ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団 2012年札幌公演

 ワレリー・ゲルエフが初めて札幌コンサートホールKitaraを訪れたのは2002年12月であった。
当時はキーロフ歌劇場管弦楽団という名称であったが、現在のマリインスキー歌劇場管弦楽団と同じオーケストラである。
 ムソルグスキー、ボロディン、バラキレフ、リムスキー=コルサコフのロシア国民楽派「5人組」に属する4人の作曲家の曲を演奏した。ロシア音楽の紹介になり、いかにもロシアらしい原色の色彩感と大地から湧き出るような力に溢れた演奏であった。10年経っても覚えているのは、その時の印象が強烈で発売されたばかりのCDを演奏会場で購入して、その後よく愛聴していたからである。その演奏会の中心となった演目はリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」である。

 この日のコンサートに感激したのは聴衆だけではなかった。指揮者ゲルギエフは大ホールの素晴らしさに感激して、後にサンクトペテルブルグにKitaraの音響を担当した永田音響設計を呼び寄せた。Kitaraをモデルにしたマリインスキー・コンサート・ホールが2006年に誕生したのである
 
 2回目のゲルギエフの札幌訪問は2004年
PMF首席指揮者として来日してアカデミー生を指導しPMFオーケストラ演奏会で指揮した。私はピックニック・コンサートでチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」(ヴァイオリン:ニコライ・スナイダー)とショスタコーヴィチの「交響曲第11番」を聴いた。

 3回目は2007年11月でKitara10周年記念コンサート・シリーズとして来札。マリインスキー歌劇場管弦楽団
   チャイコフスキー:交響曲第2番≪小ロシア≫
   プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 (ピアノ:イェフィム・ブロンフマン)
   ショスタコーヴィチ:交響曲第15番

 2008年11月 ロンドン交響楽団の首席指揮者として来日。
   ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 (ピアノ:アレクセイ・ヴォロディン)
   プロコフィエフ:バレエ音楽「ロミオとジュリエット」より 
 この日には私にとって忘れられない思い出がある。Kitaraボランティアとしてアーティスト・エントランスから入ろうとした時Maestro Gergievと出くわしたのです。彼は携帯で話をしていたが、私と目があった。一瞬戸惑った私であったが目礼した。携帯で電話をしていなければ、チョットでも話せるチャンスだったのに残念!

 2009年12月 マリインスキー歌劇場管弦楽団の芸術監督・首席指揮者として来日12公演。
巨匠ゲルギエフ自らが切望し、札幌でのみ実現した夢の2夜。
チャイコフスキー・チクルス。
   3日  序曲「1812年」
        ピアノ協奏曲第1番 (ピアノ:ユンディ・リ)
        交響曲第6番 「悲愴」
   4日  交響曲 第4番
        交響曲 第5番
 
 超人的なスケジュールで音楽活動に携わり、私財を投じてマリインスキー劇場の改修費や制作費にあてマリインスキー劇場管弦楽団を世界のトップクラスの管弦楽団に押し上げたゲルギエフの功績は計り知れない。ロシア音楽の普及に毎回ロシアの作曲家のみの演目でコンサートを展開する試みも愛国心の表れなのだろう。

 国家体制の変化で1991年以降ロシアから多くの音楽家が他国に流出したが、プーチン大統領に直談判してロシアのオーケーストラ団員の給料を数倍にして音楽家の待遇を改善したそうである。ロシア音楽の再興を図る彼の音楽への情熱は他の追随を許さない驚嘆すべきものである。 2010年のショパン国際コンクールでロシアのピアニストが上位を占めたのはロシアでの音楽復興の表れではなかろうか。

 2012年11月16日マリインスキー歌劇場管弦楽団との札幌公演は3年振りであった。
 
 グリーグの「ホルベルク組曲」は弦楽合奏曲でバッハを思い起こす優雅な曲であった。自分が所有するCDに収められていることを知って今晩改めて聴いてみた。

 ブラームスの「交響曲第2番」は緊張感みなぎった第1番とは対称的で、牧歌的で柔和な優しさに溢れていた。木管と金管の美しい音色が曲を惹きたさせた。

 べルリオーズの「幻想交響曲」は個性的な内容を表現するのにそれぞれの楽章に標題が付いている。聴衆は曲のイメージを予め抱いて聴くことができる。文学と音楽の融合とも考えられるが、とてもドラマティックな展開でロマン主義作曲家ベルリオーズの標題音楽作曲家の先駆者としての先進的な音楽であり何度聴いても楽しい。 聴き慣れた幻想交響曲とは少し趣が異なるのを感じたのはロシアものばかり聴いていた先入観のせいかも知れない。フランスものが得意なデュトワなどと違った印象で力強いドラマ性が際立った演奏に思えた。
 
 ステージでの楽器配置、特にコントラバスの3列配置、ハープのセンター近くでの楽器配置は発音を考慮してのことなのか興味が湧いた。ティンパニーの連打、チェロとコントラバスによる死の運命の宣告場面など座席から観ていても興味が深まった。

 予定の演奏が終わって時間が9時半になったが、アンコールに応えてワグナーの歌劇「ローエングリンの第1幕への前奏曲」。オーケストラが格調の高い調べを朗々と奏でて聴衆の熱狂をさらに盛り上げた。普段なら帰りの時間を気にする人も昨夜は9時45分近くまでゲルギエフに酔いしれた。
 
 ゲルギエフが札幌に登場してから10年。Kitaraを気に入って札幌公演を続けてくれるのは嬉しい。聴衆もゲルギエフ・ファンが増えている。来年は還暦を迎えるマエストロの健康を祈り、再度の札幌での公演を心待ちにしたい。



 
 













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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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