HIMESオーケストラ Vol.5

HIMES オーケストラ(Hokkaido International Music Exchange Society Orchestra)は2012年設立。毎年夏に開催される演奏会は今年で5回目を迎える。指揮者は新田ユリ。彼女はシベリウス演奏のスペシャリストで現在は日本シベリウス協会会長、愛知室内オーケストラ常任指揮者。昨年11月にはシベリウス生誕150年を記念して“祝祭シベリウス・フェスティバル in SAPPORO”でオール・シベリウス・プログラムの指揮も担った。

ハイメス・オーケストラはハイメス会員、札響メンバー、同OBなどのプロ奏者と一部のアマチュア奏者で組織されている。第1回と第3回演奏会に続いて聴くのが3回目。札幌地下鉄東西線の西側の終点・宮の沢駅に続くビル内にある《ちえりあホール》に足を運ぶのは2年ぶりである。

2016年8月11日(木・祝) 17:00開演  ちえりあホール

〈Program〉
 リスト:前奏曲 S.97/R414
  シューベルト(リスト編曲):「ミニョンの歌」より「この装いをお許しください」D.877-3
                  糸を紡ぐグレートヒェン D.118
                  (ソプラノ:松井亜樹)
 リスト:死の舞踏 S.126/R457 (ピアノ:荒川ジャスミン茉莉子)
 リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

リストに焦点化したプログラミングが特徴のコンサート。R.コルサクフの作品もリストに献呈さてている。2人の優れた作曲家のオーケストレーションの巧みさを堪能する機会になった。

リスト(1811-86)はフランスの詩人ラマルティーヌの「詩的瞑想」を読んでいるうちに感銘を受けてこの「交響詩」を書いたという。“交響詩”は文学や絵画を音楽で表現する作品としてリストが広げた分野である。
人生にはいくつかの前奏曲があることで人間の愛、悩み、争いが人生の記録として描かれている。第1部は“死”を暗示する第1主題と“愛の歌”の第2主題。第2部は“嵐”、第3部は“田園”、第4部は“戦い”で最後に最後は輝かしい行進曲で幕を閉じる。
文学的標題をとりながら写実的に表現されている曲で味わい深い。
〔人間はいつかは死ぬ。愛に囲まれて生活していても嵐に襲われてしまう。田園で平和を求めようとしても、人は幸せを味わい続けてはいられない。危険を告げるラッパを聞いて戦いに挑まなければならないこともある。やがて自分を取り戻して自分の生き方を見つける。〕 「前奏曲」を以上のような解釈をしながら鑑賞してみたのは初めてのことである。
カラヤン指揮ベルリン・フィルの輸入盤で聴き続けていたのでメロディには親しんでいた。コンサートでも偶に聴くことはあったがストーリーを思い描きながら聴いたにのは初めてで良い経験となった。オーケストラの金管の総奏が今ひとつだった気がした。

オーケストラをバックにドイツ・リートを歌った松井亜樹はラフマニノフを中心としたロシアの歌曲を歌ったのを2度ほど聴いたことがあった。選曲やロシア歌曲との違いもあるのだろうが、前2回より声量が豊かで高音が良く響いてレヴェルが高い歌唱になっていると感じた。帰りに出会った友人も好印象の感想を述べていた。

「死の舞踏」は1838年にイタリアのピサで見たフレスコ画「死の勝利」にインスピレーションを得て作曲を始めたとされる。1849年に完成し、53年と59年に改定されている。65年にリストの娘婿ハンス・フォン・ビューロのピアノで演奏されたが評判とはならず、67年のワルシャワ、ロシアの演奏会で成功したそうである。この作品はビューローに捧げられた。〈“怒りの日(Dies Irae)”によるピアノと管弦楽のためのパラフレーズ〉であるが形態としてはピアノ協奏曲である。(*サン=サーンスの交響詩「死の舞踏」、ベルリオーズの幻想交響曲にも“怒りの日”の旋律が用いられている。)
曲は主題と5つの変奏曲,、そして劇的な変奏のコーダで終わる。

演奏が始まって直ちにピアニストの超絶技巧が散りばめられた演奏に引き込まれた。
荒川茉莉子は北海道生まれ、東京藝術大学卒業。2005年第17回ハイメスコンクール〈ピアノ部門〉第1位。インディアナ大学に学び、欧米で活躍し、海外数ヶ国の音楽大学でマスタークラス開催。2013年インディアナ大学で音楽博士号取得。彼女のプロフィールを見て、かなり実力のある経験豊富なピアニストと分った。15分余りの感動的な演奏はホールを埋めた聴衆の心を掴み演奏終了後の万雷の拍手は凄かった。素晴らしい見事な演奏だった。演奏会で聴く珍しい曲で非常に面白かった。

演奏会前に手持ちのCDを探したが見つからなかった。「死の舞踏」は管弦楽曲と思い込んでいた。実際はヒュー・ウルフ指揮フィルハーモニア管とベレゾフスキーのピアノで「リスト・ピアノ協奏曲集」に収録されていた。20年ほどは聴いていなかったので今回は全く新鮮な曲として聴けた。コンサートで生で聴いたのも初めてのような気がする。そんな経緯もあって大いに楽しめた。

後半はリムスキー=コルサコフ(1844-1908)が1888年に描いた豪華なアラビアンナイトの物語。彼がアラビアンナイトから受けたイメージを音楽にした傑作。
4曲構成。第1曲:海とシンドバッドの船、第2曲:カランダ―ル王子の物語、第3曲:若い王子と王女、第4曲:バクダッドの祭り、海、青銅の騎士の立つ岩での難破、終曲。

〈昔、トルコ王シャーリアルは妃となった者を初夜に全て殺していた。何番目かの妃に選ばれたシェエラザードは面白い話を毎晩聞かせて王の気をそらして千一夜も話を続けた。シャーリアル王は優しいシェエラザードの心に包まれて残忍な復讐心が消えていた。〉という有名な物語。

札響のコンサートマスター大平まゆみが弾くシェエラザードのヴァイオリンの優しい音色が全編にわたって響き渡る。曲中の大海原の状景も描かれた。トロンボーン、トランペット、クラリネット、ファゴット、フルート、オーボエなど木管・金管ソロ奏者とハープ、ティンパニ奏者も随所で活躍してオーケストラ全体の融合が上手くいっていた。さすがプロが入って要所を抑えると曲が引き締まる。
アマチュアで活躍している人もプロとの交流で刺激を受けて引き続き研鑽を積み重ねることを願う。

毎年来札してHIMESオーケストラを率いている新田ユリは札幌の音楽の発展に今や欠かせない存在である。プロもアマもお互いに切磋琢磨して音楽の楽しみを市民に広げる努力を続けていってほしいものである。
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Author:fsuterry
年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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