札響名曲シリーズ2016-17 Vol.5 さっぽろ(高関健&牛田智大)

森の響フレンドコンサート 《さっぽろ:雪あかりの物語》

今シーズンの名曲シリーズの都市物語は今回が最終回。北海道は真冬の只中。今冬は雪の多さと厳しい寒さに身もこごむ。札幌をはじめ、小樽、旭川、紋別など北海道のあちこちの都市で冬を少しでも楽しく過ごす祭りが行われる。夜は雪あかりが街を彩る。「さっぽろ」と作曲家の繋がりはないが北海道の自然と似た風土を持つ北欧で厳しくも美しい自然の中で一生を過ごして名曲を遺した作曲家の想いに心を通わせた。

2016年2月4日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 高関 健     ピアノ/牛田 智大    管弦楽/ 札幌交響楽団

高関は2003年から2012年まで札響正指揮者を務めた。現在は東京シティ・フィル常任指揮者、京都市響常任客演指揮者、群馬響名誉指揮者。東京藝大指揮科教授としても後進の指導に当たっているが、前回のKitaraでは新進演奏家育成プロジェクトに出演していた。札響指揮を目にするのは今回が30回目。14年5月札響定期での伊福部昭・生誕100年記念プログラムの印象が鮮烈である。

牛田は4年前のリサイタルが鮮烈な足跡を残した。“可愛いい”という声がコンサートの最初から最後まで耳に飛び込んできた珍しいコンサートだった。14歳の少年が奏でるピアニズムは驚嘆に値した。その頃に私が書いたブログは反響を呼んだようであった。彼はモスクワ音楽院ジュニア・カレッジに現在も在籍中。2014年のウィーン室内管とは「ショパン:ピアノ協奏曲第2番」を演奏した。(*今年の秋、2日連続で当時のヴラダー指揮ウィーン室内管が札響首席奏者とコンチェルトの調べ)。牛田の演奏は精神的にも成熟しているものだった。2015年にはプレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管の日本公演でソリストを務めて絶賛を浴びた。

〈Program〉
 グリーグ:「ベールギュント」第1組曲 作品46
 ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21(ピアノ/牛田智大)
 シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 作品43

19世紀にデンマークの支配下にあったノルウエーが独立を求めて自らのアイデンティティーを確立しようとしていた動きがあった。「人形の家」などの戯曲で知られるイプセン(1828-1906)が書いた詩劇「ペール・ギュント」は民族ロマン的主題を自然主義の筆致で綴った。劇付随音楽の委嘱を受けたグリーグ(1843-1903)は30曲ほどの小品を再構成して「第1組曲4曲」と「第2組曲4曲」を作り上げた。音楽は劇の進行と関係がないが、グリーグの管弦楽作品として人気が高い。
第1曲「朝のすがすがしさ」は牧歌的な音楽、第2曲「オーセの死」は悲しみの音楽で弦楽器合奏、第3曲「アニトラの踊り」は東洋的なマズルカ舞曲、第4曲「山の魔王の宮殿にて」はグロテスクで荒々しい音楽。

ショパンが最初に書いたピアノ協奏曲。「第1番」が「第2番」より先に出版されたため、番号に違いがある。ショパン国際コンクールなどでは「第1番」を選んで演奏するピアニストが多い。「第2番」は全体的に淡い詩情性豊かな作品。ショパン初恋の人、コンスタンツィア・グラドコフスカに対する恋慕の情が動機となって書かれたと言われる曲。
牛田は前回のコンサートの折に“「第1番」より感情移入しやすく、自分の原点と言える曲”と述べていた。東日本大震災の折に祖父母のことを思って「第2番」を弾き始めたというから、彼にとって思い入れのある協奏曲なのだろう。
今日は最初の第1音から音色が生き生きとして心が動かされる響き。ほぼ満員の聴衆が息をのんで聴き入る35分間を圧倒的な魅力あふれるピアニズムで綴った。彼は常に楽しそうに情感豊かに音を紡ぐ。いくら音楽的に成熟しているとは言え、前回までは幼い感じが拭えなかったが、今回はまことに堂々たる演奏に感服した。
2015年のショパン国際コンクールでチョ・ソンジンと優勝を競ったシャルル・リシャール=アムランが昨年1月の入賞者ガラ・コンサートでも「第2番」を弾いて聴衆を魅了したが、彼は牛田より10歳年上。それぞれの音楽性に違いがあるといっても、16歳の若者は素人にも分かる音楽性の豊かさには称賛の言葉が見つからない。
演奏終了後のホールを包んだ独特の空気感は前例がないほどのものであった。期待感はあってもこれほど凄いとは、改めて音楽の素晴らしさを味わった人も多かったのではないだろうか。度肝を抜かれた聴衆のアンコールの声に応えての曲は「ショパン:幻想即興曲」。聴きなれたメロディが聴く者の心奥深くに美しく響いた。

シベリウス(1865-1957)の曲は北海道の冬に良く似合う。「交響曲第2番」は彼の交響曲全7曲の中でも最も有名で人気がある。生誕150年の折には尾高名誉音楽監督による交響曲チクルスも行われ、他の曲にも親しむ機会もあった。それでも「第2番」が演奏されると一層親しみを覚える。訪れたことはない国ではあるが、フィンランドの自然を身近に感じる機会ともなる。何度聴いてもこの曲の良さが伝わる。フィナーレのトランペット、トロンボーン、ホルンなどのブラス・セクションの豪快な響きを肌で感じた。

高関のタクトは丁寧で安定感がある。定期演奏会とは少々違う雰囲気の名曲コンサートをいつもと違う座席から鑑賞したが、個人的には同じ座席ばかりからの鑑賞は好みではないので、変化があって良かった。
アンコール曲は〈シベリウス:組曲「恋人」より 第1曲「恋人」〉(弦楽オーケストラと打楽器)。


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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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