札響の第9(2016) 秋山和慶

年末恒例の〈札響の第9〉は元札響首席指揮者の秋山和慶を迎えて開催された。昨年から「第九」の他に1曲が加わることになった。今年の追加プログラムは「ヴィヴァルディ:四季]より。

秋山和慶(Kazuyoshi Akiyama)は1941年生まれの日本指揮界の大御所。63年に桐朋学園大学卒業後、64年東京交響楽団に迎えられ、68年音楽監督・常任指揮者に就任。北米の主要オーケストラ(クリーヴランド管、フィラデルフィア管、ボストン響、ロスアンゼルス・フィルなど)を中心にヨーロッパでも活躍。68年からトロント響副指揮者、アメリカ響音楽監督(73-78)、バンクーバー響音楽監督(72-85)などを歴任。国内では2004年東京響を勇退して桂冠指揮者となる。その間、86年札響首席客演指揮者となり、88年~98年まで札響ミュージック・アドバイザー・首席指揮者に就任。98年より広島響首席指揮者を経て16年まで広島響音楽監督を務める。
現在は東京響桂冠指揮者の他にバンクーバー響桂冠指揮者、シラキューズ響名誉指揮者、九州響桂冠指揮者など。日本指揮者協会会長。

私は88年に札響会員となって94年までは年2回は彼の指揮に親しんできた。Kitaraがオープンした1997年7月4日の落成記念式典やオープニングコンサートは忘れられないイヴェントである。鮮やかなバトン・テクニックで品の良い整然とした音楽作りが特徴だったように思う。札響の第300回定期の曲が「ローマの松」、Kitara開館年のオープン記念コンサートの曲が「ローマ三部作」、11年6月札響定期の曲も「ローマ三部作」。全くの偶然とはいえマエストロ秋山はレスピーギが大好きなのだろうと思った。彼は近年何度が札響に客演しているが、私自身は秋山の指揮を観るのは5年ぶり20回目である。

2016年12月10日(土) 14:00開演  札幌コンサートホールKitara 大ホール

指揮&チェンバロ/ 秋山 和慶    管弦楽/ 札幌交響楽団
ヴァイオリン独奏/ 田島 高広(札響コンサートマスター)
ソプラノ/ 川島 幸子、  メゾ・ソプラノ/ 坂本 朱
テノール/ 福井 敬、   バリトン/ 山下 浩司 
合唱/ 札響合唱団、 札幌放送合唱団、 札幌大谷大学合唱団
合唱指揮/ 長内 勲

〈Program〉
 ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集 op.8 《四季》より「春」「冬」
 ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125《合唱付き》

4日前のKitaraの行き帰りの歩道路面はツルツル状態だった。今年の北海道の冬の到来は例年になく早い。今日の札幌は間断なく雪が降り60㎝を越えて、この時期としては29年ぶりの1日の降雪量を記録した。こんな悪天候にもかかわらず、「第九」第1日目のコンサートには9割程度の客がホールを埋めた。厳しい冬の様子を描いたヴィヴァルディの曲はこの時期にはタイムリーな選曲となった。20名の弦楽合奏だったが、弾き振りでチェンバロを弾いた秋山和慶の姿は初めて見て興味深かった。
田島高宏(Takahiro Tajima)は桐朋学園大学卒業後、2001年から3年間、札響コンサートマスターに就任。2004年よりドイツ・フライブルク大学に留学。日本では和波孝禧、ドイツでR.クスマウルに師事。08年北西ドイツ・フィルのコンマスに就任し、ドイツ各地のオーケストラで客演コンマスも務める。14年9月より札響コンサートマスターに再就任。経験豊富なヴァイオリスト。
「春」、「冬」と各3楽章から成り、人々に親しまれている旋律を生き生きと綴った。“冬きたりなば春遠からじ”というが、まだ冬を迎えたばかりで春は遠い。

19世紀はオペラの時代で、ヨーロッパでは劇場が市民の重要な娯楽となっていた。演奏会でも歌やアリア、合唱が好まれていたと聞く。交響曲に合唱を加えた作品で、シンフォニーの形式を広げたベートーヴェンは新しい時代を築いた。日本では12月には全国各地で「第九」の演奏会が開かれている。この曲を聴かないと“年を越せない人”もいる。私もその一人である。

今日の演奏会では4人のソリストが第1楽章が始まる前からステージに上がっていた。第3楽章の前にソリストが入場する場合もあるが、聴衆の拍手が入るので個人的には好まない。楽章間の拍手は音楽鑑賞のマナーに反すると思うからである。そんな訳で最初から好感を持って安心して聴けた。コーラスは以前と比べ近年は男性のパートが充実してきている。今日は2階CBブロック中央の真ん中の席から聴いたが、140名ほどの女性男性合唱陣のバランスもとれて素晴らしい歌声となって「合唱」が一層ダイナミックに心に響いた。
ソリストは出番が少ないとはいえ、バリトンがいつも目立つが今日はテノールの福井敬の美しい声が印象に残った。Kei Fukuiは日本テノール界の第一人者で札響で耳にする機会も多い。特に08年札響定期の「ピーター・グライムズ」役は名演であった。
秋山和慶は久しぶりに観たが、安定感のあるドラマティックな指揮ぶりでオーケストラの力強い演奏を作り上げた。

※追記:「第九」の演奏会での指揮回数が世界中の指揮者の中で一番多いのではないかと思われる指揮者が小林研一郎である。彼は〈音楽の友12月号〉でインタヴューに答えて次のように語っているエピソードを読んで思わず笑ってしまった。
「1980年5月、オランダのコンセルトへボウでのネーデルランド・フィルとの生放送中の出来事。第3楽章に登場したソリストが3人だけ。第4楽章が始まってもテノールは現れずに、仕方なく4人のソリストが歌い始める前に演奏を止めた。すると、ディレクターが“テノールが近くのホテルを出たまま行方不明のため本日の演奏会はここで取り止めとさせて頂きたい”と告げた。聴衆は直ちに“演奏を続けろ”のコール。10分ほどの中断のあと演奏を再開して、何とか第4楽章を無事に終了。客席から“テノールがいないはずでは?”との声が漏れた。実はマエストロが指揮をしながらテノールのパートを歌っていた。」という面白いエピソード。










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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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