三大交響曲シリーズ〉は14年4月の「第6番」、16年3月の「第4番」、16年10月の「第5番」で一足先に終わっている。16年3月定期と同プログラムの東京公演が大成功を収めている。

2017年3月11日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈PROGRAM〉
 メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」 Op.26
 シューベルト:交響曲第5番 変ロ長調 D485
 ブラームス:交響曲第1番 ハ短調

メンデルスゾーンの有名な演奏用序曲は2つあるが、2作とも「海」を描いた作品でコンサートでも演奏されている。彼が20歳の時にスコットランドを旅行した時に楽想を得たとされる。「フィンガルの洞窟」と「静かな海と幸福な航海」。
「フィンガルの洞窟」の原題は“The Hebrides”(へブリディーズ諸島)。ひどい船酔いのせいか、作曲家自身による洞窟の記述はないとされるが、改訂の過程で出版者がスタッフ島の景勝「フィンガルの洞窟」(Fingal's cave)というタイトルとなったようである。
穏やかな海の様子がゆったりとした動きで美しく描かれるが、旅の不安も繰り返し出現する。絵画的表現とともに美しい音楽に浸れた。親しみやすい名曲である。

シューベルトの8つの交響曲のうち、「第7番 未完成」と「第8番 ザ・グレイト」は演奏機会も多くて最も親しまれている。この2曲以外はコンサートで聴く機会が殆ど無い。ムーテイ指揮ウィーン・フィルのシューベルト交響曲全集も輸入盤で全曲持っているが、数回耳にして聞き流す程度では曲の良さは分らないままである。
コンサートで聴くのは初めてのような気がする。ウイーン生まれのシューベルトがハイドンやベートーヴェンの流れの中で作り上げたウィーン風の曲の感じで、特に美しい優しい音楽が紡がれた。こじんまりとしているが、エリシュカが丁寧にメリハリを付けて曲をまとめた。彼はやはり巨匠といえる大指揮者として、どんな作曲家の曲でも聴かせる術を手にしていると思った。生で聴くと生き生きした音楽となる。「第5番」はこんなに良い曲なのだと印象付けられた。

ブラームスの交響曲は今では4曲ともに気に入っているが、昔はLPで親しんだせいで「第1番」が大のお気に入りであった。第4楽章の旋律は何とも言えなくて、そのメロディを耳にすると自然と心が浮き立って来る。
ブラームスが21年の長きにわたって練り上げて完成した「第1番」。ウィーン古典派のスタンダードを継承して書き上げた英雄的で堂々たる音楽。
1月21日、ベルリン・フィル・デジタル・コンサートホールでブロムシュテット指揮による「ブラームス:交響曲第1番」を堪能した余韻が今も脳裏にある。演奏終了後の15分ほどのインタビューでメロディを口ずさみながら話すブロムシュテットの姿が焼き付いたのと、本日の休憩後の開演直前に寒気を感じてくしゃみが出そうになったことが重なって、曲への集中力を聊か欠いてしまったのが残念ではあった。

重厚で力強く、緊張感あふれる第1楽章、静けさに満ちた第2楽章、詩的で牧歌的な第3楽章、第4楽章は暗い序奏で始まるが、暗さを一掃するホルンの安らぎに満ちた吹奏が極めて印象的。讃美歌のようで国家を統一するようなメロディはベートーヴェンの第9交響曲の“歓喜の主題”に似ているといわれる所以。(*ベートーヴェンの第10交響曲と呼ばれる理由にもなっている。)山田圭祐が吹くホルンは秀逸! トロンボーンが最終楽章で活躍するが、木管・金管の響きがティンパニ、弦楽器とのハーモニーと合わさって壮大な音楽を作り上げた。
まもなく86歳を迎えるエリシュカが生気溢れるタクトでオーケストラからまるで魔術師のように生き生きとした音楽を作り出し、オーディエンスをカリスマ性で包み込む姿は感動的である。

※2016年1月ー12月の定期演奏会の会員アンケートの集計結果が発表になった。第1位が10月定期(エリシュカ指揮、チャイコフスキー第5番 ほか)、第2位が3月定期(エリシュカ指揮、チャイコフスキー第4番 ほか)、第3位が9月定期(ポンマー指揮、モーツァルトのレクイエム ほか)。「音楽の友」誌でも外国からの来日指揮者のリストに名が入るエリシュカとポンマーの2人は札響が誇るべき世界的指揮者と言えるようである。

※「音楽の友」の2009年コンサート・ベストテンで36人の音楽評論家と音楽記者のうち3人がエリシュカ指揮による九響、N響、札響の演奏「わが祖国」を選んでいる。1人は10月31日、札響名曲シリーズ「わが祖国」をベストワンに選んだ。36人が札幌や福岡で鑑賞する可能性は低いにも拘わらずに選出されている重みは大といえる。

※来週火曜日、3月14日の東京公演が東京芸術劇場コンサートホールで今回の札響定期と同じプログラムで行われる予定である。東京のエリシュカ・ファンと札響ファンの期待に応える成果を願う。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR