室内楽の夕べ(内田&MCOのメンバー)

内田光子が2001年12月、Kitaraのステージに初登場した時のコンサートのタイトルが『室内楽の夕べ』であった。その時はリサイタルなら良かったのにと思ったものだ。この時は自分が苦手とする現代作曲家のシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」が曲目の一つだったのは今でも忘れない。他の演奏曲は覚えていなかったが、当時のプログラムによると「モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番(弦楽四重奏版)」、ハイドン:弦楽四重奏曲第35番」。

内田光子withマーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)による『室内楽の夕べ』が今回の日本ツアー札幌公演の最後を飾った。

2016年10月31日(月) 19:00開演  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈Program〉
 モーツァルト:フルート四重奏曲 第1番 ニ長調 K285
 武満 徹:アントゥル=タン~オーボエと弦楽四重奏のための
 シューベルト:華麗なるロンド ロ短調 D895
 メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20

『室内楽夕べ』 出演者 (Musicians of the Chamber Music Concert)
 Piano:内田光子(Mitsuko Uchida)
 Flute:キアラ・トネッリ(Chiara Tonelli)、Oboe:吉井瑞穂(Mizuho Yoshii-Smith)
 Volin:イタマール・ゾルマン(Itamar Zorman)、シンディ・アルプラハト(Cindy Albracht)、エンヤ・ゼムラー(Henja Semmler)、ソーニャ・シュタルケ(Sonja Starke)
 Viola:ジョエル・ハンター(Joel Hunter)、フロラン・ブルモン(Florent Bremond)
 Violoncello:クリストフ・モリン(Christophe Morin)、
         フィリップ・フォン・シュタイネッカー(Philipp von Steinaecker)

今夜のプログラムで比較的に親しんでいる曲は「フルート四重奏曲」だけである。ジェームズ・ゴールウェイ&東京クヮルテットのCDで良く聴いたものである。最近は耳にしていなくて今朝しばらくぶりで聴いて懐かしい思いだった。
編成はフルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。第1楽章はアレグロで主題はいずれもフルートが提示により、ソナタ形式。第2楽章はアダージョで3部形式。弦楽器がピッチカートで伴奏。悲壮感が漂う緩徐楽章。第3楽章はロンドー。ロンド形式で華麗なフィナーレ。

今年はモーツァルトの生誕260年だったが、日本の作曲家として西欧でも演奏機会の多い武満は2016年は没20年の記念年である。ブログラムの解説によると、作品はイーストマン音楽院の委嘱で1986年に作曲された。この曲は詩集からインスピレーションを得て、「鳥の主題」の緩やかな旋律を奏でて聴く者の空想を広げる感じがした。吉井は世界で活躍するオーボエ奏者として知られるが、聴衆の期待にたがわぬ素晴らしい演奏であった。武満の作品は何曲か聴いているが、こんなに魅力あふれる曲と出会ったのは初めてと思うような強烈な印象を受けた。聴く者の心に響くオーボエ演奏に感動した聴衆の反応はひと際目立った。

内田は“シューベルト弾き”と呼ばれる時代もあった。今夜はピアノとヴァイオリンのための小品が取り上げられた。彼の亡くなる2年前の作品。単一楽章で書かれた長大な曲。ロ短調の悲劇的な幕開けから華麗なロ長調のロンドへ。更にテンポが速くなって壮大なコーダ。ヴァイオリンの技巧的な演奏が華やかで協奏曲の様相を呈してピアノとの対話が印象的であった。シューベルトのヴァイオリン曲は今まで聴いたことが無かった。シューベルトの作品とは思えないような激しいリズムと華麗な曲を楽しく聴けた。
イスラエル出身のゾルマンは魅力的な演奏で聴衆の心を掴んだ。内田が譜めくりスト用の椅子に座って彼にアンコール曲の演奏を促した。イタマール・ゾルマンはMCOのコンサートマスターに抜擢された新進気鋭のヴァイオリニストかなと思った。30代前後の若くて初々しい印象を受けた。アンコール曲は「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第3番より“ラルゴ”」。

最後を飾ったメンデルスゾーンの曲は彼が16歳の時に書いた作品。楽器編成はヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2。4楽章構成の大曲。室内楽と言っても交響的なスケールを持ち、流麗で豊かな色彩感と幻想的なロマン溢れる曲となっている。7年後の1832年に補筆、改定が施されているというが、若さが横溢する曲として満足感を味わえた。
メンデルスゾーンは恵まれた家庭環境で子供時代を過ごし、8歳でピアノと作曲を習い、9歳で演奏会を開いて天才ぶりを示したという。17歳の時に、かの有名な「真夏の世の夢 序曲」を作曲したことは知っていたが、この「弦楽八重奏曲」の演奏を聴いて改めて彼が天才肌の音楽家であったことを再認識した。
曲の素晴らしさを伝えるMCOのメンバーの質の高さにも魅せられた。何度ものカーテンコールに応えてアンコールに第3楽章を再び演奏した。

今夜の小ホールはほぼ満席で札幌公演の最後を飾るにふさわしい盛況となった。
尚、昨日の内田光子のアンコール曲は「モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番より 第2楽章 “アンダンテ・カンタービレ”」。


   
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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