ふきのとうホール 夏のフェスティバル2016 シューベルト弦楽三重奏曲・ピアノ五重奏曲

昨年7月にオープンした《ふきのとうホール》が夏のフェスティヴァルを3日間にわたって開催する。今月の札幌では好みのコンサートが少なくて何となく物足りない感じがしていた。外国の奏者の名は耳にしたことはなかったが、国内の室内楽の分野での活躍が目立つ演奏家の名と演奏曲目を見て急に思い立ってチケットを2日前に購入した。

2016年8月12日(金) 午後7時開演  ふきのとうホール(六花亭札幌本店6階)
 
ふきのとうホール 夏のフェスティバル 第2日 シューベルトの内なる声

〈出演〉 ゴットリープ・ヴァリシュ(ピアノ)、マオロ・カローリ(フルート)、白井圭(ヴァイオリン)、佐々木亮(ヴィオラ)、花崎薫(チェロ)、吉田秀(コントラバス)
 
〈曲目〉 シューベルト:弦楽三重奏曲 変ロ長調 D471、  フルートとピアノのための「しぼめる花」による序奏と変奏曲 op.160, D802、  ピアノ五重奏曲 イ長調 「ます」 op.114, D667 

開演に先立って〈ふきのとうホール音楽監督、岡山潔〉から本日のプログラムについて10分程度のプレトークがあった。
シューベルトの二重奏曲、三重奏曲、五重奏曲が取り上げられた演奏会。特にフルートとピアノによる二重奏曲にはシューベルトの過去の作品の旋律が数多く使われ演奏も難曲で知られるという。

シューベルト(1797-1828)は弦楽四重奏曲の作品を数多く残している。PMF2016でも「第9番」、「第12番」を聴いたばかりである。八重奏曲も聴いた。彼の「弦楽三重奏曲」(Vn,Va,Vc)は1曲のみで19歳の時に書かれた。作品は未完で第1楽章のみである。実際は第2楽章の一部が書き残されているので、その部分も演奏された。結構、聴くに値する曲だと思うが何らかの理由で完成せなかったり、破り捨てたりした作品がシューベルトには少なからずあるようである。

Gottlieb Wallischは12歳でウィーン楽友協会大ホールでデビューして以降、欧米を中心に世界各地でリサイタルを行い、ウィーン・フィル、ウィ-ン響などと共演。現在はジュネーヴ高等音楽院教授。
Mario Caroliはイタリア生まれ。フィルハーモニア管、東京フィル、フランス国立放送管などと共演。録音では40枚のCDをリリース。ポリーニやパユからの評価も高く、“フルートのパガニーニ”の評もある。
 
“歌曲王”シューベルトは自作のドイツ歌曲を室内楽の素材として用いている。早世したシューベルトが晩年ともいえる27歳の時に書いた作品。“美しき水車小屋の娘”、“ロザムンデ”、“死と乙女”の旋律も入れている。これまでの彼の短い人生で起きた様々なことを振り返っての想いが込められてるような気がした。(*冒頭の解説ではベートーヴェンの第7交響曲の第2楽章のメロディも使われているという話もあった。)

背の高い細身のカロ―リは踊るような仕種で楽器を吹きながらリズムを取ってフルートから美しい音を自由自在に引き出していた。音の魔術師のような世界に浸れた。ピアノのヴァリッシュもヴェテランで様々な色合いの音を生み出せる達人に思えた。

後半の「ます」は何十年も前から聴き親しんだメロディがふんだんに出てくる。このピアノ五重奏曲は1819年、シューベルト22歳の時の作品。この作品の楽器編成は特徴的である。ヴァイオリンがひとつでコントラバスが使われている。ピアノと弦楽器が対照的な音となってバランス良く聴こえた。コントラバスの低音が素晴らしい調和を生み出したように思えた。5楽章編成。全曲が明るい雰囲気に満ち溢れた魅力的な作品。第4楽章で弦楽のみの合奏で《歌曲「ます」》の主題が奏されたのが特に印象に残った。

弦楽器奏者は4人ともに東京藝術大学卒。白井 圭(Kei Shirai)は1983年、トリニダートトバゴ生まれ。2001年日本音楽コンクール第2位、2009年ミュンヘン国際音楽コンクール第2位、ハイドン国際室内楽コンクール・ピアノトリオ部門第2位。ソリストとしてはウィ-ン楽友協会でのリサイタルやチェコ・フィルなどと共演。2011年ウィ-ン・フィル日本ツァーに現地から参加。現在、いくつかの室内楽のメンバーとしてヨーロッパで活躍して、神戸室内管のコンマスも務める。

佐々木 亮(Ryou Sasaki)は1969年生まれ。ジュリアード音楽院卒業。91年日本現代音楽協会室内楽コンクール第1位、92年東京国際音楽コンクール室内楽部門第2位、アスペン音楽祭、マールボロ音楽祭に参加。2つの大学卒業後はソロ、室内楽、オーケストラ奏者として全米各地で演奏活動を行う。ニューヨーク・リンカーンセンターでのリサイタル、内田光子やヒラーリー・ハーンなどとの共演は特筆される。2004年N響入団、08年首席奏者、同時にソリスト、室内楽奏者として幅広く活動している。

花崎 薫(Kaoru Hanazaki)は1981年第50回日本音楽コンクールチェロ部門第3位。東京芸大在学中にベルリン芸術大学に2年間留学。86年にもドイツ留学。89年エルデーディ弦楽四重奏団結成。11年、長年にわたって首席チェロ奏者を務めた新日本フィルを退団。現在、愛知県立芸術大学教授。

吉田 秀(Shu Yshida)は1963年生まれ。東京藝術大学管弦楽研究部首席奏者を経て、91年N響に入団。現在、首席奏者を務める。デュメイ、ズーカーマン、キュッヒル、クレーメル、ピリス、アルゲリッチ、カルミナ弦楽四重奏団などと共演。霧島国際音楽祭、宮崎国際音楽祭に参加。東京藝術大学準教授、東京音楽大学客員教授。

弦楽四重奏団の演奏会は増えているが、珍しいデュエット、トリオ、クインテットの演奏機会は多くない、今回のプログラミングは大変良かった。音楽監督が力を入れて取り組んだ成果と言えよう。今年のPMFでコントラバスとハープの二重奏が楽しめたが、コントラバスを生かしたプログラムがあると面白い。素晴らしい室内楽ホールの良さが生きる意欲的なプログラミングを今後とも期待したい。



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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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