オルガン・ウィンターコンサート 2017 ~ハンガリーからの贈りもの~

毎年恒例のKitara主催のオルガン・ウィンターコンサート。さっぽろ雪まつりの期間中に開催されている。数年前からは地下鉄中島公園駅とKitaraを結ぶ道がスノーキャンドルで灯される「ゆきあかり街道」となっている。オルガンを楽しんだ後はロマンティックな雰囲気を味わえる通りとなる。このコンサートは毎年のように聴いているが、昨年は脊柱管狭窄症による歩行困難でチケットを無駄にした。
今年は2000年9月から1年間、第3代札幌コンサートホール専属オルガニストを務めたハンガリー出身のファッサン・ラスロがリサイタルを行った。彼が出演したコンサートは03年に2回、04、08年に続いて今回が5度目だと思う。
昨日までにチケットは完売していて当日券はなし。広いエントランス・ホールは入場を待つ人々で長蛇の列をなしていた。

2017年2月11日(土) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

〈Program〉
J.S.バッハ:トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564
モーツァルト(サットマリー編):教会ソナタ第17番 ハ長調 K.336
メンデルスゾーン:オルガン・ソナタ ハ短調 作品65-2
ワーグナー(リスト編):歌劇《タンホイザー》より 「巡礼の合唱」
リスト(ファッサン編):チャールダーシュ・オプティスネ
バルトーク(ファッサン編):15のハンガリー農民の歌より 「古い舞曲」
アンタルフィー=ジロシュ:黒人霊歌によるスケッチ
ファッサン:「雪の降るまちを」による即興演奏

Fassangは1973年、ブタペスト生まれ。98年にリスト音楽院を卒業後、パリ高等音楽院に学ぶ。2000年から1年間の滞日のあと、数々のコンクールの受賞歴を誇る。02年カルガリ国際オルガンコンクールの即興部門で優勝、04年シャルトル国際コンクール優勝。リスト音楽院教授としての活動とともに国際コンクールの審査やコンサートで国際的に活動している。14年よりパリ国立高等音楽院でも教鞭を執る。

500円で休憩なし1時間の昼間のコンサートは家族連れや若者が目立った。雪まつりで来札した観光客と思われる人々の姿もあった。ワンコインで気軽に楽しめるオルガン・コンサートのチケットが完売になることは偶々ある。本日のプログラムも興味をそそるものではあった。巧みなプログラミングで変化に富む曲が用意されたいた。

前半3曲は3人の作曲家によるソナタ作品。
バッハが書いた250曲ほどのオルガン曲のうちで、「BWV565」は歴代の専属オルガニストが就任時の最初のコンサートで演奏する曲で毎年耳にする最も有名な曲。本日の演奏曲「BWV564」はイタリア協奏曲様式の影響を受けて書かれた3楽章構成の作品で、コンサートでも度々演奏されて親しまれている。
今日は2階中央席が満席で、オルガニストの手と足が見える2階RA席に座った。「トッカータ」が先ず手鍵盤の演奏で始まり、直ぐ足鍵盤による演奏がかなり長く続いた。力強い超絶技巧の演奏を興味深く観察できてラッキーだと感じた。「アダージョ」では抒情的な旋律が歌われ、続いて躍動的な「フーガ」でフィナーレ。約15分の曲中、第2曲のあとで拍手が起こったが止むを得ない。

モーツァルトは教会ソナタ」というジャンルの作品を何曲か書いているという。本日の作品は弦楽器とオルガンで演奏されるものを、ハンガリーのオルガニストがオルガン独奏曲に編曲したそうである。
続いて、バッハの作品の再評価に貢献したメンデルゾーンがバッハに敬意を表して書いたオルガン曲。ファッサン・ラスロの解説によると、最終楽章のフーガはバッハの作品に似て、小さな流れで始まった川がやがて大海に到達するかのように構成されている。

後半はハンガリー出身の偉大なピアニスト・作曲家リストとバルトークの作品を中心に構成。

「タンホイザー」はワーグナーのオーケストラ作品で親しまれている。リストがピアノ曲用に編曲した「巡礼の合唱」をオルガン曲として聴くのは今回が2回目であるが、力強い曲が柔らかい音で始まり、最後には音が消えていくような瞬間を聴き入った。

「チャールダーシュ」はハンガリーの民俗舞曲として知られ、モンティのヴァイオリン曲が有名である。“固執したチャールダーシュ”の意味をもつ「チャールダーシュ・オプスティネ」はモチーフが何度も繰り返される。昨年11月に他界したハンガリーが生んだ偉大なピアニストで指揮者としても活躍したゾルタン・コチシュのピアノ演奏をファッサンは子どもの頃にLPレコードで熱心に聴いていたという。コチシュを偲んでオルガニスト自身の編曲で演奏された。

バルトークはハンガリーの偉大な作曲家で、ハンガリー人はバルトークの民俗音楽なして育っているとは考えられないほどである。彼の管弦楽作品や弦楽四重奏曲がKitaraでは演奏される機会は多い。民俗楽器で演奏される農民の歌に親しむ環境で育ったファッサンがピアン作品をオルガン曲に編曲してハンガリーの民俗音楽文化を広げる意欲を感じた。

※Kitara3代目専属オルガニストはラスロと記憶していた。ファッサンと言う名はハッキリ記憶していなかった。やっと気づいて思い出した。ハンガリーでは日本と同じように名前は姓が先で名が後にくる。バルトーク・べーラがハンガリーでの名前。欧米式の影響でベーラ・バルトークと日本語で書かれていることもある。

アンタルフィー=ジロシュは初めて耳にする名。バルトークと同時期にリスト音楽院で学び、オルガンのヴィルトゥオーゾで即興演奏家・作曲家として活躍したという。リスト音楽院教授、ハンガリーの大聖堂のオルガニストを務めた後にアメリカに移住。
黒人霊歌とジャズ風の曲を聴きながらアメリカ人の作曲のように思えて非常に聴きやすい曲になっていた。後で解説を読んで成程と思った。ファッサンはリスト音楽院オルガン教授の前任者のひとりとして彼を偲んで演奏した。
この種のオルガン演奏は世代を超えて人々の心に染み入る音楽として聴けてとても新鮮だった。

※ハンガリーで育ち、アメリカに移住して世界的な指揮者として活躍したジョージ・セル、ユージン・オーマンデイ、ゲオルグ・ショルティ、フリッツ・ライナーなど偉大な指揮者の名が浮かんでハンガリーの音楽界が一時代を築いたことに思いを致した。

最後の曲はファッサン得意の即興演奏。彼がKitaraで収録したオルガンCD「バッハ&リスト オルガン名曲選」にも即興演奏も含まれていた。また、その後のKitara出演時にも即興演奏を行っていた。日本で愛唱される「雪の降るまちを」をテーマに、自由自在にKitaraのオルガンを操って日本らしい情緒溢れるメロディを奏でた。

最初から最後まで暗譜で弾き切った。変化に富んだプログラムで聴衆を惹きつけ、ブラヴォーの声が上がるほどに魅力的な演奏であった。経験を積んでパリ国立高等音楽院でも指導者を務めるほどのオルガニストになっていることが頷ける素晴らしいコンサートであった。

最後にマイクを手にメモ用紙を見ながら日本語で挨拶して拍手を浴びた。アンコール曲は「ジャズ即興演奏」。

多くの人が苦労して作った「ゆきあかり街道」に火が灯っていたが、4時過ぎの時間では周囲が明るすぎて人々が注目するイヴェントにならなかったのは残念であった。まつりを盛り上げる雰囲気が空回りでは企画した人たちの努力が実らず気の毒であった。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR