内田光子withマーラー・チェンバー・オーケストラⅠ(モーツァルト&バルトーク)

〈Kitaraワールドオーケストラシリーズ〉

今年のKitaraの最大のトピックは《内田光子とマーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)》が共演するコンサートである。昨年のMCOの来日ではレイフ・オヴェ・アンスネスとベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会が開催され羨ましいと思っていた。今年は内田光子との札幌公演が室内楽も含めて3日間もある。夢のような話でこの日を心待ちにしていた。

マーラー・チェンバー・オーケストラは今は亡きクラウディオ・アバドの提唱により、世界20ヶ国から集まった若くて優秀な45人のメンバーを核として1997年に室内オーケストラとして結成された。今年は内田が《モーツァルト:ピアノ協奏曲》で弾き振りする。内田はMCOのアーティスティック・パートナーとして関わり既に1月のヨーロッパ・ツアーを行なった。今回の国内ツアーは札幌の後は大阪1公演、東京3公演、豊田1公演が予定されているが、札幌公演が3日もあるのは異例である。3日間それぞれ違ったプログラムで行われるKitaraのコンサートを楽しみにしてこの日を迎えた。

〈Program〉
 モーツァルト:ピアノ協奏曲 第17番 ト長調 K453
 バルトーク:弦楽のためのデヴェルティメント Sz113
 モーツァルト:ピアノ協奏曲 第25番 ハ長調 K503

内田光子は1980年代はモーツァルト弾きのピアニストとして世界の脚光を浴び、モーツァルトの「ソナタ全集」と「協奏曲全集」をリリースしている。「ピアノ協奏曲」はジェフェリー・テイト指揮イギリス室内管弦楽団のCDを多く所有しているが、「第17番」は2004年にアシュケナージがイタリア・パドヴァ管弦楽団を率いて弾き振りした時に初めて聴いてCDを会場で購入した記憶が鮮明である。
溌剌としたリズムと晴朗な旋律から作曲当時のモーツァルトの天真爛漫な一面がうかがえる。豊かなオーケストレーションが施され、特に木管の活躍が目立った。
弦25、管7の小編成だが、個々のメンバーが演奏の主体性をもって音楽作りを目指して内田の指揮とピアノの流れに沿って極めて融合している様子が最初から見て取れた。内田光子の指揮ぶりは一段と堂に入って輝かしい。ピアノとオーケストラの呼吸もピッタリであった。ピアノを弾きながら両手を大きく広げて上にあげるとショールが鳥の羽のように舞う姿は白鳥のように美しく見えた。
演奏終了後に直ちに起こったブラヴォーの声と拍手大歓声は“音楽の質の高さが判る”聴衆のレヴェルを表しているように思った。

バルトーク(1881-1945)はハンガリーの作曲家で1940年にアメリカに亡命した。彼の代表作として有名な「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」はスイスの指揮者パウル・ザッハーの委嘱を受けて作曲された。「弦楽のための嬉遊曲」はニューヨークに移住する前年の1939年8月2日から17日までの短期間でザッハーのアルプスの山荘で書き上げられた。
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン放送響のCDが手元にあったので予め聴いてみた。快適な環境が作曲者に与えた好ましい結果がバルトークにはめったに見られないくつろいだ質の作品になっていると評価されている。ディヴェルティメントと言っても気晴らしの要素はあっても軽快な性格を持った音楽ではない。ロマン派的な香りを漂わせながらも現代音楽の色彩の濃い興味深い作品となっている。
チェロ奏者を除いて全員が立っての演奏であった。力強いテンポの速い演奏が印象的であった。それ程ポピュラーな曲ではないが25名編成のオーケストラの熱演に対する歓声は大きくて聴衆の感動の様子が伝わって良かった。

*バルトーク「の作品の中で管弦楽のための協奏曲」(1943年)が現在では最も演奏機会が多いと思うが昨年9月のホリガー指揮札響定期でも演奏された。

後半の「第25番」は昨年11月アシュケナージ指揮札響定期で聴いた(ピアノ:河村尚子)。ピアニストもオーケストラの規模も違うと、同じ曲でも違った鑑賞が出来るのは極めて興味深い。モーツァルトの協奏曲で20番代の曲はCDも各曲数枚づつ持っていて馴染んでいる。聴き慣れたメロディのある曲は親近感があって注目度は高くなる。
今回の楽器編成は弦楽器23、管楽器9、テンパニでオーケストラは33名。モーツァルト(1756-91)は1784年から1786年までの間にいずれも傑作として名高い12曲のピアノ協奏曲を書いた。「25番」は第14番に始まる一連のピアノ協奏曲の最後を飾る作品。シンフォニックな性格が目を引くこの25番はピアノとオーケストラの対立と融合を同時に追求する試みが鮮やかに結実した作品と言える。
冒頭に置かれた壮大なファンファーレが印象的。第2楽章は優美な主題と控えめなオーケストレィションが効果的。第3楽章は軽快で心地よいロンド・フィナーレ。
第1曲目より管楽器が増えてスケールを増したが、基本的には同じ音楽作りで更なるピアノとオーケストラの対立と融合が味わえた。ピアノのヴィルトオージティは言うまでもなく発揮され、モーツァルトの音楽の良さに浸ることができた。こんなに優雅なモーツァルトを鑑賞できて嬉しかった。

世界的に評判のオーケストラの知名度が札幌では高くないのか、客の入りが良くなかったのは残念であった。東京と同じプログラムで敢えて札幌公演に取り組んだ関係者に感謝したい。今回の日本ツアーは〔大崎電機工業創業100周年記念スペシャル]として開催されプログラムも無料で配布された。
演奏会終了時の万雷の拍手に応えて内田は短いピアノ曲を演奏したが曲目は不明。

*余りに良い気分になって帰宅途中に“名曲 mini BAR OLD CLASSIC”に立ち寄った.。ロンドンのRoyal Albert Hallで行なわれたヤンソンス指揮バイエルン放送響の「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番」を内田光子の演奏で聴いた。モーツァルトとは違うベートーヴェンの素晴らしさも堪能できて至福の時間を過ごした。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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