海老彰子ピアノ・リサイタル

カワイコンサート KAWAI CONCERT 2016

カワイコンサートは低料金で一流ピアニストの演奏を聴けるので大変有り難い。先週の金曜日に次いで使用楽器はSHIGERU KAWAIのコンサート・グランドピアノSK-EX。海老彰子のピアノ・リサイタルを聴くのは初めてである。彼女は1991年5月札響定期に初登場。山田一雄指揮のべ^―ト―ヴェン・シリーズでピアノ協奏曲第1番を弾いた記録がある。その当時の記憶は定かでないが1980年ショパン国際ピアノコンクール入賞者でその名を知っていた。彼女は2015年第9回浜松国際ピアノコンクールの審査委員長を務めた。同コンクール優勝のアレクサンデル・ガジェヴのリサイタルが1週間前にKitara小ホールで開催されたばかりで珍しい現象である。日本を代表する国際的ピアニストによるフランス音楽の夕べを楽しみにしていた。

海老彰子(Akiko Ebi)は1953年、大阪生まれ。72年、東京藝術大学1年の時に日本音楽コンクールで第1位を獲得。渡仏してパリ国立高等音楽院でチッコリー二に師事し、最優秀首席で卒業。75年ロン・ティボー国際コンクール第2位、80年ショパン国際コンクールでは第5位に入賞し、当時の審査員アルゲリッチから高い評価を得て彼女の信頼が厚いと言われている。パリを拠点に活動して世界各地の音楽祭にも招かれている。2015年ショパン国際ピアノコンクールの審査員を務め、2012年以降の浜松国際ピアノコンクールの審査委員長も務めている。

2016年7月1日(金) 開演18:30  札幌コンサートホールKitara小ホール

〈Program〉
 武満 徹:雨の樹 素描Ⅱ
 ドビュッシー:雨の庭《版画》、 オンディーヌ《前奏曲第2集第8曲》、
       金色の魚《映像第2集》、 水の反映《映像第1集》、 
       月の光《ベルガマスク組曲》、
       雪の上の足跡《前奏曲第1集第6曲》、西風の見せたもの《前奏曲第1集第7曲》
 ラヴェル:ソナチネ、 クープランの墓 

武満徹(1930-96)がオリヴィエ・メシアンに捧げた追悼曲。フランス音楽の影響を受けた作品に仕上がっている。

ドビュッシー(1862-1918)はフランス印象派音楽を確立した作曲家。印象主義派の画家たちが扱った変転する自然ーーー海、雲、風、雨、水などを音で生き生きと表現した。絵画的タッチで色彩が感じられる曲を作り、官能的な雰囲気を持つ作品もある。「月の光」はピアノ曲の中でも最も知られている作品。「金色の魚」は日本の漆塗りのお盆に描かれた金魚か緋鯉を見て作曲されたと言われる。
7曲は続けて演奏された。ホールを埋めた聴衆はピアニストの集中力を妨げることなく聴き入り、演奏終了後には力強いブラヴォーの声が客席後方から上がったが何か関係者の叫びだったような気がしないでもなかった。もっとも、素晴らしい演奏が展開されてドビュッシーの世界に引き込まれた聴衆が満足したことは確かである。

ラヴェル(1875-1937)のピアノ独奏曲はそれほど多くはない。「亡き王女のためのパヴァーヌ」や「水の戯れ」など今日コンサートで演奏される機会の多い作品はパリ音楽院時代に発表されていたが彼の作曲能力は当時の教授陣からは評価されなかった。ローマ大賞を取れなくて“ラヴェル事件”が起こった話は有名である。
1905年に作曲された「ソナチネ」はラヴェルの出世作となった。3楽章構成の小規模なソナタ形式の曲。古典的ではあるが循環形式が採られ無駄な音のない簡潔な作品。

組曲《クープランの墓》はラヴェルの最後のピアノ独奏曲。1914年に着手したが兵役のために中断して1917年の除隊後に完成された。クープランに代表される18世紀フランス音楽を称えた6曲から成る曲。曲は第一次世界大戦で亡くなった友人に捧げられている。第1曲「前奏曲」、第2曲「フーガ」、第3曲~第5曲は舞曲、第6曲「トッカータ」。
4曲から成る管弦楽曲は演奏会で数回は聴いているがピアノ曲は初めて。第6曲の力強い演奏は一層聴きごたえがあった。高度な演奏力が求められそうな曲でピアニストの手の動きが見えて迫力あるフィナーレを楽しめた。

ドビュッシーとは少し違う色合いのフランス音楽を肌で感じた。ドビュッシーの影響を受けながらも独自の音楽作りを行なったラヴェル。2人のピアノ曲を心から堪能できたコンサートだった。パリを拠点にして活動する海老彰子の本領が発揮されたリサイタルとなった。

万雷の拍手を浴びてピアニストは来場の聴衆に感謝をして熊本応援のメッセージを述べた。アンコール曲を4曲弾いた後で、2015年ショパン国際ピアノコンクールで使われたピアノに魅せられたのか、“長めの曲を弾いてもいいですか?”と言って5曲目を演奏した。アンコール曲は全てショパンの曲。
①ノクターン第4番 op.15-1  ②ワルツ第3番「華麗なる円舞曲」 op.34-2 ③即興曲第3番 op.51 ④幻想即興曲 op.66 ⑤バラード第1番 op.23

サイン会に並んで周囲を見ると殆ど女性ばかりだった。購入したラヴェルのCDは昨年カワイコンサートグランドピアノを使用してリリースしたもので、海外向けにも作られ解説がドイツ語、英語、日本語の3ヶ国語で書かれていた。曲目はフランス語で書かれていた。さすが国際派ピアニストだと思った。
海老はひとりひとり極めて丁寧に対応して耳を傾け名前を聞いてサインに応じていた。私の番が来て感想を述べ25年前のことを話したら覚えていた表情だった。同じホールでの1週間前のガジェヴのリサイタルの話もついでにすると気づいていなかったようで驚いていた。最後に彼女から握手を求められ“お元気で”と言ってくれた。実に人当たりの良い人物で好印象を受けた。CDにはサインとともに“Merci!”と書かれ私の苗字も書いてくれていた。

※指揮者に転向したミハイル・プレトニョフがKAWAIのピアノに出会ってピアニストに戻った話は嬉しいニュースであった。昨年の浜松国際コンクールの第一次予選でカワイのコンサートピアノを使用した出場者の数は驚異的といえるものだった。第一次予選では全72名中24名、第二次予選では全24名中11名、第三次予選では全12名中7名、ファイナルでは全6名中3名だったそうである。改めてカワイピアノ「SK-EX」の世界的な評価の高さに注目した。
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年間60回以上札幌コンサートホールKitaraに通うクラシック音楽ファン。クラシック全般に関心があるがオーケストラ・ピアノ曲が特に好きである。 

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