METライブビューイング2016-17 第4作 ヴェルディ《ナブッコ》

ヴェルディは26作のオペラを遺した。ヴェルディのオペラは圧倒的に上演回数が多いと思う。《椿姫》、《リゴレット》、《アイーダ》などは海外歌劇場の札幌公演をライヴで見たことがあるが、ほんの数作にしか親しむ機会がない。《ナブッコ》は「序曲」をコンサートで数回聴いたことがあっても、オペラの内容は全く知らなかった。今回はドミンゴが出演するとあって是が非でも観ようと計画していた。
所有しているオペラ全集のCDに《ナブッコ》は「行け、わが思いよ、黄金の翼にのって」の合唱曲のみが収録されていた。今回あらためて耳にしてみた。美しい旋律の曲で、イタリアでは第2の国歌と呼ばれるほど親しまれているようである。

《NABUCCO》 紀元前6世紀のエルサレムとバビロニアの闘いを主題にした物語。全4幕(第1・2幕80分、第3・4幕66分)。上映時間3時間5分(休憩1回)。イタリア語上演。
 
〈ストーリー〉神殿に集まった人々がナブッコが率いるバビロニア軍の来襲におびえている。ナブッコには二人の娘がいる。神官ザッカーリアはナブッコの娘、フェネーナを人質に取ってバビロニア軍を撃退しようとする。フェネーナを愛するエルサレム王の甥イズマエーレは彼女を救い、味方の怒りを買う。フェネーナの姉、アビガイッレはイズマエーレを愛していたが、彼に拒絶されて復讐を誓う。古文書を見つけて自分が奴隷の娘と知ったアビガイッレは復讐心に燃え、王位を狙う。エルサレムを征服したナブッコ王は神を自称して怒れる神の雷に打たれ狂乱する。やがてアビガイッレに王座を奪われてしまう。アビガイッレは妹を死刑にしようとするが正気に戻ったナブッコが助け出し、王の地位を取り戻す。ナブッコはヘブライ人たちを故郷に返し、アビガイッレは改心して毒を飲んで死ぬ。ナブッコは王の中の王と讃えられる。

指揮はジェイムズ・レヴァイン。レヴァインは1973年にメトロポリタン歌劇場の首席指揮者に就任。75年から40年以上も同歌劇場の音楽監督に任にあった。病気のため音楽監督は辞任したが同歌劇場での指揮活動は続けて絶大な人気を誇る。
METビューイングでオーケストラ・ピットをカメラが追う場面は多くないが、今回はレヴァインに焦点を当てたカメラ・ワークが目立った。車椅子用の特別な指揮台が用意されていて、明るく力強い指揮ぶりが何度も映像となった。観客の拍手と声援が一段と大きかったが、レヴァインに対する歌劇場と観衆の評価と人気の高さがうかがえた。病気に打ち勝ち不自由な体を押して指揮にあたるレヴァインへの敬意の表れには好感を持った。

プラシド・ドミンゴは伝説の世界三大テノールとしてオペラ界の黄金時代を築いた。2011年に彼が主演の歌劇《トスカ》(1976)、《カルメン》(1981)、《オテロ》(1983)の映画を特別鑑賞会で楽しめたのは忘れ難い思い出である。
75歳で往年のテナーではなくバリトンで活躍を続けているが、今回は一応テナーだろうか(?)。柔軟な演唱で後半で一層の存在感を発揮していたと思った。立派な舞台装置で何段もの段を上り下りする演技も大変だろうと推し量った。現役で活躍を続ける偉大さへの称賛がオペラハウスに詰めかけた聴衆の喝采にも表れていた。

アビガイッレ役を演じたモナスティルスカは2012-13シーズンに《アイーダ》のタイトルロールでMETデビュー。強靭な声と卓越した劇的な表現力に秀でた現代を代表するドラマティック・ソプラノ歌手。前回1度聴いただけだが強烈な印象を受けていた。ステージでの存在感は新人当時から異彩を放っていた。今回も凄い迫力で圧倒的な演唱だった。

モナスティルスカと同じウクライナ出身のパス歌手でザッカリア役のベロセルスキーは2011年のナブッコでMETデビュー。METヴェルディ上演では欠かせない旧東側の代表。フェネーナとイズマエーレをそれぞれ演じたバートンとトーマスも米国出身のメゾ・ソプラノとテノールの歌い手として将来性のある歌手。(*ザッカリアが歌う“祈りのアリア”が心を打った。)

個々の歌手が素晴らしいのは毎回のことだが、今回は特に合唱曲が心に響いた。第3幕第2場の冒頭で歌われる「行け、わが思いよ、黄金の翼にのって」(*5分程度の合唱曲)は敵に捕らえられたエルサレムの人々が懐かしい故郷をしのび、しみじみと歌う曲。感動した聴衆のアンコールの叫び声に応えて信じがたいことが起こった。レヴァインのタクトで直ちにアンコール曲として繰り返して歌われた。今まで何十本か観てきたオペラで同じ歌が文字通りアンコールされたのは初めて観た。感動的な場面であった。(*この合唱曲が初演された当時はイタリアはオーストリアの支配下にあって、人々はこの歌にイタリア統一の理想を重ね合わせたようである。)

レヴァインとドミンゴは45年にわたる共演でつながりが深いのが印象に残った。

METビューイングを観るようになって5・6年たつが、この2・3年は妻も観るようになった。1作品1週間1日1回の上映で今まで妻と一緒に鑑賞したことがない。お互いに都合の良い日に鑑賞しているのでスケジュールを無理に合わせていない。今日は偶々、結果的に一緒になった。妻は直前に、予めチケットを買っているが、私は当日の朝にチケットを購入して鑑賞する。偶に一緒に鑑賞するのも悪くはない。

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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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