北海道大学交響楽団第132回定期演奏会

現在の北海道大学交響楽団の前身となるオーケストラの演奏会は1922年に北大の中央講堂で開催されたという。1941年に北大交響楽団が発足して第1回演奏会開催。1956年2月に〈復活演奏会〉が開催され、1960年6月の復活5周年記念演奏会が「第20回定期演奏会」となった。私は川越守指揮によるこの演奏会を聴いた。会場は多分、札幌市民会館だったと思う。
北大交響楽団の演奏をKitaraで聴いたのは2007年の第114回定期演奏会。記録によるとブログラムは「ドヴォルザーク:交響曲第7番」、「グラズノフ:バレエ音楽 四季より“秋”」、「川越守:即興曲第4番」。この頃には1980年に川越守が設立した北海道交響楽団の演奏会を聴くことが多くなっていた。
2010年10月には〈北海道大学交響楽団第120回定期演奏会〉を聴いたのだが、第20回演奏会から50年経っていた演奏会だったことに今回気付いた。当時のプログラムは「シューベルト:未完成」、「チャイコフスキー:悲愴」など。
年2回の定期演奏会のうちで1回はKitaraで開催されているようだが、学生オーケストラ鑑賞が入る余裕がない。今年はピアノ・コンチェルトが入るプログラムに惹きつけられて敢えて3日連続のコンサート鑑賞となった。

2016年11月5日(土) 18:00開演  札幌コンサートホールKitara大ホール

指揮/ 川越 守    ピアノ/ 佐野 峻司
管弦楽/ 北海道大学交響楽団

〈Program〉
 シベリウス:「カレリア」序曲 作品10
 川越 守:Sapporo Serenade  2つのメロディによる幻想曲 「秋風」
 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
 ドヴォルジャーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70

北大交響楽団のブログを書こうとして過去の記録を見て少々驚いた。「ドヴォルザーク:交響曲第7番」は2007年エリシュカの札響4月定期演奏会で初めて聴いた曲として印象に残っていた。同年秋の北大交響楽団の定期演奏会でも聴いていて、久しぶりで聴く今回の同響の演奏会の曲目が同じ曲とは偶然の一致であるが驚きを禁じ得なかった。

「カレリア」組曲 作品11はシベリウスのオーケストラ曲としてポピュラーな作品であるが、「序曲」には親しんでいない。フィン人発祥の地であるカレリア地方の歴史を基にした劇付随音楽の「序曲」で北海道と似た気候・風土を持つフィンランドの自然が描かれていた。同時にカレリア地方の人々のロシアからの独立を願う愛国心も描かれていて、交響詩「フィンランディア」に似た雰囲気を持つ曲でもあった。

札幌生まれの川越が昔の札幌の姿を懐かしんで書いた曲。明治40年(1907年)に札幌を訪れて1週間滞在した石川啄木は札幌の町の印象を「秋風記」としてタイムスに書き残して釧路に去った。「札幌はまことに美しい北の都、秋風の国、静にして木の香りあり。大いなる田舎町であり、恋の多くありそうな郷である。」 この言葉に郷愁を感じている様子が彼の曲にうかがえる。15分ほどの曲には北大の寮歌「都ぞ弥生」のメロディが繰り返し反復される。彼の学生時代と当時の札幌の風景も懐かしく思い出して作曲したのではないだろうか。

チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」は古今東西の協奏曲でも最も人気の高い曲。北大医学部4年の佐野峻司(1994年、札幌出身)が力強く華やかな圧倒的な演奏を展開して最初から最後まで聴衆の心を惹きつけた。彼は幼少時から札幌コンセルヴァトワールにて学び、PTNAピアノコンペティションで優秀な成績を収めてきた。彼の名は中学時代から耳にしてきた。その後の進路状況は知らなかった。以前にも北大響と共演してラフマニノフの第2番を弾いているというから、医師とピアニストの両立を目指して努力を積み重ねているのだろう。(*医師&ピアニスト上杉春雄という偉大な先輩が目標となっているのかも知れない)。2階中央の座席からピアノの鍵盤上を動き回る手の動きも見ていたが、初演がルービンシュタインから断られたことが判るような当時としては超絶技巧を要する演奏を自由自在に弾いて見せた。とにかく素晴らしい演奏で約1800名の聴衆の期待に応えた。
演奏終了後の嵐を思わせるような盛大な拍手に応えて、アンコール曲に「シューマン/リスト:献呈」を弾いた。

休憩が2回挟まれての最後の演目が「ドヴォルザーク第7番」。第9番、第8番に比べて演奏会で取り上げられることが滅多に無かった第7番は近年注目されているようである。エリシュカは第5番や第6番も札響定期で演目にした。私も刺激を受けてノイマン指揮チェコ・フィルのドヴォルザーク交響曲全集を手に入れた。川越も演奏終了後に“第7番は音楽的に良くできた曲である”と語っていた。演奏者の代表もプログラムの中に“楽器のどのパートも目立つ部分が多くて非常に演奏しがいのある曲”と書いている。
「新世界より」では5音音階が使われたメロディが入って日本人が親しみやすい音楽となっているが、この曲にもヨナ抜き(4番目と7番目のファとシの音が無い)の旋律がある。第3楽章のスケルツォはチェコの民族舞曲が入って魅力的だった。

今まであまり意識していなかったが、川越は北海道交響楽団や北大交響楽団の演奏時に指揮台を使っていない。何十年も前から彼の考えで慣習となっているのだろう。2つのオーケストラを率いての演奏会で彼以外の指揮者がステージに立った姿は未だ目にしていない。十年前と変わらぬ姿にアマチュア・オーケストラを支える偉大な指揮者の愛情の深さと情熱を感じる。

演奏終了後にドヴォルザークの天才ぶりを語った。ブラームスがジプシーの音楽をハンガーリ―舞曲に仕立て上げたのに対して、ドヴォルザークはボヘミアの舞曲を自らが作り上げたと話したのが印象に残った。その点でブラームスよりドヴォルザークの方が天才的であるというのが彼の考え方で面白いと思った。
アンコール曲は「ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第1番」。

学問をしながら余暇に音楽に取り組む学生の姿からプロの演奏家のコンサートと違う音楽の楽しみを人生に位置付けている頼もしさを感じ取った。

※プログラム作りに携わった楽団員の情報で興味深い記事があった。
北大オケの団員数は約200名。今回の定期演奏会に出演した団員178名の出身地。
北海道 70(札幌市内35、市外35)、東北 5、関東 55、中部 21、関西 14、中国 4、四国 2、九州 7。
地方大学とはいえ、全国から多くの学生が北海道大学で学んでいる様子がオーケストラ団員の数からもうかがえると思う。近年の傾向として女子学生の団員が6割に達しているという。




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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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