Kitaraのクリスマス2016 (井上道義&児玉桃)

井上道義は2007年から11年まで5年連続して〈Kitaraのクリスマス〉に出ていた。今回は5年ぶりの同プログラム登場となった。井上は1946年12月23日生まれ。〈Kitara のバースディ〉をはじめ毎年開催のKitara主催のコンサートの開催日は必ずしも固定されていない。〈Kitaraのクリスマス〉だけが12月23日に固定されていると感じていたが、その理由が分かった気がした。今年は彼の70歳の記念すべき誕生日に当たる。Happy Birthday! (*平成元年から28回目の祝日だが、年末のため他の祝日に比して休日の気分がしない。83歳を迎えた天皇陛下が皇居の一般参賀で述べるお言葉に国民を思う気持が滲み出ていて感動を覚えた。)

Michiyoshi  Inoueは71年にイタリアのカンテルリ国際コンクールで優勝。76年に日本フィルを指揮して国内デビュー。ニュージーランド国立響首席客演指揮者(77-82) 、新日本フィル音楽itaria 監督(83-88)、京都市響音楽監督・常任指揮者(90-98)を歴任。2007年からオーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督および石川県立音楽堂アーティスティック・アドバイザーを務め、〈ラ・フォル・ジュルネ金沢〉をはじめ多くの画期的なプロジェクトを実施。これまでにロイヤル・フィル、シカゴ響など海外オーケストラの客演指揮も数多い。「日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト」を企画・開催するなど独自の音楽活動を展開し、13年にはサンクトペテルブルク響と日本国内ツアーを実施。14年より大阪フィル首席指揮者も兼任。

私は2001年に2日間連続の日フィル札幌公演、09年オーケストラ・アンサンブル金沢のニューイヤーコンサート、10年のKitaraのクリスマス以来、彼の指揮によるコンサートは5回目。

児玉 桃(Momo Kodama)は1972年、大阪生まれ。1歳で家族とともにヨーロッパに移住。13歳でパリ音国立高等楽院に入学し、数々のフランス国内のコンクールに優勝。17歳でカントロフと共演してパリ・デビュー。ぺライア、シフなどに師事。91年ミュンヘン国際コンクールで1位なしの2位で最年少入賞。92年に東京フィルと共演して日本デビュー。同年、大阪でリサイタル。その後、ケント・ナガノ指揮ベルリン・フィル、小澤征爾指揮ボストン響などメジャー・オーケストラと共演。バッハから現代作曲家までレパートリーが幅広く、特にショパン、メシアン演奏で評価が高い。パリ在住。

1997年Kitaraオープニング・シリーズでフォスター指揮N響と共演して「ショパン:ピアノ協奏曲第1番」を弾いた。2000年円光寺指揮札響と「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番」。前回の12年2月札響定期で「メシアン:トゥーランガリラ交響曲」で高関と共演。札響との共演が続くのは興味深い。彼女のピアノをKitaraで聴くのは5回目。

2016年12月23日(金・祝) 15:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 井上 道義       ピアノ/ 児玉 桃   
管弦楽/ 札幌交響楽団

〈プログラム〉
 ビゼー:小組曲「子どもの遊び」
 グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
 ドビュッシー:バレエ音楽「おもちゃ箱」(井上道義カット版)
 アンダーソン:クリスマス・フェスティバル

歌劇「カルメン」や組曲「アルルの女」で有名なビゼーだが、他の作品はほとんど知らない。この小組曲もよく演奏されるらしいが、今までに耳にした記憶がない。12曲からなるピアノ連弾用組曲が5曲編成の管弦楽組曲に編曲されたという。第1曲 行進曲「ラッパと太鼓」、第2曲 子守唄「人形」、第3曲 即興曲「コマ回し」、第4曲 二重奏「小さな夫と妻」、第5曲 ギャロップ「舞踏会」。タイトルを読んだだけで曲想が浮かぶ。指揮者は各曲の演奏前に説明を加え、ステージでコマ回しをしながら指揮をする巧みな技も披露。子供に対する愛情に溢れた作品を通して聴衆に子供時代を想起させた。

ノルウェーらしい郷土色が全編に感じられ溌溂として雄大なグリーグのピアノ協奏曲は6年前に行われた札響リクエストコンサート~3大ピアノ協奏曲にも選ばれた。(“1番好きなピアノ協奏曲”のアンケートで総得票数303票中で第1位はチャイコフスキー第1番、第2位はラフマニノフ第2番、第3位がグリーグ。ちなみに第4位がショパン第1番、第5位がベートーヴェン第5番だった。)
児玉の演奏はこの曲をあまり聴いたことがないと思われる客をも魅了した(*スケールの大きなコーダのある第1楽章の終りにかなり多くの人が拍手をした)。久しぶりに聴くグリーグの協奏曲に曲の素晴らしさを改めて味わった。
盛大な拍手に応えてアンコール曲として耳慣れた旋律を奏で始めた途端にメロディが“Happy Birthday to you”に変わった。気づいた聴衆の拍手にマエストロ井上がステージへ。カーテンコールに“70歳になりました”と挨拶して聴衆から再び祝いの拍手が送られた。

ドビュッシー作曲の「子どもの領分」はしばしば聴くが「おもちゃ箱」は初めて耳にする曲でタイトルさえ知らなかった。彼の晩年に書き上げたという子どもたちへの愛情を込めた作品。(*「英雄的子守歌」という管弦楽曲がピアノ曲の編曲として1916年に書かれているが、同じ作品でタイトルだけが違うのかも知れない)。
タイトルにふさわしい子どもの夢心を思わせる楽しい音楽。おもちゃ箱の中での出来事が綴られる。音楽に合わせてのステージ上での小道具と仕掛けも指揮者の期待以上の工夫が凝らされているようであった。マエストロ井上の優れた音楽企画が生かされて、Kitaraのスタッフやバレリーナたちも彼の期待に充分に応えた作品になっていた。
バレエ音楽はマエストロの語りと指揮で30分弱の音楽。児玉がこの曲のピアノを担当したのにも驚いた。曲の中でオーボエ首席奏者やコンマスなども寸劇に参加。小学生と思われるバレリーナは札幌舞踊会のメンバーで井上の3日間の振り付けによる踊りで指揮者から感心されていた。定期公演並みのリハーサルを行っているのをKitaraのtwitterで知っていたが成程と思った。

指揮者のプロフィールにも書いたがユニークな音楽つくりは既成のクラシック音楽の垣根を越える試みだと思った。100年前に作られたドビュッシーの作品を新しい角度から表現したように感じた。

コンサートの最後はクリスマスの時期に歌われる10分弱のアンダーソン作曲のクリスマス名曲集。「もろびとこぞりて」、「ジングル・ベル」、「きよしこの夜」などがメドレーで演奏された。アンコールに「きよしこの夜」のオーケストラ演奏に続いて聴衆全員の斉唱。

Kitaraで5年ぶりの演奏会を行ったマエストロも満足そうであった。公園の中に立地するKitaraと大ホールの素晴らしさを何度も言及していたが、80回ほど足を運んだKitaraホールも今年は今日が最後。レセプショニストの対応にも感謝しつつホールを後にした。外は朝からの雪が止む気配がなく深々と降り続いていた。

昨日から間断なく降り続く雪のためコンサート会場に来れない聴衆も多くいたようであった。それでも9割以上の客が恒例のコンサートに駆け付けた。12月の積雪も90cmを超えた札幌も50年ぶりの記録的な大雪となって帰路も道が一段と狭くなっていた。このような悪天候でも地下鉄が時間通りに発着しているのは有難いことである。

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

fsuterry

Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR